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Form Dの提出期限は15日|SECへの届出と免除規定の条件

米国で未登録の株式を売ったら、初回販売から15日以内にEDGARでForm Dを提出します。起点になる日付の定義、506(b)と506(c)で変わる募集のやり方、適格投資家の基準、提出後に必要な修正までをSECの公表資料の記載で整理します。

米国法人を作って投資家から出資を受けると、お金が入ったあとに期限付きの作業が1つ残ります。SECへのForm Dの提出です。SECの公式ページは、この届出を募集における最初の販売から15日以内に提出すると定めています。対象になるのは、1933年証券法に基づく登録をせずに証券を売り、Regulation DのRule 504かRule 506、またはSection 4(a)(5)の免除を根拠にした会社とファンドです。

厄介なのは、この15日の起点が送金や着金ではないことです。SECの説明では、初回販売の日とは最初の投資家が撤回できない形で投資を約束した日を指します。クロージングの手続きや入金処理を待っていると、数えはじめの日はすでに過ぎています。しかもEDGARで提出するには事前にアクセス権を取る必要があり、その手続きには公証が入ります。期限の直前に気づいても間に合いません。

もう1つ見落としやすいのは、Form Dが単なる事後報告ではなくどの免除規定で売ったのかを申告する書類だという点です。そこで申告する免除規定によって、募集のやり方そのものが縛られます。宣伝してよいか、誰に売ってよいか、相手の資産や所得をどこまで確かめる必要があるかが変わります。つまりForm Dの提出は、資金調達の設計を決めたあとに付いてくる事務ではなく、設計の内容を自分で宣言する行為です。

この記事では、SECが小規模事業者向けに公開しているページとコンプライアンスガイドに書かれている範囲だけを使い、期限と起点、免除規定ごとの条件、適格投資家の基準、提出後に必要になる修正を順に整理します。金額は公式ページの表記(米ドル)のまま書き、日本円へは換算していません。為替で変わるためです。確認日は2026年10月7日です。

なお、この記事は制度の読み方をまとめたもので、自社がどの免除規定を使うべきかという判断は扱いません。実際の募集では、米国の証券法に詳しい弁護士の確認を通す範囲になります。

15日の起点は、入金した日ではない

まず期限の数え方です。SECのコンプライアンスガイドは、初回販売の日を「最初の投資家が撤回できない形で投資を約束した日」と定義しています。提出期限がその日から15日後にあたり、期限が土曜・日曜・祝日にあたるときは翌営業日になります。

ここで効いてくるのがEDGARの手続きです。Form DはEDGARを通じて電子的に提出するもので、初めて提出する会社は先にアクセス権を取る必要があります。SECの説明によると、オンラインでForm IDを申請してCIK(中央索引キー)とアクセスコードを受け取るのですが、その過程には記入した書面を印刷し、署名して公証を受け、スキャンしてアップロードする工程が含まれます。公証が絡む手続きを15日の中に押し込むのは、日本から動かす場合はとくに現実的ではありません。投資家との交渉が固まった段階で先にアクセス権を取っておく、という順番になります。

提出画面そのものにも制約があります。SECの公式ページには、提出者が最後にキーを打ってから1時間でForm Dの提出を終える必要があると書かれています。入力しながら社内で数字を確認するような進め方は想定されていません。記載する内容を手元で確定させてから画面を開くことになります。

費用の面は負担が軽いです。SECはForm Dの届出と修正に対して提出手数料を課していません。EDGARのアカウントを開くことと維持することにも料金はかからない、とSECは明記しています。そして提出されたForm DはEDGARで誰でも閲覧できる状態になります。会社名、関係者、募集の規模、販売済みの金額といった情報が公開される前提で、記載内容を決めることになります。

Form Dの提出までにたどる4つの段階を縦に並べた図。事前のEDGARアクセス取得、初回販売日の定義、15日の期限、提出後の修正の順に並んでいる
SECが公表している期日と手続きを、時間の順に並べたものです。1と2の順番が入れ替わると、期限に間に合わなくなります。 出典:SEC「Filing a Form D Notice」/SEC「Filing and Amending a Form D Notice」(確認日 2026-10-07)

期限そのものは短くありませんが、起点を取り違えると日数の計算ごとずれます。クロージングの日や着金の日をカレンダーに書き写していると、気づいたときには15日目が過ぎています。書き込む日付は、投資家が撤回できない形で約束した日です。

カレンダーに締切を書いたメモと、申告に使う書類を並べた机の上
届出の期限は、起点の日付を決めてからカレンダーに入れます。写真: Leeloo The First(Pexels)

届出で申告するのは、どの免除規定で売ったのか

SECはForm Dを「Regulation Dによって提出が求められる、免除された募集の届出」と説明しています。届出である以上、何を根拠に登録を免れたのかを書く必要があります。そして根拠にできる免除規定は、それぞれ違う条件を背負っています。

スタートアップの資金調達で実際に使われるのはRule 506の2つの枝です。Rule 506(b)とRule 506(c)は、どちらも調達の相手を適格投資家に寄せる構造ですが、宣伝してよいかどうかが正反対です。もう1つのRule 504は金額に上限がある代わりに、州の側の手続きが大きく残ります。

項目 Rule 506(b) Rule 506(c) Rule 504
調達できる金額 上限なし 参照したページに記載なし 12か月間で $10 million まで
一般勧誘・一般広告 行えない 広く行える 参照したページに記載なし
購入できる投資家 適格投資家は人数制限なし。非適格投資家は90暦日で35人まで 購入者は全員が適格投資家 参照したページに記載なし
適格性の確認 「適格投資家だと合理的に信じられる」ことが前提 合理的な手順を踏んで確認する 参照したページに記載なし
Form D 初回販売から15日以内 初回販売から15日以内 初回販売から15日以内
州の手続き 州の登録は連邦法で免除。届出と手数料は残る 州の登録は連邦法で免除。届出と手数料は残る 証券を募集・販売した州の法令に従う
取得する証券 譲渡制限付証券 譲渡制限付証券 限られた場合を除き譲渡制限付証券

出典:SEC「Private placements — Rule 506(b)」「General solicitation — Rule 506(c)」「Exemption for limited offerings not exceeding $10 million — Rule 504 of Regulation D」(確認日 2026-10-07)

表の「参照したページに記載なし」は、制度が存在しないという意味ではありません。今回参照したSECの該当ページに書かれていなかった、という意味です。推測で埋めず、空欄として残しています。

3つに共通しているのは、どれも「バッドアクター」による欠格の規定を受けることです。経営陣や主要株主に証券法違反などの履歴があると免除を使えなくなる仕組みで、SECは3つのページすべてでこの点に触れています。誰が株主名簿と役員に並ぶかは、調達の条件とは別に確認が必要になります。

宣伝するかどうかで、条件の中身が入れ替わる

Rule 506(b)から見ていきます。SECの公式ページによれば、この枠では金額に上限がなく、適格投資家の人数にも制限がありません。そのうえで、非適格投資家にも売れますが、90暦日の期間で35人を超えて売ってはならないとされています。さらにその非適格投資家は、投資の利点とリスクを評価できるだけの金融・事業に関する知識と経験を持っている必要があります。

代わりに外せない制約が1つあります。証券を売り込むための一般勧誘や一般広告を行えないことです。SECのページは、投資家との関係が遠くなるほど、この免除に当てはまると示すのが難しくなると書いています。つまり、誰に話を持ちかけたかという事実関係が、免除の成否に直結します。公開のイベントで出資を募る、ウェブサイトに募集を掲示する、といった動き方はこの枠と相容れません。

非適格投資家を入れる場合は、渡す情報も増えます。SECは、Regulation Aの募集で提供されるのと同じ種類の情報を含む開示書類を渡すこと、Rule 506で定められた財務諸表の情報を渡すことを求めています。人数の上限だけを見て「35人までなら誰でも入れられる」と読むと、この作業が抜け落ちます。

一方のRule 506(c)は、2013年9月23日に効力を持った改正で入った枠です。SECの説明では、発行会社は募集を広く勧誘し、一般に広告できます。その代わり、購入者が全員適格投資家であること、発行会社が購入者の適格投資家としての地位を確認するために合理的な手順を踏むことが条件になります。宣伝の自由と、購入者の確認義務が交換されている構造です。

募集を広く宣伝するかどうかでRule 506(c)とRule 506(b)に分かれる分岐図。両者の購入者の条件、確認義務、人数の上限を並べている
宣伝するかどうかという1つの判断から、購入できる相手と確認の重さが決まります。下段は、どちらを選んでも変わらない部分です。 出典:SEC「Private placements — Rule 506(b)」/SEC「General solicitation — Rule 506(c)」(確認日 2026-10-07)

図の下段にある州の扱いは、どちらの枝でも同じです。SECの両ページは、Rule 506による募集について連邦法が州の登録と資格付与を免除していると書いたうえで、州には届出を求め手数料を徴収する権限が残っていると明記しています。連邦の免除を取ったから州は関係ない、とはなりません。

適格性の確認は、書類で裏づける

Rule 506(c)の「合理的な手順」は、抽象的な努力義務ではありません。SECのコンプライアンスガイドは、使える方法を限定列挙ではない形で挙げています。どれも、本人の自己申告だけでは足りないという方向で揃っています。

確認の方法 見るもの 期間の条件
所得で確認する 所得を報告するIRSの書類(給与や支払いの報告書、パートナーシップの持分明細、提出済みの個人所得税申告書など) 直近2年ぶん
純資産で確認する 銀行の明細、証券口座の明細、譲渡性預金の証書、税の評価通知、信用情報など。あわせて投資家本人の書面による表明を取る 書類は直近3か月以内の日付のもの
第三者の確認書を取る 登録ブローカーディーラー、SECに登録された投資顧問、資格を持つ弁護士、公認会計士のいずれかによる書面の確認 確認は3か月以内
既存投資家として扱う 2013年9月23日より前に、その発行会社のRule 506(b)の募集で適格投資家として投資していた人を確認する方法 -

出典:SEC「Eliminating the Prohibition Against General Solicitation and General Advertising in Rule 506 and Rule 144A Offerings — Small Entity Compliance Guide」(確認日 2026-10-07)

実務の重さは、この表の右端に出ています。純資産で確認する方法は書類の日付が直近3か月以内であることを求め、第三者の確認書も3か月以内です。募集が長引けば、同じ投資家について書類を取り直す場面が出てきます。宣伝して広く集めるという選択は、集まった人数ぶんの確認作業を抱えることと同じ意味になります。

逆に、Rule 506(b)の側はこの作業を負いません。SECのページは「適格投資家であると合理的に信じている」投資家を中心に売れると説明しており、書類による確認の手順までは課していません。確認の軽さと宣伝の禁止が、ここで釣り合っています。

適格投資家の線引きは、金額と資格の両方にある

どちらの枝でも中心になるのが、適格投資家の定義です。SECのページは、個人については金額の基準と資格・立場の基準を並べて挙げています。

個人が適格投資家に当たる4つの入口を並べた数値カード。純資産、単独の所得、合算の所得、保有資格と立場の基準が並ぶ
個人の入口を、金額の基準3つと資格・立場の基準1つに分けて並べたものです。下段は事業体の基準で、金額の表記はいずれもSECの公式ページのままです。 出典:SEC「Accredited investors」(確認日 2026-10-07)

金額の基準は3つです。主たる住居を除いた純資産が $1 million を超えること。所得が単独で $200,000 を超えること。配偶者またはパートナーと合算した所得が $300,000 を超えること。所得の基準には直近2年のそれぞれの年で超えているという条件が付きます。1年だけ大きな所得があった年があっても、この入口は開きません。

金額以外の入口もあります。SECはSeries 7、Series 65、Series 82の保有者を挙げ、あわせて発行会社の取締役、執行役員、ジェネラルパートナーを挙げています。自社の役員が自社の募集に参加する場合、金額の基準を見る前にこの枝に当たるかを確認することになります。

事業体の側は別の基準です。保有する投資資産が $5 million を超える法人・組合・LLC・信託・501(c)(3)の団体・従業員給付制度、総資産が $5 million を超える組織、そして持分の保有者全員が適格投資家である事業体が挙がっています。最後の枝は、投資用のSPVやエンジェルのシンジケートを通した出資を考えるときに関係します。SECに登録された投資顧問とブローカーディーラー、銀行、保険会社、登録投資会社なども一覧に含まれ、私募ファンドのknowledgeable employeesやファミリーオフィスの顧客も特定の条件のもとで対象になります。

$10 millionまでのRule 504は、州の手続きが残る

Rule 506の2つとは別に、Rule 504があります。SECの公式ページによれば、この免除は12か月の期間に $10 million までの証券の募集と販売を登録義務から外すものです。金額の天井がある代わりに、適格投資家に限る仕組みが入っていません。

ただし、使えない会社が明示されています。SECのページが挙げているのは、Exchange Actの報告会社、投資会社、具体的な事業計画を持たない会社または事業計画が「相手の決まっていない会社との合併・買収を行うこと」だとしている会社、そしてRule 504のバッドアクター欠格に該当する会社です。設立したばかりで事業の中身が定まっていない段階だと、3つ目に引っかかる可能性があります。

そして州の扱いが、Rule 506とはっきり違います。Rule 504の募集では、SECのページが証券を募集または販売した州の証券法令に従う必要があると書いています。Rule 506で効いていた連邦法による州登録の免除がないため、関係する州それぞれの手続きを調べることになります。州の数が増えるほど、$10 millionという上限より先に手続きの負担が効いてきます。取得する証券も、限られた場合を除いて譲渡制限付証券になります。

提出したあとに必要になる修正

Form Dは出して終わりではありません。SECのコンプライアンスガイドは、修正(amendment)を提出する場面を3つ挙げています。1つ目は、すでに提出した届出に重要な事実の誤りや誤記があったときで、発見しだいすみやかに修正します。2つ目は、提出した情報に変更があったときで、こちらも変更後すみやかに修正します。3つ目が見落としやすいもので、募集がまだ続いている場合は、直近に提出した届出の提出から1年の日までに、毎年修正を出すという決まりです。

その一方で、変更があっても修正が要らない項目も列挙されています。SECのガイドが挙げているのは9つの類型で、関係者の住所や発行会社との関係、発行会社の収益または純資産総額、最低投資額(引き上げた場合、または10%以下の引き下げ)、販売報酬を受け取る人の住所や勧誘を行う州、募集総額(減額した場合、または10%以下の増額)、販売済みの金額や残りの金額、非適格投資家の人数(35人以下にとどまる限り)、投資家の総数、販売手数料や費用(減額した場合、または10%以下の増額)です。募集が終了したあとは修正を出す必要もありません。

ここで数字の増減に方向があることに気づきます。募集総額は減らすなら修正が不要で、増やすときは10%以内に収まっている場合だけ不要です。つまり、募集を大きくする方向の変更ほど修正が必要になります。ラウンドの枠を広げる判断をしたときは、同時にForm Dの修正の要否も確認することになります。

費用の面では、SECへの修正に手数料はかかりません。ただしSECのガイドは、多くの州がForm Dの届出と修正の提出を求めており、その大半が手数料を課していると書いています。州ごとの要件はNASAAと各州の証券規制当局に確認するよう案内されています。連邦の側が無料であることと、総額が無料であることは別の話です。

株式を出す前に決まっていること

Form Dに書く内容は、募集を設計した時点でほぼ確定しています。先に決まるのは、誰からいくら受け取るか、どの免除規定に乗るか、どの州で声をかけるかです。海外のアクセラレーターから出資を受ける場合の標準的な条件は、Y CombinatorとTechstarsの公式ページの記載から整理した記事にまとめています。契約の形と持分がどの時点で確定するかは、そちらで扱っています。

会社側の前提として、州に法人を維持する費用も毎年かかります。授権株式数で毎年の税額が決まる仕組みは、デラウェア法人の年間費用を州の公表資料から整理した記事にあります。従業員や創業者に渡す株式の課税については、米国ストックオプションの課税時点を扱った記事で整理しています。海外の事業に関する記事は海外ビジネスにまとめています。

今回の確認で分からなかったこと

正確を期すために、今回参照した範囲で確認できなかった項目を残します。

期限までにForm Dを提出しなかった場合にどうなるかは、今回参照したSECのページとコンプライアンスガイドに記載がありませんでした。遅れたときの罰則や免除の扱いについて、推測は書いていません。

州ごとの届出の要件と手数料の額も記載がありません。SECのガイドがNASAAと各州の当局へ案内しているとおり、州の数だけ確認先が分かれます。Rule 506(c)の調達額に上限があるかどうかも、今回参照したページには書かれていませんでした。Rule 504における一般勧誘の扱い、譲渡制限付証券を売れるようになるまでの保有期間についても、参照したページの範囲では確認できていません。

また、Form Dに記載する項目の一覧も、今回参照したページには載っていませんでした。実際の入力画面で求められる項目は、SECの様式そのものと提出の案内で確認する範囲になります。

この記事は米国の証券規制の読み方を整理したもので、日本側の開示や税務、個別の募集が免除に当たるかどうかの判断は扱っていません。SECのページが小規模事業者向けの要約であることも前提です。実際に株式を発行する前の判断は、米国の証券法に詳しい専門家に確認する範囲になります。

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