中小企業成功事例/海外事例

米オレゴンの林業用品店が、売上連動の資金調達で在庫を回すまで

米オレゴン州ベンドのThe Shop Forestry & Supplyは、銀行融資が難しい小規模事業者として、売上に連動して返済する資金調達を6回使い在庫と自社製品を回してきました。仕組みと条件を整理します。

売れる前に仕入れなければならない商売では、資金が止まった瞬間に成長も止まります。米オレゴン州ベンドで林業用品店を営むThe Shop Forestry & Supplyは、創業から数年のあいだに売上連動型の資金調達を6回使い、高額な安全装備の在庫と自社ブランドの製品開発を回してきました。同社の話が公開されているShopifyの記事と、資金提供側の公式ページに書かれている条件を突き合わせると、小さな事業者が資金の壁をどう越えたのかが見えてきます。日本ではまだ同じ制度をそのまま使えませんが、判断の順序は参考になります。

何をしたか:消火用のシャツが2日先にしかない町で

始まりは、創業者のBoe Brodhun氏が契約消防士として働いていたときの不便でした。仕事に必要な消火用シャツを買おうとしたところ、いちばん近い入手先が2日かかる距離にしかなかった、というものです。ここから、地元の林業関係者がすぐに専門装備を手に入れられる場所を作ろうという発想が生まれ、Kennedy氏とともにThe Shop Forestry & Supplyを立ち上げました。公式サイトには創業年が2021年と掲げられています。

同社は実店舗とオンラインの両方で営業しています。公式サイトを見ると、扱っているのは樹上作業の装備(ハーネス、プーリー、カラビナ、アセンダー)、伐倒用品、剪定の道具、リギング用品、山火事対応の装備、作業用のアパレル、チェーンソーの部品、ロープ、バー、保護具、ブーツ、小型エンジンの修理まで広がります。取扱ブランドも、Husqvarna、Silky、Arborwear、Edelrid、CMI、Sterlingなど専門的な名前が並びます。地域の林業のプロと愛好家に向けた、間口の狭い品ぞろえです。

このタイプの商売には、はっきりした特徴があります。1点あたりの単価が高いのです。記事には、耐火ズボンが400ドルという例が挙げられています。安全に関わる装備を取りそろえておくには、それだけ大きな金額を先に在庫として寝かせる必要があります。店に品物が並んでいることそのものが、この店の存在理由だからです。

公表されている事実

同社は実店舗を地域の集まる場所として育てながら、自社ブランドの製品にも手を広げました。米国内で製造するアパレルのラインと、チェーンソー向けのアクセサリーを開発し、後者は国外にも販売しているとされています。仕入れた物を売る商売から、自分たちで作った物を売る商売への広がりです。

一方で、この広がりに必要な資金は、銀行からは届きませんでした。Kennedy氏の言葉として「良好な信用履歴があっても、小規模事業者としては、何らかの資金を得るのは難しかった」という趣旨の説明が載っています。信用情報に問題があったわけではなく、規模そのものが壁になったという話です。日本の小規模事業者にも覚えのある状況だと思います。

事例カード。2021年に米オレゴン州ベンドで創業、林業用品の実店舗とオンライン、耐火ズボンは400ドル、資金調達は6回
記事と公式サイトで確認できる事実です。売上・利益・従業員数・調達額は公表されていません。 出典:Shopify(創業者の紹介記事)/The Shop Forestry & Supply 公式サイト(確認日 2026-08-23)

資金が要るのは、売れる前の段階

同社が6回の資金調達で使い道としたのは、在庫の確保、自社ブランド製品の開発、そしてマーケティングです。Kennedy氏は、自社製品を作るには前払いの費用や各種の手数料が多く発生するため、手元に数千ドル単位の余裕が無いときに助かった、という趣旨を述べています。

ここが、小さな事業者の資金繰りで最も詰まりやすい場所です。売上が伸びているときほど、次の仕入れの支払いが先に来ます。季節性のある商材ならなおさらで、繁忙期の前に最も多くの現金が出ていきます。銀行融資の審査は、直近の決算と信用力を見るため、創業から日が浅く規模の小さい事業者ほど時間がかかるか、そもそも土俵に上がれません。同社が直面したのはこの構造でした。

売上連動で返す、という返し方

同社が使ったShopify Capitalの条件は、資金提供側の公式ページに書かれています。返済は店舗の日次売上の一定割合を自動的に充てる形で、売上が立った日にだけ発生します。売れた日は多く返し、売れない日は返さない仕組みです。返済期間の上限は18か月、最低2回の支払いが条件とされています。提供額は公式ページの表記で「up to $2M」までとされ、申込者の現地通貨で提示されるとあります。

審査については、信用情報の照会が無く、個人の信用スコアに影響しないこと、個人保証が無いこと、複利の利息が無いことが公式ページに明記されています。代わりに、売上、係争、顧客との関わりといった事業のデータを機械的に分析して判断するとされています。資格条件として挙がっているのは、Shopifyで90日以上販売していること、同社の利用規定と利用規約に従っていることです。承認された場合、最短2営業日での資金提供とあります。

Kennedy氏はこの点について、信用照会が無く、銀行なら通るはずの手続きを経ずに申請が承認された、という趣旨を述べています。また、従来型の返済方式ではないため、売れない日があっても大きな金額を返さなくてよいという安心があるとも語られています。Boe氏は銀行融資の経験を踏まえたうえで、この仕組みは双方にとって利益になっていると感じる、という趣旨の評価をしています。

見落とさないでおきたいのは、これが返さなくてよいお金ではないことです。売上に対する固定割合が毎日引かれるということは、粗利率が薄い商材では手元に残る現金がその分だけ細くなります。返済が売上に連動するのは資金繰りの波を吸収する助けになりますが、事業として利益が出ていなければ、原資は先細ります。公式ページに手数料の率は具体的に書かれておらず、実際の負担は提示された条件で確認するほかありません。

比較表。返済方法、期間の上限、最低支払回数、提供額、審査、資格条件、提供国について公式ページの記載と確認事項を並べた表
公式ページの記載を転記しました。手数料の率は記載がなく、実際の条件は申込時の提示が優先されます。 出典:Shopify Capital(公式ページ)(確認日 2026-08-23)

日本の小規模事業者が参考にできる点

第一に、資金の壁がどこにあるのかを言葉にすることです。同社の場合、必要だったのは運転資金であり、その使い道は在庫と製品開発とマーケティングでした。設備投資でも赤字の補填でもありません。売れる見込みのある物を先に持つための資金だという整理ができていれば、必要な金額と回収までの期間を説明できます。逆に、この整理が曖昧なまま調達すると、返済の速さと在庫が売れる速さが合わなくなります。

第二に、調達手段を1つに絞らないことです。Shopify Capitalの提供国は米国・カナダ・英国・オーストラリアと公式ページに記載があり、日本の事業者がそのまま使えるものではありません。ただし、売上や入金の実績にもとづいて資金を出し、売上から回収するという発想の商品は、日本でも売掛金の早期資金化や、決済事業者・ECプラットフォームが提供する事業者向けの資金提供という形で存在します。名称も条件も異なるため、自社が使えるものを個別に確認する必要がありますが、「決算書の審査で止まるなら、売上のデータで見てもらう」という選択肢があること自体は共通しています。

第三に、条件の読み方です。同社の事例で効いたのは、金額の大きさより返し方の形でした。売上が無い日は返済が発生しないという設計が、季節変動の大きい商材との相性を良くしています。調達を検討するときは、金利や手数料の数字だけでなく、返済が固定額か売上連動か、繁忙期と閑散期のどちらで負担が重くなるかを、自社の月別の売上と並べて確かめるのが実務的です。

留意点として、この記事で扱った同社の売上、利益、従業員数、調達した金額は公表されていません。6回という回数と使い道は記事に書かれていますが、それによって業績がどう変わったかを示す数値は、この記事の出典からは確認できませんでした。また、資金提供側の公式ページの記載は変更される前提のもので、実際の条件は申込時の提示内容が優先されます。

確認リスト。資金の性格、使い道と金額、返済方式、季節変動との相性、総返済額、提供条件の6項目
公式ページに書かれた条件から、日本の事業者が自社に当てはめて確かめる項目として整理しました。 出典:Shopify Capital(公式ページ)と当社の整理(確認日 2026-08-23)

出典と注記

この記事はShopifyが公開している創業者の紹介記事、Shopify Capitalの公式ページ、そしてThe Shop Forestry & Supplyの公式サイトを出典としています。金額・期間・回数は原文の表記のまま記載し、為替換算は行っていません。創業者の発言は、原文の英語を要旨として日本語にしたもので、逐語の訳ではありません。日本国内で同様の資金調達を利用できるかどうかは、この記事の出典からは確認できませんでした。

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