Googleが2026年10月14日、Google広告にチャネル優先度(channel prioritization)と予算配分(budget allocation)という2つの任意設定を追加すると公表しました。公式ブログの書き出しが、この変更の性格をよく表しています。全か無かのチャネル ターゲティングに別れを告げよう、というものです。
これまで検索パートナーやディスプレイ ネットワークは、使うか使わないかの二択でした。成果が読めないと判断した運用者は、まとめてオフにしてきました。今回の設定は、その二択の間に順番と上限を置きます。どのチャネルから先に予算を使うかを決め、後回しにしたチャネルには1日あたりの割合で天井を付ける、という考え方です。
先に、急ぐ必要があるかどうかを書きます。設定そのものは任意なので、今夜から管理画面を触らなければならない種類の変更ではありません。ただし2027年2月に既定の挙動が変わる予定が同時に告知されています。検索キャンペーンでディスプレイ ネットワークを有効にしている広告主は、期限のある宿題を1つ持ったことになります。
この記事では、公式ブログと公式ヘルプに書かれている範囲だけで、2つの設定の役割、効く条件と効かない条件、期限、そして日本の運用担当が10月のうちに決めておくことを整理します。確認日は2026年10月15日です。英語の発表を訳しているため、日本語の管理画面では語が違うことがあります。
2つの設定は、役割がはっきり違う
チャネル優先度は、在庫を「High priority」と「Low priority」に分類する設定です。公式ブログの説明では、設定したキャンペーンは高優先のチャネルを満たしてから、残った予算を優先度の低いチャネルへ回します。目標CPAまたは目標ROASを使っている場合、この「満たす」は目標の範囲内という条件付きです。
予算配分は、低優先に置いたチャネルに対して、1日あたり予算の何パーセントまでという上限を置く設定です。公式ヘルプは best-effort と明記しており、1日の消化が指定した割合を超えることがあるとしています。ヘルプが挙げている例をそのまま引くと、5%の配分を$1,000の平均1日予算へ設定した場合、そのチャネルの消化を1日$50以下に保とうとする、という動き方です。
ここを混ぜないでください。順番を決めるのが優先度、量を絞るのが配分です。そして配分を指定できるのは、低優先に分類したチャネルだけです。高優先の側に「ここまで」という上限を置く設定ではありません。
設定できる場所は、アカウント、共有予算、キャンペーンの3階層です。公式ブログは、アカウントとキャンペーンの階層で提供され、共有予算にも適用されると書いています。アカウントで既定を決めておき、特定のキャンペーンだけ上書きする、という運び方ができます。
どのキャンペーンで、どのチャネルに効くのか
対象はSearch・Shopping・Performance Max・Demand Genの4種類です。ただし、分類できるチャネルの粒度と、配分まで使えるかどうかがキャンペーンタイプで違います。
| キャンペーンタイプ | 優先度を付けられるチャネル | 予算配分 |
|---|---|---|
| 検索(Search) | Google検索/検索パートナー/ディスプレイ ネットワーク | 設定できる |
| ショッピング(Shopping) | Google検索/検索パートナー | 設定できる |
| Performance Max | Googleチャネル/検索パートナー/ディスプレイ ネットワーク | 設定できる |
| Demand Gen | Googleチャネル/ディスプレイ ネットワーク | 優先度のみ |
実務でいちばん効くのは、検索キャンペーンの行です。Google検索、検索パートナー、ディスプレイ ネットワークを別々の優先度に置けるため、「検索の自然な需要には全力で、ディスプレイは余った分だけ」という配り方を、オフにせずに表現できます。
一方、Performance MaxとDemand Genでは、検索・YouTube・マップ・Gmail・Discoverといった面が「Googleチャネル」としてひとまとめに優先度を付けられます。つまりYouTubeだけを低優先にして、検索面は高優先のまま残すという分け方は、この設定ではできません。Performance Maxの中身を面ごとに制御したい運用には届かない粒度です。
優先度を付けても何も変わらないキャンペーンがある
公式発表のなかで、見落とすと設定が無駄になる一文があります。予算配分は、目標CPAや目標ROASで動いていて、かつ予算による制限を受けていないキャンペーンでとくに役に立つというものです。理由も書かれていて、そうしたキャンペーンではチャネル優先度だけでは一般に影響が出ないからだとしています。
公式ヘルプはこの挙動をもう少し細かく書いています。予算で制限されていないキャンペーンでは、優先度を付けても予算の使われ方は変わりません。ただし低優先のチャネルに置いた配分は、その場合でも適用されます。予算で制限されているキャンペーンでは、高優先のチャネルが目標の範囲内で先に消化し、高優先での追加の消化が目標を超えてしまう場合に、予算が低優先へ移ります。
目標CPAと目標ROASは、公式ヘルプがスマート自動入札の戦略として挙げているもので、オークションごとに入札を決める仕組みです。設定した目標を満たせる限り、予算が余っていても無理に使い切る動き方はしません。だから予算に余裕のある目標型のキャンペーンでは、順番を決めても結果が動かないのです。この種のキャンペーンで検索パートナーやディスプレイの消化を抑えたいなら、優先度ではなく配分の割合を指定する必要があります。
なお、予算による制限を受けたキャンペーンの挙動そのものは、2026年8月にも一度変更が入っています。目標を下回る好成績が続かなくなった件は目標を下回る好成績は続かない。Google広告8月17日の入札変更で扱いました。あわせて読むと、どのキャンペーンが「予算で制限されている」側にいるのかを確かめる必要性が分かります。
期限があるのは2027年2月の既定変更
公表されている日付を並べると、短期で動く必要があるのは最後の1つだけだと分かります。発表は2026年10月14日、公式ヘルプが提供の開始日として挙げているのは2026年10月15日で、そこから段階的に使えるようになります。4種類のキャンペーンタイプへの展開は、ブログの表現では今後数か月かけて進みます。
問題は2027年2月です。発表には、その時点で、ディスプレイ ネットワークを有効にしている検索キャンペーンについて、現在の消化の配分の仕組みがなくなると書かれています。そして広告主はチャネル間の消化の移動を見る可能性があるとしています。現在の設定を維持したい場合の対処も明記されていて、ディスプレイ ネットワークを低優先にし、予算配分を50%に設定する、というものです。
ここが、この発表でいちばん実務的な部分です。新しい設定を使わないという選択をしても、何もしなければ配信先の比率が動く可能性があるのですから、使わない側にも作業が残ります。2027年2月より前に、検索キャンペーンでディスプレイ ネットワークが有効になっているものを洗い出し、現状を維持するのか、それを機に比率を見直すのかを決めておくことになります。
全か無かのオプトアウトをやめるかどうかは、別の判断
公式ブログは、これまで検索パートナーとディスプレイ ネットワークをオフにしてきた運用者について、全部を切るのではなく、より確かな手応えと明確な上限を持ってこれらのネットワークを試せるようになる、と書いています。確かに、上限付きで試せるのは二択よりは扱いやすい形です。
ただし試した結果どうなるかは、どこにも書かれていません。発表には、このネットワークを使った場合の成果の改善幅や、業種ごとの傾向を示す数値は出ていません。したがってこの設定は「成果が上がる機能」ではなく、「これまで判断を保留していた配信先を、損失の上限を決めた状態で試せるようにする機能」として扱うのが正確です。効果は商材と計測の精度によって変わります。
試すなら、先に評価の約束事を決めてください。どの指標で見るのか、チャネル別の内訳をどこで確認するのか、どれだけの期間で判断を下すのか、そして撤退の条件は何か。予算の内訳と評価軸の決め方はGoogle広告の費用はいくら?予算・課金方式・費用相場を解説で整理しています。低優先に小さな割合を置いた状態は、言い換えれば金額の上限を決めた常設のテストです。上限が小さければ、判断に足る数字が貯まるまで時間がかかることも前提に入れてください。
Demand Genには、もともと別のチャネル制御がある
Demand Genで優先度だけが提供され、配分が付かないのは、この設定の役割がもともとあるチャネル選択とは別物だからです。公式ヘルプのチャネル制御のページには、Demand Genでは広告を出す面を選べると書かれています。選べるのはYouTube(in-stream、in-feed、Shorts)、Discover、Gmail、マップ、ディスプレイ ネットワークで、すべてのGoogleチャネルを選ぶか、自分で選ぶかを指定します。
同じページには、使うときの注意も書かれています。マップは、提携関係のない住所表示アセットがアカウントで有効なときにだけ配信されます。また配信は面をまたいでROIの高いところ、CPAの低いところへ寄るため、特定の面の配信量が想定より少なくなることがあるとされています。面ごとの費用を単体で比べるのではなく、キャンペーン全体の効率で見ることが推奨されています。
つまりDemand Genには、出すかどうかを選ぶ制御がすでにあり、そこへ今回「どちらを先に使うか」という順番の制御が加わります。選択と優先度は別の設定で、片方で代用できません。Demand Genの最近の変更はYouTube広告から会話が始まる。Demand Gen 8月の3つの追加でも扱っています。
設定の前に確認しておく制約
公式ヘルプには、設定しようとして初めて気づく種類の制約がいくつか書かれています。代理店に運用を任せている場合はとくに関係します。
| 制約 | 公式ヘルプの記載 |
|---|---|
| 設定できる階層 | アカウント、共有予算、キャンペーンの単位で設定する |
| マネージャーアカウント | マネージャーアカウントから直接は適用できず、クライアントアカウント側で設定する |
| 共有予算 | 共有予算を使うキャンペーンは、キャンペーンタイプがそろっている必要がある |
| キャンペーンの合計予算 | 対応しているのはDemand Genだけ |
| 配分の精度 | best-effort。1日の消化が指定した割合を超えることがある |
マネージャーアカウントから一括で入れられない点は、アカウント数が多い運用ほど作業量に直結します。社内で複数アカウントを持っている場合も同じで、既定値をどの単位でそろえるのかを先に決めておかないと、アカウントごとに違う方針が残ります。
日本の運用担当が10月のうちに決めること
公開されている情報だけで動けることは、4つあります。
第一に、棚卸しです。検索キャンペーンのうち、ディスプレイ ネットワークが有効になっているものと、検索パートナーが有効になっているものを一覧にします。2027年2月の既定変更の影響を受けるのは前者です。
第二に、その宿題を誰がいつやるかを決めることです。代理店に任せている場合、マネージャーアカウントから一括設定できないという制約があるため、作業はアカウント単位で発生します。契約の範囲に入るのかを確認しておくほうが安全です。
第三に、自社のキャンペーンが「予算で制限されている」側かどうかの確認です。目標CPAや目標ROASで動いていて予算に余裕があるなら、優先度を付けても結果は動きません。その場合に使うのは配分のほうです。ここを取り違えると、設定したのに何も変わらないという結論になります。
第四に、評価の約束事です。チャネル別の内訳で何を見るか、どの期間で判断するか、撤退の条件は何かを、設定を入れる前に書いておきます。発表の末尾は、年末商戦の需要に応えるという文脈で締められていますが、繁忙期に新しい設定を入れて比較の条件を動かすと、あとから原因を切り分けられなくなります。繁忙期に入る前に入れるか、繁忙期が明けてから入れるかも、決めておくべき選択です。
発表に書かれていないこと
推測で埋めないために、確かめようとして見つからなかった項目を残します。
| 確認したかった項目 | 公式発表・公式ヘルプの記載 | どうするか |
|---|---|---|
| 日本のアカウントで使えるようになる時期 | 段階的に提供され、今後数か月で展開されるとだけ書かれています | 管理画面に項目が出たかどうかで判断する |
| 日本語の管理画面での設定名 | 記載がありません | 英語名で控え、表示されたときに社内の手順書を直す |
| 設定したときの成果の変化 | 数値の記載がありません | 自社で上限を決めて試し、記録を残す |
| 指定できる割合の下限・上限 | 該当ページでは確認できませんでした | 設定画面に出る範囲で確認する |
| 2027年2月の既定変更の対象範囲 | ディスプレイ ネットワークを有効にしている検索キャンペーンとだけ書かれています | 自社の該当キャンペーンを洗い出して備える |
| 検索パートナーの内訳 | 今回の発表には記載がありません | 公表されている範囲を超えて推測しない |
この設定は、配信先の選び方の自由度を上げるものです。自由度が上がるということは、判断の責任がこちら側へ移るという意味でもあります。オフにしていれば考えなくてよかった配信先について、何パーセントまでなら許容できるのかを自分で決めることになります。
まとめ
Googleは2026年10月14日、Google広告にチャネル優先度と予算配分という2つの任意設定を公表しました。優先度は高優先のチャネルから先に予算を使う順番を決め、配分は低優先のチャネルに1日あたり予算に対する割合の上限を置きます。対象はSearch・Shopping・Performance Max・Demand Genの4種類で、Demand Genは優先度だけです。
効き方には条件があります。予算で制限されていないキャンペーンでは、優先度を付けても予算の使われ方は変わらず、低優先に置いた配分だけが効きます。目標CPA・目標ROASで予算に余裕がある運用は、この側に当たります。
そして期限は2027年2月です。ディスプレイ ネットワークを有効にしている検索キャンペーンでは、現在の消化の配分の仕組みがなくなり、消化の移動が起きる可能性があります。現状を維持するなら、ディスプレイ ネットワークを低優先にし、配分を50%に設定するという対処が発表に明記されています。新しい設定を使うかどうかに関係なく、該当するキャンペーンの洗い出しだけは先に済ませてください。
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