デリバティブ取引(金融派生商品)とは?仕組みと種類をわかりやすく解説!

デリバティブ取引とは金融派生商品のことで、「先物取引」と「オプション取引」の2種類があります。元々はリスクをヘッジする目的で誕生しましたが、現在では市場規模が拡大し、相場を動かす要因となっています。

この記事では、デリバティブ取引の仕組みと、実際にどのような取引が行われているのかを詳しく解説していきます。まずは、デリバティブ取引とはどのようなものなのかを見ていきましょう。

デリバティブ取引(金融派生商品)とは

出典:金融広報中央委員会

デリバティブ取引(金融派生商品)とは、株式や債券、金利、外国為替などを原資産とする先物取引やオプション取引の総称です。先物取引は、将来売買を行うことを予め約束する取引、オプション取引は将来売買する権利をあらかじめ売買する取引です。

株式や債券などの原商品の価格変動や価格差、時間差を利用して利益を狙います。デリバティブはレバレッジをきかせて少額の資金で大きな資金が取引できるので、大きな利益を狙える一方、手持ち資金以上の損失を抱えるリスクがあります。

しかし、本来のデリバティブの利用方法はリスクヘッジです。デリバティブを利用すると運用の幅が広がります。例えば、現資産である国内株式や海外株式を持っていた場合、日経平均株価や NYダウなど株価指数が下がると、持ち株も大きく下落する可能性があります。

そこで、原資産から派生した新しい取引の仕組みである「デリバティブ取引」が導入されました。先物で日経平均株価の売りヘッジを行っていれば、保有株が下がっても損失を少なくすることができますし、レバレッジ取引で手持ちの資金以上の取引が可能になります。そうした利便性からデリバティブ取引は拡大の一途を辿っています。

デリバティブ取引の特徴

 

多くの局面で利益が狙える

原資産である株式などの一般的な金融商品への投資目的は、配当などを狙うインカムゲインもありますが、買いから入って値上がり益を狙うキャピタルゲインです。株式の場合、信用取引を利用すれば、売りからも入ることができますが、金利や逆日歩などのコストがかかります。

デリバティブ取引は、上げ相場、下げ相場、どちらも低コストで取引することができます。また、オプション取引を使えば、相場が動かない時でも利益を狙うことができます。つまり、デリバティブ取引を使えば、どんな相場環境でも利益を狙うことが可能だということです。

レバレッジ取引ができる

デリバティブは証拠金取引なので、原資産の取引金額よりも少額で済みます。このような取引を「レバレッジ取引」といいます。例えば、日経225先物取引ですと、一枚あたり約2千万円かかりますが、証拠金は約60万円前後(状況によって変わります)で取引できるので、約30倍近くのレバレッジをかけることができます。株式の信用取引では3倍程度ですので、10倍近く資金効率が良いということになります。

ただし、レバレッジ取引できるということは、大きな利益が狙われる反面、損失も大きくなるので、取引には十分な注意が必要です。

デリバティブの利用目的

デリバティブ取引の目的として、ヘッジングとスペキュレーションの二つがあります。

ヘッジング

株式や債券などの金融商品は、日々その価格が変動します。特に大きな資金を動かしている機関投資家は、資産の価値が下落してしまうかもしれないというリスクがあります。これをマーケットリスクと呼びます。

日経平均株価など市場全体が下がると、大きな損失を出す可能性があります。そういった時にデリバティブの一種である、日経平均先物で売りを入れておけば、リスクをヘッジすることができます。

マーケットリスクには以下の3つがあります。

  • 株式や債券などの価格変動リスク
  • 預金金利や債券利回りなどの金利変動リスク
  • 外国為替の変動による為替変動リスク

スペキュレーション

スペキュレーション取引とは、デリバティブ価格の値上がり、値下がりを見込んで取引を行い、利益を得ようとすることです。少ない金額で大きな取引ができるというレバレッジ取引の利用効率の高さが、スペキュレーション取引が活発に行われていることの大きさの原因となっています。

原資産が動いた時に利益が得られる先物は当然の事、原資産が動かなくても利益を得られるオプション取引など、様々な投資戦略を可能としています。

次に、デリバティブ取引の一種である、先物取引について詳しく見ていきましょう

先物取引とは

 

先物取引とは、将来の売買を約束する取引です。本日、対象の商品をあらかじめ決めていた価格で売買することを約束し、その日が来たら売買を実行します。

出典:金融広報中央委員会

先物取引は、本来の目的は株式などを現物で持っている投資家の価格変動リスクをなくすためのヘッジとして開発されました。しかし、少ない資金で多額の取引ができるレバレッジ取引ができることから、スペキュレーションが盛んになり、ハイリスク・ハイリターンの投機的な目的で使われることが多くなっています。

先物取引には、日経平均株価先物、TOPIX先物などの株価指数先物以外に、長期国債先物、ユーロ円3ヵ月金利先物、商品先物など様々な種類があります。

ここでは株価指数先物と現物の株式の違いを見ていきましょう。

先物取引は取引できる期限が決まっている

 

株式は 、その企業が倒産しない限り、永久に保有しておくことが可能です。これに対して、先物取引は取引の期限があります。例えば、日経平均先物の場合、3月、6月、9月、12月の第2金曜日が決済日です( SQといいます)。 先物取引は、期限内であればいつでも売買できますが、期限になれば自動的に決済されてしまいます。

先物取引は売りからスタートすることができる

先物取引は、価格が上昇すると考えた時は株式の現物取引と同様に「買い」から、反対に相場が下落すると考えたときは、「売り」から取引を始めることができます。売りでは予想通り相場が下落すれば、買い戻すことで利益を得ることが可能です。

先物取引は差金決済取引である

先物取引は、買付け(売付け)を行った時点の先物価格と、決済時点での先物価格の差額のみの受け受渡を行います。これを「差金決済」といいます。株式では現物の株券や代金を受渡しします。しかし、先物取引では売買により生じた損益のみの受渡しを行うのです。

先物取引には証拠金が必要

株式取引で100万円の株式を買う場合、100万円の資金が必要になります。これに対して、先物取引は証拠金といわれる担保を差し入れて取引を行います。少額で大きな取引ができることを、てこの原理をなぞらえて「レバレッジ効果」と呼びます。例えば、日経平均先物の場合は約30倍程度の取引ができます。証拠金 10万円前後で約300万円ぶんの先物取引が可能になります。

先物取引は銘柄選択が不要

株価指数の先物取引は、日経平均先物・TOPIX先物 ・JPX日経400先物・東証マザーズ先物など数種類しかありません。一方、現物株式の場合は、約4000銘柄が上場しているので、銘柄選択が大変です。また、株式取引では企業が倒産してしまうリスクがありますが、先物取引にはそういった信用リスクはありません。

それでは、先物取引の損益図を見てみましょう。

出典:金融広報中央委員会

先物とは受渡決済、すなわちあらかじめ決めた満期日に、決められた価格で原資産を受け渡しする取引のことでした。

先物の買い手は、満期日の市場価格が約束の価格より値上がりすれば利益がでます。逆に、市場価格の方が低いと損失が発生します。つまり、以下のようになります。

 

満期日の市場価格 >  価格約束の価格 → 利益

満期日の市場価格 < 約束の価格損失 → 損失

 

図では青の線が先物買い手の損益図です。約束の価格を上回っていれば利益がでています。右上あがりの損益図になることがわかります。

一方、先物の売り手は、満期日の市場価格が約束の価格より値さがりすれば利益がでます。逆に、市場価格の方が高いと損失が発生します。つまり、以下のようになります。

 

 

満期日の市場価格 <  価格約束の価格 → 利益

 

満期日の市場価格 > 約束の価格損失 → 損失

 

図では、緑の線が先物売り手の損益図です。約束の価格を下回っていれば利益がでています。右下がりの損益図になることがわかります。

例えば、日経平均先物の現在価格が20,000円。決済日の価格が25,000円だったとしましょう。

先物の買い手は

25,000円 – 20,000円=5,000円

5,000円の利益となります。

先物の売り手は

20,000円 – 25,000円=- 5,000円

 5,000円の損失となります。

以上のような先物取引は「スペキュレーション」です。

もう一つの「ヘッジング」についても見て行きましょう。

先物取引のヘッジング(ヘッジ)には、「買いヘッジ」と「売りヘッジ」の2種類があります。

将来ある商品を購入する予定があるものの、値段が上がってしまう恐れがある場合、先物取引の現在価格で買い付けを行います。先物取引で先に買い付けを行い、その商品の値上がりをヘッジするということが「買いヘッジ」です。商品の価格が値上がりしてしまっても、先物取引によって買い付けた金額で購入できます。

「売りヘッジ」とは、ある商品を購入している場合、今後値下がりしてしまう恐れがあるとします。そういったときに先物を売り立てて商品の値下がりリスクをヘッジする取引のことです。

ヘッジとは、あくまでも将来の不確実性を排除する取引のことです。値下がりを心配して売りヘッジを入れておいても、価格がそのまま上昇してしまったということも当然起こります。それでもヘッジによって大きな損失を避けることができる場合もあるので、買いだけという取引を行うよりも、はるかにリスクは少なくなるのです。

オプション取引とは

オプション取引とは、①「ある金融商品」を②「将来のある時点で」③「ある銘柄を」④「いくらで」⑤買う(コール)または売る(プット)権利を売買するデリバティブ取引です。権利には価値があり、市場で取引されます。

これだけだと分かりづらいので、具体例を見ていきましょう。今回は「コール」で損益を計算します。

 

2018年10月20日時点

日経225先物21,000円

①日経225オプション(ある金融商品)

②2018年12月(将来のある時点)

③権利行使価格22,000円(ある銘柄)

④500円(いくらで)

⑤コール(買う権利)

 

2018年12月の満期(第2週の金曜)時点で、22,000円でコール(買う権利)を500円という価格で売買します。500円の価格のことを「プレミアム」と呼びます。プレミアムを買う取引を「コールの買い」、プレミアムを売る取引を「コールの売り」といいます。

プレミアムは、日経225先物の価格で変動します。日経225先物では満期日のことを 「SQ」 といい、その決済月の第2金曜日がSQ日となっています。今回は2018年12月なので、12月の第2週がSQです。

オプションの決済方法は二つ

 

オプションの決済方法には次の二つがあります。

 

 

①満期日が来る前にオプション価格(プレミアム)を決済する。

②満期日に権利行使又は権利放棄する。

 

 

コールの買いでの損益をまずは見ていきましょう。

日経225先物が上昇すると、コールのプレミアムも上昇します。コールをプレミアム500円で買い付けた時点の日経225先物は21,000円でした。オプションの売買単位は、オプション価格の1,000倍のため、取引価格は

500円 × 1000=50万円になります。

日経225先物が21500円に上昇し、プレミアムが800円になったとします。価格が上昇しているので利益になっています。これを決済すると

(800 – 500)円× 1000=30万円

30万円の利益になりました。このように、満期日が来る前でもオプションの売買を行ったその日から、反対売買を行うことができます。

それでは、もうひとつの決済方法である、満期日における決済方法についてみてみましょう。

 

満期日(12月の第2週金曜日)に日経平均株価が 23,000円になっていたとします。今回のコールの買いの権利行使価格は22000円なので、その差額が利益となります。

23,000円 - 22,000円=1,000円

売買単位は1000倍なので

1,000 × 1,000=100万円

の利益になります。

ただし、オプションを買い付けた時に、50万円のプレミアムを払っているので、これを差し引いた金額が利益になります。つまり、

100万円 ― 50万円 = 50万円

最終的な利益は50万円になります。

逆に日経平均株価が下がり、 SQ における日経平均の価格が19,000円まで下落してしまったとしても、損失はプレミアム価格の50万円に限定されます。

コールの売り手の損益

コールの売り手とはコールの買い手の相手方になることです。 コールの買い手はプレミアム500円で買い付けを行っていましたが、コールの売りでは22000円の権利行使価格をプレミアム500円で売りを行っているということになります。ですから損益はコールの反対になります。

コールのプレミアムが500円から800円に上昇した場合、コールの売り手は500円で売っていて800円で買い戻すので

(500 – 800)円× 1000=-30万円

30万円の損失となります。

満期日で決済する場合も22000円で売っていた計算になるので

22,000円 - 23,000円=-1,000円

プレミアム500円はもらえるので

-1000 + 500 × 1000 = -50万円

50万円の損失となります。

このように、コールの売り手はコールの買い手の相手方なので、損益も正反対になります。

損益線のイメージを見てみましょう。

コールの買い

出典:楽天証券

コールの買いでは、「損失限定 + 利益無限大」となります。日経平均株価が上がれば上がるほど大大きな利益となります。

コールの売り

出典:楽天証券

 

コールの売りは「利益限定 + 損失無限大」となります。日経平均株価が上がれば上がるほど、損失が大きくなります。

オルタナティブ投資とは

オルタナティブとは「代替」という意味です。伝統的な金融商品である株式や債券の代替商品のことで、例えば商品先物・不動産・金融派生商品などを指します。

オルタナティブ投資を得意とするのがヘッジファンドといわれる投資家集団です。株式相場が上がっても下がっても、金運派生商品や商品先物取引・不動産などを利用して絶対的な収益(一定水準以上の利益)を目指します。ただし、こういった先物取引はレバレッジ効果があるので、相場を大きく動かす原因にもなっています。

オルタナティブ投資の本来の目的は分散投資によるリスクの軽減です。しかし代替商品として考えられていた先物取引が、相場自体の撹乱要因となっているのは皮肉なことです。

まとめ

今回はデリバティブ取引について見てきました。デリバティブ取引には、上げ相場でも下げ相場でも利益を狙える、レバレッジ取引ができる、などの特徴がありました。そして、デリバティブ取引には先物取引オプション取引の2種類があります。

本来はヘッジ目的としてデリバティブ取引は誕生しました。しかし現在では、現物市場の規模を超え、デリバティブ市場が相場を動かすことが多くなっています。デリバティブを実際に取引するかどうかは別として、値動きは必ずチェックするようにしましょう。

 

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