株の公募・売出しと立会外分売は儲かる?メリット・デメリットを詳しく解説!

株の公募売り出しと立会外分売は、企業が資金調達を行いたい場合や、大株主が株式を手放したい場合に利用されます。割引価格で買えることや、買付手数料が無料であることからお得な制度ですが、注意点もあります。この記事では、公募売出しと立会外分売、それぞれの仕組みと、メリット・デメリットを解説していきます。

公募・売出しとは

公募・売り出しは、PO(Public Offering パブリック・オファリング)とも呼ばれます。

「公募」は、上場している企業が設備投資などの資金調達を目的として、多数の投資家に対し、新たに発行する株式の申し込みを勧誘することです。

「売出し」は、上場している企業の大株主が保有している株式を、50人以上の投資家に対し売りつけの申し込み、もしくは株式の買付けの申込みを勧誘することをいいます。

公募と売出しの違い

つまり、公募は「新規の株」を発行して申込みを勧誘、売出しは「既存の株」の申込みを勧誘するという違いがあります。市場に流通する株式数が増えるということに変わりはないものの、公募増資では発行済株式数が増えます。

公募売出しの資金調達を見極めよう

公募売出しは、市場環境に影響を受けます。株式市場の環境が良い時は人気が高まり、株価は上昇しやすくなります。一方、株式市場の環境が悪い場合は、人気がなくなり公募割れのことも多くなります。需要と供給のバランスを見極めることが大切です。

また、公募売出しによって、その資金が何に使われるかを、しっかり調べるようにしましょう。設備投資などで業務拡大をするのか、それとも M & Aで買収した会社ののれん代償却か、大株主の保有株を売却したいのか。公募・増資と言っても行う理由は様々です。積極的な理由なのか、それとも消極的な理由なのかを見極めないと、損失を被る確率が高くなってしまいます。公募売り出しがプラスになる場合、マイナスになる場合をまとめてみます。

公募売出しがプラス材料になる場合

  • 株式市場の環境が良い場合
  • 公募売り出しによって集めた資金が、設備投資など前向きな理由で使われると投資家に判断された場合

公募売出がマイナス材料になる場合

  • 株式市場の環境が悪い時
  • 発行する株式数が多くなり、一株当たりの株主の価値が希薄化すると投資家に判断された場合
  • 公募増資が、借金の返済や大株主の売却などの目的で行われる場合

IPOとPOとの違いは?

IPOとはInitial Public Offeringの略で、「新規公開株」「新規上場株式」といいます 。つまり、企業が新たに証券市場に上場を果たすことです。 資金調達をして新たな設備投資や事業規模の拡大を目的として行われます。

IPO と PO の違いは、新規に上場する株式か、それとも既に上場している企業が、資金調達や株式売却のために行うかどうかということです。

IPO ではブックビルディング(需要調査)で購入希望価格を出しますが、POでは、ディスカウント率を提示します。

IPO( 新規公開株)は非常に人気が高く、公開価格が公募価格の数倍に値上がりすることも珍しくありません。そのため、IPO株を手に入れるのは難しくなります。一方、POは既存の上場している株式ですので、大きな利益を得ることは困難です。ただし 、PO は IPO に比べて株数を大きく得られるメリットがあります。次に公募売出しメリット・デメリットを見ていきましょう。

公募・売出しのメリット

 

まずは、公募・売り出しのメリットを見ていきましょう。

公募・売出しはディスカウント(割引)価格で購入できる

価格決定日の終値からディスカウント(割引)された株価で購入することができます。ディスカウント率は銘柄によって異なりますが、2~5%程度が一般的です。

公募売り出しは買付手数料が無料

公募・売出を申し込んで当選した結果、株式を購入する場合には、公募価格(売出し価格)のみの支払いとなり、買付手数料はかかりません(売却時には手数料が発生します)。

公募は株主数の拡大や株式流通量の増加、売出しは上場間もない企業などで、大株主である創業者やベンチャーキャピタルが、市場で売却すると価格に大きな影響を与えてしまうため、売り出しという方法をとることがよくあります。

公募売出しのデメリット

続いて公募売出しのデメリットを見ていきましょう。

公募には株式の希薄化懸念があります

公募増資は新規の株式を発行するので、発行済株式数が増えることを意味します。一株あたりの価値が薄まるので、売り材料となって株価が下落することがあります。

例えば PER(株価収益率)は、会社の利益と比べて現在の株価割安かどうかを見る指標です。

計算式は以下のようになります。

PER = 株価 ÷ EPS(一株当たり利益)

PER は、低ければ低いほど割安と判断されます。 純利益が1,500万円で発行済株式数が10万株だった場合、 EPS は

1,500万 ÷ 10万 = 150円になります。その時株価が1,500円だと PERは

1,500÷150 = 10倍になります。

公募で株数を5万株増やしたとすると、発行済株式数は15万株になります。この場合 、EPS は

1,500万÷15万=100円になります。株価が1,500円ですと、PERは

1,500÷100 = 15倍となり、PER は割高となってしまいます。ですから元のPER10倍に向けて株価が下がる懸念があるのです。

売出しは短期的な売り圧力がかかる

売出しは、公募と異なり発行済みの株が売り出されます。 これまで固定株として安定した株主に保有されていた株が浮動株として市場に流通することにより、短期目線では売り圧力がかかり株価が下がる傾向にあります。ただし、市場に出回る浮動株が 増えるということは、流動性が上がるということなので、長期的にはプラスの要因になります。

浮動株とは、発行されている株式の中で、大株主など安定した株主に保有されておらず、市場で流通する可能性の高い株式のことをいいます。つまり、一般の投資家が市場で売買する株式のことを指します。一方、大株主が保有していて、市場には流通しない株式を「特定株」もしくは「固定株」といいます。

また、受渡日の株価が公募・売り出し価格を上回るとは限らないので、損失のリスクがあります。通常公募・増資発表から公募価格の決定までは一週間程度の時間があるので、その間の下落リスクがあるのです。

このように、公募価格決定日から株券の受渡日までに時間があるので、その間の株価は需要悪化により、株価下落リスクがあります。そのため、「安定操作期間」というのが設けられています。

安定操作とは、公募や売り出しの際に、買い支えを行って価格の安定を図る取引のことです。通常の取引においては、こういった買い支えを行い、意図的に相場を操作することは禁止されています。しかし、株の募集や売り出しを円滑に行う目的で買い支えを行うことは、金融商品取引法においても「安定操作取引」として認められています。

ただし、安定操作はすべての銘柄で行われるわけではありません。また、安定操作が行われるのも受渡日の数日前ということもあります。安定操作が終わってから受け渡しまでの数日間で、株価が下落する可能性もあるので注意しましょう。

公募売出しの申込み方法

①公募・売出しおよび仮条件の発表

公募・売出しの募集及びディスカウント(割引)率が公表されます。

②ブックビルディング期間

ブックビルディング期間とは、需要・申し込み期間です。公表されたディスカウント率(2~5%程度)および目論見書を参考に、購入希望価格と株数を決定して、ブックビルディングに申し込みます。

③公募・売出価格の決定

ブックビルディング期間に申し込みされた需要状況を元に、募集価格が決定されます。

例えばディスカウント(割引)率が2.5%だった場合、2%で申し込んでおけば当選する可能性がありますが、3%以上だと当選することはできません。

④当選の連絡

需要が多い場合は、ディスカウント率より低い割引率でも抽選が行われます。そして 当選の連絡が証券会社から来ます。

⑤売出期間

当選の連絡が来たら、申し込みを購入申込期間内にしなければなりません。また買付代金は、購入申込期間の最終日までに支払う必要があります。

公募売出しの購入の流れを図で示すと、以下のようになります。

出典:岡三証券

PO(公募売出し)おすすめ証券会社

個人投資家の株式売買では圧倒的にシェアを占めているネット証券ですが、 PO に関してはまだ野村証券や大和証券など、対面中心の大手証券会社が幹事を引き受けることが多いので、割り当てが多い傾向にあります。対面中心の証券会社ではネット申し込みができない場合があるので、必ず確認するようにしましょう。おすすめ証券会社をご紹介します。

SBI 証券

ネット証券の中では比較的取り扱いが多く、2017年にはPOの申し込みが18社。全てネットで申し込み可能です。

SMBC 日興証券

大手証券なので、主幹事が多くあります。原則ネットで申し込みが可能です。

みずほ証券

大手証券なので、みずほ証券も主幹事が多くはあります。引受人であれば、ネット申し込み可能です 。

公募売出しでは、 千株単位で手に入れることができる銘柄もありますが、そのためには大手の対面証券会社がメインになります。そして、営業マンを通じての方が手に入れやすいです。ネットですと、どうしても抽選なので大きな株数を手にすることは困難です。ですから、 PO 株を多く手に入れたい投資家は、ネット証券ではなく対面証券で口座を開設するようにしましょう。続いて立会外分売について見ていきましょう。

立会外分売とは

立会外分売とは、立会時間外(取引所などの取引時間外)で大株主が自分の持ち株を割引価格で売りに出すことです。

立会外分売の目的として、主に次の三つがあります。

 

①株式の流動性を高める

②東証一部など上位市場への指定替えを狙っている

③ 売却による価格変動を抑える

 

それぞれ詳しく解説していきます。

①株式の流動性を高める

株式を割引価格で売り出すことで、多くの投資家に自社株を買ってもらうことができます。投資家が増えることによって、流動性も高めることができ、売買がいつでも可能で注文数量の多さが問題にならなくなります。

②東証一部など上位市場への指定替えを狙っている

ジャスダックやマザーズ市場から東証二部・東証一部への指定替え、もしくは東証二部から東証一部の指定替えにはそれぞれ株主数の基準があります。 例えば、東証二部市場に市場変更する場合は、株主数が800人以上。東証一部市場に市場変更する場合は、株主数が2,200人以上と決まっています。

立会外分売により株主数が増えれば、指定替えの要件が満たすことができます 。立会外分売を行う企業の中には、指定替えを目的としている企業もあり、2017年は約20%の企業が指定替を実施しています。

③売却による価格変動を抑える

大株主が株式を市場で売却すると、大きく株価が下落する恐れがあります。立会外分売であれば、市場外取引になるので、株価を大幅に下げることなく、株価の変動を最小限に抑えることができます。

立会外分売と PO (公募・売出し)の違い

立会外分売

 

PO より規模が小さい

申し込み期間が短く、前日の18時から翌日の8時頃まで

前日の終値から数%のディスカウント率

 

PO(公募・売出し)

 

立会外分売より規模が大きい

購入申し込みから実際の PO まで、一週間程度の時間がかかる

価格決定日の終値から数%のディスカウント率

 

立会外分売のスケジュールを見てみましょう

立会外分売の申込(SBI証券)

 

出典:SBI証券

例としてSBI証券を挙げました。注文受け終了時間や約定通知は証券会社ごとに異なるので確認するようにしましょう。それでは、立会外分売のメリットを見ていきます。

立会外分売のメリット

立会外分売のメリットは以下の三つです

  • 割引価格で購入できる
  • 買付手数料が無料
  • 利益が出る確率が高い

立会外分売は、前日の終値に比べて2~3%程度のディスカウント(割引)率で購入することができます。さらに、買付手数料は無料です(売却時は手数料がかかります)。割引価格は、立会外分売実施日の前日18時頃に発表されるので、割引率を見てから申し込みをするかどうかを決めることができます。さらに、申し込みの期限は朝の8時前後なので、NY市場が暴落している時は見送るなど、臨機応変に対応することができます。

そして,立会外分売は8時頃に購入した株を9時過ぎに売ることができるので、勝率が高い取引です。2017年度は132銘柄が立会外分売を実施し、108銘柄が含み益となりました(当日終値 ― 分売価格)。勝率は何と82%。ほとんどの銘柄で含み益が出ているという結果になりました。

また、指定外を狙っている銘柄も多いので、当日に売却しないでも長期で株を保有し、指定替を狙うという手法もあります。例えば、東証一部に指定替えされれば、TOPIXに連動したインデックス運用の買いが期待できます。短期間で売却するよりも利益は大きくなります。続いて、立会外分売のデメリットです。

立会外分売のデメリット

 

①抽選が行われ株数の上限が決まっている

②分売後に株価が下がる可能性がある

③大幅な利益は望めない

 

立会外分売では、購入希望者が多く、抽選になることがほとんどです。株数の上限も決まっています。当選しても200~300株ほどで、勝率は高いものの大きな利益は望めません。立会外分売を手に入れるためには、実施している複数の証券会社に申し込む必要があります。 銘柄によっては売りが多くなり、当日大きく下がってディスカウント価格を割り込むこともあります。 分売数量の多い銘柄や割引率が低い銘柄は慎重に判断して参加しましょう。そして、立会外分売価格を下回ったら損切りするなど、リスク管理の徹底も必要です。また、実際に立会外分売が行われるかどうかは、前日にならないと分かりません。18時以降に分売が行われるかどうか確認する必要があります。

立会外分売を取り扱っているおすすめネット証券

最後に立会外分売を取り扱っているおすすめの証券会社を4社ご紹介します。

SBI証券

アクティブプランで約定代金が10万円まで無料となるので、低位株の分配におすすめです。申し込み株数が多いほど分配配分も増える傾向にあります。

マネックス証券

100株単位で幅広く分配する傾向があるので、少額投資家や初心者の方におすすめです。

ライブスター証券

手数料が業界最安水準なのでおすすめです。 SBI 証券では10万円以下が手数料無料なのでお得ですが、株価が高い立会外分売に関してはライブスター証券もおすすめです。

松井証券

松井証券も、10万円まではボックスレートで手数料が無料になります。株価が安い立会外分売の銘柄はおすすめですまた配分も広く行われる傾向にあります。

立会外分売は一つの証券会社で複数単位をゲットすることは難しいので、多くの証券会社で申し込んで、100株ずつでも手に入れよう入れるようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。公募・売出や立会外分売は、割引価格で購入することができ、買付手数料も無料です。お得な制度ですが、必ずしも株価が上がるわけではないので、どれぐらいの配分があるのか、業績はどうなのかなどトータルで判断して申し込むようにしましょう。

 

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