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スルガショックとは
スマートデイズ社が運営していた「かぼちゃの馬車」の問題が発覚し、連日のように行われていた報道は落ち着きを見せてきました。しかし、かぼちゃの馬車問題をきっかけに、スルガ銀行の問題点が次々と上がっており、スルガ銀行の一連の問題が不動産市場に与えた影響を「スルガショック」という言葉で、目にする機会も少なくありません。
このような情報から「不動産投資は控えた方がいい?」「不動産市場に暗雲が掛かっている」と感じる方も少なくないでしょう。なので、この記事ではかぼちゃの馬車の関連の問題はもちろんですが、スルガ銀行の発覚した問題点、スルガショックがどのように不動産市場に影響を与えているのかを見ていきたいと思います。
まず、はじめに「かぼちゃの馬車に関連する問題」「スルガ銀行で発覚した問題点」についておさらいしていきます。
かぼちゃの馬車とは何だったのか
そもそものきっかけである「かぼちゃの馬車」や「スマートデイズ社」の概要についてご紹介していきたいと思います。
急成長したスマートデイズ
スマートデイズ社とは「かぼちゃの馬車」を運営していた会社です。スマートデイズ社を急成長させた存在が、かぼちゃの馬車であり窮地に追いやったのもかぼちゃの馬車です。そのため、スマートデイズを理解するには「かぼちゃの馬車」を理解する必要があると言えます。
そもそも、かぼちゃの馬車とは「女性専用のシェアハウス」です。スマートデイズは、そのかぼちゃの馬車を「30年間家賃保証・利回り8%」という好条件のサブリース契約を営業していました。
サブリースとは?
サブリースを行っている会社と「一括借上げ」の契約を結ぶ事で、一定の家賃保証を可能にできるもの。保証される家賃収入は満室想定時の家賃収入よりも低くなりますが、オーナーに家賃保証がされていること、管理を委託出来る事が出来るから、不動産経営の選択肢の一つとして用いられる事が多いです。
一方、サブリースを行っている会社は、保証している額と家賃収入の差額で利益を出すことが出来ます。
かぼちゃの馬車は投資家に魅力的に写り、スマートデイズは「2013年7月期に4億円」、「2017年3月期に300億円」という驚異的な成長を遂げることが出来たのです。しかし、2018年 4月に破産手続きが決定し、驚異的な早さで破綻してしまいました。
カボチャの馬車というシェアハウス
スマートデイズに大きな成長と破綻を齎したかぼちゃの馬車に、関連する不動産物件の実情は「脱法すれすれ」の物件だったと言えます。というのも、かぼちゃの馬車というシェアハウスに入居する借家人の専有面積は4畳~5畳ほどしかなく、一方の家賃は「月4万円」と同じような条件の一般的なワンルームとそれほど賃料は変化しません。
シェアハウスというのは、安い賃料と必要設備が揃っているのが借家人からのメリットであり、かぼちゃの馬車は賃料的な観点からそれほどメリットはありませんでした。ただ、光熱費や家具家電、インターネット等が無料で使えること、契約に際しての厳しい条件が少なくなかった事から「上京して間もない経済的に苦しい女性」をターゲットにしていました。
肝心の建物は、建築基準法スレスレの2畳~3畳という狭いスペースを貸し出す「脱法ハウス」と言われるような建築物に近い形の構図になっていました。しかし、投資家からの需要の高さからピーク時では「月に数十棟」という高ペースで建築されていたようです。
スマートデイズのビジネスモデルとは?
スマートデイズの運営する「かぼちゃの馬車」は、投資家に「長期間家賃収入・管理不要」という好条件で、営業されていました。一見、詐欺では?と疑ってしまいそうな条件に見えますし、経験豊富な投資家ならまずその実情を確かめる必要性があると判断するでしょう。
しかし、かぼちゃの馬車に投資していた方は、弁護士や医師など一般的に「リテラシーの高い」と考えられる職業が少なくありませんでした。では、なぜ投資家はかぼちゃの馬車に投資してしまったのでしょうか?その理由は「かぼちゃの馬車のビジネスモデル」にあったと言えます。
というのも、かぼちゃの馬車の主なターゲットは「経済的に苦しい女性」であり、そのような方達は「仕事に困っている」方が少なくありません。そこで、スマートデイズは人材派遣業も営み、入居者に職業を斡旋することで利益を出していました。
つまり、投資家にとって好条件なものであっても、十分に運営が出来ると考えられていたのです。ただ、実際はこの事業からスマートデイズが出していた利益は「数百万円」程度だったと言われており、スマートデイズを大きく成長させた収益のほんの一部に過ぎません。
本当に利益が出ていたのは「建築会社からのキックバック」だったのです。
キックバックとは?
かぼちゃの馬車問題においてのキックバックでは「建築会社」からコンサル料という名目で、紹介料を貰っていた事を指します。
一般的に、どの業界でもキックバックは存在し、もちろん法に背いていない限り悪いものではありません。しかし、スマートデイズのキックバックは「50%」とかなり高いものであったため、スマートデイズの大きな収益の柱になっていました。
表向きの説明では、職業斡旋による収益によってサブリースの保証を行えるというものでしたが、実情はキックバックによる収益が重要でした。また、かぼちゃの馬車の物件は「空室率」が異様に高かったこともあり、サブリースの保証を行うにはどう考えても、職業斡旋による収益では不十分でした。
つまり、かぼちゃの馬車がサブリースの家賃保証は「建築会社からのキックバック」によって成り立っていたのです。逆に言うと、シェアハウスを建築し続けない限りサブリースによる保証が難しいものであり、泳ぎ続けなければ沈んでしまう魚のような存在でした。
次々と発覚するスルガ銀行の問題点
不動産投資を行っている方、興味がある方なら周知の事実ですが、不動産投資では「金融機関からの融資」によって自己資金にレバレッジを掛けて運用する事が一般的です。つまり、金融機関からの融資が「不動産投資を行える・行えない」を左右するのです。
かぼちゃの馬車という投資対象に関しても例外ではなく、かぼちゃの馬車に投資している投資家の多くが金融機関からの融資を受けて、かぼちゃの馬車を運用していました。
シェアハウスを建て続けなければ、サブリース保証を行うことの出来ないスマートデイズとしては「出来るだけ金融機関に融資」をしてもらいたい状況です。そこで、最も積極的に融資を行っていた金融機関が「スルガ銀行」だったのです。
しかし、このような状況はもちろん長くは続きません。スマートデイズのかぼちゃの馬車に暗雲が出始めたのは、同じようなビジネスをしていた「サクトインベストメント」という企業が破綻した事でした。これが原因となり、スルガ銀行はシェアハウス関連の融資を抑える方向になりました。
ここで、強く影響を受けたのはスマートデイズです。スマートデイズは建て続けなければサブリース保証が出来ません。(キックバックの収益が重要だったため)キックバックを受けにくくなった事により、サブリースの家賃保証が滞り始めます。
もちろん、投資家は大損害です。ただ、サブリースの保証が減額・滞るという事は以前まで、メディアで取り上げられる事が少なく以前から問題として取り上げられていました。しかし、かぼちゃの馬車のオーナーはスマートデイズの大きなキックバックの影響で、建築費等が大きくなり通常の「140%~150%」以上の価格で購入していました。
そのため、投資した分を回収するには、通常の同じような物件よりも大きな収益が必要であり、投資家は通常よりも大きな損失で出てしまっているという状況になっています。
また、虚偽の申告による融資やスマートデイズとスルガ銀行の癒着なども取り上げられており、真意がはっきりしていないものも含めると「スマートデイズ」と「スルガ銀行」の両者から様々な不正が発覚しています。
スルガ銀行からのスマートデイズへの融資は「1,000億円」近くだと言われており、スルガ銀行は自己資本・総資産とも「3,000億円」以上あるので、直ぐに「スルガ銀行も破綻」という事態にはならないと見られています。しかし、株価の下落等を考えると多方面に影響を与えていくと言えるでしょう。
融資が激減してる?スルガショックと不動産市場
先程、スルガショックの発端となったシェアハウスの問題についてご紹介させて頂きましたが、不動産投資に興味がある方にとって気になるのは「不動産業界・市場にどのような影響を与えているのか?」という点だと思います。
実際に、その傾向は現れており特に不動産投資には欠かせない「融資」について大きな影響が出ており、少なからず不動産投資にも影響を与えています。
不動産投資を検討している方はしっかりとチェックしたいスルガショックが不動産市場に与えている影響についてご紹介していきます。
不動産向けの融資が減っている
シェアハウスをきっかけに、シェアハウス関連の融資に限らず様々な方面からスルガ銀行の不正が発覚した事については、連日メディアでも報道されていたのでここでは詳しく触れません。
ただ、不正が発覚した問題の一つに「不正な形での融資」がありました。この問題では、融資に際して必要な申告内容について虚偽の報告をしたり、通常では「融資できない人(特にサラリーマン)」に多額の融資を行っていたのです。
もちろん、この問題が発覚した後は不正が起きないようにと方針が固まったのですが、その影響により融資は以前の7分の1程度に落ちたと言われています。つまり、不正を行わなかったら、融資を行う事がかなり難しくなったという事です。
元々スルガ銀行は、不動産に関する融資を積極的に行っている事でも知られており、不動産投資を始めよう・興味があるという方の中に、融資を受ける金融機関の一つとして選択肢に入っていた方も少なくないでしょう。
その名残はリーマン・ショック後に始まりました。世界中の金融機関が低迷する中、スルガ銀行は元々企業向けの融資を中心的に手掛けていましたが、方針を一転させ個人向けの融資も多く扱ったのです。
ただ、個人への融資はリスクが高いと判断されるのが一般的ですし、日本の金融機関から個人が融資を受けるにはかなり大きなハードルがあった事も事実です。そのため、その中でも「担保」として不動産を用いる事が出来る不動産向けの融資を中心的に扱い始めました。
つまり、不動産投資なら担保として不動産を確保する事が可能ですし、個人でも融資を受けやすいというロジックです。また、スルガ銀行では「自己負担ゼロ」「頭金必要なし」という大きなメリットを提示し、個人が不動産投資を行う上でまず検討するのは「スルガ銀行」という存在になりました。
しかし、実際のところは「不正融資一兆円超え」と言われる程不正融資が横行しており、それに目をつけた不動産業者が不動産投資を一般的なサラリーマンに煽るという構図が出来上がっていました。
スルガ銀行の不動産向けの融資というのは大幅に削減されており、以前よりも融資を受けることが難しくなっているというのが現状です。
不動産市場に影響はあるのか?
やはり、気になるのは「不動産市場に影響はあるのか?」という点です。現状ではそれほど「影響は与えていない」というのが正解だと言えるでしょう。ただ、不動産業界には大きな影響を与えていると言えます。これまで抵当に入れる不動産の「50%以上」融資を受ける事が可能だったのが、徐々に引き下げ初められているようです。
ここから考えられるのは「不動産業界全体で資金繰りが悪くなる」というリスクです。不動産に投資する場合に、不動産の価格が大きい事から個人であろうが、企業であろうが一般的に融資は必須です。
しかし、融資の条件が厳しくなり思うように、金融機関からの資金を受けられない場合はその分資金繰りが悪くなり、不動産市場に大きな悪影響となる可能性も否めません。
もしも、現状の不動産市場・業界に不安を感じる場合は投資を避けたほうが良いでしょう。不動産投資はインカムゲインが収益の大きな割合を占めるため、不動産市場の先行きについて他の投資方法と比べたときに安易に考えてしまいがちです。
しかし、不動産市場というのは出口戦略を探る上で不可欠な要素なのです。不動産市場に、少しでも違和感を感じる場合は投資から離れるというのもありだと思います。
今、不動産投資に挑戦するべき?
先程、現状の不動産業界・市場などについてご紹介させて頂きました。既に、今不動産投資に挑戦すべきか?という点について触れていますが、この点についてもう少し詳しくご紹介したいと思います。
今買うべきか・待つべきか
不動産投資は、株式投資のように「市場で自由に売り買いする」というのが、実質的に難しいです。もちろん、買いたいときに・売りたいときに不動産業者を通して売買する事は可能ですが、他の資産と比較したときに流動性が低く、売買のハードルが高いと言えます。
そのため、不動産投資は長期投資を前提とした投資を行う必要性があり、その期間は数年~十数年と様々です。ただ、1つ確かなのは「いつ買うのか?」というのがかなり重要な投資対象だと言えるでしょう。
不動産ではインカムゲインを中心とした収益が期待出来ますが、注意したいのは出口戦略に失敗してしまいトータルで損をしてしまったというパターンです。つまり、インカムゲインが中心的な収益であっても「安い時に買って、高い時に売る」という投資の大原則は守らないといけません。
上記のデータを参考にすると「一年後に不動産価格はどうなるのか?」という質問に対して、下がると答えた人は2015年では「9.8%」に収まっていた下がるという予想が、スルガ銀行の問題が浮き彫りとなった2018年5月には「32.8%」になっています。
つまり、不動産価格が下落すると見ている人が多くなっていると言えるでしょう。下がると答えた理由の多くが「融資が厳しくなった」という要因が多数派であり、やはりここにもスルガショックの影響が出ているようです。
不動産投資にこれから投資をしようと考えている人は、このデータを見てしまうとガッカリしてしまうかもしれません。しかし、考え方を変えればこれから「安い時が来るかも知れない」という見方も出来るでしょう。
つまり、投資を成功させるための要素である「安い時に買って、高い時に売る」というのを、成功させやすい市場になっていく可能性があります。
もちろん、このデータのみを参考にせずこれからの日本の不動産市場等を考慮して投資を決定する必要性があります。ただ、人によってはこれまで上昇していた不動産価格が下落し、下がったところで購入という「チャンスが巡ってきた」というタイミングかもしれません。
どんなタイミングがベストだったのか?という点は、実際に後から振り返ってみないと分かりませんが、一見デメリットにも見える現在の不動産業界・市場はチャンスになる可能性があります。
まとめ
スルガショックについて
- カボチャの馬車はスマートデイズが運営していたシェアハウス
- 実際のビジネスモデルは、キックバックありきだった
- 融資を積極的に行っていたスルガ銀行とスマートデイズの間に癒着の疑いもある
現状の不動産市場・業界
- 不動産向けの融資は減っている
- 現状、不動産市場に大きな影響は見られていない
今不動産投資に挑戦すべきか?
- 人によってはチャンスになるかもしれない
今回は、スルガショックの概要やその影響、今不動産投資に挑戦するべきか?などについてご紹介させて頂きました。カボチャの馬車のオーナーは士業の方が多く、入居者がおらず借金の返済も大変な状況だが自己破産出来ないという状況があるようです。(自己破産してしまうと、欠格事由になる)
そのため、投資対象を損切りしたくても出来ないという状況が続いており、今なおカボチャの馬車問題によって苦しんでいる方も少なくありません。
どんな投資にも共通してい言えることですが、どんなに安全性が高いと感じる投資対象でもしっかりと「投資対象の実情」を調査しておきましょう。情報収集が、カボチャの馬車問題に巻き込まれないための対処法になると思います。