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企業に投資をするといえば、株式投資を思い浮かべてしまうもので、株式投資と言えば高リスクの投資方法となり敬遠する人も多いようです。
そんな中、気になる企業や好きな企業があって、投資をしてみたいと思いながら、もっとリスクを押さえて投資できる方法はないのかと考える人もいることでしょう。
リスクを抑えて企業に投資する方法に、社債というものがあります。社債は債券の1部ですが、一体どのようなものなのでしょうか。
今回はリスクを抑えた方法で、企業への投資が実現できる社債について詳しく解説していきたいと思います。企業への投資を、これまで興味がありつつも見送っていた人は是非参考にしてみて下さい。
社債とは
社債とは、企業が事業の運営資金を調達するために発行する債券のことです。
債券→国や企業が投資家たちからお金を借りるために発行する借用証明書のようなものです。10万円、100万円と具体的な額面が記載されてある証券を投資家が購入し、満期がくるとその額面が償還されます。債券を保有している期間は、投資家は利子を得ることができます。
債券のしくみ上、その他の投資に比べて安全性が高い投資方法になります。
社債は機関、団体、組合だけに限らず個人向けに少額から発行されているものもあり、各証券会社を通じて購入できます。私達一般の個人投資家が購入できる社債の種類は限られてしまいますが、その中からお気に入りの企業を探して、企業への投資を実現することができるのです。
株式のように、危険なリスクを負う必要がないのであれば、企業への投資に関心を持つ人は多いのではないでしょうか?企業を支援しながら利益を得ることができれば嬉しいですよね。
そこで、社債にはどんな種類があるのか、また、株式との違いや社債を購入するメリットやデメリットをまずは把握してから購入を検討していきましょう!
社債のしくみ
企業にとって、社債を誰かに10万円分購入してもらうということは、
という意味になります。
発行する企業から見ると、社債=負債(借入・借金)という定義になり、法律上にも借り入れた金額は返済しなければならないと決められているため、基本的に元本はほぼ保証されているので、安全性が高いのです。
投資家から見ると、社債を購入するということは、
という意味になります。投資家は、満期日まで社債を保有して金利を受け取り続けるか、もしくは、満期日前にその社債の価格が上昇した時に売却して、売却益を得ることもできます。
社債の種類
社債には様々な種類がありますので、いくつかご説明しておきます。
普通社債
普通社債とは最も一般的な社債で、満期日が設定されてあり投資家に対して利息(クーポン)が支払われるものです。原則として、信用度の高い企業ほど利息は高い傾向にあります。
転換社債
転換社債は基本的には普通社債と同じしくみになっていますが、特定の条件の基で、現金の代わりに「株式」にて償還される可能性のある社債のことです。
ワラント債
ワラント債とは、社債と株式をワンセットで購入することができる機能を持つ債券のことを言います。ワラント債は新株予約付き社債とも呼ばれているもので、最近では転換社債と同様に扱われる場合もあります。
劣後債
劣後債とは、返済順位の劣った債券のことを言います。企業が経営破綻に陥った時などに、返済の優先度が最後になる債券のことで、返済されないかもしれない可能性を秘めたリスクの高い債券になります。リスクが高い分、高金利を得ることができます。
電力債
電力債とは、大手電力会社が発行する社債のことで、電力会社が保有する発電所や送電線に対する担保が付与されたもので、万が一の場合でも安全度が高いものになります。
株式と社債の違い
企業が運営資金を調達する方法には2つあります。
1つが株式と発行することで、もう1つが債券を発行することです。社債と株式の大きな違いは償還される金額が決まっているかそうでないかです。
株式は→購入してからその後の価格がどうなるかは全くわからない→不安
リスクとリターン
また、株式には配当金がありますが、企業の業績次第では価格が変動したり、もらえなかったりすることもあります。社債の場合、保有している期間は高い金利が受け取れることは購入の時点で約束されてあります。
ただ、社債は安心できる投資法であるだけに、その分、株式のように大きく値上がりして売却益で、大きな利益を期待することは難しいといえます。しかし、それでも定期預金と比較するならば、やはり金利の差額は歴然としています。
株式→ハイリスク・ハイリターン
社債→ローリスク・ローリターン
というように、利益率でいくと・・・
定期預金<社債<株式
の順番になり、リスクの高さでいくと・・・
株式>社債>定期預金
というイメージです。リスクの面から考えても、安定した金利の高さから考えても、社債は投資の初心者でも取り組みやすい理想的な投資方法でもあるのです。
社債の格付けとは
初めての社債購入であれば、リスクを最小限に抑えるために、債券の格付けを参考にすることができます。それぞれの債券には信用度ランクというものが表示されています。信用度のランクが高いものを購入することでリスクを抑えることができるのです。
信用度ランクは、元本の償還力、利子の支払い能力などの債務履行能力が主な基準となります。
※債券の格付け表(Standard&Poors)
ランク | 信用度 |
AAA | 信用度は極めて高い |
AA | 信用度は非常に高い |
A | 信用度は高いが不安定になる可能性がある |
BBB | 信用度は高いがやや不安定な状態 |
BB | 信用度が低くやや不安定な状態 |
B | 債務不履行になる可能性を秘めている |
CCC | 債務不履行になる可能性が高い |
CC | 現在、破産申告中だが債務は行っている |
C | 現在、債務不履行な状態 |
この格付けは、社債の募集項目や概要、目論見書に記載されてあり、購入前に確認することができます。評価を行う機関によって、若干表記方法が異なり、アルファベットにマイナスやプラスが付いたり、小文字で表記されたりとあります。
基本的にAからCへと信用度が低くなっていきます。
社債のメリットとデメリット
それでは、社債を購入することのメリットとデメリットは何でしょうか。
社債のメリット
社債の一番の魅力は、株式のように高いリスクを負うことなく企業への投資が実現できるということです。投資をするということは、企業を支援していくことでもあり、そこが投資とギャンブルの大きな違いになります。
利益なくして投資を行うことは考えられないことですが、しかし、何かしら賛同できるものや応援したいものなくして投資とは成り立たないものでもあります。
また、何か世の中の為になることに対して、資金を使うことは、社会人としての健全な欲求でもあります。そのように世の中に役立つサービスや企業に対して大切なお金を投資するということは、社会人としての欲求を満たすことへも繋がります。
しかしながら、実際には、いきなり株式投資をするというのは無謀なことでもあり、そこで足踏みしてしまう人は多いと思います。そんな時に社債の存在を知ることで、何かに投資しておきたいという、自然な欲求を満たすことができるのです。
社債はそんな意味でも、その他の預金などでは味わうことのできない満足感を与えてくれるのです。
社債のデメリット
社債のデメリットとは、現時点では個人向けに発行されている社債の数が少ないということです。ですから、限られた数の中から好きな企業や気になる企業を探さなければなりません。
また、どこの証券会社がどこの社債を販売しているのか、また、どこの企業がどんな社債を発行しているのかという情報も入手しづらいというデメリットもあります。さらに購入金額が100万単位のものが多く、10万以下あるいは100円単位で購入できるものが少なくなります。
とくに人気のある企業の場合は、気がついた時には売り切れてしまったりということもあるでしょう。
また、現在市場に出回っている社債というのは、大手企業のものが多くなるので、企業の経営不振や倒産などはかなり低い確率にありますが、こればかりは油断は禁物で、万が一の場合は債務不履行になって償還されない可能性もあるということです。
大手で信用度の高い企業の社債を購入することで、安全性はその他の投資に比べて高いながらも、リスクもあるということを意識しておく必要があります。また、債券の種類によっては株式と連動したものなど、仕組みが複雑なものもあるので、よくわからないものは購入しない方がいいでしょう。
社債情報の確認方法
リスクやリターンのしくみ、メリットやデメリットを把握した上で、社債を購入することが大切です。
近鉄グループ、小田急電鉄、東武鉄道、丸紅、九州電力、東北電力、ソフトバンク、三井住友ファイナンシャル、イオンモール、三菱UFJなどがあります。
また、数年に1回社債を発行する企業もあり、住友不動産、ソニー、コナミ、NTTデータなどが以前社債の募集を行っています。
日本証券業協会のサイトでは、各社債のその他債券の発行状況が確認できます。どんな企業が社債を発行しているのかを参考に見ることができます。
上記のサイトから、個人向け社債等の店頭販売気配報告銘柄【PDF】をクリックすると現在の社債の発行状況が確認できます。2002年からの情報が記載されてありますので、ずっと下の方にスクロールして、最近のものを探して下さい。
一覧表の備考欄に廃止と書いてあるものは、すでに発行が廃止されているものです。空欄の社債を見つけたら、その社債名を検索して、現在の社債の状況を調べることができます。おおよその募集期間は約1週間くらいですが人気のある企業は即売り切れてしまいます。
他にも、債券投資のポートフォリオというサイトで各債券の発行状況を調べることができます。
また、直接、購入したい企業の公式HPを定期的にチェックする方法もあります。
公式HPの企業情報をクリック→投資家情報あるいはプレスリリースをクリック→社債情報の項目をクリックすると社債の発行状況の近況が確認できます。また、発行予定が近々あるかどうかも確認できます。
不定期に社債を発行するところが多いので、購入したい企業の社債情報を定期的にチェックする必要があります。
現在(2018年10月3日)募集中の社債をいくつかご紹介します。
トヨタモーターファイナンス
発行体:トヨタファイナンス
格付け:AA-
通貨:豪ドル
金利:2.33%
債券:固定利付債
利払い:年2回
償還日:2023年4月26日
額面:1,000米ドル
トヨタファイナンス・オーストラリアは自動車メーカートヨタ自動車の子会社として設立された会社です。この企業の社債は定期的に円、米ドル、豪ドルなどで発行されています。外貨建ての場合は為替差益と金利によって利益が狙えますが、円高の時に購入した方が安心でしょう。参考URL
モルガンスタンレー
発行体:モルガンスタンレー
格付け:A-
通貨:米ドル
債券:固定利付債
金利:4.35%
利払い:年2回
償還日:2026年9月4日
額面:1,000米ドル
モルガンスタンレーは金融業界で知らない人はいないとも言える超大手金融機関で、アメリカ、ニューヨークを本拠地として日本を始め世界中で幅広い分野に渡って活動している企業です。この社債もドル建てになっていますので、円高時に購入したいところですね。参考URL
三菱UFJリース株式会社
発行体:三菱UFJ
格付け:AA
債券:固定利付
償還日:2025年10月29日
金利:0.10%~0.05%
利払い:年2回
額面:100円=100円
購入単価:100万円単位
こちらは大手銀行、三菱UFJの関連会社で三菱UFJリース株式会社の社債になります。
10月15日~10月26日が募集期間となっていて、円建ての債券ですので、ご興味のある方は大和証券で購入することができます。参考URL
社債の購入方法
例えば・・・
上記で紹介した、三菱UFJリース株式会社の社債は大和証券が取り扱っています。大和証券のHPへ行って、オンラインで口座開設の手続きをして下さい。
最近では、ほとんどの証券会社の口座開設がオンライン上でして頂けますので、大変便利です。
証券口座開設に必要な書類は・・・
- 身分証明証
- マイナンバー
基本的にこの2つがあれば、簡単に口座を開設することができます。新規口座開設をする場合は、まずその証券会社の総合口座を作ることになります。
総合口座を開設後に、ログインして新たに債券取引口座をオプションとして開くことができます。証券会社の口座のしくみは、それぞれ取引内容に応じて、必要な口座を開設していくという流れになります。
社債のおすすめの証券会社
必ず、そこの証券会社で常に社債の販売があるというわけではありませんが、比較的、社債が入手しやすい証券会社をいくつかご紹介します。
それぞれの証券会社では、定期的にキャンペーンも行っていますので、条件のいいところを選んでもいいですよね。
まとめ
株式に興味があったけれど・・・
企業への投資に興味があったけれど・・・
投資を始めて、損失を出してしまうのはやはりちょっと怖いな、
などと、企業への投資に興味がありつつも見送っていた人は、是非、社債の購入をおすすめします。元本がほぼ保証されて金利で稼いでいく社債は、初心者でも取り組みやすい投資方法の1つです。
企業への投資を始めることで、その企業の商品やサービスに対しても、ただの消費者としてではなく、投資家としての目線で分析し始めるきっかけになります。
債券投資を通じて、企業に対する知識や関心が深まり、先々ではじっくりと株式の購入を検討していくこともできます。
経験がないながらも、企業への投資をまずは安心できる方法で実現してくれる社債は、きっとその金額がいくらであろうと、金利に対する喜びだけでなく、「あの大手企業の運営に役立っているのだ!」と嬉しさや満足感を与えてくれるでしょう。