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老後の生活を支える年金制度。
しかし、どうしても経済的に苦しくて、年金が払えない時もあります。奨学金とアルバイトでやっとやっと学校に通っている学生さんであれば、毎月10000円以上の出費は捻出が難しいものです。
では払えないままにしておくしかないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。
免除と納付猶予という制度があります。
ただ単に払わないと「未納」になってしまい、将来年金が受け取れなくなってしまいますが、この申請をして申請が通れば将来年金を受け取ることも可能になります。
今回は、免除と納付猶予、追納について詳しくご説明します。
年金の仕組み
免除と納付猶予についてご説明する前に、まずは基礎知識。年金の仕組みと受給できる条件について、ご説明しましょう。
年金の仕組み
公的年金の仕組みは、よく「三階建て」と言われます。
まず基礎になる1階部分の「国民基礎年金」があり、二階部分として国民年金の上乗せとして報酬比例の年金を支給する「厚生年金」「共済年金」があります。
さらに年金を増やしたいという方には、三階部分として任意加入の「国民年金基金」「確定拠出年金・確定給付企業年金」があります。
まとめると下記のようになります。
【公的年金】
一階部分
- 国民基礎年金:国民年金の加入者が給付される年金。自営業やフリーランスの人は任意で国民年金基金に加入することで、老齢年金に上乗せして給付される。
二階部分
- 厚生年金:厚生年金保険の加入者が、老齢基礎年金に上乗せして支給される年金。賃金報酬に比例した額が給付される。企業によっては、福利厚生の一環として厚生年金に上乗せする企業年金がある。
- 共済年金:国家公務員・地方公務員・私立学校教職員の各共済組合が給付する年金。職業によっては、職域加算が上乗せされる。
三階部分
- 国民年金基金:任意加入の私的年金の一つ。国民基礎年金に上乗せされて支給される年金。自営業やフリーランス(第1号被保険者)が加入対象となる。
- 確定拠出年金・確定給付企業年金:私的年金の一つ。国民基礎年金と厚生年金・共済年金に上乗せして支給される年金。確定拠出年金を実施していつ企業に勤める会社員(第2号被保険者)が加入対象となる。
図にすると下記のようになります。
参照:「働く」「暮らす」ナビ
このうち、一般的に「年金」と呼ばれるのは、国が管理・運用している「国民基礎年金」「厚生年金」「共済年金」となります。
被保険者の種類
原則20歳以上の国民は、職業によって第1号・第2号・第3号被保険者のいずれかの種類として、保険料を支払わなければなりません。
- 第1号被保険者…自営業者・学生など。
- 第2号被保険者…会社員・公務員など。
- 第3号被保険者…第2被保険者の被扶養者になっている専業主婦・主夫など。(パートなど働いている場合は、年収が130万までの方。)
また任意加入被保険者というものもあります。
これは、納付期間が短く年金受給要件に満たない方やより年金受給額を増やしたい方が利用できる制度で、任意で日本の年金制度に加入が可能です。具体的には、海外に移住している方や、60歳から65歳で年金受給開始まで間がある方などが対象となります。
※任意加入被保険者
- 任意加入被保険者に該当する人
- 日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人で、厚生年金や共済年金などを受給できる人、または国民年金に相当する外国の年金で一定のものを受給できる資格のある人
- 日本国内に住所がある60歳以上65歳未満の方
- 国籍が日本だが、日本国内に住所のない20歳から65歳未満の方
受給できる条件
さて公的年金である「国民基礎年金」と「厚生年金」ですが、加入してちょっとでも保険料を納付していれば、将来年金を受け取れるというものではありません。それぞれ受給要件が違ってきます。
また、国民年金基金の受給条件も2017年8月より変更になり、より多くの方が年金を受け取れるようになりましたので、もし受給資格に満たないからもらえない・・・とあきらめていた方も、一度チェックしてもましょう。
国民年金の受給要件
国民年金の受給条件は、「65歳以上で、10年以上年金に加入・納付していること(2018年9月現在)」です。
加入期間である20~60歳の40年間、すべて保険料を納付していれば満額の年間77万9300円を受け取れることになります。
※以前は加入要件の期間は25年でしたが、2017年8月1日より10年に短縮されました。
そのため今までは年金受給の対象になっていなかった方でも、年金を受給できるようになっています。
受給要件に不安がある方、受給できないとあきらめていた方でも受給できる可能性があるかもしれませんので、この機会にねんきん定期便など確認して問い合わせてみてはいかがでしょうか?
参照:日本年金機構
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000151856.pdf
厚生年金の受給要件
厚生年金の受給条件は、「1ヶ月以上、厚生年金に加入・納付していること(2018年9月現在)」です。
厚生年金は「加入期間」と「加入期間の平均給料」によって、支給金額が決まります。そのため加入期間が長く、平均給料が高いほど、余裕のある老後を送れることができます。
厚生年金は基本天引きですので、きちんと企業側が納付していれば、自分で納付せずとも延滞はありません。
年金の延滞とは?
延滞とは、第1号被保険者であるのに年金の保険料を未納にしている。つまり期限までに納められないことを言います。
もちろんですが、特に理由もなく延滞していれば督促の連絡が来てしまいます。
そうおっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、年金保険料の延滞・未納は将来の年金がもらえなくなる・額が少なくなってしまうだけでなく、もっと大きな影響があります。
例えば、病気や怪我をして障害が残ってしまった時に給付される障害者年金、不慮の事故などで亡くなった時に残された家族に支払われる遺族年金など。
これらの公的保険によるセーフティネットが利用できなくなってしまう可能性があります。
では年金の保険料を延滞したときにはどうなるのか、デメリットはどんなことがあるのかについて、詳しく説明していきます。
滞納処分の流れ
年金保険料を延滞していると、下記の流れで「払いなさい」と日本年金機構から通知がなされます。通知の回数が増えるほど、延滞金発生など処分が重くなっていきます。
最後のこの督促という状態になると保険料に延滞金が発生します。
納付できる経済状況でしたら、早めに納付するに越したことはないでしょう。
- 電話・自宅訪問・郵便物による保険料納付の催告通知の流れ
- 特別催告状の通知
- 最終催告状の通知
- 督促状の通知
- 滞納処分
※日本年金機構では、年金保険料の督促として直接現金を徴収したり、銀行口座番号・キャッシュカードの暗証番号を聞くなどは行わないとのこと。不審な電話や訪問があった場合は、すぐに現金を渡したり振り込みしたりせず、まずは年金事務所へお問い合わせください。
参照:日本年金機構HP 全国の相談・手続き窓口
http://www.nenkin.go.jp/section/soudan/index.html
参照:日本年金機構HP 「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165)
延滞によるデメリット
払いたくない・払えないと、年金保険料を延滞しているとどうなるのでしょうか?
国民年金を滞納すると、主に以下のデメリットが発生する可能性があります。
- 延滞金の発生
- 滞納処分
- 年金が受給できない
- 障害基礎年金が給付されない
- 遺族基礎年金が給付されない
延滞金の発生
まず、納付期限を過ぎても支払わなかった期間について、延滞金が発生します。
延滞金に掛けられる利率は期間によって違いますが、年2.6~14.6%です。
例えば、平成21年12月31日までの保険料16490円を1年間滞納した場合、
16490円×12ヶ月×14.6%≒28,890円
参照:日本年金機構HP 延滞金について
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyonushi/sonota/20141219-02.html
となります。
単純計算でも1年延滞で3万円近くの延滞金として払わなければならなくなるのです。
滞納処分
経済的に支払える状態なのに、督促状も無視し指定された期限までに支払いを行なわなかった場合には、税金を払わなかったときと同じように延滞処分が下されます。
税金を滞納した時は、預金口座に入っているお金や土地などの財産を差し押さえられますが、年金の場合も同様に財産が差し押さえられます。
財産の差し押さえを免れるためには、滞納分を支払う必要があります。もし滞納分が支払えないということであれば、差し押さえが実行されてしまいます。
年金が受給できない
国民年金保険料を滞納することで発生するリスクは、先に述べた延滞金の発生や財産の差し押さえだけではありません。当たり前ですが将来受け取る年金や、万が一の時の公的なセーフティネットに影響してきます。
国民年金の受給資格は原則、「納付済期間と保険料免除期間または合算対象期間を合わせて10年以上ある方」となっています。
たとえば5年間だけ国民年金保険料を納付しても、年金を受け取ることはできません。
また国民年金保険料は10年以上あれば受給資格がありますが、40年納付している人と10年納付した人の受給額には差が生じます。つまり、納付金額が少ないと受給額はその分少なくなる仕組みになっています。
そのため、年金が受け取れない・受け取れたとしても額が少ないということになってしまうのです。万が一病気怪我をした時に受け取れる障害年金・遺族基礎年金も、受け取れなくなってしまいます。
障害基礎年金が給付されない
大きな事故や病気などの影響で何かしらの障害が発生した時には、障害基礎年金が給付されます。
しかし先にもご説明したとおり、年金の未納により受給条件を満たすことができないと、障害基礎年金が給付されません。
遺族基礎年金が給付されない
遺族基礎年金とは、年金加入者が万が一なくなってしまった場合に遺族に支払われる公的年金です。
こちらも国民年金保険料の未納により受給条件を満たすことができないと、遺族が遺族基礎年金を受け取ることができません。
免除・納付猶予について
経済的に年金保険料を支払うのが苦しい、学生のため収入がなく納付できないなどの理由がある方には、免除や納付猶予などの制度があります。
ただ支払わないままでは年金の受け取りに支障が生じますが、免除や納付の手続きをしておけば納付を免除してもらえたり、収入があるようになるまで納付を待ってもらえたりします。
これらのメリットは、免除していた期間も受給期間の納付期間としてカウントされることや、支払ができなくとも申請している間は延滞処分を受けないということがあります。
免除とは
免除とは、収入が少ない等払い込めない、正当な理由がある場合にのみ、保険料を「免除」してもらう制度です。
対象者や必要となる手続きは下記のとおりです。
- 対象者:第1号被保険者
- 手続き:免除申請が必要
- 注意点:保険料を払わない分、もらえる金額も減額される
免除のメリット
年金をもらう条件は、10年以上保険料を納付していること。滞納している場合は当然この期間にカウントされませんが、免除申請を出している場合はその期間もカウントされます。そのため払えない期間があっても、年金をもらえる要件を満たすことができます。金額は少なくなりますが、全くもらえなくなるという事態を回避することができます。
ちなみに、免除の割合と受け取れる金額の目安は下記のようになります。
※免除の割合と受給金額
- 全額免除 3分の1の年金額
- 保険料の4分の3免除 2分の1の年金額
- 保険料の半額免除 3分の2の年金額
- 保険料の4分の1免除 6分の5の年金額
参照:日本年金機構HP
http://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
学生納付猶予とは?
学生などに対して、年金の納付を待ってもらう制度のことです。免除と違うところは、学生納付猶予制度は納付を免除されたわけではないので、必ず支払いはしなければなりません。
また、納付を待ってもらった分、その後保険料を支払う際に利子が付きます。たまに免除と勘違いする人がますので注意しましょう。
対象者や必要となる手続きは下記のとおりです。
- 対象者:第1号被保険者で、大学生のほか、一部専門学校や夜間部の大学生など
- 手続き:免除申請が必要
- 注意点:免除されるわけではないので、追加納税が必要
※30歳未満の方で、学生ではない方には「保険料納付猶予制度」があります。
納付猶予のメリット
納付猶予を申請してのちに追納すれば、受給要件の10年の期間にカウントされますので、年金をもらえなくなるリスクが軽減されます。
また免除と違い、後で納付する追納という制度を利用すれば受給金額が減額されることはありません。
もし保険料が払えないときにも、受給要件の10年にカウントされるほか、万が一、死亡・障害が残った場合も、遺族年金や障害年金がもらえるようになります。
参照:日本年金機構HP
http://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150514.html
年金未払いの期間がある場合は?
追納制度を利用する
様々な理由でこれまで年金保険料を払えなかった期間がある方もいると思います。確かに、年金は10年に1ヶ月でも足りなければ、年金は1円も受け取れません、
しかし、「じゃあ自分はこれから毎月年金を払っても60歳までには間に合わないから、もらえる金額はゼロなの!」と思うのはまだ早いです。対策方法はありますので、まだ間に合う人は実践してみましょう。
まず加入期間をチェック
国民年金の受給要件となる加入期間は、下記のようになります。
まずチェックすべきなのは、途中から第3被保険者、専業主婦になった方です。いわゆる「宙に浮いた年金記録」がないかどうか、ねんきん定期便をチェックしましょう。
次にチェックすべきなのは、「カラ期間(合算対象期間)」です。これは、ある時期海外に居住しており、年金を払っていなかった期間など、「受給資格期間にはカウントできるが、年金額には反映されない期間」がある方が対象になります。
このほかにも、対象となる場合がりますので、年金事務所に行って確認してみましょう。
それでも足りなかった場合の対策法
もし、これらの期間をチェックしても、10年に満たない場合は下記の対策法を試してみましょう。任意の国民年金に加入したり、高齢者雇用を利用して65歳まで働くことで、足りない期間をカバーする方法があります。
- 滞納期間があれば保険料を納める:直近2年の間に滞納期間があれば、追納ができます。
- 国民年金に任意加入する:国民年金の加入は基本的には60歳までとなっていますが、60歳時点で納付期間が25年に達していない場合には、最長70歳まで「任意加入」することができます。
- 厚生年金に加入する:60歳以降も会社員として働き続けられれば、70歳まで厚生年金に加入できます
まとめ
いかがでしたでしょうか?
年金保険料を払いたくない、払えないという方もいらっしゃいますでしょうが、年金の未納は将来や万が一のリスク対策に大きな影響が出ます。
とはいえ、支払が難しい場合にはそのための免除や納付猶予などの制度がありますので、そういった制度を有効に活用しましょう。
また、今まで支払えなかった時期がある、海外にいて支払忘れてしまった時があるという方は、追納制度を活用して将来の備えをするのもいいかもしれません。
お近くの年金事務所や年金相談センターに相談してみると、年金にかかわる様々な制度の紹介や対応を一緒に考えてくれますので、年金の支払いで悩んでいる方は一度行ってみてはいかがでしょうか?