相続税は他人ごとではない!有効な「生前贈与」のやり方を徹底解説

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相続税。このキーワードを聞いて思い浮かべることは何でしょうか。相続税なんて一部のお金持ちが払うものでしょう。私には関係ない!と思っている人が大半ではないでしょうか。

しかし!2015年に相続税の基礎控除が一気に4割も下がりました。相続税を支払う人は今までの2倍から場所によっては4倍に膨れ上がると言われています。

せっかく築いてきた大切な資産。極力税金を取られずに引き継いでいきたいですよね。脱税は絶対ダメです。しかし節税は必要なことです。しかし相続税の節税で出来ることって何だろうと思われる方がほとんどだと思います。

相続税の節税に有効な方法はずばり生前贈与です。ここでは相続税の節税に有効な生前贈与のやり方について詳しく説明していきます。

相続税の実態について

何故相続税は必要なのか

まず、相続税とは何かについて詳しく説明していきます。相続税とは、亡くなった人の資産に対してかかる税金のことを言います。相続税が必要な理由は2点あります。

  • 富の再分配で資産格差をなくす。
  • 所得還元で取り損ねた税金を徴収するため。

の2点が挙げられます。富の再分配で資産格差をなくす。とは相続税がないと一部の人に資産が集中してしまい、いつまでも資産格差が縮まらないということがあります。

資産格差が縮まらないと、お金持ちの家に生まれた人は、一生働かなくても生きていけるようになってしまう可能性があるため社会全体に不公平感が出てしまうのです。

相続税は、このような不平等を防ぐために、相続税を支払うことで特定の人物のみに財産が集中するのを防ぎ、資産格差のない社会にしていこうという狙いがあります。

2点目の、所得還元で取り損ねた税金を徴収するとは、被相続人(相続の対象者)が存命の時に取れなかった税金を、相続人(資産を引き継ぐ人)にから相続税として徴収しようという考え方です。

例えば、被相続人が価値の高い土地を保有していたとします。その土地にマンションを建てれば、不動産所得が発生するので、所得税として課税出来ます。しかし被相続人はマンションにせず自宅として住んでいた場合は所得税は当然徴収出来ません。

このような場合に、相続税は、本来取れていたはずの不動産所得の所得税を補って徴収するという機能を持っているのです。相続人からすればまったくもって納得出来る話ではないと思います。

しかし、相続税は地代などの不労所得を是正する目的があるので仕方がないと言えば仕方がないのです。

相続税の税率・基礎控除について

相続税の税率はいくらくらいなのでしょうか。国税庁のホームぺージを見てみると、最大55%の税率がかかるとなっています。所得税や法人税に比べてかなり高い税率です。やはり先ほど述べたような理由で国民からも理解の得やすい税金なのが大きな理由になっているのだと思います。

 

続いて相続税の基礎控除ですが2014年までは、5,000万円+1,000万円×法定相続人の数でしたが、2015年の改正で3,000万円+600万円×法定相続人の数に変更になりました。4割の削減になりますので国は相続税を取りに行く姿勢をしっかり表していると言えます。

今までは相続税を払っている人は全体の4%に過ぎませんでしたが、基礎控除の改正で、10%近くになると言われています。地価の高い東京では、相続税を払う人が15%を超えるのではないかとの試算もあります。

相続税は増税の方向にありますが、何か節税の対策はないのでしょうか。皆さん、安心してください。あります!それが次章で説明する贈与です。

贈与について

贈与とは、その名の通り、お金などの資産を他人にあげることを言います。何故、贈与が相続税の節税になるのでしょうか、贈与は年間110万円までは非課税になっています。

また110万円をたくさんの子供や孫にあげても、一人当たりの金額が110万円をこえなければ税金はかからないのです。

これをうまく活用すれば、年数をかけて多くの子供、孫に贈与していけば一族の中で、資産の移転を非課税で行うことが出来るのです。

ポピュラーかつ簡単な相続対策であり効果的な生前贈与ですが正しい方法で行わないと相続発生時に相続税を払わないといけないケースが増えています。正しい生前贈与の手順に関して説明します。。

贈与契約晝を作成する


贈与が成立するためには贈与者(あげる人),受贈者(もらう人)双方の認識が必要です。口頭の約束だけでは、後々客観的に贈与者、受贈者、双方の認識があったかどうか立証出来ません。

後々、贈与者、受贈者どちらにも贈与の認識があったことを証明するために、贈与契約書という書面を作り、贈与者、受贈者双方が保存するようにしましょう。

贈与契約書というと、難しそうに聞こえますが、「いつ、だれから、だれに、いくらあげた。」が書かれていれば良いのです。

贈与税の申告·納税をする。

赠与税の指摘事項はおよそ8割が無申告事案に対するものです。申告が必要だとは知らなかったというケースが多いのですが、知らなかったで許されません。

しっかり110万円の贈与税の非課税枠以上に贈与した場合は申告をしっかりしましょう。

受贈者(もらった人)が通帳·印鑑を管理し、受贈者本人が受け取った資金を使う(未成年の場合、成年するまで親権者が代理で管理)

贈与を受けた場合、その財産を使う権利は、当然、受贈者にあるはずです。財産を自由に使う権利のことを、財産処分権と言います。この財産処分権がしっかり受贈者に移っている必要があります。

具体的には、受贈者にいつでも贈与を受けた財産を自由に使える環境があるかどうかです。受贈者が贈与を受けた財産の通帳や印鑑を管理していることが大切です。

往々にして、受贈者である子や孫に無駄遣いをされたくないため、贈与者である祖父母や父母が通帳や印鑑を管理していることが多いのですが、これでは贈与者に財産処分権があるので贈与者の名義預金とみなされてしまい贈与が否定されてしまうケースが増えています。

財産処分権が明確に受贈者に移っていることを証明するため、通帳や印鑑は受贈者に管理させることが、重要です。

 

以上3点を守らないと贈与が認められない可能性が高いです。

また贈与には110万円の非課税枠だけでなく、教育資金や結婚資金の特別な贈与や相続税非課税制度と言われる2,500万円まで一括で贈与出来る方法もあります。次章より様々な贈与の方法についてまとめていきます。

保険を活用した生前贈与について

先ほど、110万円の非課税枠を使った生前贈与について説明しました。これを有効活用すれば多くの資産の移転を一族内で図れます。しかしせっかく生前贈与するのであれば、さらに有効活用したくないですか?

この章では、生命保険を活用した生前贈与の方法について説明していきます。具体的には年払いの平準払い保険を活用します。まずは契約形態を見てください。

  • 契約者   : 受贈者(お金をもらう人)
  • 被保険者  : 贈与者(お金を渡す人)
  • 保険金受取人: 受贈者(お金をもらう人)

以上のような契約形態で保険を組みます。この保険形態にすることによるメリットは、

  • 贈与者(一般的に親)からすると受贈者(一般的には子供)に多額のお金を贈与するので無駄遣いが心配になります。しかしこの契約形態で保険にすると、贈与資金を保険料に充てることになるので無駄遣いがなくなります。
  • 贈与者に万が一のことがあっても贈与者が被保険者の保険になっているので、死亡保険金で納税資金を確保することが可能になります
  • 贈与を受けたお金をまったく使わないと、贈与者の名義預金とみなされる可能性がありますが、保険料という形で受贈者の意志で使用しているため名義預金の疑義がかからないです。

以上がメリットになります。

デメリットは

  • 保険料の払い込み期間が一般的には10年以上になることです。原則10年は贈与をしないといけなくなります。 赠与者の経済事情が変わっていると払い込みが厳しくなるかもしれません。
  • 贈与者が、被保険者になるため、贈与者の年齢が非常に重要になります。あまりにも贈与者の年齢が高いと保険金が低くなったり、健康状態によっては保険に加入出来ない可能性があります。

になります。生前贈与に付加価値を付ける方法として、保険会社や銀行ではよく提案しているスキームになります。

相続時精算課税制度について

相続時精算課税制度とは、制度の申告をすれば2,500万円までの資産を、贈与した時点では、非課税になり、贈与した人が亡くなった時に、この制度を利用して渡した資産を相続税に組み込むといった仕組みです。

分かりづらいので例を出して解説します。例えば、総資産7,500万円保有している父親が息子に2,500万円相続時精算課税制度を利用して生前贈与します。この時点で贈与税はかかりません。

父親が亡くなった時、父親が保有している5,000万円に、予め相続時精算課税制度を利用して生前贈与した2,500万円が加算されて相続税が計算されます。

??これでは全く節税にならない!と思った人もいるでしょう。しかしこの相続時精算課税制度も使い方によっては大きなメリットがあります。相続時精算課税制度のメリット、デメリットについてまとめていきます、

相続時精算課税制度のメリット

 

  1. 相続税を算定する際の価格は贈与した時点での価格。つまり株などを贈与して相続の時に値上がりしていても、贈与時点の2,500万円で計算してくれること。
  2. 相続税のほうが、贈与税より税率が低いこと。国税庁ホームページ参照https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
  3. 生前に贈与出来るので、相続時に渡すより有効活用してもらえる可能性がある。

1ですが、これは主に自社株やストックオプションなど、贈与する時点より、年数が経つにつれて上昇する可能性が高いものが資産の中にある場合は相続時精算課税制度を使ったほうがメリットは大きいです。

2ですが、これは単純でまとめてどうしても贈与したいときには相続税のほうが贈与税より税率が低いので有利になります。

3ですが、これは時と場合に寄りますが、若い人に早めに贈与出来れば家を買ったり有効活用される可能性があるということです。

以上が相続時精算課税制度のメリットになります。

相続時精算課税制度のデメリット

 

  1. 相続時精算課税制度と暦年贈与の併用は不可
  2. 贈与時より相続時に価格が下がっても贈与時の価格が適用される

1ですが、これは大きなデメリットだと思います。相続時精算課税制度と暦年贈与の併用は出来ません。一度選択すると変更は出来ないのでよく注意して選択してください。

以上が相続時精算課税制度のメリット、デメリットになります。

教育資金贈与、結婚資金贈与について

教育資金贈与について

教育資金贈与とは、2013年4月に登場した教育資金の一括贈与にかかる非課税制度になります。祖父母や父母などの直系尊属から30歳未満の子や孫に1,500万円までの贈与は非課税になる制度です。銀行での申し込みが必要になります。

私が、都市銀行に勤めていた時はまさにこの商品が始まった時だったのですごく人気があったことを思い出します。富裕層のお客様は何人もの孫にこの制度を使って贈与をしていたことを思い出します。最大20人の孫に1,500万円づつ贈与している方もいました。

教育資金贈与を使っても、暦年贈与や相続時精算課税制度は使えるのでメリットは大きい商品だとは思います。しかし一見するとメリットばかりの制度に見えますはいくつかデメリットもあります。教育資金贈与のメリット、デメリットについてまとめていきます。

教育資金贈与のメリット

 

  1. 1,500万円という大きな資金を一括贈与出来ること
  2. 暦年贈与とは別に利用が可能
  3. 使途が教育関係に限定されるので無駄遣いされる恐れがない
  4. 贈与者が教育資金を使い切る前に亡くなっても非課税になる

まず1ですが、1,500万円という大きな資金を贈与出来るのはこの制度と相続時精算課税制度くらいだと思います。しかし相続時精算課税制度は、相続税がかかることを考えると教育資金贈与はかなり大きな資金を非課税で贈与出来るメリットのある商品です。

続いて2ですが、相続対策をする中で、暦年贈与を行わない選択はなかなかないはずなので暦年贈与と併用が出来る教育資金贈与のメリットは大きいと思います。

続いて3ですが、贈与する側は、受贈者の資金の使途を気にするものです。教育資金贈与は、資金使途が教育に限られているので贈与者から見ると安心感が強いと思います。

最後に4ですが、これは大きなメリットだと思います。教育資金は都度贈与しても非課税ですが、教育資金贈与を使って一括で贈与しておけば、教育資金を使い切る前に贈与者が亡くなってもその資金は非課税になります・

教育資金贈与のデメリット

 

  1. 手続きが煩雑
  2. 教育資金は都度贈与すればもともと非課税

1ですが、元銀行員の立場から見ると贈与者の事務手続きは大変です。毎年年度末には教育資金に使った領収書を契約した銀行に提出しなければなりません。また口座からの出金は簡単に出来るのですが、教育関係の出金のみ非課税となるため領収書のない資金は課税されてしまいます。出金したお金は入金出来ないのでしっかり資金管理をする必要があります。

2ですが、教育資金は都度贈与すればもともと非課税になります。学校の入学金や授業料など都度贈与してすぐに入学金などに充てればまったく問題ありません。都度贈与すれば非課税の物に手間暇かけるデメリットはあると思います。

以上が教育資金贈与のメリット、デメリットになります。

結婚・子育て資金贈与

教育資金贈与と似ている制度です。結婚資金に関しては300万円まで、結婚と子育て資金に関しては1,000万円までは非課税になる仕組みです。対象は20歳から49歳までの子供、孫が該当します。

こちらも一見良い商品に見えますが、大きな欠点があります。それは、贈与者が、途中でなくなった場合は残りの資金に相続税が課さられることです。

また、結婚資金、子育て資金は都度贈与しても非課税のためまとまって贈与する意味は、贈与者が途中で亡くなった場合ないかもしれません。

まとめ

相続税の対策として様々な贈与の方法について説明してきました。暦年贈与が基本になるかとは思いますが、相続時精算課税制度も上昇する可能性の高い自社株などを贈与したい場合には有効です。

暦年贈与はかなりポピュラーな方法ですが、贈与契約書の作成や、贈与税の申告、受贈者に財産処分権を移すことなどのポイントがあります。

暦年贈与はただ単に、非課税枠の110万円を贈与するよりも、平準払い終身保険の仕組みを使って贈与した方が有効です。

その他、教育資金贈与や結婚資金贈与も子供や孫などの家族関係や相続税の金額によっては検討すべき方法の一つだと思います。

贈与は若いうちからしっかり計画的に行うことが必要です。今後、相続税は上がることがあっても下がることはなかなか考えにくい税金です。

相続税の対策は、ローンを組むことや養子縁組することなどいろいろありますが、時間もかかりますしかなり大掛かりな対応が必要になるものが多いです。

贈与は比較的簡単に出来る対策です。しっかり対策をして、来るべき相続に備えてください。

 

 

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