米中株式市場比較!~日経平均株価に影響を及ぼすのはどっち?

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日経平均株価は225銘柄の集まりなので当然、個別銘柄の動向に影響を受けます。しかしNYダウや上海総合指数など海外指数にも影響を受けます。実際それらの指数と日経平均株価はどの程度値動きに相関があるのか、またどの程度の影響を与えているのかを調べてみました。またTOPIXやマザーズ指数など他の国内指数とS&P500やナスダックなどその他の米国指数との連動性はどうなのかを合わせて検証していきます。

 

日経平均株価とNYダウの比較

 

日経平均株価

日本の株式市場を代表する株式指数で日経225とも呼ばれ、東京証券取引所市場第一部に上場する約2000銘柄の株式の内、225銘柄を対象とした株価指数です。日本経済新聞社が知的財産権を保有し、2017年7月18日から5秒間隔で算出されています。現在、指数算出の対象となる225銘柄については、業種のバランスを考慮しながら定期的な見直しが行われています。

 

NYダウ

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P Dow Jones Indices)がアメリカのさまざまな業種の代表銘柄30銘柄を算出し、平均株価をリアルタイム公表するアメリカの代表的な株価指数です。その銘柄入替は、算出会社とウォール・ストリート・ジャーナルの代表者から編成される指数委員会によって行われています。

 

両指数ともに日米を代表する指数です。日経平均株価と米国株式指数を比較するときはNYダウが一般的なので、両者を比較してみます。

 

NYダウ日経平均比較(10年)

 

出典 SBI証券

NYダウと日経平均の相関性

 

相関係数とは

相関係数とは、2種類の指数(ここでは日経平均株価とNYダウ)の関係性の強さを −1 から+1 の間の値で表した数のことです。相関係数は一般的に、+1 に近ければ近いほど「強い正の相関がある」、−1 に近ければ近いほど「強い負の相関がある」、0 に近ければ近いほど「ほとんど相関がない」と判断します。つまり+1なら同じ値動き、-1ならまったく逆の値動きになるということです。

 

相関係数の値 相関係数の強弱
0.7~1 強い正の相関あり
0.4~0.7 正の相関あり
0.2~0.4 弱い正の相関あり
-0.2~0.2 ほぼ関係ない
-0.4~-0.2 弱い負の相関あり
-0.7~-0.4 負の相関あり
-1~-0.7 強い負の相関あり

NYダウ日経平均比較(2年)

出典 SBI証券

 

2016年9月から今年の8月まで週足ベースでの相関を調べてみたところ、相関係数は0.96となり、かなり強い正の相関があることがわかりました。

NYダウと日経平均株価は両者ともに指数先物が上場しています。NYダウ先物はCMEでほぼ24時間、日経平均も日経225先物が8:45~15:15 16:30~翌5:30と長い時間取引されているので、NYダウ先物が動けば、リアルタイムで日経225先物にも影響を与えます。

主導権はやはりNYダウにあります。NYダウが上がれば日経平均も上がり、NYダウが下がれば日経平均は下がる傾向にあるということです。

 

 

NYダウがなぜ日経平均株価の値動きに影響を与えるのか

米国経済の動向は日本企業に影響が大きい

米国経済は世界経済の中心です。日本の貿易相手として以前ほどではありませんが、アメリカが最大の輸出相手国となっています(2位は中国)。多くの日本企業はアメリカでビジネスを行っています。ですから、米国経済の動向は日本企業の業績にも大きな影響を与えるのです。

 

日本株式市場の売買代金の6割を外国人投資家が占める

 

出典 日本経済新聞

日本の上場企業の株主は、ほとんどが国内の金融機関や個人投資家などで、およそ7割を国内勢が占めています。外国人投資家の割合は3割にすぎません。

しかし、日々の取引ではその割合が一変し、外国人投資家の売買比率は約6割になります。

一口に外国人投資家と言っても年金や政府系ファンド、年金基金など長期投資家もいれば、ヘッジファンドのように短期で取引を繰り返す投資家もいます。

日経225先物などの先物市場ではさらに影響力を高め、活発な売買を繰り返しています。売買シェアは7~8割とされ、「日経平均が500円近く動く日は海外勢が背後にいる」といわれています。

これほどまでに日々の売買で影響を与えている海外投資家。アメリカに本社を置くヘッジファンドも多く、やはり本国であるNY市場の影響を大きく受けることは間違いないでしょう。例えば、昨年末のヘッジファンド運用残高の投資地域別構成比を見ると北米が66.7%と圧倒的な比率で日本はわずか0.8%です。多くの資金を投入しているアメリカ市場の動向に1番影響を受けることになるのです。

つまり、米国市場で株価が上昇すれば海外投資家は含み益を得ることができます。そうすると投資家はリスクオン(リスクを取ってリターンを追求すること)の状態となり、米国市場から世界各国の様々な市場へ資金を分散投資します。その中にはもちろん日本市場も含まれます。そうすると日本株も上昇する可能性が高くなります。逆に米国市場が下落した場合はリスクオフの流れになります。日本株から資金が流出し日経平均株価の下落の可能性が高まるのです。

 

出典 日興リサーチ

 

 

 

S&P500とTOPIXの比較

 

S&P500

「S&P500種株価指数」とも呼ばれ、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P Dow Jones Indices)が算出・公表しているアメリカの代表的な株価指数です。NY証券取引所、NYSE MKT(かつてのアメリカン証券取引所)、NASDAQに上場されている代表的な500銘柄(24産業グループ)で構成される株価指数です。株価を浮動株調整後の時価総額比率で加重平均して指数化したもので、1941年から1943年の平均を10として算出されます。(1957年3月4日から公表され、その値動きの単位は0.01ポイント)

 

一般にS&P500は、NYダウやナスダック総合指数と並び、米国の代表的な株価指数として有名で、また米国株式市場の時価総額の約80%をカバーし、米国大型株の動向を表す最良の単一尺度として広く認められていることから、世界の機関投資家の運用実績を測定するベンチマーク(投資信託などが運用の目安としている指数)として幅広く活用されています。なお、S&P500の先物・オプションについては、CMEに上場されており、世界中の投資家が日々取引を行っています。流動性も世界一となっています。

 

東証株価指数(TOPIX)

東京証券取引所市場第一部上場株式銘柄を対象とした、浮動株ベースの時価総額加重型で算出・公表される株価指数です。1968年1月4日(基準日)の時価総額(8兆6,020億5,695万1,154円)を100ポイントとして、現在の時価総額がどの程度かを表し、1969年7月1日から算出されています。

 

一般にTOPIXは、日経平均株価と共に日本株の重要なインデックス(市場全体の動向を示す指数)となっており、両者の主な違いは、TOPIXが東証一部に上場する株式全銘柄を対象とした「時価総額加重型」なのに対して、日経平均は東証一部上場銘柄から日本経済新聞社が選定した225銘柄を対象とした「株価平均型」となっていることです。一般的には、日経平均株価の認知度が高くて有名であるものの、機関投資家の日本株のベンチマーク(判断や評定のための基準・尺度)としては、TOPIXの方がよく利用されています。

 

TOPIXは対象銘柄が多く、時価総額ベースで算出されているのでS&Pと類似点が多く比較対象になります。

 

TOPIX  S&P500 10年比較

出典 SBI証券

TOPIOX S&P500 2年間比較

出典 SBI証券

SP500とTOPIXの2年間相関係数は0.93で、これも強い正の相関を持っていることがわかりました。

 

日経平均株価とTOPIXの相関係数を調べてみたところ、0.987となりました。日経平均株価とNYダウを小数点以下第3位までだすと0.959となり、わずかながら日本の株式指数の方が相関係数で上回る形になりました。しかし、日経平均とNYダウ、TOPIXとS&P500の相関はとても強いものになっていることがわかります。

 

ナスダック総合指数とマザーズ指数の比較

 

ナスダック総合指数(NASDAQ総合指数)

米国のNASDAQ(店頭株式市場)に上場する、米国および米国外の全上場銘柄で構成される時価総額加重平均指数をいいます。これは、1971年2月5日を基準日とし、この日の終了時点を100として算出され、また特色として、マイクロソフト、インテル、シスコシステムズなどのハイテク株やIT関連株の占める割合が高いため、その業績動向が反映されやすいと言われています。NY証券市場と比べ、赤字でも上場が可能など、上場基準が緩やかに設定されています。そのため、ベンチャー企業にとって、重要な資金調達の場として活用されています。

 

ナスダック総合指数は、NYダウやS&P500と同様に、米国の代表的な株価指数として世界的に知られています。なお、ナスダック市場は世界第2位の市場で東京証券取引所の時価総額を上回っています。

出典 野村資本市場研究所

 

東証マザーズ指数

東京証券取引所が算出・公表している、東証マザーズ市場に上場する銘柄を対象とした株価指数のことです。東証株価指数(TOPIX)と同様、浮動株ベースの時価総額加重型で算出される指数で、2003年9月12日時点の時価総額を1,000ポイント(基準値)としてその後の推移をあらわしています。マザーズは上場基準が東証一部や二部より大幅に緩和しているため、起業して間もない企業や、赤字の企業も上場することができます。上場審査が一部や二部に比べて3分の1(約1ヶ月)程度に短縮されています。

 

日経ジャスダック平均株価は、日本経済新聞社が算出して公表する、東京証券取引所ジャスダックに上場する全銘柄を対象に、日経平均株価と同じダウ式により算出する株価指数をいいます。これは、旧額面制度を継承した「みなし額面」を各構成銘柄に設定し、この額面で換算した構成銘柄株価の合計金額を「除数」で割って算出します。一般に日経ジャスダック平均は、ジャスダック市場の動向を把握するのに欠かせない指標となっており、また本指標と同様、ジャスダック市場の動向を表す指標として、時価総額加重型指数の「ジャスダックインデックス」があります。

日本の店頭市場はジャスダックとマザーズです。今回は特に個人投資家の売買が多く、個人投資家心理を反映すると言われるマザーズ市場との比較を行ってみます。同じ店頭市場と言ってもナスダックの時価総額は東証全体を上回っているので規模がまったく違うのですが比較してみました。

ナスダック・マザーズ10年比較

出典 SBI証券

ナスダック・マザーズ2年比較

 

出典 SBI証券

 

 

ナスダック指数とマザーズ指数の週足ベースでのここ2年間の相関係数は0.72となりました。日経平均株価やTOPIXほどでないにしろ、強い正の相関がありました。ただし、今年の4月からは逆相関の動きが見られます。2018年3月までの相関係数は0.92と日経平均株価とNYダウ、TOPIXとS&P500とほぼ同程度でした。

 

直近を日足ベースで比較してみます。

出典 SBI証券

 

逆相関の傾向がみられる4月2日から相関係数を調べたところ-0.76となりました。直近では強い負の相関となりました。マザーズ指数はナスダック指数と逆の動きをしていることがわかりました。

 

実は最近のマザーズ指数は上海総合指数との連動性が高いと言われています。実際はどうなのか日経平均株価と合わせて検証してみます。

 

上海総合指数と日経平均株価・マザーズ指数

 

上海総合指数

上海総合指数は、中華人民共和国(中国本土)にある上海証券取引所(中国語名称:上海証券交易所)が算出・公表している、人民元建てA株(上海A株)と外貨建てB株(上海B株)の両方に連動する日中価格パフォーマンスを表す株価指数をいいます。これは、1990年12月19日を基準日とし、その日の時価総額を100として、時価総額加重平均方式で算出されます。

 

一般に上海総合指数は、中国本土の上海株式市場の上場銘柄の値動きを示す代表的な指数として世界中で注目されています。

・上海A株:中国本土投資家のみが取引可能

・上海B株:海外投資家と中国本土投資家が取引可能

 

NY証券取引所、ナスダック市場、東京証券取引所に続き、時価総額ベースで世界第4位の市場となっています。

上海総合指数 日経平均株価 10年

出典 SBI証券

上海総合指数 日経平均株価 2年

出典 SBI証券

 

ここ2年ほどの相関係数は0.14となり、ほぼ相関はないという結果になりました。

 

上海総合指数 マザーズ指数 10年

出典 SBI証券

上海総合指数 マザーズ指数 2年

出典 SBI証券

上海とマザーズ指数の2年間の相関係数は0.40となりました。正の相関となりましたが、あまり強い相関関係みられませんでした。しかし、チャートを見てみると今年に入ってからの連動性が高まっているようなので日足ベースでの相関係数を調べてみました。

上海総合指数 マザーズ指数 半年

出典 SBI証券

 

直近半年間の上海総合指数とマザーズ指数の相関係数は0.96となりました。非常に強い正の相関があることがわかりました。

上海日経6か月

出典 SBI証券

日経平均株価と上海総合指数は0.28となりました。

日中では日経平均株価も上海を意識した動きと言われますが、終値ベースでの相関は弱い結果となりました。

国内指数(日経平均株価・TOPIX、マザーズ指数)と海外指数(NYダウ、S&P500,ナスダック、上海総合)の相関係数をまとめてみます。

 

日経平均株価 NYダウ 2年 0.96
上海総合指数 2年 0.14
上海総合指数 半年 0.28
TOPIX S&P500 2年 0.93
マザーズ指数 ナスダック 2年 0.72
ナスダック 3か月 -0.76
上海総合指数 2年 0.4
上海総合指数 半年 0.96

 

 

 

 

まとめ

 

日経平均株価に影響を与えるといわれるアメリカ株式市場との比較、そして最近影響度が上がってきているといわれる上海株式市場との比較を行いました。アメリカ株式市場はNYダウと日経平均の比較、そして S & P 500とTOPIXとの比較を見ても非常に強い相関が見られました。しかし店頭市場におけるナスダックと日本市場の新興市場であるマザーズ指数には直近では逆相関の動きが見られました。そして今年に入ってからマザーズ指数は上海総合指数と相関係数が非常に高いことがわかりました。つまり日経平均や TOPIX はアメリカ市場に、そしてマザーズ指数は上海総合指数の動向に影響を受けているということがわかりました。最近はCTA(商品投資顧問)などが米国株を買い、それ以外の株式を売る取引が膨らんでいるといわれ、特に新興国株は売られています。上海総合指数とマザーズ指数の明確な理由はわかっていないものの、このまま連動性が続くかどうかが注目されます。

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