アジア大会採用決定のeスポーツ~日本での普及は?

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eスポーツとは

 

 

eスポーツとは、「Electronic Sports(エレクトロニック・スポーツ)」の略称で、対戦ゲームを競技として捉え、従来のスポーツのようにプレイと観戦を楽しむ仕組みを指します。

スポーツとは

 

日本では「スポーツ」を運動・体育と捉えますが、本来のスポーツ(英:sport)の意味は「気晴らしをする・遊ぶ・楽しむ」という意味があります。スポーツを競争、遊戯、身体の鍛錬を含行為と広義に捉えているのです。欧米ではチェスやポーカーも「スポーツ」として認知されIOC(国際オリンピック委員会)ではチェスや、ビリヤード等の国際競技団体が加盟団体や承認団体になっています。

 

それらはmind sports(思考的なスポーツ)と呼ばれ、日本では囲碁や将棋などが該当します。

 

physical sports(身体的なスポーツ)

 

サッカー・野球・テニス・水泳・マラソンなど

 

mind sports(思考的なスポーツ)

 

チェス・囲碁・将棋・オセロ・ポーカー・麻雀など

 

electronic sports(電子的なスポーツ)

マルチプレイヤー オンラインバトル アリーナ(MOBA)、ファーストパーソン シューティング(FPS)、対戦格闘、カードゲーム、パズルゲームなど

 

日本ではようやく世間に認知され始めた段階ですが、eスポーツは海外ではスポーツとして認識されていて、既に欧米や韓国、中国では人気が定着しています。1990年代後半頃から、欧米では賞金のかかった大規模ゲームイベントが複数開催されプレーヤーのプロ化につながり、「eスポーツ」という単語が使われ浸透していきました。

OCA(アジアオリンピック評議会)が主催する「アジアインドアゲームズ」では、2007年からeスポーツを正式種目として採用しています。2018年アジア競技大会ではデモンストレーション競技として実施されます。2023年に中国の杭州で開催されるアジア競技大会からは正式種目(メダル競技)に加わることも決定しました。さらに、パリ五輪招致委員会は24年に開催予定のパリ・オリンピックでの採用を期待する声もあり、企業の参画が増える見込みです。

eスポーツ市場規模

 

eスポーツは既に高額賞金がでるプロフェッショナル対象の大会からアマチュア大会まで多数開催されており、その市場規模は2017年で1500億円程と推定されています(市場の75%はスポンサー・広告料)。2020年には更に成長を遂げ、2000億円規模に迫ると言われています。

出典  内閣府

 

 

現在、世界のeスポーツ競技人口は少なく見ても1億人以上。ちなみにサッカーは、2億6500万人以上、野球は3500万人といわれています。特にeスポーツ先進国の韓国やアメリカでは競技人口が多く、日本でも増加傾向にあると言われています。

出典 NHK

 

プロ選手数:米国700名以上、韓国600名以上、中国非公開

 

オランダ調査会社ニューズー によるとネット配信などでeスポーツの試合を見た人は2017年で3億3,500万人となっています。2023年には5億5,700万人まで拡大する見込みです。賞金が高額な大会も多く開かれ、20億円を超える賞金総額の大会もあり年収が数億円のプロも多数存在しています。中国や韓国ではプロゲーマーは人気があり憧れの職業となっています。

出典 内閣府

一方、2017年の日本国内市場規模5億円未満、視聴者数は158万人と圧倒的に少ないのが現状です。

 

アメリカでは、マインドスポーツとしてポーカーの人気があり、ポーカープレーヤーの社会的地位が高く、子供の「なりたい職業ランキング」にも入っています。そういった土壌があるのでアメリカではeスポーツの人気も高いのでしょう。

 

チェスは海外ではマインドスポーツとして認識されていますが、日本で囲碁や将棋はスポーツという認識は難しいところです。日本ではまだスポーツはphysicalsports(身体的なスポーツ)のみが認識されている状態なのです。アジア大会では2010年から囲碁がチェスなどと同様にマインドスポーツとして競技に採用されています。

 

 

 

 

 

主なゲームタイトル

 

Dota2

 

eスポーツで世界最高の賞金総額と優勝賞金はDota2のThe Internationalです。過去3年間の推移は下のようになっていて、過去大会賞金総額は1億3,000万ドル(約140億円)超となっています。

 

2017年
賞金総額 2,446万ドル(約27億円)
優勝賞金 1,080万ドル(約12億円)

2016年
賞金総額 2,077万ドル(約23億円)
優勝賞金 914万ドル(約10億円)

2015年
賞金総額 1,843万ドル(約20.5億円)
優勝賞金 663万ドル(約7億円)

 

 

League of Legends(lol)

 

世界でもっともプレイ人口が多いとされるlolも高額賞金が出る世界大会が開かれています。各地域で運営される公認トップリーグは世界大会への道となっており、これに参加していることが事実上のプロ認定となります。

 

World Championship(WCS)

lol最大の世界大会です。アメリカのロサンゼルスで開催されています。

 

2017年

賞金総額 494万ドル(約5.5億円)

優勝賞金 185万ドル(約2億円)

2016年

賞金総額 507万ドル(約5.5億円)

優勝賞金 203万ドル(約2.2億円)

2015年

賞金総額 213万ドル(約2.5億円)

優勝賞金 100万ドル(約1.1億円)

 

日本における課題

 

中国、アメリカに次いで世界3位のゲーム市場規模を持つ日本はeスポーツ分野において世界から取り残されています。それは

  • ゲーマーという言葉自体、まだ悪いイメージがあること
  • 様々な法規制があり、高額賞金の大会を開催することが難しいこと
  • スポンサーが集まらないため、日本ではプロeスポーツプレーヤーとして活躍することが難しい
  • 海外選手も含めプロeスポーツプレーヤーが日本で活躍できないので観戦者も増えない
  • 据置型ゲームやスマホゲームがメインでPCオンラインゲームになじみがない

 

などの理由があります。

 

8月8日、インターネット調査会社のマイボイスコムは、eスポーツに関するインターネット調査の結果を発表しました。この調査結果は、2018年7月1日~5日に実施し、10,514件の回答をもとに作成されたものです。

 

eスポーツの認知率は全体の4割。「興味がある」「まあ興味がある」としたのは全体の6%程度となったものの、昨年9月にCyberizeが行った調査では認知率が26%だったので、着実に認知率は上がっているようです。「興味がある」と答えた割合は、やはり男性や若年層で高く、男性では10代・20代で約30%を占めました。この調査結果によると、e-Sportsについて「どのようなものか知っている」と回答したのは18.5%、「名前を聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」と回答したのは25.4%という結果に。半数以上(56.2%)が「知らない」と回答しました。

 

そして、直近1年間にゲームをした人(6割)と、ゲームをしていない人(3割強)で、e-Sportsの認知率に差異が見られました。

 

eスポーツに対する考え方としては、「スポーツ競技である」「マインドスポーツである」という認識は合わせて15%程度で、eスポーツはまだ「スポーツ」として認識されるのは難しいようです。

 

 

 

出典 マイボイスコム

日本と世界のゲーム事情は対照的

 

eスポーツ先進国のアメリカや韓国では対戦型のPCゲームが流行り、多数のプロゲーマーが生まれています。一方で日本も10数年前まではゲーム王国と呼ばれ任天堂やソニー、セガなど世界を代表するメーカーがあり、世界で発売されるゲームソフトの約60%を占めていました。しかし、現在ではパソコンを使ったネットワークゲームが主流で据え置き型の家庭ゲーム機やゲームセンターなどの市場は伸び悩み、プロゲーマーという職種も馴染みが薄いのです。世界のゲーム市場はeスポーツの盛り上がりによってここ10数年で3倍以上になっています。しかし現在の日本のシェアは10%前後になってしまいました。

日本ではスマートフォンが普及し、ソーシャルゲームがブームになったことも大きな要因です。ゲームメーカーもeスポーツ向けのゲームではなく、スマホゲームの開発に力を入れたことで、世界の流れとは別になってしまいました。一時、ガラパコス携帯という言葉がはやりましたが、ゲーム市場でも同じことが起きてしまっているのです。

優勝賞金の制限

 

2016年にスクウェア・エニックスが開催したeスポーツイベント「ガンスリンガー ストラトス3」。当時大会史上最多となる506チーム(2024名)で、1日で行われる国内のゲーム大会としては史上最大規模でした。しかし、優勝賞金が500万円から10万円に大きく引き下げられる事態が発生しました。理由は消費者庁が示した景表法の適用条件が影響したと言われています。

eスポーツ関連銘柄に挙げられるような大手ゲームメーカーがスポンサーとなる大会であっても、過度な賞金額設定は認められないというのが消費者庁の見解のようです。世界の主要大会で20億円以上の賞金が出るのに対して、日本で開催された場合,優勝賞金が10万円までしか出せないのです。それはなぜかと言うと、日本でeスポーツの大会が開催された場合、主に「景品表示法」「風俗営業法」「賭博罪」の3つの法律が関係し、大会賞金が低く抑えられてしまうためです。

また、世界最高額eスポーツ大会「The International」のように、参加者や観戦者から集めたお金をプレーヤーに配分するという仕組みも日本の法律上は厳しいようで、eスポーツの普及を進めるのであれば、こういった部分の規制緩和も必要となってきそうです。

賞金高額化で普及加速に期待

 

盛り上がりを見せるアメリカ、中国、韓国などの海外勢に対して、様々な規制から出遅れが目立つ日本ですが、実はeスポーツで用いられるゲームには鉄拳やバーチャファイター、ウイニングイレブンなど日本発のものも数多くあります。日本eスポーツ連合が設立され、プロゲーマーが誕生することで、高額賞金の大会が開催しやすくなることから、認知度もあがり普及が進むとの期待も高まっています。

 

日本ではこれまで、ゲーム開発会社が自社ゲームの大会に高額賞金を用意すると、景品表示法に抵触する恐れがありました。そのため大会の規模を大きくすることができず、賞金も抑えられてきました。しかし、プロライセンス制度を導入し、高額賞金の受け手をプロゲーマーに限定することで、海外のような大型大会を日本でも開催できるようになります。世界中から人気のあるゲーマーを招待することができれば、来場者やライブ動画の視聴者が増え、スポンサー企業も増えることが期待されます。

 

やはり高額賞金というのはプロのステータスになります。多くの日本人プロゲーマーは国内の大会に魅力を感じることができずに海外の大会へ参加することを余儀なくされていました。当然現地に行く旅費・滞在費などを考えると、一部のトッププレーヤー以外はプロゲーマーとして生活するには厳しいというのが現状でした。韓国ではプロゲーマーが芸能人並の扱いを受け、子どものなりたい職業の1位となっています。日本でも小学生の将来なりたい職業ランキングにYouTuber(ユーチューバ―)がランクインされています。同じ動画視聴という点を考えれば、年収数億円を稼ぐプロゲーマーが誕生すれば、日本でも憧れの職業になる可能性がありそうです。

 

 

8月9日、競技大会の開催やプロゲーマーの育成を担っている日本eスポーツ連合(JeSU、東京・中央)が、公式スポンサーを発表。大手企業が相次いでゲームの勝敗を競う「eスポーツ」のスポンサーになっています。KDDI,ローソンやビームス、サードウェーブ、サントリーホールディングスなど6社がeスポーツ業界団体の公式スポンサーを引き受けました。トヨタ自動車は7月に千葉で開催された「モンスターストライク」の大会スポンサーを務め、優勝チームには「カローラスポーツ」が贈られました。YouTubeなどのインターネット配信などを通じて世界で3億人以上がeスポーツを見るようになっており、広告効果が大きくなっていると判断しているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

eスポーツ関連銘柄

 

3911 Aiming

 

多人数同時接続のMMO(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム=大規模多人数同時参加型オンラインRPG)に強みを持っており、ベクター(2656)と共に関連銘柄になっています。2015年にe-sportsプロチーム「Detonator」のメインスポンサーに就任した事を発表。「Detonator」とはPC用オンラインFPS「Aalliance of Valiant Arms」を中心に発足したゲーミングチームです。それ以外にも自社でeスポーツ向けのゲームを開発するなどゲーム市場の発展とプロゲーマーの認知度向上に努めています。値動きが軽い事や材料が出た際には同社に真っ先に買いが向かう事から同社がeスポーツ関連銘柄の本命銘柄と言えるでしょう。

 

4751 サイバーエージェント

 

同社の子会社であるサイゲームスやサイバーゼットなどがeスポーツのプロリーグを2018年5月から発足。試合はインターネットTV「アベマTV」で配信されています。また、サイバーゼットは2018年に開催する「eスポーツ」の世界大会の優勝賞金を、100万ドル(約1億1千万円)にすると明らかにしました。高額賞金にすることでプレーヤーを目指す人が増え、必然的にプレイの質が向上し、見ごたえのある競技になることや、海外からもレベルの高い参加者を集めやすくなります。

 

3664モブキャスト

 

スポーツ特化型SNS「モブキャスト」を通じたソーシャルゲームが主力。2016年1月にeスポーツへの本格参入を決断し、現役高校生を含むプロゲーマー3名とプロ契約を結びe-sportsのプロチームである「Team mobcast」を発足しました。日本にeスポーツを広めるためでなく、世界でトップを取るためのチームとして設立されたのです。世界4000万人がプレイするデジタル戦略カードゲームハームストーン」の各世界大会に出場し、優勝を目指します。モブキャストは、国内外のゲーム市場が盛り上がることによってゲーム市場全体が大きくなることも視野に入れ、今回プロ契約を結ぶ選手たちに惜しみない支援を行っていくといいます。

 

9684 スクウェア・エニックス

 

エニックスとスクウェアが合併した持ち株会社です。「ドラクエ」「FF」等を軸にコンテンツを多面展開しており、ゲーム業界の大手企業です。 日本eスポーツ連合(JeSU)に加盟を表明、同社の『サーヴァント オブ スローンズ』(SERVANT of THRONES)の公式大会がe-Sportsイベント「RAGE」で開催されることが決定しました。

 

6670 MCJ

 

マウスコンピューターでは、ゲーム向けパソコンとして、「G-Tune」ブランドを展開しており、初心者からプロゲーマーまでの幅広いニーズに対応してます。2004年からゲーム専用パソコンを販売している同社は、売上が右肩上がりで上昇。eスポーツ本格普及期という追い風にハード面から貢献しています。

 

まとめ

 

世界の盛り上がりとは対照的にeスポーツ後進国となっていた日本。しかし、プロリーグ発足や日本eスポーツ連合(JeSU)に続々と大手企業がスポンサーとして参入するなど盛り上がりを見せてきています。今年開催のアジア大会や、高額賞金がでる海外のメジャー大会で日本人プレーヤーが活躍すれば、一気に世間の認知度は上がる可能性があります。まだ世代全体では低いものの、10代や20代ではeスポーツの認知度も高く今後の普及に期待できるのではないでしょうか。合わせて関連銘柄にも注目しておきたいものです。

 

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