日経平均株価とTOPIXのNT倍率を使ったNTスプレッド取引とは

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通常、日経平均やTOPIXを取引するには先物やETFを使って売買します。上昇すると思えば買い、下落すると思えば売りといった感じです。しかし、日経平均やTOPIXの上げ下げだけでなく、日経平均とTOPIXの値動きの違いを利用した取引手法があります。

 

日経平均とTOPIXのような相関関係(値動きの連動性の強い指数は非常に近い値動きをしますが、それぞれの指数の計算方法の違いなどから常に同じ値動きにはなりません。2つの指数の価格差が拡大した後に元に戻りやすい傾向があります。この伸縮する価格差から利益を狙うのがNTスプレッド取引です。

 

日経平均株価とTOPIXの両指数は代表的な株価指数です。まずは仕組みや組み入れ銘柄の違いなどを説明して、実際にNTスプレッド取引をどのようにトレードしていくのかを見ていきます。

日経平均株価とTOPIX

日経平均株価と日経225先物

 

日経平均株価とは東京証券取引所第一部に上場する約2000銘柄のうち225銘柄を対象にしていて、日本経済新聞社が知的財産権を保有し銘柄を選定しています。

トヨタやキャノン、ソフトバンクなど日本を代表する企業が多くあります。

値ガサ株株価が高い株)の影響を受ける

電気機器・情報・通信、ITなどハイテク株の比重が高い

などの特徴があります。

 

 

ウエート上位10銘柄 8月1日現在
順位 コード 社名 セクター ウエート(%)
1 9983 ファーストリテイリング 消費 8.02
2 9984 ソフトバンクグループ 技術 4.57
3 6954 ファナック 技術 3.61
4 8035 東京エレクトロン 技術 3.15
5 9433 KDDI 技術 3.07
6 6367 ダイキン工業 資本財・その他 2.19
7 6971 京セラ 技術 2.13
8 4543 テルモ 技術 2.02
9 6762 TDK 技術 1.96
10 4063 信越化学工業 素材 1.85

 

出典 日経プロフィル 

 

日経225先物は日経平均株価を原資産とした指数先物です。

 

TOPIXとTOPIX先物  

 

TOPIX(東証株価指数)とは、東証市場第一部に上場する株式全銘柄を対象とする株価指数です。昭和43年(1968年)1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したもので、日本経済の動向を示す代表的な経済指標として用いられるほか、ETFなどの金融商品のベンチマークとして利用されています。

 

 

上場株式数の多い大型株の影響を受けやすい

銀行株、建設、不動産、通信などの内需株の影響が大きい

といった特徴があります。

 

 

 

TOPIX構成銘柄上位(8/1現在)

7203 トヨタ自 3.53%
8306 三菱UFJ 1.76%
6758 ソニー 1.53%
9432 NTT 1.43%
9984 ソフトバンクグループ 1.43%
8316 三井住友 1.30%
6861 キーエンス 1.24%
7267 ホンダ 1.18%
9433 KDDI 1.06%
8411 みずほ 1.01%

日経平均株価でトップのファーストリテイリングは83番目(約2000銘柄中)で構成比率はわずか0.27%となっています。

出典 SBI証券 

TOPIX先物はTOPIXを原資産とした指数先物です。

 

NT倍率とは    

 

 

日経平均株価をTOPIXで割ったもので、どちらが強いかを相対的に示す指数です。

 

ハイテク関連が銀行などの内需株より強いとNT倍率は上昇し、内需株がハイテク株より強いと下落する傾向があります。

 

今年に入ってから一時13倍台を超え1999年3月以来20年ぶりの高値となりました。2013年のアベノミクス以降のNT倍率は、おおよそ12.0~12.5倍で推移(5年平均は12.34倍)。

 

1999~2000年のITバブル相場や2005~2006年の世界的な株価上昇ラリー、2013年前半のアベノミクス相場など、いずれの上昇局面よりもNT倍率が高くなっています。

出典 SBI証券 

NT倍率その他の上昇要因

裁定買いの影響

近年の日本株は「先物主導」で株価が動くことが多いのでNT倍率の上昇を伴って日経平均株価が上昇する際は、「裁定買い」(日経平均株価の先物を売って現物を買う)が積みあがっていきます。

裁定買いは、最終的に反対売買で決済される性質のものであり、信用買いと同じように、近い将来の売り要因となります。

この裁定買いが積み上がった状態で株価が下落すると、裁定解消売り(裁定買いの反対売買による決済)が誘発され、株価の下落に拍車がかかります。

日銀ETF買いの影響

 

NT倍率上昇には日銀ETF買いも影響している可能性があります。

 

日銀ETF買いによる浮動株への影響です。例えば日経平均株価で最も構成比率が高いファストリテイリングは、2018年3月末時点での日銀ETF買いを考慮すると実質的な浮動株比率は7.6%程度になります。このままのペースで日銀が買い続けると1年持たずに市場に出回る浮動株が消えてしまう計算になるのです。日経平均採用銘柄では日本郵政なども実質浮動株が少なくなっています。

 

これまでの「日銀トレード」はいびつな市場を生み出していました。割安株(バリュー株)を割安なまま放置させる一方で、PER(株価収益率)などの指標面で割高感があっても一部の銘柄が買われ続ける現象です。

浮動株比率とは

発行済み株式総数のうち、創業者一族などが保有し、市場には出回らない固定株を除いた株式(浮動株)の割合を浮動株比率と呼びます。

 

 

NT倍率を利用したスプレッド取引(NTスプレッド取引)  

 

NTスプレッド取引は通常先物で行います。ただし、目安となるNT倍率は現物指数(日経平均株価とTOPIX)を使うので注意が必要です。

 

買いと売りの約定金額を同程度にする

 

NTスプレッド取引は日経225先物価格とTOPIX先物価格で取引します。値段の違いはありますが、日経225先物の倍率は1,000倍、TOPIX 先物の倍率は10,000倍なので同じ枚数で取引します。

 

 

 

トレードの仕掛けも決済も買いと売りを同時に行う

 

通常の取引に慣れていると、損失がでている方を決済して利益がでている方だけを持ち続けたくなりますが、それでは片張りトレードになっていまいます。スプレッドだけを考え、決済するときは必ず両方一度にする必要があります。

 

NTスプレッド取引のメリット

 

リスクを減少させる

 

トレードのリスクを下げるためには、①さらに投資資金を積む、②投資ロットを下げることが必要になります。例えば、100万円の資金で1回2万円の損失を許容するとすれば、1回のトレードで2%の資金を失うことになります。しかし資金を倍にして200万円にすれば2万円の損失は1%になります。同様に、損失額を半分の1万円にした場合も損失は1%になります。しかし、資金を積み増しするという選択は難しいので、リスクを減らすためには、損失額を減らすというのが現実的でしょう。

 

日経平均株が1日で200円以上動くことはよくありますが、NT倍率なら100ポイント以上動くことはそんなに多くありません。NTスプレッド取引を利用することによって、一気にリスクを下げることができ、適正リスクでのトレードを行うことができます。資金が少ない投資家でも比較的安全に市場に参加することができるようになるのです。

 

先物では証拠金相殺効果がある

 

日経225先物とTOPIX先物は証拠金を相殺できるので、例えば日経225先物を単独で買うより(売るより)少ない証拠金で建玉を維持することができます。

 

ETFの場合は売りと買い両方の委託保証金が必要になります。

 

上昇相場でも下落相場でも利益を狙える

 

日経平均とTOPIXの価格差から利益を得るので、上昇相場でも下落相場でも2つの指数の価格差があれば利益を狙うことができます。

 

NTスプレッド取引のデメリット

 

証拠金は少なく済むものの、手数料は売り買い両方かかります。通常の取引の倍の手数料がかかるので、デイトレードよりポジションを持ち越すスウィングトレードの方がNTスプレッド取引には適しています。

 

またNTスプレッド取引では、両者の乖離が必ず収束・解消されるわけではないというリスクがあります。通常のトレードと同じように必ず損切りをするようにしましょう。

 

注文方法

 

場中ではスリッページがあるので寄りでのトレードが適しています。

 

場中ではスリッページがあることや、同時に注文をだすことが難しいので、寄り付きで売買することをお勧めします。例えば、日中取引の引けで利食いや損切りポイントに達した場合はナイトセッションの寄り付きで。ナイトセッションの引けで達した場合は翌日の寄り付きで決済するといった具合です。これなら場中に張り付いていないでもトレードすることができます。

 

もちろん、日中に値動きを見られる投資家は場中に売買した方が効果的なトレードができる場合もあります。その場合はNTトレードに対応した証券会社を利用するのがいいでしょう。

 

NTトレード専用の発注機能がある証券会社

 

岡三オンライン証券

 

 

NT倍率注文は、日経225先物とTOPIX先物を同時発注して、2つの指標の価格差で収益を上げる注文方法になります。NT倍率チャートでは、NT倍率の推移と各種テクニカル指標を重ねたチャートを時系列で確認できます。

 

取引例

 

①NT倍率が12倍まで低下。日経平均とTOPIXの価格差が今後拡大すると予想してNT買いを注文。

 

②予想通り日経平均とTOPIXの価格差が12.5倍まで拡大したので決済。(ここでは先物のNT倍率として計算)

 

①NT倍率 12倍    日経225先物 20,400円買い TOPIX先物 1,700ポイント売り

 

②NT倍率 12.5倍   日経225先物 21,500円売り TOPIX先物 1,720ポイント買い

 

損益(1枚) 日経225先物  (21,500-20,400) × 1枚 × 1,000 =1,100,000円

 

TOPIX先物  (1,700-1,720) × 1枚 × 10,000  =  -200,000円

 

合計損益 +900,000円

 

NT倍率の拡大を予想した場合はNT買い(日経225先物買い + TOPIX先物売り)

 

NT倍率の縮小を予想した場合はNT売り(日経225先物売り + TOPIX先物買い)

 

となります。

 

初心者はミニ取引がおすすめ

 

上記の取引例では日経225先物・TOPIX先物ともにラージを見てきました。証拠金が相殺されるといっても金額が大きくなりますし、何より損益のブレが大きくなります。うまくいった場合の利益が大きいのはもちろんですが、損失も大きくなってしまいます。

 

ですから、NTトレードを最初に取引する場合はミニ(日経225先物ミニ・TOPIX先物ミニ)の利用をおすすめします。

 

日経225先物ミニ

 

日経225先物ミニとは日経平均株価を対象にした株価指数先物取引で、取引単位が日経225先物取引の10分の1と、少ない証拠金で取引をすることができます。

 

また日経225先物ミニの呼値は5円で、ラージ(10円)の半分となっているので取引がしやすくなっています。

 

TOPIX先物ミニ

 

TOPIX先物ミニもTOPIX先物の10分の1の資金で取引できるため、少額の資金から取引できます。

 

呼値は0.25ポイントでラージ(0.5ポイント)の半分になっています。

 

ただし、TOPIX先物ミニは日経225先物ミニに比べると流動性が低いので、スリッページ注文した価格と実際に約定された価格の差)に注意しましょう。

NTスプレッド取引に役立つテクニカル指標

ボリンジャーバンド

 


ボリンジャーバンドとは、移動平均線と、その上下に値動きの幅を示す線を加えた指標のことをいいます。
1980年ころにジョン・ボリンジャー氏が考案した指標で、「価格の大半がこの帯(バンド)の中に収まる」という統計学を応用したテクニカル指標のひとつです。

 

※移動平均線から
一番近い上下線の間で株価が動く確率(1次標準偏差、1σ)=約68.3%
二番目の上下線の間で株価が動く確率(2次標準偏差、2σ)=約95.5%
三番目の上下線の間で株価が動く確率(3次標準偏差、3σ)=約99.7%

と判断します。

通常は25日移動平均線を使います。

ボリンジャーバンドは逆張り指標として用い、±2σや±3σに到達したらNT倍率が行き過ぎと判断します。

 

ただし、強いトレンドの時は±3σを超えて推移することもあるので注意しましょう。

 

 

出典 SBI証券 

NT倍率を通常の取引にも役立てる  

 

 

相場の天井、底値を判断する

 

NTトレードは相場の行き過ぎを判断して逆張りが基本となります。行き過ぎを判断するテクニカル指標は他にもあります。トレードする際は複数の指標を参考にした方が勝率を高めることができます。

 

移動平均かい離率

 

株価が移動平均線からどの程度離れているかをチャート化したのが移動平均かい離率です。

 

これも行き過ぎを判断するテクニカル指数です。一般的に25日移動平均かい離率が使われます。

 

計算式は

 

25日移動平均かい離率=(株価-25日移動平均値) ÷ 25日移動平均値 × 100

 

となります。

 

移動平均かい離率の数値は、0%を中心に上にプラス、下にマイナスで表示され、プラス(マイナス)5%以上(以下)で相場が反転しやすくなります。そして、プラス(マイナス)10%以上(以下)になると天底になりやすいと言われています。

 

騰落レシオ 

 

値上がり銘柄数÷値下がり銘柄数×100(%)で求められます。

 

25日騰落レシオが使われることが多いです。

 

25日間の値上がり銘柄数の合計 ÷ 25日間の値下がり銘柄数の合計

 

騰落レシオは100%が中立の状態で、120%を超えると加熱気味、70%以下は底値ゾーンとなります。

 

モーニングスター

ボラティリティ

 

ボラティリティとは価格変動の度合いを示す言葉です。ボラティリティが大きいという場合は、価格変動が大きいことを意味し、ボラティリティが小さいという場合は、価格変動が小さいことを意味します。特に下落するときに上昇する傾向があります。日経平均株価の場合通常は一定のレンジ(20~30程度)で推移しますが、数値が急上昇した後はレンジに回帰するという特徴があります。

 

日経平均が急上昇した時にNT倍率の拡大やボラティリティの上昇が起こることがあります。そうした時はNT売り(日経平均売り TOPIX買い)の目安となります。

日経平均株価のボラティリティを見るには日経平均VIが便利です。

日経平均VIは、市場が期待する日経平均株価の将来1か月間の変動の大きさ(ボラティリティ)を表す数値で、株式収益率の標準偏差のようにパーセント単位で表示されます。計算には日経225オプション価格が用いられ、日本経済新聞社によりリアルタイムで算出・公表されています。

 

 

出典 日経プロフィル 

まとめ

 

NTスプレッド取引は日経225先物やTOPIX先物を単独で取引するよりもリスクを減らすことができ、証拠金も減らすことができます。

 

相場の上げ下げを取引するのではなく、2つの指数の相対的な強さを取引するというのは戸惑いを感じるかもしれません。

 

しかし、通常のトレードにNTスプレッド取引を加えることによって取引手法の幅が広がります。

 

また、実際にトレードしなくてもNT倍率をチェックすることで、相場が天井圏にあるのか、底値圏にあるのかを判断する材料の1つになります。

 

NT倍率をトレードの参考にしてみてください。

 

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