次世代移動通信5Gとは?~衝撃の市場規模と関連銘柄

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5Gとは

 

携帯電話などの移動通信システムの規格でGは世代(Generation)の頭文字のことです。移動通信システムは1980年代に初めて商用化された第一世代の「1G」からほぼ10年ごとに世代交代があり、そのたびに通信速度は格段に高まってきました。スマートフォンが普及した2010年台の4Gと比べ、5Gの通信速度は約100倍になります。

 

総務省は日本における5Gの経済効果を約47兆円と試算しています。それは

交通約21兆円

公共交通機関が利用しにくい地域でも、自動運転タクシーで好きな時に、好きな場所にでかけることがきます。例えば、高齢者が検診に出かける際、目的地を伝えると自動運転タクシーがタイムリーに到着、病院に着くまでの社内でも健康診断を受けることができます。

製造業・オフィス約13兆円

医療約5兆円

離島で急患が発生し、ヘリで運搬する際、移動中でもタイムラグの少ない高精細映像を用いた遠隔手術を行い、専門医がヘリ内の医師に指示しながら処置をするなどの先進医療を提供することが可能になります。

小売り約3兆円

スマートホーム約2兆円

スマートホームとは、家中の電化製品をインターネットで繋いでスマホや音声でコントロールしたり、センサーやGPSで自動コントロールすることで快適な暮らしを実現する家のことです。家の電化製品をインターネットでつないで制御することによって、快適な暮らしが手に入ると言う概念に基づいています。スマート家電による同時に複数機器の通信や、自動運転の情報アップデート等、スマートシティ化を実現するには5Gが不可欠になります。

 

これに加え、まったく新しい市場が誕生する可能性もあります。例えばプロのテレビゲーム選手が技を競いあうeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)はアメリカですでに10億ドル(約1100億円)に達していて、2023年には16億ドル超に拡大する見込みです。

 

東京五輪を迎える2020年に向けて、通信業界でも急ピッチに5Gのサービス基盤の整理を進めています。

出典 総務省

 

5Gの特徴

超高速大容量

 

一般に高い周波数帯ほど通信容量を大きくできます。今の携帯通信は最高で3.5ギガ(ギガは10億)ヘルツ前後の周波数帯を活用しています。高速大容量の5Gでは高周波数帯(6ギガヘルツ以上)の電波を新たに使用し、28ギガヘルツあたりの帯域を使う予定になっています。

出典 NTTドコモ

 

低遅延

 

5Gはネットワーク遅延が1ミリ秒(1000分の1秒)以下と非常に小さく、遠距離通信でもずれが生じにくい低遅延です。遠隔地にあるロボットなどをリアルタイムで正確に操作することも可能になります。遠隔医療や自動運転などにも利用されます。

 

多数同時接続

 

これまでの携帯電話は、基本的に人と人がコミュニケーションを行うためのツールでしたが、家電、車など身の回りのあらゆる機器(モノ)が同時につながる多数同時接続になります。

 

あらゆるモノがインターネットにつながり制御しあうIoT社会が到来しつつある中、5GはそれをささえるICT(情報通信技術)基盤の役割が期待されています。

出典 総務省

 

IoT(モノのインターネット Internet of Things)とは

 

 

IoTとは、自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやりとりをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出すというものです。これにより、製品の販売に留まらず、製品を使ってサービスを提供するモノのサービス化の進展に寄与します。

 

IHS社の推定によれば、2016年時点でインターネットにつながるモノ(IoTデバイス)の数は約173億個で、2020年までに約300億個まで増大するとされています。

 

出典 総務省

 

IoTデバイスの規模と成長性を分野・産業別に見てみると、IoTデバイスの中で大きな比率を占めるスマートフォンやPCの市場が普及率の拡大から成熟に向かう一方で、コネクッテドカー(通信機器の搭載された自動車)や、通信機器の搭載された工場オートメーション(FA)機器などの、産業機器におけるIoT化は着実に進んでいるようです。

 

IoTの進展により、企業はより利便性を高めたサービス展開が可能

例えば、自動車分野では、自動車メーカーが大手通信業者やベンチャー企業などと提携し、通信機能や運転支援を備えたコネクテッドカーの開発を進めています。

 

また、監視カメラなどのセキュリティ分野でも、顔認証技術を軸とした不審者の発券システムや、小売り店舗で顧客動向をAI(人工知能)で解析するといった、従来のカメラ単体ではできなかったサービスが期待できます。今後、カメラ数の増加が見込まれ、カメラに搭載されるイメージセンサー市場も拡大が見込まれます。

 

今後も業界の枠を超えてIoT市場で新たなサービスや技術が誕生するでしょう。

出典 総務省

 

自動運転

 

自動運転を実現するために5Gが果たすとみられる役割は

 

車載センサー

 

車載センサーは自動運転の実現に最も必要な技術です。自動運転車はセンサーで周囲の状況を把握するからです。車内でデータを処理する機能により、センサーで集めたデータを読み込み、それに従って運転を誘導できるようになります。

 

5Gは超高速かつ大容量で、高速移動時の遅延も少なくなります。このためセンサーからの重要なデータをクラウドに効率的に伝え、車内での処理能力を上回る性能を発揮できるようになります。

 

車車間通信と路車間通信

 

車車間通信とは

 

車両同士の無線通信により周囲の車の情報(位置、速度、車両制御情報等)を入手し、必要に応じて運転者に安全運転支援を行うことです。

 

路車間通信とは

 

車両と路側機との無線通信によりインフラからの情報(信号情報、規制情報、道路情報等)を入手し、必要に応じて運転者に安全運転支援を行うことです。

 

車載センサーを補完するこうした追加データとセンサーからの情報により、自動運転車は周囲の道路や交通の環境をさらに万全に把握できるようになります。高い信頼性と低遅延性の5G技術を使えば、自動運転車は車載センサー以外からもリアルタイムで必要な情報を受信し、瞬時に判断を下せるようになります。

 

予測学習

 

自動運転車は人と違い、他の車の運転経験も学ぶことができます。これまで経験したことのない新たな状況に遭遇するたびに、運転を統制するアルゴリズムが改善されるからです。

 

ただし、性能向上を果たすためには、自動運転車が遭遇した状況に関するデータを集めなければなりません。これを解析し、改善されたアルゴリズムに同期した上で他の車に伝送する必要があります。

 

そのためには、自動運転車はインターネットにつながっていなくてはなりません。5Gを使えばこうしたデータを迅速かつ効率的にやり取りでき、自動運転車の機能を一段と向上させることができます。

 

コネクッテドカー

 

コネクテッドカーとは、ICT端末(情報通信端末)としての機能を有する自動車のことで、車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生みだすことが期待されています。

 

カーナビゲーションなどを通じた情報サービスとの違いは、車両情報を直接管理・活用できるということで、故障や事故時に自動的に緊急通報し、走行距離と連動した保険の適用、あるいは車両追跡システムなど、自動車そのものがスマートフォン化されたような状態になることで、交通事故の低減や渋滞の緩和などが期待されています。

 

コネクテッドカーは、今後も自動車メーカーとIT企業が相互乗り入れする形で進化を加速させていくことになりそうです。その市場規模の大きさから幅広い銘柄に商機がめぐることになるでしょう。関連銘柄としてはトヨタを始めとする自動車メーカーの他、通信インフラに関わる企業や、通信デバイスを製造する企業が有力です。さらに自動車本体がネットに接続されることで、サイバーセキュリティーに関する技術も充実させる必要があり、同分野に強い企業も注目されるでしょう。

 

コネクテッドカーの実現するサービス

 

緊急通報システム

 

自動車事故によって失われる人命を減らすことを目的として、自動車事故発生時に自動で警察や消防等の緊急対応機関に緊急通報を行うシステムの導入が各国で進められています。

 

テレマティクス保険

 

欧米の保険会社は、利用者の運転中の行動(ブレーキの回数や加減速動作など)や時間帯を収集し、利用者の運転行動・振る舞いに基づき運転の危険度を評価し、保険料算定するPHYD(Pay How You Drive)を提供しています。

 

盗難車両追跡システム

 

盗難車両追跡システムとは、車両の盗難が判明した場合に車両の位置を追跡することができるシステムです。

 

国内ではトヨタ自動車が2002年より提供しているテレマティークサービスに盗難車両抑止システムを搭載しており、契約者の要望に基づきトヨタスマートセンターで盗難車両の位置を追跡することができます。

 

さらに、トヨタはこれまでグループの枠外であったNTTとも自動車・超高速無線通信技術で提携、5G技術を活用することでより安全性の高い自動運転者の実用化を図っていく構えにあります。

出典 総務省

 

出典 総務省

 

市場規模

今後、世界の5G関連の設備投資額は2025年までに約35兆円に上るとの試算もあります。

 

この中には、5Gデータ処理、データセンターやエッジコンピューティングにおけるストレージやネットワーキング、キャリアのネットワーク変換プロジェクトなどが含まれます。

 

欧米勢の動きを受け、日本のNTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの通信キャリア3社も2020年以降を想定していた商用化時期を少しでも早め、東京五輪を1つの目標に各種サービスを市場投入しようと動き出しています。

 

設備投資も巨額で、日本の通信キャリア3社だけで数兆円と言われています。欧米と中国のキャリアはそれ以上に投資を加速しているとみられ、その巨大商戦に参戦しようと、通信機器や電子部品メーカーも設備投資を増やしています。

 

サイバーセキュリティー

 

サイバー攻撃数が最近急増しています。背景には、IoTが登場し、新たにネットワークに接続されたモノが増加したことがあります。攻撃の手口は高度化し、企業の最新技術や個人情報も狙われており、サイバーセキュリティーの重要性が高まっています。

 

サイバーセキュリティーとは

 

サイバー攻撃に対する防御行為。コンピューターへの不正侵入、データの改ざんや破壊、情報漏洩、コンピュータウィルスの感染などがなされないよう、コンピューターやコンピューターネットワークの安全を加工することです。

 

5G関連銘柄

2020年夏の東京オリンピックは、各国の5G技術のデモ会場と目されていることもあり、日本の関連企業は技術開発や新サービスの導入に向けた動きを加速させています。

 

NTTドコモ(9437) KDDI(9433)ソフトバンク(9984)

NTTドコモ(9437) は法人営業とR&Dが一体となった商品開発に積極的に取り組んでおり、5Gをベースとした新商品やサービス開発の時間短縮化を図る方針です。5Gの高精細動画配信技術や映像伝送技術は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、スポーツ観戦やライブ等で活躍が期待されます。

 

KDDI(9433)は米ネットフリックスと業務提携し、立ち遅れていた動画配信の強化に本腰を入れる構えです。もちろん5G商用化に伴う動画配信サービスの高付加価値化や市場拡大を意識してのものです。

 

また、ソフトバンクグループ(9984)も今年に入り料理動画運営会社などに出資。自動運転を進め、また5G端末に使用される半導体の供給にも乗り出しています。

 

5Gの通信インフラについては、各キャリアともに設備投資の負担を抑えるため、当初は現行の通信規格である「4GLTE」で利用されている周波数帯に高周波帯を併用する方式で導入します。対応エリアも首都圏の一部からサービスを開始し、その後段階的に5Gのエリアを拡大する予定です。

 

トヨタ自動車(7203)

 

自動車業界ではコネクッテドカーで先行するトヨタ自動車(7203)が注目されます。

同社は20年までに日米で販売するすべての乗用車に車載通信機を搭載する計画で、KDDI(9433)と連携してグローバル通信プラットフォームの構築に取り組んでいます。また、NTTドコモ(9437)やデンソー(6902)とともに、昨年11月からお台場などの臨界地域に5Gの基地局を配置。高速の移動中でも電波を途切れさせない高速通信に成功しています。

 

村田製作所(6981) 太陽誘電(6976)

5Gは、従来の4Gに比べ、高周波の電波が使われます。高周波の電波は現行の周波数の低い電波に比べ、密度の高い情報を伝播できる特性がありますが、直進性が高く電波の幅が狭くなります。また電波の届く力も弱くなるため、高周波の電波をうまく処理する電子部品の重要性が増します。村田製作所(6981)太陽誘電(6976)などの持つセラミック加工の技術が強みとなるでしょう。

 

アンリツ (6754)アルチザネットワークス(6778)

5Gのシンボルストックは通信計測器大手のアンリツ(6754)です。電波を安定して飛ばすための実験に欠かせない通信用計測器の需要も高い伸びが期待できる分野です。通信計測器は参入障壁も高く新規参入が難しいため、収益性が高いのです。同社は16年に米アジマスシステムを子会社化しフェージング(電波の受信レベルの変動)に関するソリューションを強化、早くから5G関連需要への対応を進めています。

アンリツと同様に通信計測器を手掛けるアルチザネットワークス(6778)も注目されます。基地局向けに負荷試験装置で高いシェアを持ち、ニッチな市場であることから5G関連特需の恩恵を受けることが期待されます。

コムシスホールディングス (1721)協和エクシオ (1951)

 

5Gインフラの担い手である通信工事会社にも商機が生まれます。通信工事トップのコムシスホールディングス (1721)は5G関連の基地局工事の受注が2020年3月期から本格的に収益に反映される見通し。豊富な手持ち工事を擁し、この売り上げ計上が業績成長を後押しする形となります。また、M&Aにより業容拡大路線を走る協和エクシオ (1951)も今秋に名古屋に上場しているシーキューブ(1936) など3社を経営統合し、一段の施工能力強化で5G関連需要を取り込んでいく予定です。

 

まとめ

 

総務省は次世代通信規格5Gの技術で高齢化や人手不足など地方の課題を解決する実証事業を2019年度から始める予定です。また、携帯大手3社が東京五輪のある20年の商用化を計画しています。5Gは動画配信や、世界の自動車メーカーやIT企業が開発にしのぎを削る自動運転など、新たな巨大市場を支えていきます。この他、医療やエンターテインメントなど広範囲にわたって多大な進歩をもたらし、これまでにない新しいサービスを生みだす可能性があります。いよいよ実現化の段階に入った5G。これからも株式市場で注目しておきたい有力テーマでしょう。

 

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