自己破産の条件は?ギャンブルや株式投資による借金はどうなる?

この記事では、自己破産手続きを行うことを考えている方向けに、裁判所から免責を出してもらうために必要な条件について解説します。

法律上、「自己破産の手続きをしても、借金の免責してもらえない理由」のことを免責不許可事由と呼び、具体的には借金の理由が浪費やギャンブルである場合が該当します。

つまり、自己破産をしたくても、借金を作った理由によっては残念ながらできない人がいるということですね。

ただし、免責不許可事由に該当するからと言って、絶対に免責が認められないというわけではありません。

実際の自己破産手続きでは、免責不許可事由に該当する人であっても、裁判官による「裁量免責」によって、ひろく借金の免除が認められているというのが実際のところなのです。

以下では、自己破産の免責不許可事由に該当するケースについて具体例を用いてくわしく説明するとともに、裁量免責がどのような場合に認められるのかについても説明します。

自己破産の条件について簡単にわかりやすく解説

裁判所で自己破産の手続きを行い、免責を認めてもらうためには、次のような条件があります。

裁判所に自己破産による借金免責を認めてもらうための条件

  • 「浪費または賭博」による借金ではないこと
  • 「財産の隠匿」をしていないこと
  • 「換金行為」をしていないこと
  • 「偏波弁済」をしていないこと
  • 自己破産を行うのが2回目でないこと

 

冒頭でも少し説明しましたが、これらを免責不許可事由と呼びます。

以下では、これらの条件に該当してしまうケースについて具体的に解説します。

「浪費または賭博」に該当する具体的なケース

浪費または賭博とは、収入が少ないのに買い物や旅行などをたくさんしていたり、パチンコや競馬などのギャンブルによって借金を作ってしまったりすることをいいます。

実際の手続きでは、こうした過去の事実があるかどうかについて、あなたの銀行通帳やクレジットカードの履歴、家計簿の記録などを裁判所に提出してチェックを受けなくてはならないのです。

宝くじや競馬は法律で決められた賭博行為といえますが、これらを極端にたくさん利用しているような場合にも、賭博による免責不許可事由に該当してしまう可能性は少なからずあるでしょう。

実際には裁判所による「裁量免責」が広く認められている

ただし、実際の裁判所の判断としては、この条件はかなりゆるく判断されている傾向があります。

自己破産の制度は、借金を負ってしまった人が生活を立て直すことを第一の目的にしていますから、よほど極端な浪費やギャンブル癖がある人でない限りは自己破産による免責が出るというのが実際のところなのです。

つまり、実際にはギャンブルによって借金を負ってしまった人であったとしても、裁判所はかなりやさしく判断してくれるので、借金を免責してもらえるケースが多いということですね。

免責不許可事由に該当してしまう人もあきらめないことが大切

このように、法律のルールを厳しく見ると免責が受けられないようなケースでも、裁判所が実際にあなたの生活状況をみながらルールをゆるく判断することを、裁量免責(さいりょうめんせき)と呼びます。

よほどひどい浪費の仕方をしている場合や、ギャンブル依存といえるような状況でない限りは、裁判所は免責を出しているというが実際のところです。

Expert
過去のお金の使い方について反省点が多い…という方も、自己破産による借金の免責が認められる可能性は高いですから、あきらめずに自己破産の利用を検討してみてください。

株式投資やFX投資の失敗で追ってしまった借金

最近増えているのが、株式投資やFX投資による損失を埋め合わせるために借金をし、そのお金を投資につぎこんでしまったというケースです。

これらの投資の損失による借金も、本来は前述した「浪費または賭博」に該当するというのが法律上のルールです。

一方で、実際の自己破産手続きの現場では、投資の失敗が原因の借金についても、裁量免責によってひろく自己破産による免責が認められています。

ただし、投資の失敗による借金について自己破産免責を受けるためには、手続きの進め方や裁判所に対して提出する書類の作成方法について実務経験が必要になる側面が大きいです。

投資の失敗による借金についてお悩みの方は、債務整理を専門にしている弁護士に相談して手続きを進めるようにして下さい。

「財産の隠匿」に該当する具体的なケース

自己破産によって借金の免責を受けた場合には、あなたが所有している財産は売却して借金の債権者に渡さなくてはならないルールになっています。

もちろん、自己破産手続きが完了した後も生活はしていかなくてはなりませんから、最低限の家財道具や、100万円以内の現預金についてはあなた自身の財産として手続き後も所有し続けることが可能です。

一方で、下取りで値段がつく自動車やマイホームなどの高額な資産については、競売にかけて債権者に売却代金を債権者に渡さなくてはなりません。

そのため、自己破産手続きの開始を裁判所に対して申し立てる際に、財産目録という形であなたのすべての財産を一覧にした資料を提出しなくてはならないのです。

裁判所に報告する所有財産の一覧にはウソがあってはいけない

当然、自己破産手続きを行う人の気持ちとしては自己破産免責を受けた後にも財産を持ち続けたいと考えるでしょうから、「財産目録に、実際には存在している財産を載せない」という行動を取りたいと考えてしまうかもしれません。

しかし、もしこうした事実が明らかになってしまうと、裁判所は「財産の隠匿」があったとして、途中まで進んだ自己破産手続きを途中で取り消してしまう可能性があります。

自己破産の手続きでは、あなたの生活状況や収入の金額、家計簿などをすべて提出してお金の流れをチェックされることになりますから、基本的には財産を隠し通すことは不可能と考えておかなくてはなりません。

「換金行為」に該当する具体的なケース

インターネット上の情報を見ていると、クレジットカードのショッピング枠を現金化するなどの方法が紹介されているのを見たことがあると思います。

ショッピング枠の現金化とは、ごく簡単にいうと、クレジットカードのショッピング枠で購入した商品などを業者に対して売却し、手数料を差し引きしたうえで現金を受け取る方法を言います。

生活費に困っている人としては使われることの多い方法といえますが、これは自己破産の手続きでは「換金行為」というものに該当し、免責を受けられなくなってしまう可能性があるので注意が必要です。

換金行為についても裁量免責が認められる可能性がある

ただし、この換金行為についても手続きをする人が反省の態度を見せており、過去の生活状況について改める気持ちがある旨を裁判所に対して書面を通して伝えれば、裁量免責によって免責を受けられる余地があるといえます。

裁判所に対して提出する書類の作成などについては押さえておくべきポイントがありますから、こちらも債務整理を専門であつかっている弁護士に相談したうえで手続きを進めるようにしてください。

「偏波弁済」に該当する具体的なケース

上でも少し説明しましたが、自己破産によって借金の免責が認められた場合には、あなたが手続き開始時点で所有している財産については、お金に換えて債権者に平等に分配しなくてはなりません。

平等に分配するというのは、例えばあなたの借金の合計額が500万円であった場合に、消費者金融A社からは300万円、B社からは200万円をそれぞれ借りていたとします。

この場合、A社はあなたの借金全体の5分の3、B社は5分の2の割合の債権を持っているということになりますね。

なので、もしあなたが100万円の財産を持っていたとすると、債権者A社はその100万円の5分の3=60万円、B社は100万円×5分の2=40万円だけ分配を受ける権利を持つことになります。

偏波弁済とは一部の債権者にだけ多く財産を分け与えること

上のケースで、例えばA社に対して本来よりも多い割合でお金を渡した場合(例えば80万円)には、偏波弁済に該当してしまう可能性があります。

自己破産の手続きでは、債権者側は本来は帰してもらえるはずの借金の一部をあきらめることになりますから、すべての債権者が平等に分配を受ける結果になるように配慮がされます。

もし偏波弁済に該当する借金の返済をしてしまっている場合には、自己破産による免責が受けられなくなる可能性があることに注意しておかなくてはなりません。

自己破産を行うのが2回目でないこと

自己破産は1度免責を受けると、その後7年間は免責を受けることができなくなります。

例えば、2011年1月1日に裁判所から自己破産の免責許可を受けている人の場合、そこから7年間が経過する2017年12月31日が来るまでは、2度目の自己破産による免責は受けられないことになります。

逆に言うと、7年間が経過した後であれば、2度目の自己破産であっても問題なく免責を受けられる可能性があることになります。

2度目の自己破産では、裁量免責の判断が厳しくなる可能性大

ただし、2度目の自己破産を検討する際に注意しなくてはならないのが、裁量免責の判断がきびしくなる可能性があることです。

裁量免責とは、本来は法律上免責を出すことができないけれど、手続きをしている人の生活状況などを見ながら、裁判官が特別に免責を出すというものでした。

2度目の自己破産の場合には、ギャンブルや浪費によって借金を作ってしまったようなときに裁量免責を行うかどうかの判断基準が厳しくなってしまう可能性があるのです。

別の債務整理をしてから自己破産を行う場合

上で見たのは「1回目の自己破産→2回目の自己破産」というケースでした。

すでに説明した通り、このケースでは「1回目の自己破産免責から7年間が経過していること」が2回目の自己破産免責を受けるための条件となります。

一方で、過去に行った債務整理が自己破産以外の方法であった場合にはどうなるでしょうか(例えば、「個人再生→自己破産」というようなケース)

結論から言うと、この場合には自己破産による免責を受けることに問題はありません(自己破産手続きを行うにあたって、特別な条件はつきません)

過去に自己破産以外の方法によって債務整理を行っていることは、自己破産の免責を受けるための条件に含まれていないからです。

実際、最初の債務整理を行ったときにはある程度収入があったので、個人再生によって借金整理を行ったけれど、その後に病気にかかってしまったり、失業してしまったりしたことによって自己破産を選択せざるを得なくなったというケースは珍しくありません。

最初は任意整理や個人再生によって借金からの脱出を検討していたけれど、どうもうまくいかなくなってしまった…という方は、最後の手段として自己破産による免責を受ける方法があるということを知っておいてくださいね。

実際には免責不許可になるのはレアケース

ここまでの内容で説明したように、法律上の条件としては浪費やギャンブル、投資の失敗などによって借金を負ってしまった場合には自己破産による免責は受けられないルールとなっています。

一方で、実際の裁判所の判断としては、こうした事情によって借金を負ってしまった人の場合にも、多くのケースで裁量免責により自己破産の免責が認められているのです。
Expert
自己破産をはじめとする債務整理の方法は、本来は大きすぎる金額の借金を負ってしまった人を救済する目的で用意されている方法ですから、裁判所は「手続きをする人が生活を立て直すためにはどうしたら良いか?」を第一に考えながら判断を行っているといえるでしょう。

自己破産は、手続きを適切に行わないと免責が出ない

自己破産によって借金の免責をしてもらうためには、法律で定められたルールに従って手続きを進めていかなくてはなりません。

もし裁判所が求めてくる提出書類を提出しなかったり、出頭を命じられた時に理由なく欠席したりしたような場合には、自己破産の手続きが途中で取り消されてしまうというケースも考えられます。

以下ではどのような手続きを経て自己破産による借金の免責が認められることになるのか?についておおまかに理解しておきましょう。

①裁判所に対して申し立てを行う

まずは裁判所に対して自己破産手続き開始の申し立てを行わなくてはなりません。

申立てを行う際の必要書類として、借金や資産の総額について一覧表を作るとともに、あなたの生活状況や収入金額などについてくわしく報告する書類を作成することが求められます。

必要書類がそろうと、裁判所はあなたの自己破産のための手続きを開始する旨の決定を出します。

②裁判所内部での手続き

申立てが受理された後には、裁判所内部の手続きが始まります。

裁判所内部での手続きは、基本的には書類提出と、その書類の具体的な内容について裁判所から質問がきた場合に電話や書面で回答するという形で進んでいきます。

ただし、自己破産を行うあなた自身が、裁判所から出頭を命じられて裁判官と面談をする期日が通常は1回、複雑なケースでは数回にわたって行われる可能性があります。

法律の専門家に手続きを依頼した場合には一緒に同行してくれたり、あなたの代わりに説明をしてくれたりしますが、自分で手続きをする場合には命じられた期日に出頭して裁判官に対して直接口頭で説明をする必要があります。

③免責決定が出る

裁判所内部での手続きについても問題がなかった場合、裁判所は免責決定を出してくれます。

免責決定が出たのと同時に借金は免責(つまり0円になる)されますので、ここからまた新たな生活が始まることになります。

これまでの借金の重荷がまったくなくなるわけですから、生活をしていくうえでの負担は非常に軽くなるでしょう。

ただし、自己破産などの債務整理の手続きを行った後は、数年間(自己破産の場合は10年間)は新たにローンを組んだり、クレジットカードを作ったりということができなくなってしまいますから、収入の範囲内で計画的に生活していくことを心掛ける必要があります。

まとめ

今回は、自己破産による借金の免責を受けるために必要な条件について説明しました。

法律のルールでは自己破産が認められない条件に該当してしまう状況にある方も、あきらめずに自己破産の免責が受けられる方法がないかを検討してみてください。

その際、通常の自己破産手続きとは異なり、裁判所の心証をよくするための書類作成の方法や、手続きの進め方について、債務整理を専門とする弁護士や司法書士にアドバイスを受けるようにしてください。

法律実務の知識がない人が1人で自己破産の手続きを行った場合、特に免責不許可に該当する可能性があるケースでは、せっかく時間をかけて自己破産手続きを行ったとしても、結局は免責が出ず借金もそのままということにもなりかねません。

弁護士や司法書士の事務所では相談は無料でできるところが多い他、費用についても後払いや分割払いに応じてもらえるケースがほとんどです。

今は手持ちのお金がなくて困っている…という方も、あきらめることなく相談してみてくださいね。

コメントを残す