養老保険とは
養老保険とは、生命保険の一種で
- 満期を迎える前に亡くなってしまった場合は死亡保険金が受け取れる
- 無事に満期を迎えた場合は、死亡保険金と同額の満額保険金が受け取れる
という商品です。
保険料は総じて高め
満期を迎える前に亡くなってしまっても、無事に元気で満期を迎えたとしても保険金が給付されるという性質上、定期保険などの掛け捨て型の保険はもちろん、終身保険と比べても保険料は総じて高めです。
保険期間は比較的低い
保険期間は一定で、10年・15年などの年数や、50歳まで・60歳までのように具体的な年齢で区切られることが多いです。
年満了タイプ | 10年、15年というように、年数に基づき保険期間を設定する |
---|---|
歳満了タイプ | 50歳、60歳、70歳までといった年数で保険期間を設定する |
会社の福利厚生として使われることも
養老保険は個人で加入することはもちろん、福利厚生の一環として、法人が従業員や役員を被保険者として加入することも可能です。つまり、従業員や被保険者の定年、退任のタイミングに合わせて保険期間を設定し
- 定年、退任の前に亡くなってしまった場合は、法人が死亡保険金を受け取って死亡退職金を支払う元手にしたり、受取人として指名した被保険者の親族に死亡弔慰金として渡るようにする
- 満期になった後、定年、退任を迎えた場合は、それを元手にして退職金や役員退職金を払う
などのように、活用する方法が考えられます。また、被保険者・死亡保険金受取人・満期保険金受取人が誰かにもよりますが、保険料を費用として計上できるので、節税効果も見込めるのです。
被保険者 | 死亡保険金受取人 | 満期保険金受取人 | 保険料の経理処理 |
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従業員・役員 | 法人 | 法人 | 全額資産計上 |
従業員・役員 | 被保険者の親族 | 被保険者 | 全額損金計上(給与として費用に計上) |
従業員・役員※ | 被保険者の親族 | 法人 | 1/2損金計上(支払保険料として費用に計上) |
一部の従業員・役員 | 被保険者の親族 | 法人 | 1/2損金計上(給与として費用に計上) |
養老保険のメリット
ここで、養老保険のメリットについて考えてみましょう。
1.強制力を持ってお金を貯められる
養老保険は、毎月もしくは毎年など、決まった時期ごとに保険料を支払っていかないといけません。一見、このことはデメリットにも見えるかもしれませんが「強制的にお金を貯められる」というメリットにもつながります。実際は、あらかじめ定めた日になると、支払元として指定されている銀行口座から引き落とされるので、自分ではなにもする必要はありません。
2.どちらに転んでも保険金が受け取れる
養老保険は、生命保険の一種です。同じく生命保険に分類される定期保険の場合、保険期間中に万が一のことがあれば保険金を受け取れますが、何もなければ(本来は喜ばしいことですが)保険金は受け取れません。終身保険も、天寿を全うすれば保険金は受け取れますが、それまでは祝い金や一時金を受けとらない限りは、基本的に何も受け取れません。そのため、まとまったお金を手に入れる手段としては、やや不向きです。
しかし、養老保険であれば、保険期間が満了する前に亡くなってしまっても、元気で保険期間が満了したとしても、死亡保険金か満期保険金としてまとまったお金を受け取ることができます。
養老保険のデメリット
一方、デメリットについても考えてみましょう。
1.毎月の保険料が負担になることも
養老保険は万が一のことがあったら死亡保険金が、満期を無事に迎えたら満期保険金が受け取れる仕組みの保険です。いわば、保険金を確実に受け取れる商品であるため、毎月支払わなくてはいけない保険料もおのずと高くなります。しかも、養老保険は満期を迎える前に解約してしまうと解約返戻率が低くなってしまうため「払ったお金の一部しか戻ってこず、損をしてしまう」という落とし穴もあるのです。
養老保険に入る際は「毎月いくらまでなら払い続けられそうか」を考えてみましょう。
2.昔ほどの高い満期保険金は期待できない
日本がバブル景気に沸いていた1990年ころは、養老保険は「貯蓄できて、将来への備えもできる商品」として、非常に人気がありました。その背景の1つとして考えられるのが、保険会社の予定利率です。簡単にいうと、保険会社が顧客に対して約束する予定利回りのことですが、バブル経済崩壊後はどんどん下がってきています。
予定利回りがどんどん下がってきている以上、満期を迎えるまでに払い込んだ保険料の合計額より満期保険金が少ないという現象も起こっている点は意識しておくべきでしょう。
3.いきなり販売を終了することもあり得る
保険会社だって企業である以上、運用成績が芳しくなく、顧客への還元も見込めそうにない商品は、どこかのタイミングで販売を停止する判断に追い込まれることもあり得ます。自分が目をつけていた養老保険がいきなり販売を停止してしまうのも珍しくありません。養老保険への加入を検討する際は、まずは「今、本当に販売されているのか」をリサーチしておきましょう。
養老保険の代わりに使えそうなものは?
かつて養老保険は、万が一があったときに受け取れる死亡保険金や、満期を迎えたときに受け取れる満期保険金の返戻率(それまでに支払った保険料に対する割合)が高いため、効率的にまとまったお金を得られる手段として人気がありました。しかし、昨今では、保険会社の予定利率がどんどん下がっているため、貯蓄商品として養老保険を利用するメリットがあまりないのも事実です。そこで「将来、まとまったお金を貯めるために利用できる」他の商品も比較検討してみましょう。
1.ネット銀行の定期預金
定期預金は、昔から老後資金の貯蓄など「まとまったお金を貯めるための手段」として広く用いられてきました。1980年代後半から1990年代前半のバブル絶頂期なら、定期預金でも年利5.0%を超えることは決して珍しくなかったのです。しかし、今では大手都市銀行の定期預金の金利が年0.002%と極めて低くなっています。定期預金として預けていても、ほとんど利息がつきません。
「せめてもう少し利息を」と思うなら、ネット銀行の定期預金を検討しましょう。たとえば、イオン銀行の定期預金の場合、金利は年0.020%と都市銀行に比べるとはるかに高いです。しかし、それでも「ちょっと利息が付くかな」程度なので、大きく増やしたい場合にはあまり向かない手段です。
2.iDeCo(イデコ)
個人型確定拠出年金のことで、愛称であるイデコが広く用いられています。簡単に言うと、専用の口座を証券会社や銀行に開設し、自分で毎月一定額を掛金として積み立て、投資信託などの金融商品で運用する方法です。そして、60歳になった時点で、老齢給付金を受け取ります。
- 掛金、運用益、老齢給付金の受け取りの時点で税制上の優遇が受けられる
- 自営業、公務員、会社員(一定の条件あり)、専業主婦など様々な立場の人が利用できる
ことから、老後資金の調達を見据えた資産運用として近年注目されています。長期に渡る資産形成ができるのがメリットではあるものの、金融商品の運用を前提しているため、損をするリスクがあるのも事実です。利用する際は、証券会社や銀行の担当者のいうことをうのみにするのではなく、様々な情報を比較検討して選ぶようにしましょう。
養老保険を選ぶポイント
次に、養老保険を選ぶポイントとして
- 保険金額や保険期間は加入目的に合わせて選ぶ
- 返戻率は高ければ高いほどいいが、現状は厳しい
- 貯蓄が目的なら特約はつけない方が無難
- 自分たちが希望する内容でいくら保険料がかかるか比較検討する
- 円建てか外貨建てかを選ぶ
の5つを解説します。
ポイント1.保険金額や保険期間は加入目的に合わせて選ぶ
養老保険を契約する際に最初に考えるべきこととして
を考えましょう。たとえば
- 自分に万が一のことがあった時に家族の生活費の足しにしたい
- 孫の進学資金や結婚資金のためにお金を貯めたい
- 定年後に夢だった夫婦で世界一周をやりたい
などです。貯めたお金を何に使うかがわかれば、おのずと「どのくらいあればいいのか」が決まってきます。そこから「毎月いくら、何年払い続ければいいのか」も、おのずと逆算できるはずです。
ポイント2.返戻率は高ければ高いほどいいが、現状は厳しい
既に触れた通り、1990年代初頭のバブル景気の当時は、今とはくらべものにならないほど予定利率が高かったこともあり、養老保険は「貯蓄をしながら万が一にも備えられる」保険として、絶大な支持を誇っていました。しかし、その後バブル経済は崩壊し、保険会社もどんどん予定利率を切り下げてきたことから、今では養老保険に昔のような貯蓄性は期待できないのも事実です。
。もちろん、満期返戻率は契約時の年齢や性別によっても異なるので、単純に比較をすることはできません。でも、なるべくなら100%を上回っているか、下回っていても限りなく100%に近いものを選ぶといいでしょう。
ポイント3.貯蓄が目的なら特約はつけない方が無難
養老保険の中には、医療特約などのように、特約(オプション)を付けることで、他の保険としての機能を持たせられるものが存在します。しかし、貯蓄が目的であるなら、特約はつけない方がいいでしょう。特約を付ければ補償される範囲は広がりますが、その分、保険料は高くなります。
ポイント4.自分たちが希望する内容でいくら保険料がかかるか比較検討する
養老保険は、決して安くない保険料を一定の期間払わなくてはいけない商品です。そのため
という考え方で選ぶことが非常に重要になります。養老保険を選ぶ際は、1つの商品を見ただけで決めるのではなく、2~3種類くらいは比較検討してみてください。
ポイント5.ドル建てか円建てかを選ぶ
養老保険を「どの通貨で積み立てるか」を基準にして分類すると、円建てのものとドル建てのものに分かれます。つまり
- 円建て:日本円で保険料を払い、日本円で保険金を受け取る
- ドル建て:米ドルで保険料を払い、米ドルで保険金を受け取る
ということです。ドル建ての養老保険は、外貨建て生命保険の一種であるため高い運用利回りが期待できるというメリットがあります。しかし、死亡保険金や満期保険金の受取はすべて米ドルで行う以上、円高ドル安になった状況下で、日本円に換算すると結果として損をしてしまうこともあり得るのです。
そのリスクを理解し、運用の一環としてとらえられるのであれば、検討してみてもいいでしょう。また、かなり特殊なケースですが
など、日本円に換算しないで米ドルのまま持っている事情があるなら、あまり気にする必要はありません。
現役FPがおすすめする養老保険ランキング
ここから先は、現役FPがおすすめする養老保険を、ランキング形式で発表していきましょう。
1位 特殊養老保険/ソニー生命
契約可能年齢 | 0~78歳 |
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払込期間 | 契約年齢によって違うので保険会社に要確認 |
払込経路 | 口座振替 |
払込方法 | 年払、半年払、月払 |
保険金額 | 50万円~4億9.995万円 |
主な特約・特則 | 平準定期保険特約 平準定期保険特約(喫煙リスク区分型) 無解約返戻金型平準定期保険特約 家族収入特約 生前給付金定期保険特約 災害死亡給付特約 傷害特約 がん特約 リビング・ニーズ特約 買増権保証特約 5年ごと利差配当付年金支払特約 災害死亡給付特約 |
特殊養老保険をおすすめする理由
特殊養老保険は、ソニ―生命の養老保険です。この商品をおすすめする理由として
- 年齢が上がるほど保険金額も上がるため、手堅く備えられる
ことが挙げられます。この商品の仕組み図を見てみましょう。
図を見るとわかるように、保険期間のうちの前半は、契約時に定めた基本保険金額のまま推移し、後半は保険金額が基本保険金額の2倍に達するまで毎年増加するというユニークな商品です。しかし、これは「年齢が上がれば上がるほど、死亡時・高度障害時の保障金額が増える」という意味にもなります。必要な補償という面では、理にかなった商品でしょう。あえてデメリットがあるとすれば
- 保険金を年金で受け取りたい場合は、特約を設定しなくてはいけない
- 万が一、契約してからすぐに亡くなってしまった場合は、満額の死亡・高度障害保険金を受け取ることができない
ことでしょう。この商品の特約の中に「5年ごと利差配当付き年金支払特約」があります。この特約を付加しておけば、保険金を5年ごとに年金で受け取れますが、毎月の保険料が高くなる点に注意は必要です。
また「保険期間のうちの前半は、契約時に定めた基本保険金額のまま推移する」という仕組みを導入しているということは、保険契約から年数が経たないうちに万が一のことになってしまった場合は、基本保険金額の2倍に達することなく終わってしまうということです。状況次第では、当初の予測通りの保険金が給付されないリスクもある、という点に気を付けましょう。
2位 養老保険/ソニー生命
契約可能年齢 | 0~78歳 |
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払込期間 | 契約年齢によって違うので保険会社に要確認 |
払込経路 | 口座振替 |
払込方法 | 年払、半年払、月払 |
保険金額 | 100万円~7億円 |
主な特約・特則 | 平準定期保険特約 平準定期保険特約(喫煙リスク区分型) 無解約返戻金型平準定期保険特約 家族収入特約 逓減定期保険特約 生前給付金定期保険特約 災害死亡給付特約 傷害特約 がん特約 リビング・ニーズ特約 買増権保証特約 5年ごと利差配当付年金支払特約 災害死亡給付特約 |
養老保険をおすすめする理由
こちらも、先ほど紹介した特殊養老保険と同じく、ソニー生命が提供する養老保険です。しかし、特殊養老保険と決定的に違うのは、保険期間が開始したときから、死亡・高度障害保険金と満期保険金が基本保険金額と同じであるということです。ここからメリットを考えてみると
- 養老保険に加入してすぐに万が一のことが起こったとしても、保険金は基本保険金額と同じく受け取れるので、資金計画が狂うこともない
が挙げられます。この商品の仕組み図を見てみましょう。
図からもわかるように、いつ保険金を受け取ったとしても、金額が変わることはあり得ません。一方、デメリットとしては
- 特殊養老保険に比べると、保険料はやはり高い
ことでしょう。