目次
生命保険会社の契約者貸付制度でお金を借りる方法とは
最初に、生命保険会社の契約者貸付制度について、基本的な部分を解説しましょう。
「保険会社からお金を借りられる」制度
生命保険会社の契約者貸付制度とは、加入している保険の解約返戻金の一定の範囲内で、保険会社から貸付を受けることのできる制度です。もっと簡単に言うと「保険会社から、解約返戻金を担保にしてお金を借りられる」制度と考えましょう。
何度でも借りられて利用目的も問われない
契約者貸付制度では、あらかじめ決められた上限の範囲内で何度でも借り入れを行うことができます。しかも、利用目的は問われません。
具体的な数字は保険会社や契約の状況によって異なりますが、一般的には解約返戻金の7~9割を上限として設定していることがほとんどです。

金利は「いつ契約した保険なのか」で決まる
契約者貸付制度は、いわば保険会社から借金をしている状態であるということです。そのため、借入金額に応じて利息が発生する点に注意しましょう。
利息を計算する上での根拠になる利率は、保険会社の定めるところによります。基準となるのが「制度の対象となる契約における契約日」であることに注意が必要です。つまり「いつ契約した保険なのか」が重要になるので、必ず確認しましょう。

ご契約日 | 利率 |
---|---|
2013年4月2日以降 | 年 2.15% |
2004年1月2日~2013年4月1日 | 年 2.50% |
2001年10月2日~2004年1月1日(旧明治生命契約) | 年 2.50% |
2001年4月2日~2004年1月1日(旧安田生命契約)(※4) | 年 2.75% |
1999年4月2日~2001年10月1日(旧明治生命契約) | 年 3.00% |
1999年4月2日~2001年4月1日(旧安田生命契約)(※4) | 年 3.00% |
1996年4月2日~1999年4月1日(※4) | 年 3.75% |
1994年4月2日~1996年4月1日(※4) | 年 4.75% |
1994年4月1日以前 | 年 5.75% |
また、貸付金の利息は、借入日から発生します。極端な話、1日借りてすぐに返済したとしても、利息を支払わなければいけない、ということです。詳しくは後述しますが、利息の計算方法も含め「いくら借りたら、利息がどのようにつくのか」は理解しておきましょう。
入金までのスピードが速い
契約者貸付は、既に保険を契約している人のための制度であるため、特別な審査もいりません。早ければその日のうちに、遅くても2営業日程度で実際にお金を借り入れることができます。
返済方法は一括、分割が選べる
契約者貸付制度の場合、返済方法も自分の都合に合わせて比較的自由に選べます。一括返済はもちろん、分割返済も可能です。ただし、借りている期間が長ければ長いほど、返済の際に支払わなくてはいけない利息が高くなります。なるべく一括払いを選ぶか、分割払いを選んだとしても、繰り上げ返済をこまめにして、利息を払いすぎないように気を付けましょう。
カードローンやキャッシングとも比較しよう

契約者貸付以外のお金を借りる一般的な手段として、カードローンやキャッシングと契約者貸付を比較してみましょう。
項目/借入方法 | 契約者貸付 | カードローン | キャッシング |
---|---|---|---|
担保 | 不要 | 原則不要 | 原則不要 |
審査や信用情報機関への登録の有無 | 審査なし。登録されない | 審査あり。登録される | 審査あり。登録される |
金利(年利) | 3%程度~8%程度(保険会社や契約時期で異なる) | 3%程度~18%程度(条件次第) | 15%程度~18%程度(条件次第) |
融資の限度額 | 契約した生命保険の解約返戻金の7~9割程度 | 10万~1000万円程度(条件次第) | 10万~100万円程度(条件次第) |
申込方法と融資のスピード | ネットや郵送、窓口など。ネットで2日程度、郵送で1週間程度 | ネットが主流。即日融資も可能(条件次第) | ネットが主流。即日融資も可能(条件次第) |
返済が遅れた場合 | 特に督促は行われない。ただし、元金と利息が解約返戻金を超えた後も返済がされないと、保険が失効する恐れがある。 | 督促あり。遅延損害金が発生する上に、長期の延滞は個人信用情報に異動情報として登録される。 | 督促あり。遅延損害金が発生する上に、長期の延滞は個人信用情報に異動情報として登録される。 |
生命保険会社の契約者貸付制度でお金を借りる方法のメリット
ここで、生命保険会社の契約者貸付制度でお金を借りる方法のメリットについて考えてみましょう。次の4つのメリットについて解説します。
- 保険を解約せずにお金を借りられる
- カードローンやキャッシングに比べると金利は低い
- 審査はない上に個人信用情報に記録もされない
- 返済方法が幅広く、都合に合わせて選べる
1.保険を解約せずにお金を借りられる
勤務先の会社の業績が振るわなかったリ、突然リストラの対象になったり、急に病気になったりなどの理由で、当初予定していたお金が入ってこないとき、どうやって代わりのお金を確保するかが問題になります。その時に「今まで入っていた保険を解約する」ことでお金を確保しようとする人もいるかもしれません。確かに、解約すれば、まとまったお金は手に入りますが
- 解約返戻金が今までに払ってきた保険料の合計を下回る場合が大半である
- 保険契約がなくなるので、保障は受けられない
と、それなりにデメリットはあります。
2.カードローンやキャッシングに比べると金利は低い
実際の数字は保険会社や保険を契約した時期によっても異なりますが、契約者貸付は銀行・消費者金融のカードローンやクレジットカード会社のキャッシングに比べると金利は低いです。ここで
- 保険会社の契約者貸付の利率(明治安田生命、2013年4月2日以降の契約分)
- 銀行カードローンの利率(みずほ銀行、利用限度額が10万円~100万円の場合の基準金利、2020年9月1日時点)
- 消費者金融のカードローンの利率(アコム、利用限度額が1万円~99万円の場合の適用金利、2020年9月1日時点)
- クレジットカード会社のキャッシングの利率(クレディセゾン、実質年率、2020年9月1日時点)
を比べてみましょう。
保険会社の契約者貸付の利率 | 年 2.15% |
---|---|
銀行カードローンの利率 | 年 14.0% |
消費者金融のカードローンの利率 | 年7.7%~18.0% |
クレジットカード会社のキャッシングの利率 | 年12.0%~18.0% |
参照:【アコム公式FAQ】利率はいくらですか?|カードローン・キャッシングならアコム


借入時の年利が高いほど、返済が長期間に及んだ場合、支払うべき利息の額は膨れ上がっていきます。そのため、銀行や消費者金融のカードローン、クレジットカード会社のキャッシングに比べるとかなり低い金利で借りられる契約者貸付制度を利用するのも1つの手段です。
3.審査はない上に個人信用情報に記録もされない
銀行や消費者金融のカードローン、クレジットカード会社のキャッシングを利用するには、審査を受ける必要があります。審査の結果、利用できないことも往々にしてあるのです。また、利用できたとしても、利用履歴は個人信用情報に記録されます。個人信用情報に異動情報が登録されていなかったとしても、カードローンやキャッシングの利用履歴が多いことが原因で、クレジットカードやローンの新規利用ができない可能性はゼロではありません。
しかし、契約者貸付制度は、長期にわたり保険料の延滞・滞納が続いているなど、特殊な事情がない限りは、所定の手続きを行うだけで利用できます。もちろん、審査もありません。利用した事実や履歴が個人信用情報として登録されることもないので、新規でクレジットカードやローンを申し込んだとしても、契約者貸付制度を利用した事実が影響することもないでしょう。
4.返済方法が幅広く、都合に合わせて選べる
保険会社によっても多少の差はありますが、契約者貸付制度を通じて借りたお金の返済方法は、借りた側の都合に合わせて一括、分割を選べる場合が多いです。もちろん、分割を選んだとしても、まとまったお金があれば繰り上げ返済を行うことも可能です。自分の都合に合わせて返済をしていけるのは、やはり大きなメリットでしょう。
生命保険会社の契約者貸付制度でお金を借りる方法のデメリット
一方、生命保険会社の契約者貸付制度にはデメリットもあります。
- 解約返戻金のある保険でないと使えない制度である
- 契約してから日が浅いと利用しにくい
- お祝い金、満額返戻金などから差し引かれることも
- 保険が失効する可能性がある
の4つについて解説しましょう。
1.解約返戻金のある保険でないと使えない制度である
そもそも保険会社の契約者貸付制度は、解約返戻金があることを前提にした制度です。そのため、解約返戻金が設定されている保険を契約している場合でないと利用できません。自分が入っている保険がいわゆる掛け捨て型だった場合、解約返戻金もないので契約者貸付制度自体が利用できないのです。まずは、自分が入っている保険を調べ、解約返戻金が設定されているものがないかどうかを確認しましょう。
2.契約してから日が浅いと利用しにくい
解約返戻金がある保険であったとしても、契約してから日が浅い場合は、契約者貸付制度自体を利用できないか、利用できてもそんなに大きな金額は借りられないことにも注意しましょう。解約返戻金は、解約の時点にまで払った保険料に基づき決定されます。当然、保険を契約した時点から長い年月が経過してからの方が、解約返戻金の額も大きくなるはずです。裏を返せば、保険を契約した時点から日が浅いと、仮に解約した場合の解約返戻金は非常に少ないでしょう。
3.お祝い金、満額返戻金、保険金などから差し引かれることも
契約者貸付制度を利用してお金を借りている間に
- 万が一のことがあり、保険金が支払われることになった
- 10年無事故だったのでお祝い金がもらえることになった
- 保険自体が満期を迎えた
など、保険会社からなんらかのお金を支払ってもらえることになった場合は、契約者貸付にかかる元利金(元本+利息)が差し引かれます。学資保険など、まとまったお金が必要な予定のために契約していた保険を通じて契約者貸付制度を利用していた場合、十分な金額を受け取れない点に注意が必要です。
4.保険が失効する可能性がある
契約者貸付制度のメリットは
- 返済方法が広く、自分の都合に合わせて選べる
- 督促も特にされない
ことにあります。しかし、これをいいことに無計画に契約者貸付制度を利用してお金を借りていると、いつの間にか保険が失効してしまうおそれもあるので注意してください。
契約者貸付制度により借りたお金の元本(元金)と利息が解約返戻金を上回った場合、保険会社は指定の期日までに返済を行うよう通知してきます。通知された所定の日までに返済しなかった場合は、保険契約は失効してしまうのです。


生命保険会社の契約者貸付制度でお金を借りるまでの手順
実際に、生命保険会社の契約者貸付制度でお金を借りるにはどうすればいいのでしょうか。利用するための方法は、保険会社によってまちまちですが、一般的に用いられていることが多い方法を紹介しましょう。
店頭申し込み
保険会社の支店窓口に赴き、直接申請する方法です。本人確認のための印鑑、本人確認書類などが必要な場合がほとんどとなっています。予約をしておくと対応がスムーズになるので、事前に連絡してみましょう。
担当者、コールセンターとのやり取り
保険会社によっては、1人1人に担当者がつくケースがあります。問い合わせをすれば、手続き用の書類を送ってくれます。必要事項を記入して返送すれば大丈夫です。また、担当者がついていない場合は、コールセンターに連絡をし、対応してもらいましょう。
電話による自動取引
保険会社によっては、契約者貸付制度を利用するための専用ダイヤルが用意されています。所定の番号に電話をかけ、金額やパスワードの入力をすると、それだけで事前に指定した口座にお金が振り込まれる仕組みです。
専用サイトからの申請
保険会社によっては、保険会社の公式ホームページ内から契約者貸付制度の利用申請が行える場合もあります。IDやパスワードを入力すれば、借り入れ、返済ができる仕組みです。
ATMの利用
契約者貸付制度の利用希望者に対し、専用カード・ID・パスワードを交付する保険会社もあります。実際に利用する際は、これらを使って銀行、コンビニ、スーパー、郵便局などにあるATMからお金を引き出す仕組みです。
生命保険会社の契約者貸付制度でお金を借りる上での注意点
最後に、生命保険会社の契約者貸付制度でお金を借りる上での注意点について解説しましょう。
1.保険が失効する可能性がある
契約者貸付制度は、一定の範囲内でなら自由にお金を借りることができ、しかも督促もされないというかなり便利な制度です。しかし、借りたお金の元本(元金)と利息が解約返戻金を上回ると、保険契約自体が失効してしまう点には注意しなくてはいけません。
複利と単利の違いを押さえよう
「この金額を借りた場合、最終的にはいくら支払うことになるのか」を正確に把握する上で重要になるのが、利息の計算における単利と複利の違いを正確に理解することです。
簡単に言うと
- 単利:「預けた元本」にのみ利息が付く
- 複利:「預けた元本+これまで発生した利息」に利息が付く
ということです。

例えば、元本500万円、年利が2%だった状態が30年続いた場合
- 単利で運用した場合の金額:500万円 + 500万円 × 2% × 30年 = 800万円
- 複利で運用した場合の金額;500万円 + 500万円× 1.0230年 = 905万6,808円
と、計算結果が全く異なるのです。契約者貸付制度は、元本と金利の合計額が解約返戻金を上回ったタイミングで契約者に対して返済の通知を行います。その際、金利の計算方法を正確に把握していないと、いつ返済の通知が来るのかが全く読めないのです。わからなければ保険会社の担当者に聞くなどして、常に正確な情報を手に入れるようにしましょう。
2.お宝保険で利用するときは注意が必要
契約者貸付制度を利用する際には「どの保険を通じて利用するのか」にも気を付けるべきです。契約者貸付制度は、借り入れを行ったら元本と利息の合計額を返済しなくてはいけませんが、その際、利息の計算にあたっては「いつ保険を契約したか」によって適用される利率が全く違います。そのため、適用される利率が高い時期に契約した保険を通じて契約者貸付制度を利用する場合は注意が必要です。このような背景もあるので、いわゆる「お宝保険」を通じて契約者貸付制度を利用する場合は、特に気を付けてください。
お宝保険とは、明確な定義があるわけではないのですが、一般的には昭和60(1985)年~平成2(1989)年の間に契約した生命保険のことを指します。この時期はちょうどバブル経済の真っただ中で景気がよかったため、現在とは比較にならないほど、保険の予定利率が高かったのです。当然、契約者貸付制度を利用する場合の利率も、このような背景が反映されています。例えば、明治安田生命の場合、保険の契約日によって適用される契約者貸付制度の利率は以下のように設定されていますが、1994年4月1日以前の契約と2013年4月2日以降の契約とでは、倍以上違うのがわかるはずです。
ご契約日 | 利率 |
---|---|
2013年4月2日以降 | 年 2.15% |
2004年1月2日~2013年4月1日 | 年 2.50% |
2001年10月2日~2004年1月1日(旧明治生命契約) | 年 2.50% |
2001年4月2日~2004年1月1日(旧安田生命契約)(※4) | 年 2.75% |
1999年4月2日~2001年10月1日(旧明治生命契約) | 年 3.00% |
1999年4月2日~2001年4月1日(旧安田生命契約)(※4) | 年 3.00% |
1996年4月2日~1999年4月1日(※4) | 年 3.75% |
1994年4月2日~1996年4月1日(※4) | 年 4.75% |
1994年4月1日以前 | 年 5.75% |
(※4)旧安田生命契約のうち、ご契約日が1995年9月9日~1998年5月5日までの一時払養老保険および1998年10月2日~2001年4月1日までの一時払終身保険は年3.00%、ご契約日が1998年5月6日以降の一時払養老保険、一時払特殊養老保険、一時払新・年金保険、一時払新・年金保険(1994)は年2.75%となります。
