警察の公衆接遇弁償費でお金を借りる方法。メリットデメリット・お金を借りるまでの手順を丁寧に解説

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警察の公衆接遇弁償費とは

公衆接遇弁償費とは「財布を落としてしまった」「急病になった人を助けなくてはいけない」など、一定の理由に当てはまる場合にのみ、最低限必要なお金を貸し出してくれる制度のことです。もともとは警視庁(東京都を管轄する警察)が1968年からこの名前で導入しました。なお、大阪府警、千葉県警など、他の都道府県の一部でも、類似の制度を導入しています。

そこで、今回の原稿では「警察の公衆接遇弁消費」を「警視庁の公衆接遇弁消費および他の都道府県警で導入されている類似の制度」を表す言葉として、以降の説明を行いましょう。

警察の公衆接遇弁償費でお金を借りる方法のメリット

最初に、警察の公衆接遇弁償費でお金を借りる方法についてメリットを解説しましょう。

  1. どうしてもお金が無くなった時に利用できる
  2. 公的機関から借りるため利子はつかない

の2点について解説します。

1.どうしてもお金が無くなった時に利用できる

警視庁では、公衆接遇弁消費に関しての規定として「公衆接遇弁償費取扱要綱」を設けています。その中では、公衆接遇弁償費の貸し出しを行える具体的な理由として、次の4つが掲げられているのです。

  1. 外出先で財布を盗まれたり、失くしたりして家に帰れなくなった
  2. 家出してきた人を保護しなくてはいけない
  3. 急病や大ケガをした人を助けるためにお金が必要である
  4. その他、貸し出しにあたっての合理的な理由が認められる

どれも、お金がないと大変なことになる事態であるのは間違いありません。このような事態を想定し「公衆に対する利便供与または応急的な措置に要する経費」として、公衆接遇弁償費の貸し出しを行っているのです。

なお、理由の1つに「その他、貸し出しにあたっての合理的な理由が認められる」とあります。財布を失くしたなどの具体的な理由がなくても、お金が無くなった経緯を話せば、公衆接遇弁償費の貸し出しが受けられるかもしれないので、本当に困った時の手段として覚えておきましょう。

2.公的機関から借りるため利子はつかない

警視庁や各都道府県警は、公的機関です。公的機関が公共の利益のために貸し出すお金という性質上、借りたところで利子はつきません。

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ただし、返済しないとあとで大変なことになるので注意してください。この件は、あとで説明します。

警察の公衆接遇弁償費でお金を借りる方法のデメリット

一見、非常に便利でメリットの多い制度のように思える警察の公衆接遇弁償費ですが、デメリットもあるのが事実です。ここではデメリットとして

  1. 借りられる理由が限られている
  2. 多額の現金は借りられない
  3. 返済が遅れると逮捕されることもある
  4. ごく一部の都道府県でしか利用できない制度である

1.借りられる理由が限られている

そもそも、警察の公衆接遇弁償費は「公衆に対する利便供与又は応急的な措置に対する経費」としての性質を有しています。つまり「本当に困った人がいて、しかも早急に対応しなくてはいけない」と合理的に認められる、ごく限られた場合にしか使えないことを想定しているのです。具体的には、次の4つのいずれかに当てはまれば、公衆接遇弁償費の貸し出しが受けられます。

  1. 外出先で財布を盗まれたり、失くしたりして家に帰れなくなった
  2. 家出してきた人を保護しなくてはいけない
  3. 急病や大ケガをした人を助けるためにお金が必要である
  4. その他、貸し出しにあたっての合理的な理由が認められる
teacher
つまり「ギャンブルでお金がなくなった」などの、個人的な理由では借りられない、ということです。

また、上記の理由に当てはまる場合だったとしても

  • 財布を失くしたり、盗難にあったりしたが、家族が迎えに来てくれることになった
  • 急病や大ケガをした人の家族と連絡がつき、病院に来てくれることになった

など、お金をまかなうための他の手段があった場合は、他に対応のしようがあるということで、貸してもらえません。

未成年の場合は保護者に連絡がいく

たとえ、未成年であったとしても、上記の4つの理由に当てはまりさえすれば、公衆接遇弁償費の貸し出しを受けること自体はできます。ただし、未成年が単独で行動していることに事件性がないかを確かめる観点から、保護者に電話連絡をするのが通常の流れです。

2.多額の現金は借りられない

公衆接遇弁償費に関する取扱いを規定した「公衆接遇弁償費取扱要綱」によれば、公衆接遇弁償費は1人当たり1,000円までなら現場の判断で貸し出しを行うことができます。しかし、それを上回る場合、大きな病気やケガをした人がいるなど、緊急を要する事情がない限りは、所定の職位にある人の承認を得なくてはいけません。例えば、警察署であれば、地域課長がこれにあたります。

つまり、多額の現金を借りられる状況は限られている上に、基本的には内部での承認が必要になり、それなりに時間はかかります。

本当に必要な最低限の金額しか借りられない、と思っていたほうがいいでしょう。

3.返済が遅れると逮捕されることもある

公衆接遇弁償費に限らず、お金を借りたら返さなくてはいけません。しかし、公衆接遇弁償費の場合、返済が遅れると逮捕されることもあり得るので注意しましょう。いわゆる「寸借詐欺」とみなされるためです。公衆接遇弁償費としてお金を借りた場合は

  • できるだけ早く借りた場所(交番など)に持っていく
  • 遠方で届けられそうにないなら、対応を聞く

などし、スムーズに返済できるようにしましょう。

4.ごく一部の都道府県でしか利用できない制度である

そもそも、公衆接遇弁償費は、警視庁(東京都を管轄)で導入された制度です。千葉県警や大阪府警など、同様の制度を導入している都道府県警はありますが、それもごく一部であり、ほとんどの都道府県では利用できません。

県警察に確認したところ、現在、公衆接遇弁償費や県民の方に現金を貸与するといった制度はありませんが、今後も「犯罪の起きにくい社会づくり」のため、関係機関・団体と連携した防犯意識の高揚や防犯環境の整備、検挙による犯罪の抑止、制服警察官の姿を見せる街頭活動などを推進してまいりますので、警察活動に対するご支援とご協力をお願いいたしますとのことでした。

出典:香川県|公衆接遇弁償費の限度額引き上げについて

事情次第では、交番に詰めている警官がポケットマネーで貸してくれることもあり得ますが、公的な制度として義務付けられているわけではないので、あまり期待しない方がいいでしょう。

交番にお金がなくて借りられない、もあり得る

また、警視庁管内など、警察の公衆接遇弁償費が使える交番だったとしても、公衆接遇弁償費としての利用を許可されている現金は毎月一定額しか支給されません。つまり、交番に在庫がたまたまない場合、借りられないこともあり得ます。

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ここまでくると、運ですよね。

警察の公衆接遇弁償費でお金を借りるまでの手順

次に、警察の公衆接遇弁償費でお金を借りる手順について解説しましょう。大まかな流れを説明すると

  1. 公衆接遇弁償費の貸し出しをしてくれる場所に行く
  2. 担当の警察官にお金が必要である理由を説明する
  3. 借受願書に名前や住所を記入する
  4. 後日、貸し出しをしてくれる場所に行き、返済する

というものです。それぞれについて、より詳しく解説しましょう。

1.公衆接遇弁償費の貸し出しをしてくれる場所に行く

まずは、公衆接遇弁償費の貸し出しをしてくれる場所に行きましょう。東京都の場合、警視庁管内の警察署、交番はもちろん、以下の場所でも借りることが可能です。

  • 鉄道警察隊分駐所
  • 警ら用無線自動車(=パトカー、白バイ)
  • 運転免許試験場
  • 地域安全センター

近くに警察署や交番があれば、そこに相談するのが一番早いです。また、近くにパトカーや白バイがいれば、相談してみるのも1つの手段でしょう。

2.担当の警察官や職員にお金が必要である理由を説明する

公衆接遇弁償費の貸し出しをしてくれる場所に行き、お金が必要なので公衆接遇弁償費を借りたい、と申し出てみましょう。担当の警察官や職員が出てくるので、お金が必要である理由を説明してください。財布を盗まれた、紛失したなどの理由で被害届、紛失届を出したい場合は、一緒に話をするとスムーズです。

また「お金を借りることに合理的な理由がある」と認められる場合であれば

  1. 外出先で財布を盗まれたり、失くしたりして家に帰れなくなった
  2. 家出してきた人を保護しなくてはいけない
  3. 急病や大ケガをした人を助けるためにお金が必要である

の3つの理由とは違っていても、貸し出しを受けられることがあります。経緯を1つ1つ丁寧に説明し、聞かれたことには素直に答えましょう。また、この際に本人確認が行われるケースもあります。財布を落としてしまった場合など、本人確認書類が手元にないときは、家族や会社に電話するなど、他の方法で本人確認を行うのが一般的です。

3.借受願書に名前や住所を記入する

お金が必要である理由が合理的であり、制度の趣旨に沿っていると判断されれば、公衆接遇弁償費の貸し出しが受けられます。借受願書と呼ばれる書類に、必要事項を記入して手続きを進めましょう。なお、主な記入事項は以下の通りです。

  • 名前
  • 住所
  • 電話番号
  • 生年月日
  • 日付
  • 借り入れ理由
  • 借り入れ希望金額
  • 指印

本来であれば、借受願書も公的文書であるため、本人の押印が必要になります、しかし、すべての人が印鑑を持ち歩いているとは限らない上に、公衆接遇弁償費の制度趣旨からいって、手続きを進めている人が印鑑を盗まれてしまっていることも考えられるのです。そのため、指に朱肉をつけ、紙に押し付ける指印でいいことになっています。

嘘を書くのは厳禁

公衆接遇弁償費は本来、公共の利益を図るために貸し出しを行うものです。そのため、取扱いについては厳格な規定が設けられています。借りたいがために、嘘の理由をこしらえたり、偽の電話番号や偽名を使ったりしてはいけません。あまりに悪質と判断された場合、詐欺罪として逮捕・起訴される恐れがあるので、注意が必要です。

4.後日、貸し出しをしてくれた場所に行き、返済する

公衆接遇弁償費の貸し出しを受けたら、なるべく速やかに貸し出しをしてくれた場所に行き、お金を返しましょう。もし、自宅から遠く、なかなか行けそうにない場所で貸し出しを受けた場合は、その旨を伝え「近所の交番や警察署に持っていく」などの代案を出してもらいましょう。

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とにかく大事なのは「借りたお金はなるべく早く返す」ということです。

返済しないと詐欺罪で逮捕される恐れがある

公衆接遇弁償費は、その制度の趣旨上、本当に必要と認められる金額のみしか借りることはできません。1,000円を超える貸し出しの場合、内部での承認プロセスも経なくてはいけないため、実際に借りられ金額はごくわずかなのも確かです。しかし、金額がごくわずかだからといって、返済しないのは絶対ダメです。先ほど触れた借受願書の場合と同じく、詐欺罪として逮捕される恐れがあるので、注意しましょう。

警察の公衆接遇弁償費に関する注意点

 

警察の公衆接遇弁償費の概要

借りられる目的 以下の目的に当てはまる場合、利用可能。
外出先で財布を盗まれたり、失くしたりして家に帰れなくなった
家出してきた人を保護しなくてはいけない
急病や大ケガをした人を助けるためにお金が必要である
その他、貸し出しにあたっての合理的な理由が認められる
借りられる金額の目安 目的を達成するために必要な金額。1,000円未満であれば現場の承認のみで可能だが、1,000円を超える場合は、地域部長など役職者による承認が必要。ただし、緊急時はこの限りではない。
返済の方法 貸し出しを受けた場所(例:交番等)に行き、直接返済をする。遠方で直接返済が難しい場合は、近隣の交番への持参などで対応可能。

 

警察の公衆接遇弁償費の注意点

公衆接遇弁償費の強みは

いざというときの最終手段として利用できる

ことです。例えば、財布を失くしてしまったり、盗まれてしまったりした場合は

  • 家に電話をかけて家族に迎えに来てもらう
  • 同行者がいれば、とりあえずしのげる分だけのお金を借りて、後日返す
  • スマートフォンにインストールされているQRコード決済や電子マネーを利用して公共交通機関を使う

などの代替案を使えれば、家に帰ることができる場合も多々あります。また、道端で大ケガや病気をしていた人に出くわしたりした場合も、家族が対応できそうなら、別にお金を借りてまで助ける必要はありません。つまり、他の人やものなどを頼れる余地があるなら、何もこの制度を使わなくていいでしょう。しかし、頼れる余地がないなら、状況を打開するための最終手段として、公衆接遇弁償費を使いましょう。

ただし、公衆接遇弁償費には

  • 公的な制度である以上、運用が厳格であるため、必ず借りられるとは限らない
  • そもそも、ごく一部の都道府県警でしか導入されていない制度である

というデメリットがあるのも事実です。財布が盗まれた・落とした、急病人を保護しなくてはいけなくなった、など誰の目からみても「早急に何とかしなくてはいけない」場合は、利用できることがほとんどですが、その他のケースに関しては、対応した警察官や職員の判断による部分も大きいです。

借りられなかったからと言って、不満をため込んでもどうしようもありません。

また、公衆接遇弁償費および類似の制度を導入しているのは、警視庁(東京都を管轄)をはじめとしたごく一部の都道府県警のみです。日本全国の都道府県警で利用できるわけではないので、導入していない都道府県の交番で相談しても、怪訝な顔をされてしまうでしょう。

あくまで「ごく一部のケースでしか使えない、文字通りの最終手段」としてとらえておいた方がよさそうです。

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