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「借金生活から逃れたい…」と思ったときに、弁護士に相談・依頼をして債務整理をする事は有力な選択肢となります。
しかし、テレビやラジオでCMしている事務所もあれば、自宅の郵便受けにたくさんの弁護士事務所からのチラシの投函があったりして、どれの弁護士を選べばよいかわからない、というのが本音ではないでしょうか?
同じ弁護士を選ぶならば、なるべくあなたの状況にあった弁護士に相談・依頼をしたいものですが、どうやってその弁護士を選べばよいのでしょうか。
このページでは、元債務整理事務所の事務員が、弁護士事務所の裏側を少しお見せしながら、本当にあなたにあった債務整理の弁護士の選び方についてお伝えします。
債務整理を取り扱う弁護士像に迫る
まずは、債務整理を取り扱う弁護士・事務所についての内情をすこし知ってみましょう。
債務整理って弁護士にとってどんな案件なのか
債務整理ってそれを扱う弁護士にとってはどんな案件なのでしょうか。
それを知るには、案件の始まりから終わりまでをざっと見てみましょう。
貸金業者との交渉で手続きが終了する任意整理と、裁判所への申立をする自己破産・個人再生とに分けてみます。
任意整理が終わるまで
まずは法律相談を受けます。
この時、判断に必要な事情を相談者から聞き出すのを専門としていてる事務職員さんが、事実関係を整理するのに事情をお伺いする事があります(病院で言うと、事務員や看護士さんのような役割です)。
消費者金融等の債権者に受任通知という書面を発送しますので、ここは事務員が事務作業として行う事が多いです。
貸金業者からは取引の履歴がおくられてきますので、その履歴をもとに債権がいくらかの調査をします。
高い金利で借りていた可能性があるならば、引き直し計算という違法にとっていた金利がいくらあるのかを計算する事がありますが、エクセルを使った事務作業なので、弁護士が直接行う事は少なく、事務員が行っている事が多いです。
債務額が確定すると貸金業者との和解交渉に入ります。
まずは、和解内容を記載した書面を相手に送付するところから始まります。
合計債務額と和解シミュレーションはソフトで作れるので、それをもとに事務員は弁護士に報告します。
シミュレーションで出した和解案に従った和解提案書面を作成して相手に送ります。
それに対して、貸金業者から返答がされます。
提案に対してOKであれば、和解契約書の作成を弁護士側か貸金業者側で行います。
提案に対して異論がある場合には、弁護士が交渉を行います。
和解契約書を依頼者に送って案件終了となります。
自己破産・個人再生が終わるまで
法律相談の受付から、債務の調査までは任意整理と同様です。
債務の調査が終わると裁判所への申立に必要な書類の作成にうつります。
こちらもかなりのケースで依頼者に事務員が事情をお伺いして、書類をドラフトします。
申立に添付しなければならない書類は、依頼者があつめる事になります。
書類を作って添付しなければならない書類を集めたら、弁護士がこれを最終的に整えて裁判所に提出します。
説明のための日時や裁判所での期日が設定されると、依頼者と弁護士が裁判所に行く事になります。
裁判所からの許可が下りると案件は終了になります。
債務整理は弁護士の関与の度合いが低く難易度が低い事案
以上の過程を見ればお分かりいただけるかもしれないのですが、債務整理案件は慣れた事務員さんが居れば弁護士はそんなに案件にコミットしないのです。
ほとんどの案件でやるべきことが決まっているため、弁護士としてはあまりやりがいのない事案なのです。
残念な事ですが、債務整理がここまで浸透する以前は、債務整理案件はクレジットカードとサラ金の2語を合わせた「クレサラ案件」という言われ方をしており、弁護士の中には「そんな案件はやらない」とはっきり言う弁護士もいるくらいのものでした。
しかし、商工ローンや消費者金融の激しい取り立てに社会問題化した頃から、一部の弁護士を中心に真摯な取り組みが始まったのがこの債務整理です。
近年では、事務員の中でも法務に詳しいパラリーガルと呼ばれる人たちを使って、弁護士業務を組織的に行うことで、効率よく運営することができる弁護士事務所が増えた結果、債務整理に強い事務所がマーケティングできちんとニーズにマッチするようになった結果「債務整理は案件がもうとれない」といわれるようになっています。
債務整理という案件についての弁護士内の評価は
債務整理は案件を解決に導く基本的なノウハウと事務所運営するノウハウさえしっかりしていれば、継続的に案件がある状況になります。
ですので、弁護士としては受けたくないけれども、収入安定や事務所経営のために受ける、という考えを持っている方がたくさんいます。
もちろん、消費者問題として真摯に取り組んでいる弁護士もきちんといますが、上記のような見方をする人が居る事をしっておいてください。
債務整理をする弁護士事務所はこんな感じで運営されている
債務整理を専門的に行う弁護士事務所はどのような感じなのでしょうか?
債務整理を専門的に行う弁護士事務所は、弁護士2人以上で、事務員が10人というような、弁護士1人で複数の事務員が担当している事が多いです。
そして、一般の案件や企業法務しかやらないような所ですと、平日の9時~18時くらいまでといった所がほとんどですが、土曜や日曜、夜間といった時間帯に相談を受け付けられるように、弁護士・事務員がシフト制を組んでいます。
事務所の拠点の数や規模が大きいところになれば、債務整理に必要な工程をさらに細分化して、事務所全体として案件がうまく処理されるようになっている所もあります。
本当に債務整理に強い弁護士を選ぶには
このような状況で本当に債務整理に強い弁護士を選ぶにはどのようにすればよいのでしょうか?
債務整理に「強い」弁護士とはどのような弁護士なのか
まず、債務整理に「強い」弁護士とはどのような弁護士なのでしょうか。
単純な失敗をしない
当たり前のように思えますが、単純な失敗をしない事です。
例えば、手続き選択を誤るような事をする弁護士が居ます。
たとえば、客観的に相談者の収支からは月々支払う事ができる金額は5万程度が限界であるにも関わらず、8万程度の支払いは可能だと相談者が申告したのを真に受けて、任意整理が可能であると判断して、任意整理をするものの、途中で支払いができなくなって任意整理が失敗に終わるパターンが典型的です。
債務整理の相談に来ている段階で、ほとんどの人が借金前提の生活に陥っており、正確な家計状況を理解していない事がほとんどです。
しかし、よくよく話を聞いてみると、家族6人の食費が2万円切っている状態で申告をしているなど、収支状況については債務整理に慣れていれば簡単に行えるものが多いのです。
このように、きちんと債務整理に向き合っているならば、こんな単純な失敗はしません。
貸金業者の特徴をよく把握している
債務整理に強い弁護士といえる要素の2番目としては、貸金業者の特徴を良く把握しています。
中小以下になってくると、癖のある貸金業者がたくさん出てきます。
たとえば、連帯保証人をとっている事が多い貸金業、公正証書をとっている事が多い貸金業者、土地・建物などの不動産を担保にとっている事が多い貸金業者、債務整理をするとすぐに裁判を起こして給与を差し押さえにくる貸金業者などです。
このような業者が混ざっていて、債務整理に難がある事を察知していれば、普通のやり方ではない債務整理の方法を取ることができます。
どのような特殊事情があると案件が複雑になるかを把握している
債務整理に陥る方はそのほとんどがパターンが同じです。
しかし、中には事案が複雑になる状況を抱えている方がいます。
たとえば、普通にサラリーマンをやっていて、景気が悪くなったために給料が下がって借金を始めた人が居たとしましょう。
借入理由のほとんどが生活費であるような場合、債務整理の1方法である自己破産の手続きを行うと、同時廃止という簡単な手続きで終わる事が多いです。
これに対して、自営業をやっていた時の借金が膨らんで自営業をやめて、サラリーマンをやっているが返し切れないような場合もあります。
しかし、この場合には自営業をやっていた時の借金を調査する必要がある場合であるため、手続きが複雑な少額管財という手続きになるのです。
サラリーマンが借金をしているという点では何ら代わりがありません。
しかし、その借金の原因について検討してみると、手続きが変わってくる可能性があるのです。
債務整理に強い弁護士事務所は実はここが強い
債務整理に強い弁護士事務所は次の3つが強いのです。
- たくさんの債務整理案件の解決をしている
- 債務整理に強い事務員がいる
- 事務所全体で債務整理に対応している
3つの要素について詳しく述べたいと思います。
たくさんの債務整理案件の解決している
当然の事ですが、案件解決の数が多いほど、対応ができるパターンの数が増え、上記で挙げた事情に対応できるのは容易に想像つくと思います。
たくさんの債務整理案件を受けていなければ、一件そんなに難しい案件ではないように見えるが、実は難易度の高い案件だったような場合に対応できない事があります。
たとえば、大手消費者金融はそんなに交渉中には強硬な主張をしてこないのですが、借入期間が極端に短いような場合にはあまり交渉に応じてくれない事があります。
中小の消費者金融の中には、債務整理をした途端に、依頼者の給与を差押にかかるところもあります。
こういった事を知らずに手続きを進めているような所に依頼をすると、債務整理が上手くいかなくなるので注意が必要です。
数多くの債務整理案件の依頼を受けて、たくさんの事態に遭遇して解決してきた事務所なら、あなたの債務整理も安心してまかせる事ができるといえます。
債務整理に強い事務員がいる
たくさんの案件の処理にあたるには、債務整理に強い事務員が必要になります。
債務整理に熟練した事務員を雇うためには、通常の事務員よりも良い給与で雇い入れる必要があります。
当然のように安定経営している事務所でないと、そのような人材を雇い入れる余裕すらないのです。
当然のように、たくさんの案件を解決している所は、資金力があるために好条件で人を雇入れる事ができます。
そのため優秀な人材を確保することができるのです。
事務所全体で債務整理に対応している
最後に、事務所全体で債務整理というものに対応している事務所は強いです。
債務整理はともすれば、借金をしているだらしない人で、なんでそんな人を相手にしなければならない…とそっぽを向く弁護士も多いのです。
しかし、現実には収入がなくなってしまってやむを得ず借りてしまった、金利の事をわからずに安易に借りてしまったら抜け出せなくなってしまった、ギャンブルやショッピングの依存症になってしまい自制ができなくなってしまっていた、など社会問題と密接にかかわっています。
弁護士事務所全体で、借金問題という社会問題に取り組むという姿勢が弁護士・事務員に根付いている事務所は、案件の解決に真摯であるため、あなたの債務整理を有利に導いてくれるでしょう。
特に難易度の高い案件は大きな事務所に頼むべき
難易度が高いとされる案件については、弁護士・事務員が慣れていない場合にどのような問題が発生するか把握していない事が多いため、うまく解決できない事があります。
難易度が高い案件には次のようなものが挙げられます
- 法人
- 個人でも個人事業主
- 従業員が債権者である
- 個人からの借入がある
- 離婚や相続が絡んでいる
- 連帯保証人がいる
- 公正証書をとられている
- 商工ローンからの借入
- ヤミ金融からの借入がある
こういった場合には、専門的な知識のある弁護士・事務員と解決しないと、解決に導かれない事があります。
筆者が経験した例だと次のような事例がありました。
法人の債務整理をするにあたって、給与が遅配しているような場合には、従業員も債権者となります。
確かに、給料の遅配が生じているようなケースでは、法人を立て直すのは容易ではないのですが、可能性が0ではありません。
弁護士が債務整理の依頼を受けると、受任通知という通知を発送します。
これにより、貸金業者(銀行・消費者金融・信販会社)は督促を止める仕組みが、貸金業法によってつくられいます。
しかし、従業員といった個人債権者には貸金業法の適用がありません。
にもかかかわらず、経験のない弁護士は受任通知を従業員に送ります。
あなたが従業員で働いた給料は欲しい!と思った矢先に法律事務所から通知が来たらどうなりますか?
通知が来た瞬間に、仕事しに行くわけないですよね?
その弁護士が担当した法人は、従業員がだれも来なくなったため、再生ができなくなってしまいました。
このような事が起きないようにしなければなりません。
報酬の高いところを選んでよいのか
債務整理をする際には借金の支払い等に困っているから相談・依頼をします。
なので、弁護士費用が安い所に依頼したい、という事もあるでしょう。
弁護士に相談をすると通常30分5,000円程度の相談料が必要になります。
債務整理に関しては相談に関して無料にしてくれている弁護士が多いです。
問題は、着手金や成功報酬についてです。
弁護士の報酬については、規制が撤廃された結果、弁護士によって自由に決められるようになりました。
そのため、債務整理という「借金をなんとかしてほしい!」と藁をもつかむ思いで弁護士を頼ることをいいことに、高額な報酬を取る弁護士も存在しました。
その結果、債務整理に関する報酬は弁護士会に規制される事になりました。
ですので、現状は妥当といえる範囲でしか弁護士は報酬をもらっていません。
今あなたが検討をしている事務所は、違法に高額な報酬をとっているような所ではないので安心してよいでしょう。
結局しっかり広告ができている弁護士が一番強い
なぜなら、
- 依頼者があつまる
↓ - 真摯に向き合うと評判があがる
↓ - だから事務所が資金力がある
↓ - 優秀な人を雇える、広告を打つことができる
↓ - 依頼者があつまる
という好循環が債務整理に強い弁護士の事務所には生じているからです。
まとめ
このページでは債務整理に強い弁護士を選ぶ方法についてお伝えしてきました。
借金をなんとかしたい手続きなのに、手続きをうまくする無ことができない弁護士に当たってしまうと、立ち直れないほどの状態になってしまう事があります。
上手く物事を運ぶ弁護士は、相談の段階から違いますので、是非以上の情報を参考に、なるべく早く適切な弁護士に事案を見てもらえるようにしましょう。