生活保護を受けたら借金はできる?受給条件と受給後の借金の知識について解説

さまざまな理由があって生活が困窮してしまった。そして、借金が積み重なってしまったなどの方もいるのではないでしょうか。

何とか返済をしていたけれど、生活費などの支払いもかさんでさらに生活が困窮したら、「生活保護」を視野に入れる場合もあるかもしれません。

確かに選択肢として効果的ですが、借金を重ねた状態でも生活保護の受給はできるのか気になるかと思います。

よく、インターネットなどで検索すると「借金がある方は生活保護を受給できない」などの情報もあります。そこで諦めてしまう方もいますが、実はできないという答えは事実と異なるのです。生活保護は借金があっても受給可能になります。

そこで今回は、生活保護と借金の知識について解説します。借金でどうにもならなくなったという方、今後どうなるかわからなくて不安という方はぜひ参考にしてください。

借金があっても生活保護の申請は可能

すでに述べたように、生活保護の申請は借金があっても可能なのです。

なぜなら、生活保護の受給条件に「借金をしている方の生活保護は認めない」などの決まりは一切ありません。

そもそも、生活保護を受給するための条件は「国の定める基準の最低生活費に収入が満たない状態にある」ことです。そのことから、借金の有るかないかは関係ないことになります。

生活保護の受給条件

生活保護の受給条件となるのが、「国の定める基準の最低生活費に収入が満たない状態にある」ことになります。より詳しく解説すると、以下の2つのポイントに該当するかどうかもチェックする必要があるでしょう。

・手持ちのお金が少ない状態で生活している
・現金化できる資産を持っていない

上記に該当しない方ですと、生活保護の受給申請をしても却下される可能性が高いです。

手持ちのお金が少ない状態で生活をしている

「手持ちのお金が少ない状態」と言われても、具体的にどの程度のことを表すのかわからない方もいるかと思います。

まず、東京23区の単身世帯で支給される生活保護費は、1か月約13万円です。

現在、定職に就いていない方は、現在持っている手持ちのお金で1か月間の生活が成り立つかどうかを考えてみるのがわかりやすいでしょう。

たとえば、生活保護の申請を検討する方の手持ちのお金が20万円であれば、上記の生活保護基準の13万円を上回ります。そのためる、生活保護を受給するのは困難です。

しかし、手持ちのお金が5万円などであれば、生活保護基準の13万円を大きく下回ることになりますから、生活保護の受給条件に当てはまります。

さらに、定職に就いていて給与所得のある方の場合、給料での生活が今の手持ちのお金でやりくりできるかが生活保護を受給するためのポイントとなります。

現金化できる資産を持っていない

現金化できる資産を持っていない方も一般的な生活保護の受給条件ですが、以下のようなケースでも受給条件のクリアは可能です。

・持ち家があり住宅ローン完済済。しかし、売却時の価値が低い
・住宅ローン残高が低額。しかし、売却時の価値が低い
・不動産を持っているが、売却しても現金化不可能な資産(僻地の土地や田畑など)

持ち家や不動産などを売却してお金が入る場合は取り扱いが異なります。

たとえば、持ち家に2,000万円の価値があったとします。この場合、持ち家の売却をして、実際にお金が入るまで1か月~それ以上の時間がかかるでしょう。

しかし、持ち家を売却する以外に得られるお金がない、明日どう生きるかさえもわからない状況であれば、生活保護をとりあえず受給できます。

そして、持ち家を売却したお金が手に入るのと同時に生活保護廃止となる流れです。

生命保険があっても生活保護は受けられる

掛け捨て型の保険や、貯蓄的な意味合いの薄い保険などであれば、生命保険を持ちながら生活保護の受給はできます。

たとえば、都民共済や県民共済などの保険でしたら、持っていることを認められる可能性が高いでしょう。しかし、解約返戻金がある保険の場合でも、解約返戻金額が概ね30万円未満であれば保有が認められます。

そのほかに、子どもの学資保険は認められていますから、面接相談員に相談してください。

生活保護が開始された後の借金

生活保護を申請して、無事に承認がおりた後の借金について解説していきましょう。

生活保護を受けることで、毎月お金を得られるようになりますが、さらに借金をすることなどできるのでしょうか。

借金を返済しながら生活保護の受給はできない

借金があっても生活保護の受給ができることは、すでに解説しました。しかし、借金を返済しながら生活保護を受給することは不可能なので注意しましょう。

生活保護で借金の返済ができない理由ですが、「生活保護の制度趣旨」にて以下のようになっています。

・生活に困窮する方に対して困窮の程度に応じた必要な保護をおこなう
・健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに自立を助長

生活保護費の定義はこのようになっているので、あくまでも食や住居などといった最低限度の生活を維持するために使うことを目的としているのです。

さらに、生活保護費が支給される理由は以下のようになり、借金の返済はその中に含まれていないこともわかるでしょう。

・食費・被服費・光熱水費等などといった日常生活に必要な費用
・アパートの家賃
・義務教育を受けるために必要とする学用品費
・医療サービス・介護サービスの費用
・就労に必要な技能の修得などに発生する費用
・出産費用
・葬祭費用

新たな借金が見つかれば生活保護費打ち切りも逃れられない

生活保護を受給しているものの、新たに借金をすれば事態は最悪なことになります。

まず、生活保護費の停止・打ち切りにつながる可能性がありますし、仮に停止や打ち切りにならなかったとしても、新たな借金と同額にあたる受給額が減額されることになるでしょう。

そして、悪質と判断された場合はさらに厳格な処分が下る場合があります。不正受給分に当たる140%の金額を徴収するなどのペナルティがあったり、刑事告訴されて懲役や罰金を科されたりする場合があるのです。

借金が見つかる理由

借金をしたことは自分で申告しなければバレないと思うでしょう。それでは、なぜ借金をしたことが見つかってしまうのでしょうか。

まず、生活保護を担当するのは福祉事務所で、こちらでは受給者の金融機関の口座調査が可能です。そして、生活保護受給中は、いつでも調査が可能なため、お金の入出金をはじめとする動きに不審な点が見つかれば詳細を厳しく追及されることになるでしょう。

借金は福祉事務所に収入として認定されてしまいます。そのうえで「これだけ収入があれば生活保護費は不要」という結論に達してしまうのです。

生活保護費ではやりくりが厳しい、その結果借金してしまったけれど、減額や徴収があるようでは借り損になって終わります。

生活保護を受けている最中のギャンブルや酒

ギャンブルや酒を理由に借金をした方もいるかと思います。そして、そのような方が生活保護を受給した際に、引き続きギャンブルや酒をやっても良いのか機になることでしょう。
こちらの答えは「たしなむ程度なら問題ない」「度を超すと生活保護を受けていなくても問題ないと判断される」ということです。

たしかにギャンブルをやることも酒をやることも個人の自由ですし権利となります。それをたしなむことで、役所から何か言われたり禁止されたりする筋合いはありません。

しかし、度を超すとギャンブルも酒も良くないという結論に達します。生活保護を受けていても受けていなくても関係ないです。

度を超すと良くないと判断される基準

具体的な基準は特にないです。しかし、健康上で問題ないにもかかわらず、ギャンブルや酒を理由に仕事ができないことは異常と判断できます。

さらに、仕事や求職をせずに、昼間から酒やギャンブルをやることは度を越していると判断せざるを得ないでしょう。

たとえば、仕事終わりや休みの日、求職活動の息抜き程度であれば問題がありません。その場合、ケースワーカーが生活に口出しすることはありません。

酒やギャンブルで指導が入るのか?

酒やギャンブルをすることによって、生活保護受給者の自立を阻害していると判断できる場合はケースワーカーの指導が入ります。

その根拠となるのが、生活保護法第4条に規定されています。

第4条1「保護は生活に困窮するものが、その利用しうる資産、能力、その他あらゆるものを、その最低限度の維持のために活用することを要件として行われる。」という条文です。

簡単に言うと「怠けて生活している方は保護しませんよ」ということになります。

さらに、法第60条では「被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない。」とあります。

こちらは「働けるなら働いてください。家計簿くらいつけましょう。節約して良い暮らしができるように頑張りましょう」というようなことです。
この2つの条文があることで、酒とギャンブルが度を越した生活保護受給者に対し指導が入ることになります。

指導に従わなかった場合の措置

あまりにも度を越した場合、ケースワーカーが受給者の生活保護費を週払いや日払い単位で管理することになります。

日払いの場合、1日の生活費としてもらえるのが2000円~2500円程度ですから、ギャンブルをやりたくてもできなくなるでしょう。さらに、アルコール中毒の場合、食材を買ったレシートを見せれば、その分のお金が支給されるというように、徹底的な管理をしている自治体もあります。

ただし、このような徹底した管理をする自治体は少ないです。アルコール中毒者の場合、依存症患者専門の病院にて金銭管理をおこなうケースが多いとのことです。

そして、このように管理をしてもギャンブルや酒をやめない人は生活保護廃止の対象になります。指示義務違反による廃止と言われ、指示に従わない被保護者に対して相当の手続きを踏めば廃止にできるのです。

酒やギャンブルを過度にやるから廃止になるのではなく、酒やギャンブルを過度におこなった結果、求職活動や仕事をしないから廃止になります。

生活保護費は差し押さえの対象にならない

カード会社やカードローン会社などの債権者が生活保護費を差し押さえることは、法律で禁止された行為です。

なぜなら、生活保護費を差し押さえられることで、国の保障する最低限の生活維持ができないからです。

また、生活保護を受給していることをカード会社やカードローン会社に通知すれば支払いの猶予の申し出ができるでしょう。しかし、あくまでも差し押さえが禁止になるだけなので、その後の支払い督促は止まりません。

借金が多い方は債務整理を勧められる場合もある

生活保護を申請する際に多額の借金残高があることが確認されると、生活保護開始後にケースワーカーが「債務整理をした方が良いのではないか?」と指導してくる場合があります。

債務整理をおこなうことで借金は減額、もしくはゼロになります。そうすることで、生活に少しでも余裕が出れば、将来的に生活保護に頼る生活を抜け出せるかもしれません。

なお、債務整理では主に以下の4つの方法があります。

・自己破産
・任意整理
・個人再生
・特定調停

自身にとって最適となる債務整理の方法を選び、生活保護が不要になるのが一番良い流れではないでしょうか。しかし、それでも生活が苦しくて、借金を何とかしながら生活保護も受給したいという方ですと、4つの債務整理の中で「自己破産」選ぶのがもっともスムーズになります。

なぜなら、任意整理・個人再生・特定調停を選んだ場合、借金が減額するだけだからです。結局、その後数年間にわたって返済義務は発生します。

そして、すでにお伝えしましたが、生活保護費で借金の返済をおこなうことは不正行為です。

そうなることで打ち切りなどのペナルティを受ける対象になりますが、自己破産を選べば借金をゼロにできますし生活保護受給に何らかの支障が出ることもありません。

自己破産の指導が入る基準

自治体によって指導の対象となる金額は異なりますが、100万円以上の借金が確認できる場合が目安と考えて良いでしょう。

ただし、100万円以上の借金がある方のすべての方が自己破産の指導をされるわけではありません。本人がこれから先、どのように自立するのかの可能性の部分で決まると思ってください。

たとえば、本人の年齢などが考慮されるポイントとなる場合があります。すぐにでも働けると判断できて、生活保護の受給の必要がなくなりそうな方と見られれば、自己破産の指導がされることはないです。

そのほかに、自己破産では債務の免除が確定するまで、就ける職業に制限が出ます。

たとえば、弁護士などの士業、生命保険外交員、警備員、銀行員などの職が挙げられます。また、一定期間にわたって新しい借金ができないなどの社会的制限もあります。カードローンの新規契約はもちろん、クレジットカードを自分の名義で取得することはできないですし、申し込んだところで審査に落ちるだけです。

そうなることで、その方の今後の自立の道を閉ざされると考える方もいるでしょう。そのため、被保険者象の現在と将来を総合的に判断したうえで、本当に指導をおこなうかどうかを決定するのです。

自己破産の手続きの進め方

生活保護の方が法テラスで自己破産の手続きをおこなえば、手続き費用は減免されます。また、着手金などの一部費用が支給されるなど、自治体によって対応は異なります。

一度、自分の住んでいる自治体はどのような対応をしているのが調べてみるとスムーズかもしれません。

ただし、自己破産をする際に自己判断することはしないでください。必ずケースワーカーなどに相談をしたうえで手続きに踏み切るようにしましょう。

まとめ

当記事では、生活保護を受給するにあたっての借金の知識について詳しくまとめて解説しました。

最後に記事の重要となるポイントを振り返っていきましょう。

・借金のある状態でも生活保護の申請は可能
・「国の定める基準の最低生活費に収入が満たない状態」が受給する際の条件
・借金を返済しながら生活保護を受給することはできない
・生活保護を受給している中で新しい借金はできない
・生活保護を受給する中で不正の発覚があればペナルティの対象となる
・借金の金額によって自己破産を勧められる場合がある
・自己破産をおこなった場合、就ける職業に制限が出る・新たな借金ができない

さまざまな事情があって、自身が支払える以上のお金が必要になることもあるでしょう。
しかし、何とかなる状況であれば生活保護を受給して制限が発生するよりも、自分の力で何とかできる方法を見つけるのがスムーズなのかもしれません。

そうするために、普段からお金の管理をおこない、しっかりと向き合っていくことが大切です。気づいたらお金がない、明日からの生活をどう乗り越えれば良いのだろう?などのことにならないような生活を目指してください。

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