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自動車保険と等級について
「自動車保険の等級って?ノンフリート等級とは?どのくらい割引されるの?」
自動車を所有しており、普段から利用する方は基本的に自賠責保険と別に、任意の保険会社が販売している「自動車保険」に加入しています。自賠責保険だけでは、もしもの時の補償が十分であるとは言えず、足りない部分を任意保険でカバーするためです。
そんな自動車保険を利用した事のある方なら「等級」や、ノンフリート等級別料率制度と言った言葉を聞いた事がある方も少なくないと思います。ただ、何となく保険料に影響するというのは知っているけど、気にしてないという方も少なくないでしょう。
しかし、等級によっては50%以上、保険料を割引して貰える可能性があり、自動車保険の保険料を大きく左右する非常に重要な要素の1つであると言えます。
なので、今回はそんな自動車保険と等級というテーマを、
- 自動車保険の保険の等級とは?
- どのくらい割引されるのか?
- どんな事をすると上がるのか?下がるのか?
という点から解説していきたいと思います。まず、はじめに等級制度の基本的な部分について押さえておきましょう。
自動車保険の等級とは
自動車保険を利用している方なら、等級について一度は耳にした事があると思います。等級について簡単にまとめると「安全なドライバーを段階に分けて評価する制度」の事です。
一般の方が利用するのは「ノンフリート等級別料率制度」である事が殆どでしょう。フリートというのは、もともとは戦闘艦の集まりである艦隊を指しており、現在では何らかの集まりという意味合いで使われます。
自動車保険においては「9台以下の契約をノンフリート」、「10台以上をフリート契約」と言い、フリート契約は基本的に法人等が利用する保険になっているので、個人単位ではあまり関係のない保険になっています。
そんなノンフリート等級別料率制度について「どのくらいの段階があるのか?」「なぜこの制度があるのか?」という点について解説したいと思います。
どのくらいの段階がある?
ノンフリート等級別料率制度では、等級と付いているくらいなので、安全なドライバーと安全じゃないと見られるドライバーを段階的に分けています。段階は全部で「1等級~20等級」まで存在しています。
段階が上がるにつれて安全なドライバーであると評価される仕組みになっているので、20等級が最も安全であり、1等級が何らかの原因で評価を下げてしまった方であると言えるでしょう。
加入しはじめた一番はじめの年は、1等級なのでは?と考えてしまいがちですが、実は一番はじめの年は6等級からスタートする事になっています。
では、この等級はどのように決まっているのでしょうか?、実際に自動車保険を利用している方だと既にご存知の方も多いかもしれませんが、等級は無事故の年の翌年に1等級上がる仕組みになっています。
つまり、14年以上無事故で保険を利用しなかった場合に、最高の20等級まで上がるという仕組みになっていると言えるでしょう。
逆に事故を起こしてしまい、保険を利用したケースでは場合によって異なりますが、1等級~3等級下がる事になっています。(後に詳しく解説します)
また、共済を利用した自動車に関する補償は、最大22等級まであるケースもあります。独自の等級制度を用いているようなケースでは、等級の互換性が無いこともあるので、共済に加入している方は注意が必要です。
なぜノンフリート等級別料率制度が必要なの?
等級制度について知ると、そもそもなぜノンフリート等級別料率制度のような制度が必要なのか?という点について、疑問を感じる方も少なくないと思います。
実は、ノンフリート等級別料率制度では、等級制度によって高い等級になると、大きな割引を受けられたりします。(詳細は保険会社によって異なる事もあります)
一方で、等級が低い方は等級の高い人と相対的に見て、高い保険料を支払わないといけません。これは、ノンフリート等級別料率制度については、保険の仕組みについて理解すると、掴みやすいと思います。
基本的に、保険会社は営利目的で運用されており、共済等とは違って保険料を元に利益を出しています。ただ、基本的には共済と同じように「困った時に支え合う」という仕組みである事には変わりません。
つまり、一定の保険料を集めて、誰かの多額の保険金を仕払うというモデルになっています。ただ、自動車保険についてはその特性上、加入者間の不平等が生まれやすいものになっています。
もちろん、医療保険やがん保険等も健康に気をつけている人と気をつけていない人では、統計的に見ると保険金の利用率について一定の差は出てきます。
ただ「自動車事故」というのは、各加入者の注意・不注意というのも保険事故が発生する大きな要素として、存在しています。気をつけて自動車を運転している人と、危険な運転を行っている方が同じ保険料というのは不公平であるとも言えるでしょう。
しかし、ノンフリート等級別料率制度のような制度がある事によって、安全なドライバーは抑えられた保険料で利用出来る事になっています。
安全な運転を心掛けている保険の加入者にとっては大きなメリットになりますし、保険会社からしても等級制度がある事によって利用者の意識を高める事が可能になっており、保険金の節約に繋がります。
また、保険会社によって等級制度の扱い方というのは若干異なる部分はありますが、2等級以下のドライバーは契約出来ないという保険会社も存在しています。
保険会社間で等級は共有されているのか
ノンフリート等級別料率制度の概要や、意義についてはしっかりと掴めたと思います。ただ、中には「保険会社を変えた時に、等級がリセットされたら勿体ない」と感じる方もいるかもしれません。
ただ、その心配は無用です。ノンフリート等級別料率制度は各保険会社間で、共有されている仕組みであり、ノンフリート等級別料率制度を採用している保険会社ならどんな所でも、引き継ぐが可能になっています。
自動車保険を扱っているのは基本的に損保系の保険会社なので(共済を除く)、日本損害保険協会に入っています。利用者が保険会社間を行き来する時に、不正を防ぐために日本損害保険協会が仲介役になって、契約の内容を把握しています。
ただ、日本損害保険協会に入っている保険会社であっても、若干割引率等で変化する事があります。このあたりの詳細については、各保険会社で確認する必要がありますが、等級自体はしっかりと引き継ぐ事が可能です。
等級ごとの割引率
先程、等級制度の概要や意義、保険会社間の扱い方についてご紹介させて頂きました。これから、等級ごとの割引率についてご紹介したいと思います。
ただ、ここでご紹介するのはあくまで「目安」になっています。というのも、細かな割引率というのは保険会社によって異なり、概ね平均的な割引率をご紹介します。詳細については、各保険会社で確認すると正確な数字が分かります。
等級ごとの基本的な割引率
ノンフリート等級別料率制度は、1~20までの等級が存在しているので、各等級ごとの割引率についてご紹介していきたいと思います。
1等級~10等級まで
- 1等級 63%~64%割増
- 2等級 27~28%割増
- 3等級 約12%の割増
- 4等級 約2%の割引
- 5等級 約13の割引
- 6等級 約19%の割引
- 7等級 約30%の割引
- 8等級 約40%の割引
- 9等級 約43%の割引
- 10等級 約45%の割引
11等級~22等級
- 11等級 約47%の割引
- 12等級 約48%の割引
- 13等級 約49%の割引
- 14等級 約50%の割引
- 15等級 約51%の割引
- 16等級 約52%の割引
- 17等級 約53%の割引
- 18等級 約54%の割引
- 19等級 約55%の割引
- 20等級 約63%の割引
ノンフリート等級別料率制度というのは、6等級からスタートしますが、2年間安全運転し8等級になることで、2倍にまで割引率があがります。逆に1等級~2等級は、かなり割増の保険料を支払う必要性が出てきます。
基本的に11等級以降からは、1%ずつの割引率で上がっていき、20等級で8%程度割引率がアップします。ただ、出来るだけ平均的な割引率を算出しましたが、保険会社によって割引率というのは異なるケースが多いので、目安程度に押さえて頂けると幸いです。
事故有・無事故で大きな差がある
等級制度とその割引率についてご紹介したので、等級によって大きく保険料が異なってくるという点については、しっかりと押さえて頂けたと思います。
ただ、ノンフリート等級別料率制度において、保険料を変化させるのは等級のみではありません。大きな要素として「事故有・無事故」によっても、大きく保険料は異なります。
このような事故有・無事故によって、変化する保険料を左右させているのは「無事故係数・事故有係数」です。上記で紹介した割引率というのは無事故係数であり、事故有係数の場合は基本的に「半分~1/3」程度の割引理になると考えた方が良いでしょう。
割引率についても同じ事が言えますが、事故有・無事故係数による保険料の変化は、等級による割引率よりも保険会社間で差が出るものになっています。ただ、基本的に事故有係数の場合は、割引率が大きく下がるという点だけ、押さえて頂けると幸いです。
事故を起こして保険を使わなかったら?
ノンフリート等級別料率制度では事故を起こして、保険を利用すると大きく割引率が下がります。そこで気になるのは「事故を起こして保険を使わなかったら?」という点だと思います。
中には、割引率が下がるくらいなら、保険を利用しないで等級を維持したいという方も少なくないでしょう。結論からご紹介すると保険を使わない場合、等級は変わりません。
つまり、事故を起こしてしまっても、自動車保険の補償さえ利用しなければ、ノンフリート等級別料率制度において等級が変わる事はないのです。あくまで、保険を利用した時点で等級に影響するという形になっているのです。
そのため、事故を起こした時によく出てくる問題として「保険を利用した方が得か?損か?」という点です。ノンフリート等級別料率制度は、等級自体は1~3等級しか変化しませんが、事故有係数も付いてしまうので、1~3年ほど低い割引率になってしまいます。
このような点を踏まえると、最大で3年ほどかなり低い割引率の保険料を支払う事になるので、通常の保険料との差額を比較した時に、数十万円規模の相対的な損失が発生する事が少なくありません。
なので、場合によっては保険を利用しない方が長い目で見た時に、保険を使わないほうが低い損失で抑えられる可能性があります。
数百万円規模の賠償が発生したようなケースでは、保険を利用した方が損失が安く収まります。何故なら、等級・係数等によって発生する損失よりも、賠償責任の方が高い金額を負担する事になるからです。
ただ、数十万円~数万円というケースにおいては、等級を利用しない方がお得に済む事も少なくないので、利用した場合の3年分の保険料と利用しない場合の保険料・損失額を比較して、利用については慎重に行いましょう。
等級が上がる・下がる事例
これまで、ノンフリート等級別料率制度の概要・割引率等についてご紹介させて頂きました。最後に「どんな事をしたら等級がどのくらい等級・割引率が下がるのか?等級を上げるには?」という点についてご紹介したいと思います。
どんな事をすると等級は上がるのか・下がるのか
ノンフリート等級別料率制度について、もう少し理解を深めるために「自動車保険における事故の種類」についても解説したいと思います。
事故の種類
例えば、車両保険を利用したというケースと、対人賠償保険を利用したというケースに置いては、明らかに発生した事故の重大さが違う事が分かると思います。
そのため、自動車保険では「事故の種類」を3つに分けて「3等級ダウン事故」「1等級ダウン事故」「ノーカウント事故」という3つに事故を分けて、等級が下がる数と事故有係数の有効年数が異なってきます。
利用した補償によって、事故の種類が異なってくるので、補償毎に変化する事故の種類について以下にまとめたいと思います。
- 対人・対物賠償責任保険
(3等級ダウン) - 壊してしまったというケースにおける車両保険
(3等級ダウン) - 1等級ダウン・ノーカウントにに含まれない事故に対する補償
(3等級ダウン) - 第三者が原因の車両保険
(1等級ダウン) - 人身傷害補償保険
(ノーカウント事故) - 搭乗者傷害保険
(ノーカウント事故) - 上記に該当しない特約等
(ノーカウント事故)
になっています。名称からもお気づきの方も多いかもしれませんが、3等級ダウン事故の場合は3等級下がる事になります。1等級ダウン事故の場合は1等級下がり、ノーカウント事故の場合は等級に影響を与えません。
また、3等級ダウンの場合は3年間事故有係数が有効になり、割引率が下がることになります。1等級ダウンの場合は事故有係数1年のみで、ノーカウント事故については事故有係数の対象になっていません。
等級が下がる事例
シンプルではありますが、等級を上げるにはまず大前提として「安全運転」というのが一番重要なポイントになってきます。安全運転を行えば、年数が経つ毎に自然と等級というのはアップしていきます。
また、出来るだけ保険を利用しないというのも重要なポイントになってくるでしょう。ノーカウント事故に該当するものについては除きますが、その他の補償については出来るだけ自ら負担した方が長い目で見た時に損失は低くすみます。
ただ、そんな中でもどうしても保険を利用しないと損失が大きくなるという場合にのみ保険を利用しましょう。上記の3等級ダウン・1等級ダウン・ノーカウント事故の補償を参考にすると、等級が下がるのは以下の事例です。
- 人を轢いてしまって、怪我を負わせてしまった
(対人賠償保険・3等級ダウン) - 事故で民家に突っ込んでしまった
(対人賠償保険・3等級ダウン) - 自分が加害者側の事故を車を傷つけた
(車両保険・3等級ダウン) - 第三者による車の損壊
(1等級ダウン)
対人・対物賠償保険に関しては大きく等級が下がりますが、やはり賠償責任の額面自体も大きくなるケースも多いので、ためらわず保険を利用する必要があります。
出来るだけ等級を下げずに、保険料を抑えたいという気持ちはどんなドライバーにもあると思いますが、そのために必要以上の損害を負ってしまっては、保険に加入した意味がありません。
等級・係数による損失よりも、事故に関する負担の方が大きい場合はためらわずに保険金を利用しましょう。
まとめ
自動車保険の等級
- 正しくはノンフリート等級別料率制度
- 1~20まである(共済では22まであるケースも)
- 日本損害保険協会を通じて、保険会社間で共有されている
等級ごとの割引率
- 1等級では60%以上の割増
- 20等級では60%以上の割引
- 事故有・無事故係数でも大きな差がある
等級で上がる・下がる事例
- 事故の種類によっても違いがある
- 対人賠償保険・対物賠償保険は3等級ダウン
今回は、自動車保険の等級というテーマで主にノンフリート等級別料率制度を中心的に、等級ごとの割引率や等級が実際に下がる事例等について解説しました。
事故の種類によって等級ダウンが異なったり、等級ごとの割引率が違っていたりと難しい部分もありますが、基本的に「安全運転を行う」というのが最も等級をお得に利用するシンプルなコツになっています。
自動車保険の保険料を出来るだけ抑えるためにも、日頃から出来るだけ安全運転を心掛けるのが、保険の観点から見て最もベストなコストを抑える方法になっています。