将来の死亡や病気になってしまうリスクを考えて、生命保険に入っている人は多いと思います。死亡、生存、病気、けが、介護などのリスクに備えて、生命保険には入っておくことはとても大切なことです。
しかし、保険に加入している人がまとまったお金が必要になった時には、どのようにすれば良いのでしょうか。一つの方法として生命保険を解約すれば解約返戻金が戻ってくるものもありますので、まとまったお金を手に入れることができます。
ただし、お金を手に入れる代わりに、備えてきた保障が無くなってしまいます。まとまったお金は必要だけれども保障が無くなってしまうのは不安という人には、契約者貸付制度という方法があります。
今回は契約者貸付制度を利用して、生命保険からお金を借りる方法について詳しく解説していきます。
契約者貸付制度とは?
お金が必要になって借り入れをしようと考えた時、ほとんどの人が銀行や消費者金融会社などからお金を借り入れしようとするでしょう。しかし、銀行や消費者金融会社からお金を借りるためには、いろいろな手続きが必要だったり、金利が高かったり、審査に通過するのが大変だったりします。
このような時には、保険会社を利用してお金を借り入れすることができる「契約者貸付制度」という仕組みがあります。ここでは、契約者貸付制度について詳しく解説していきます。
契約者貸付制度の仕組み
生命保険にはいろいろな種類の保険があり、受けとる保険も会社によっても種類によっても違います。
加入者が支払う保険料を大きく分けると、以下の3種類になります。
- 保険の加入者が死亡した場合に受けとる保険金の財源である死亡保険料
- 加入者が生存時に受け取る保険金の財源となる生存保険料
- 手数料である付加保険料
この中の生存保険料は、終身保険や養老保険などの積立型の生命保険の保険料の中に含まれています。そして、生存保険料が含まれる積立型の生命保険を解約した時に支払われるのが解約返戻金です。
契約者貸付は、この解約返戻金を担保に生命保険会社からお金を融資してもらえる制度です。保険会社によっても異なりますが、解約返戻金の約7割~8割を上限に借り入れすることができます。
契約者貸付は解約返戻金を担保にお金を借り入れる方法のため、解約返戻金が多く戻ってくる商品やプランを組んでいるほど多くの金額が借り入れできます。また、かけ捨てタイプで解約返戻金がないタイプの保険の場合、契約者貸付を利用することができません。
契約者貸付の金利
契約者貸付は借り入れのため金利がかかりますが、金利は保険会社や担保になる商品によって異なります。以下は代表的な保険会社ごとの契約者貸付制度の金利です。
保険会社 | 金利 |
---|---|
かんぽ生命 | 年2.50%〜年6.00% |
大同生命 | 年3.00%〜年5.75% |
第一生命 | 年3.00%〜年5. 75% |
住友生命 | 年1.55 %〜年 5.75% |
ソニー生命 | 年3.25%〜年8.00% |
プルデンシャル生命 | 年1.75%〜年6.25% |
メットライフ生命 | 年1.50%〜年6.25% |
明治安田 | 年2.15%〜年5.75% |
日本生命 | 年3.75%〜年5.75% |
オリックス生命 | 年1.70%〜年7.75% |
契約者貸付制度のメリット
保険を担保にして生命保険会社から借り入れる契約者貸付制度は、他の金融機関からの借り入れと比較していろいろなメリットがあります。ここでは、契約者貸付制度のメリットについて解説していきます。
保険を解約せずに借り入れができる
契約者貸付制度を利用せずに保険を解約してお金をてに入れた場合、今後の保障は受けられなくなります。また、再度保険に入り直すとしても、以前より加入時の年齢が上がっているため、同じ保障を得るためには以前よりも多くのお金を払わなければいけません。
さらに、保険に再加入する時の健康状態が悪ければ、保険自体に入れないかもしれません。基本的に解約返戻金は途中解約の場合は極端に金額が低く設定されているものが多く、これまでに支払った金額を大きく下回る場合もあります。
このことにより、保険を解約しないで借り入れできることは、利用者にとって大きなメリットになるのです。
金利が低い
契約者貸付にかかる金利は、生命保険会社や商品によっても異なりますが2%~7%くらいです。この金利は、銀行や消費者金融会社の資金使途自由なフリーローンやカードローンよりも低く設定されています。
金利が低ければ低いほど、返済金額も小さくなりますのでお得に借り入れできます。
好きなタイミングで返済できる
借り入れといえば、ほとんどの人が毎月決まった日にちに決まった金額を返済していかないといけないと考えるでしょう。しかし、契約者貸付の返済の仕方は、毎月の定例返済の形をとっていなく好きなタイミングで好きな金額を返済できます。
そのため、お金に余裕がある時に返済をしていけば良く、毎月の返済に追われることはありません。
審査が不要
借り入れといえば必ず審査が行われ、年収や他での借入金額や返済状況や金融事故情報などが確認されます。その結果、審査に通れば良いのですが、返済能力が不足していると判断されれば場合によっては審査落ちや希望の金額が借りられない可能性もあります。
一方、契約者貸付は今までに積み立ててきた金額を担保に借り入れしますので、審査不要で借り入れすることができるのです。
配当金が受け取れる可能性がある
契約者貸付の担保になっている商品が配当金を受け取れるタイプのものであれば、借り入れしている場合でも配当金を受け取ることができます。解約をしてしまうと配当金は受け取れませんので、このことからも解約より契約者貸付を選択すると良いでしょう。
即日にお金が振り込まれるところもある
契約者貸付の申し込みは保険会社によって異なりますが、保険会社の窓口やコールセンターやWebサイトやスマートフォンアプリなどの方法があります。中でもネットで申し込んだ場合は、保険会社によって異なりますが即日から2営業日後くらいの間にお金が振り込まれるところが多いようです。
保険会社によっては、即日の振込が可能のところがありますので問い合わせてみると良いでしょう。
契約者貸付制度のデメリットや注意点
契約者貸付制度のデメリット
前項で説明した通りメリットが多い契約者貸付ですが、デメリットもあります。ここでは、契約者貸付制度のデメリットについて解説していきます。
保険が失効してしまう可能性があること
借り入れしている金額が解約返戻金の金額より少なかったとしても、まったく返済しないで利息だけが増えていった場合は、借入金額が解約返戻金の金額を超えてしまう可能性があります。この場合は一定金額を返済する必要がありますが、返済できなかった場合は保険の契約が失効して利用できなくなる可能性があるのです。
保険が失効してしまうと、将来の保障が無くなりリスクを負うことになりますので失効しないような注意が必要です。
未返済の借入金があった場合、保険金から差し引かれること
契約者貸付による借入金の中で未返済の分が残っている場合、死亡保険金や満期保険金やお祝い金などの保険金が支払われる場合に未返済分の金額が差し引かれます。この場合、当てにしていた保険料が全額手に入らないことになりますので、契約者貸付は計画的に利用する必要があります。
返済期限がないこと
契約者貸付は返済期限がなく自由返済のため、積極的に返済をしなくなる可能性があります。返済をしなければ、借入金が減らずに利息がかさんでいってしまいます。
契約者貸付制度の注意点
契約者しか利用できないこと
契約者貸付は、契約者本人でないと利用ができませんので注意が必要です。
解約した方が良い場合もあること
お金が必要になった場合に保障が無くなるのを避けるため契約者貸付の利用がおすすめですが、場合によっては解約した方が良い場合もあります。例えば、当初から返済することが難しいとわかっていた場合、契約者貸付を利用すると無駄な金利がかさんでしまいます。
当初から保険契約を解約して、解約返戻金を活用するのも一つの方法です。
早期に返済する
契約者貸付の金利が低く設定されているとはいえ、長期にわたって借りていると金利負担が増えていって保険が失効してしまう可能性があります。そのため、契約者貸付はあくまでも一時的な借り入れと考えて、早期に返済することが前提です。
手数料の二重負担
契約者貸付は、保険加入のための手数料と借り入れするための手数料と二重に負担していることを考えて借り入れすると良いでしょう。
カードローンとの比較
契約者貸付と良く比較されるのが、銀行や消費者金融会社が提供しているカードローンです。契約者貸付とカードローンと比較する前に、カードローンとはどのような商品かを解説していきます。
カードローンとは?
カードローンとは、資金使途が自由で好きな時に出し入れができる借入金です。生活費や冠婚葬祭などでお金が必要になった時、簡単に融資を受けることができますのでとても利便性の高い商品です。
カードローンの商品性
ここでは、カードローンの商品性について解説していきます。
借入限度額の範囲内なら何度でも借り入れ返済ができる
他のローンは一回借り入れをすると後は返済していくだけですが、カードローンは借入限度額の範囲内なら何回でも借り入れ、返済ができます。お金が必要な時は借り入れをし、余裕資金がある時はいつでも返済をすることができるのです。
資金使途が自由
他のローンのほとんどは、資金使途が決まっています。例えば、住宅ローンは住宅購入やリフォーム資金のために利用しないといけません。
また、マイカーローンは車の購入のために利用しないといけません。しかし、カードローンは資金使途が自由なので、生活費にも利用できますし、急な飲み会や旅行の資金にも利用することができるのです。
ただし、事業用の資金として利用することは、ほとんどの金融機関で禁止されています。
金利は高めに設定
カードローンの金利は、住宅ローンや自動車ローンや教育ローンなどと比べて高めに設定されています。なぜなら、カードローンは資金使途が自由であったり、借入限度額までなら何度でも借り入れできることから貸し倒れリスクが高いからです。
以下は主なカードローンの金利です。
メガバンクカードローン
カードローン名 | 金利(実質年率) | 借入限度額 |
---|---|---|
みずほ銀行カードローン | 2.0%~14.0% | 10万円~800万円 |
三菱UFJ銀行カードローン「バンクイック」 | 1.8%~14.6% | 10万円~500万円 |
三井住友銀行カードローン | 4.0%~14.5% | 10万円~800万円 |
りそな銀行カードローン | 3.5%~12.475% | 30万円~800万円 |
ネット銀行カードローン
カードローン名 | 金利(実質年率) | 借入限度額 |
---|---|---|
イオン銀行カードローン | 3.8%~13.8% | 10万円~800万円 |
楽天銀行カードローン「スーパーローン」 | 1.9%~14.5% | 10万円~800万円 |
住信SBIネット銀行MR.カードローン | 0.99%~14.79% | 10万円~1,200万円 |
オリックス銀行カードローン | 1.7%~17.8% | 最高800万円 |
じぶん銀行カードローン「じぶんローン」 | 1.7%~17.5% | 10万円~800万円 |
PayPay銀行ネットキャッシング | 2.5%~18.0% | 10万円~1,000万円 |
ソニー銀行カードローン | 2.5%~13.8% | 10万円~800万円 |
消費者金融カードローン
カードローン名 | 金利(実質年率) | 借入限度額 |
---|---|---|
アイフル | 3.0%~18.0% | 最大800万円 |
アコム | 3.0%~18.0% | 1万円~800万円 |
プロミス | 4.5%~17.8% | 1万円~500万円 |
SMBCモビット | 3.0%~18.0% | 1万円~800万円 |
レイク | 4.5%~18.0% | 1万円~500万円 |
J.Score | 0.8%~12.0% | 10万円~1,000万円 |
カードローンの借入方法
カードローンの借入方法は金融機関によって異なりますが、以下の方法が一般的です。
提携ATMなどからの借り入れ
ローンカードを利用して、自社のATMやコンビニATMなどの提携ATMから借り入れを行う方法です。借り入れの操作は、キャッシュカードを利用したATMからの出金と同じように行います。
金融機関や提携ATMによってはATM利用手数料がかかる場合がありますので、注意が必要です。
振り込みによる借り入れ
電話やインターネットからカードローン会社に申し込みをすると、利用者の金融機関口座に借入金を振り込んでもらえる方法です。振込手数料はかからない金融機関が多いですが、申し込む時間によっては即日融資ができない場合もあります。
カードローンの返済方法
カードローンの返済方法は金融機関によって異なりますが、以下の方法が一般的です。
約定返済
毎月一定日に一定額を返済していく方法を約定返済と言います。約定返済はどのカードローン会社でも採用しています。
約定返済の方法は金融機関によって違いますが、口座からの引き落としや提携ATMからの返済。振り込みによる返済やインターネットバンキングからの返済などがあります。
随時返済
カードローンの利用者が、自分の都合に合わせて好きな金額を返済できる方法を随時返済といいます。随時返済は繰り上げ返済とも言われていて、約定返済だけでは利息ばかり返済していてなかなか返済がすすまないのを早く返済できる方法でもあります。
そのため、余裕資金がある場合には、積極的に随時返済をしていくと良いでしょう。
カードローンのメリット、デメリット
以下に、カードのローンのメリット、デメリットをまとめました。
カードローンのメリット
- 借入限度額内であれば何度でも借り入れをすることができること
- 提携ATMを利用すれば、いつでも好きな金額を返済できること
- 提携ATMや振込融資にて簡単に借り入れができるため便利なこと
- 資金使途が自由なこと
- 大口融資が可能なこと
- 他のローンよりも審査が早いこと
カードローンのデメリット
- 金利が高いこと
- 毎月の返済額が低く設定されているためなかなか元金が減らないこと
- 何度でも借り入れをしてしまうこと
- 返済が長期になること
- 信用情報機関に履歴が残ること
契約者貸付とカードローンとの比較
金利
カードローンの最低金利だけ見ると、一見カードローンの方が低くてお得のように見えます。しかし、実体はカードローンの場合は、最高限度額の借り入れをした場合に最低金利が適用されます。
実際には最高限度額の借り入れはあまりなく、当初は最低限度額からの借り入れになることが多いです。そのため、カードローンの金利は最高金利であることが多く、5%前後の金利である契約者貸付の方がお得なことが多いです。
審査
カードローンには必ず審査があり、場合によっては審査に落ちてカードを作れないこともあります。しかし、契約者貸付は生命保険が担保になるため、審査落ちすることはありません。
まとめ
あまり知られてはいませんが生命保険からお金を借りる方法として、契約者貸付というものがあります。契約者貸付は生命保険を担保とするため、金利も低く審査も無いというメリットがあります。お金が必要で解約を考えている場合は、検討してみてはいかがでしょうか。