所得補償保険と就業不能保険は別物?両者の特徴や違いを解説

働けなくなった時の保険は3つある

「就業不能保険と所得補償保険は同じもの?どう違うの?」

怪我や病気になった際の働けないリスクに対応する保険として、ポピュラーなものとして「就業不能保険」が挙げられるでしょう。就業不能保険は何らかの理由で働けなくなった時に、保険金が入ってくる保険で人気の高い保険になっています。

ただ、働けないとリスクをカバーする保険という観点から考えた時に、就業不能保険以外の選択肢も存在しています。その中でも「就業不能保険・所得補償保険・収入保障保険」というのが、名称からも似通ったものになっており、違いについて分かりにくいという声も少なくありません。

なので、今回は「就業不能保険と所得補償保険の違い」というテーマで、

  • 働けないリスクをカバーする3つの保険
  • 所得補償保険・就業不能保険・収入保障保険の違い
  • 使い分け方

という観点から、働けないリスクをカバーする保険について解説していきたいと思います。まず、はじめに似通った3つの保険である「就業不能保険・所得補償保険・収入保障保険」の概要について押さえていきましょう。

所得補償保険について

まず、はじめに働けないリスクをカバーする保険の1つとして「所得補償保険」についてご紹介していきたいと思います。所得補償保険について簡単にまとめると以下のような特徴があります。

  • 病気・怪我による働けない時に保険金が出る
  • 収入の一定割合(6割程度)を保障
  • 保険期間は数年で更新
  • 保険事故から数年(1~5年)保険金を月々給付

簡単にまとめましたが、上記の特徴さえしっかりと押さえて頂けると、所得補償保険については理解出来たと言えます。実は所得補償保険と就業不能保険は似通っており、同じ保険として紹介される事が少なくありません。

細かな特徴の違いは存在していますが、保険金が支払われる条件・支払いサイクル等が似通っており、就業不能保険とほぼ同じ保険だと言えるでしょう。ただ、大きな違いは所得補償保険は「損保系保険会社」が販売している傾向にあります。

一概には言えませんが、損保系の保険会社は「実際の損失に応じて補償する」という形の保障を提供しているケースが多いです。これは所得補償保険に限らず、医療保険・がん保険等にも見られる特徴です。

就業不能保険について

次に就業不能保険について解説していきたいと思います。就業不能保険について簡単にまとめると以下のようなポイントが挙げられます。

  • 怪我・病気による就業不能が保険金の支払い条件
  • 保険金は「月々10万円~数十万円程度」
    収入によって上限は変動します
  • 保険期間は50歳~70歳まで
  • 保険期間の終了まで保険金を給付

就業不能保険は、働けなくなった時のリスクをカバーする保険としてポピュラーです。理由はいくつかありますが、やはり保障の手厚さというものが挙げられるでしょう。

保険期間の終了まで保険金が被保険者に入るので、なにかあった時に長期間に渡って安定的な保障を受ける事が可能になっています。傾向としては生命保険系の保険会社が販売している傾向にあります。

保険金の設定は任意になっているケースが多いですが、収入により一定の上限があります。基本的に就業不能保険の保険金は「最低限」に押さえる事が多いので、上限についてそれほど心配する必要はないでしょう。

というのも、就業不能保険の保険金は月々1万円の金額をアップさせるだけで、受取金額が年間12万円・10年間で120万円違ってくるので、保険金のアップをすると保険料もアップする傾向にあり、保険金は最低限に押さえる必要性があるのです。

働けなくなった時のリスクを保障するための保険として最もベーシックなものになっており、他の保険と比較した場合でも人気の高いものになっています。

収入保障保険について

最後にご紹介したい保険は、収入保障保険です。収入保障保険について簡単にまとめると

  • 死亡・高度障害が支払い条件
  • 保険金の設定は任意
  • 保険期間は50歳~70歳まで
  • 保険期間が終了するまで給付

というものになっています。収入保障保険の大きな特徴は「死亡・高度障害」が条件になっているというポイントでしょう。他の保険と比較した時に、このような条件を設定しているものはありません。

そのような点から考えると、収入保障保険の保障内容というのは、他の保険と一線を画するものになっており、単純に働けなくなった時の保障が欲しいという場合は加入に際して注意が必要であると言えるでしょう。

名称は就業不能保険・所得補償保険と似通ったものになっていますが、実際に保険金を受け取る事が出来るケースは異なっています。比較対象にしている保険と同じ認識で加入すると、実際に保険を利用する際に「思っていた保障と違う」という事態になりかねないので、押さえていきましょう。

所得補償保険、就業不能保険・収入保障保険の違い

先程、各保険の概要について解説させて頂きました。概要が分かった所で、各保険の違いを

  • 保険金の支払い条件
  • 収入と保険金
  • 保険期間による違い

という観点から解説していきたいと思います。各保険の違いを把握して、就業不能保険・所得補償保険・収入保障保険の特徴を押さえていきましょう。

保険金の支払い条件

就業不能保険・収入保障保険・所得補償保険の3つを、保険金の支払い条件で分類した時に2つのグループに別れます。

怪我・疾病によって働けない状態になった時に保険金を給付

  • 就業不能保険
  • 所得補償保険

死亡・高度障害によって保険金を給付

  • 収入保障保険

上記の違いから分かることは「どのようなリスクを保障するのか?」というポイントです。3つの保険は働けなくなった時の経済的負担を軽減するために、加入するものです。ただ、働けない状態の意味合いが大きく異なると言えるでしょう。

就業不能保険・所得補償保険と言った怪我・疾病によって保険金の支払いを受ける保険については「扶養者・自分を含めた収入を保障」している事になります。つまり、世帯に扶養者が居なくても加入する意義はあります。

一方の収入保障保険については死亡・高度障害が条件となっており、こちらは「残された遺族への収入保障」という側面が強い保険になっています。また、働けない状態への保険というよりも、死亡・高度障害になった時の保障という意味合いが強いです。

就業不能保険・所得補償保険は純粋に「働けない時の収入」を保障していますが、収入保障保険は「死亡・高度障害になった時に残された遺族への保障」というのが、主に保障するリスクになっており、収入保障保険は「年金型の死亡保険」に近い商品だと言えます。

上記したような内容によって「どんな時に保障を受けたいのか?」かが、大きく異なるのでしっかりと注意しましょう。

収入と保険金

収入と保険金という観点から3つの保険を分類した場合は、

ある程度任意の保険金を受け取る事が出来る

  • 就業不能保険
  • 収入保障保険

決まった割合の保険金を受け取る事が出来る

  • 所得補償保険

という違いがあります。この点から見える事は「いくら保険金が必要なのか?」という点を分けるポイントになっており、就業不能保険・収入保障保険の場合は、基本的には任意で保険金を設定する事が可能です。(年収によって上限があるケースもあります)

カスタマイズ性が高く便利な保険ともいえますが、保険金・保険料のバランスを慎重に検討する必要性が高く、場合によっては自分に合わない設定をしてしまう可能性もあります。

保険金が任意で設定されているからこそ、しっかりと支出・収入を把握して必要最低限の保険金を算出する必要性が高いと言えるでしょう。

一方の所得補償保険は、予め収入の60%程度等入ってくる金額が決まっている保険になっています。上記したようなリスクはありませんが、一方で保険金を自由に設定したい・手厚い保障にしたいという方には不向きなものになっています。

保険期間での違い

最後に、保険期間による違いから収入保障保険・就業不能保険・所得補償保険を比較していきたいと思います。

保険期間が長い(保険期間満了まで給付され、期間が長い)

  • 就業不能保険
  • 収入保障保険

保険期間が短い

  • 所得補償保険

就業不能保険・収入保障保険は「保険期間」という観点から、見た時に殆ど変わりはありません。両者とも50歳~70歳までの期間で設定する事が一般的で、保険金の支払いも保険期間の終了まで続きます。

しかし、所得補償保険に関しては保険期間が1年~5年程度であり、保険金を受け取れる期間についても数年程度になっています。どちらかというと、所得補償保険は短期間向けの商品になっていると言えるでしょう。

各保険の特徴をまとめ

これまで、働けないリスクをカバーする保険の違いについてご紹介させて頂きました。最後に、各保険の特徴についてまとめていきいたいと思います。

就業不能保険の特徴

就業不能保険の特徴について簡単にまとめると「長期間・安定的な保障」を提供する保険であると言えるでしょう。また、カスタマイズ性も高く保障の手厚さを保険金の調節によって、契約者がコントロールする事が可能です。

長期間の加入を前提とした保険になっているので、短期間の利用を想定している方は注意が必要な保険であると言えますが、長期的な保障を受ける事を想定している場合は検討できる保険になっています。

働けなくなった時のリスクを保障する上では、癖がない標準的な保障内容を提供しているケースが多いので、まずはじめに検討したい保険になっています。

所得補償保険の特徴

所得補償保険の特徴について簡単にまとめると「短期間・ある程度の保障」を提供するものになっています。世帯年収等によっても異なりますが、年収の60%というのはギリギリ生活出来るラインの金額になっていると言えます。

もちろん、これは他の保険と組み合わせた場合であり、所得補償保険でしっかりと保障していくというのは、難しいものになっています。また、保障期間で考えた時にも短期間のものになっているので、長期間しっかりと保障していくという事には向いていません。

ただ、所得補償保険は用途によっては保険料が安く使いやすい便利な保険になるので、ニーズによってかなりおすすめ度の変わる保険になっていると言えます。

収入保障保険の特徴

収入保障保険の特徴について簡単にまとめると「死亡保険に似た収入保障」と言えると思います。上記した両者とは異なり、支払いの条件が「死亡・障害」になっている事が大きな特徴です。

保障内容から見た時に、どうしても純粋な働けなくなった時のリスクを保障というものにはなっていませんが、ニーズによってはかなり魅力的な保険になると言えます。

また、保険期間・保険金の支払い期間というのもかなり長期間のものになっているので、基本的には「長期間の加入を前提とした保険」になっていると考えた方が良いでしょう。

ニーズによって使い分ける

この記事では、就業不能保険・収入保障保険・所得補償保険という3つの保険の概要や比較を解説してきました。最後に「どの保険がどんな人におすすめなのか?」というポイントについて解説していきたいと思います。

就業不能保険がおすすめな人

就業不能保険がおすすめな人について簡単にまとめると、純粋に「働けないリスクを保障したい・長期間の保障が欲しい」という方に向いています。まず、はじめに就業不能保険は働けないリスクに対してベーシックな保障内容になっています。

そのため、特にこだわりがなく働けないリスクを保障していきたいという方に向いているでしょう。また、3つの保険を比較した時に、所得補償保険は「短期間の保障」になっており、収入保障保険は死亡・高度障害が支払い条件になっています。

様々な保険が存在しているため一概には言えませんが、基本的に「働けないリスクを長期間保障する」という保険は、就業不能保険しかありません。(プラン等によっても異なります)

そのため、働けないリスクに対するシンプルな保障が長期間欲しいという方にとっては、就業不能保険は適切なものになっているでしょう。また、働けないリスクに対して「保険金を調節したい」というケースでも同様です。

同じように保険金を調節する事が可能な収入保障保険は、死亡・高度障害を支払い条件にしているため、シンプルな働けないリスクに対して保障を行っており、なおかつ保険金を調節できるのは就業不能保険だけです。

もちろん、上記したような事は平均的な就業不能保険を指しており、プランやその保険の特性によって詳細は確認が必要ですが、基本的にはベーシックな保障は就業不能保険が適切であると言えるでしょう。

収入保障保険がおすすめな人

次に収入補償がおすすめな人について解説したいと思います。収入保障保険がおすすめな人は「生命保険の代替をしたい、死亡保障が欲しい」という方に向いています。

収入保障保険は、就業不能保険・所得補償保険とは特性が異なり、死亡保障の特性が強い保険になっています。そのため、生命保険の代替を行う・死亡保障を付けたいという方に向いている保険になっていると言えるでしょう。

生命保険の死亡保険は通常、一時金として数千万円という大きなお金が遺族に入ってくるものになっており、場合によっては意図しない支出に保険金が使われてしまうリスクがあります。

一方の収入保障保険であれば、月々安定した額を一定期間給付してもらう事が可能なので、遺族側としてもこれまでと同じように安定したお金のやりくりを行いやすいというメリットがあります。

ただし、生命保険の場合は保険期間内であれば、一時金を満額受け取る事が可能です。一方の収入保障保険は、保険期間の終了が近付いた時期に亡くなってしまうと、あまり保険金が給付されないという特徴を持っています。

両者とも一長一短ではありますが、ニーズあった方を選択すべきであると言えるでしょう。保険の用途によっては、かなり理想的な保険になる可能性を持っているので、死亡保険を検討したい・しているという方におすすめです。

所得補償保険がおすすめな人

最後に所得補償保険がおすすめな人について解説していきます。所得補償保険は「最低限の保障を一定期間だけ欲しい」という方に向いています。上記の2つの保険と比較した時に、所得補償保険は保険期間が短くなっています。

保険の更新を行えば長期間利用する事が可能ですが、その場合はあまりメリットがありません。長期間の利用が想定される場合は、予め就業不能保険を契約した方がお得です。

そのため、長期間の利用には向いていませんが、子供が成人するあと数年間(出費が大きくなる大学入学時等)、ローンを支払い終えるまでの期間等です。

また、所得補償保険は「受け取りまでの期間が短い」という特徴があります。この特徴によって「治療期間中の生活費」として利用する事も可能になっています。また、保険によっては保険期間が長く、60歳程度まで保障するものがあります。

所得補償保険と就業不能保険は似通ったものになっていますが、汎用性の高さという観点から見た時に所得補償保険の方が汎用性が高く、様々なニーズに対応しやすいと言えるでしょう。

まとめ

働けないリスクをカバーする保険について

  • 働けない時に長期的に保障するのが就業不能保険
  • 一時的に働けないリスクを保障する所得補償保険
  • 死亡・高度障害の際に収入を守る収入保障保険

三つの保険の違い

  • 支払い条件が特殊な収入保障保険
  • 収入の六割を保障する所得補償保険
  • 保険期間が短い所得補償保険
  • 各保険の特徴を押さえる

三つの保険の使い分け

  • 長期的に普通の保障が欲しいなら就業不能保険
  • 様々な使い方を想定しているなら、所得補償保険
  • 生命保険代わりに使うなら、収入保障保険

今回は、働けないリスクを保障する三つの保険について、各保険の概要、各保険の違い、使い分け方法等についてご紹介させて頂きました。

第三分野の保険には、がん保険・医療保険等なにかあった時の費用を保障するもの人気が高いです。ただ、実際は医療費等かなり公的なサービスを利用できるケースも少なくなくありません。

しかし、治療が終わった・落ち着いたけど働けないというリスクに対する公的な保障は少なく、特に自営業の方の場合は障害年金以外期待できないと考えていいでしょう。そのようなケースでは、しっかりと就業不能保険等でカバーしていく必要があります。

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