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Airbnbなどの一部の大手仲介サイトでは、万が一の家具や家電などの家財の損害を補償する「ホスト保証」を提供しています。民泊はホストの負担にて生活必需品を用意します。加えてインテリアとして高価な絵画やアンティークものを飾ることもあるでしょう。
稀にではありますが、ゲストによってそれらの家財が盗難や破損などと損害を受ける場合があります。そのようなケースに備えておけるのが「ホスト保証」です。再購入の費用を目安に保証金を請求することができるので安心です。
今回は、Airbnbが提供している「ホスト保証」の対象や範囲を解説していきます。ぜひ、参考にして頂きたいと思います。
民泊では物件や設備の損害が心配?
民泊は賃貸とは異なり不特定多数の旅行者が部屋を使います。しかも、滞在に必要な家具・家電・備品などはすべてホストの負担で用意するものです。
民泊を始めてみたいが、盗難や破損が心配だという方は多いのではないでしょうか。基本的に民泊は一般の人達が住宅を貸し出す宿泊サービスであって、Airbnbなどの仲介サイトと通してオンラインのやり取りだけで予約を受け付ける仕組みになっています。
もちろん、悪意はないのですが何かを破損してしまうゲストも中にはいるでしょう。このような損害はけっして多いわけではないのですが、民泊では外国人の宿泊客がメインとなるため習慣・言葉の違いなどから思いがけない事態もあり得るのです。
そこで、ゲストによって室内や家財に損害を受けるケースにはどのようなものがあるのか、具体的に見ていきましょう。
ゲストによって生じる損害リスク
ゲストによって生じる損害リスクは、大まかに悪意のあるケースと不測の事態から起こってしまったケースとに分かれます。
悪意のあるケース
悪意のあるケースとは、売却や自分が使うなどの意図を持ってゲストが物を盗むケースです。
- 台所に完備していた電子レンジが盗まれた
- シャンプーやコンディショナーの量が著しく減っていた
- バスタオルやスリッパが無くなっていた
- 部屋に飾っていたイラストが無くなっていた
- 共用の靴箱から靴が数足無くなっていた
など・・・
※私物盗難・スリの国際比較
上図は私物盗難・スリの被害者率を各国で比較したグラフです。日本の治安の良さが実感して頂けるように、国よっては盗難は日常茶飯事だといえるようです。
盗難に合わないためには、ゲストの情報を入念に調べておくことや高額なものを部屋に置かないなど注意するとともに、万が一に備えておくことが大切です。
不測の事態から起きるケース
不測の事態から起きる部屋や家財の損害リスクとは、主に国ごとの習慣の違いや言葉の違いなどから発生しがちです。
- 洋式トイレの便座の使い方がわからず、便座を割られてしまった。
- 浴室の給湯システムの使い方がわからず壊されてしまった。
- コーヒーメーカーの操作がわからず壊されてしまった。
- セキュリティ装置の操作ミスで器機が不具合を起こしてしまった。
- 「ご自由に使って下さい」と伝えたところ全部持って帰られた。
など・・・
※取り扱い方法や操作方法マニュアルの例
上図は、給湯器とTVリモコンの操作方法マニュアルの例です。民泊では、室内の設備・器機の使い方を外国語で案内することをホストに義務づけています。
とくに日本は電気機器システムが非常に発達しているので、万が一、誤操作などで壊されるリスクに備えておいた方が安心です。
以上解説したようなリスクに対して補償が受けれるのが、大手仲介サイトが提供している「ホスト保証」です。
Airbnbのホスト保証とは
ホスト保証とは、Airbnbなどの一部の大手民泊仲介サイトがホストに提供している補償サービスです。
利用するサイトによって、適用できるホスト保証は若干内容が異なるのですが、Airbnbでは、ゲストによる部屋や家電・家具などの家財の損害などを補償しています。
Aibnbは民泊事業を全般的にサポートしており、自社のサイトにてリストアップするホストに対して「ホスト保証」を無償で提供しています。最大で100万ドル(日本円で約1億8千万円)の損害を補償するサービスです。
ホスト保証の概要
このホスト保証は、自動的にAirbnbを利用するホストに適用され、一切保険料はかかりません。Airbnbを利用するすべてのホスト、すべての予約に対して毎回、ホスト保証がついています。
1人でも多くの人達が安心してホストとして民泊に参加できるよう、Airbnbからサポートを受けれるようになっています。
Airbnbでは、サイトを利用するホストにはホスト保証を利用する権利があることを法的に認証しています。つまり、Airbnbにリストアップする以上は誰でも要件に該当すれば、保証金を請求する権利があるのです。
Airbnbは、保証対象損失(以下に定義されます)を原因としてお客様の保証対象資産(以下に定義されます)が損傷又は損壊した場合、ホストとしてのお客様に対して、本ホスト保証規約に規定される制限、例外及び条件に従って、当該保証対象資産を修理又は交換するための費用を支払うことに同意します
引用:Airbnb ホスト保証規約
この規約では、お客様(ホスト)の保証対象資産が損傷または損壊した場合とあります。どこからどこまでが保証の対象となるのでしょうか。事前に、保証の対象が何なのかを確認しておくことが大切です。
ホスト保証の対象
Airbnbのホスト保証規約では、保証の対象を具体的にわかりやすくするために、まず3つの視点から対象となるものが規定されてあります。
- 「保証対象宿泊施設」→保証の対象となる施設・建物
- 「保証対象損失」→保証の対象となる損失の要因
- 「保証対象資産」「保証対象外資産」→保証の対象となるもの、ならないもの
ではそれぞれの具体的な対象の範囲を見ていきましょう。
ホスト保証で保証できる範囲
保証対象宿泊施設
保証対象宿泊施設とは、Airbnbにてリストアップしている居住可能な宿泊施設であって、ホストが所有権または使用権を有している建物・部屋のことです。
→実際にゲストによって予約された宿泊施設であることが前提となっています。
→自動車、スクーター、ヨット、ジェットスキーなどの車両・船舶においてもAirbnbで予約されたものに関しては、静止しており滞在のみに利用される限りにおいて対象宿泊施設に該当する場合もあります。
保証対象損失
ホスト保証の対象となる損失の種類(要因)は、あくまでAirbnbでの滞在期間中に、ゲストやゲストの招待客が発生させた物理的な損害に限られています。
→「チェックアウトが遅れたため、次のゲストに迷惑をかけた」など、具体的な物品が提示できない場合は対象外となります。
→原則として、損害を受けたものが写真で取って提示できるもの、目に見える損害であることが条件となっています。
保証対象資産
保証の対象となる資産は、以下の要件を満たす必要があります。
- 対象宿泊施設となる資産、不動産である又はそこから1,000フィート(304.8メートル)以内に所在する資産であること
- ホストが所有する資産(動産)であること
- ホストが使用・管理している、または賠償の義務が生じる資産であること
- ホストの所有物ではないが、損害に対し法的債務を負う資産であること
などが定義されてあります。
所有する動産や不動産は何となくイメージできると思いますが、
賠償の義務が生じる資産、法的債務を負ってしまうもの、
とはどのようなケースなのか明確にしづらい方もいるでしょう。イメージしやすいようにいくつが例を挙げてみましょう。
賠償の義務が生じる資産とは、賃貸契約している部屋やレンタルの家電・家具などを民泊に使用しているケースなどです。その部屋や家電・家具には別のオーナーがいます。
もし、その部屋や家具に損害を与えた場合、ホストは本来のオーナーに賠償する義務が生じてしまいますね。このような資産を賠償の義務が生じる資産といいます。
保証対象外資産
Airbnbのホスト保証規約では、保証の対象外となるものが明確に提示してあります。極端な言い方をすれば、対象とならないものを知ることで、対象となる資産がわかりやすくなります。
では、対象とならない保証対象外資産を見ていきましょう。
- 通貨、金銭、現物の貴金属、手形、証券
- 土地、水、地上や地上の物質や鉱物、造園、道路、タンク、配管
- 家畜、ペットなどの動物
- 樹木、農作物
- 保証対象宿泊施設に該当しない車両や船舶
- 地下鉱山、縦鉱、鉱山
- ダム、堤防、土手
- 輸送中の資産
- 保証対象宿泊施設から1,000フィート以上離れた箇所の送信・配電線
- 保証対象宿泊施設に所在していない資産に生じた損害
- ホストが所有せず、かつ使用・管理が認められていない不動産
となっています。
上記の保証対象外資産に加えて、例外として対象外となるものが規定されてあります。
例外として対象外資産となるもの
例外として対象外資産となるものは、
- 予約期間満了後に生じたゲストによる損害
- 上限額を超える損害
- 同品質の他の物品に代替えができない、高額もしくは希少価値が高い美術品
- 地震、台風などの自然災害による損害
- 事業の中断や市場の状況による損失・損害
- 原因不明の損害
- 密輸または違法となる物品の損害
- ゲスト以外の外部要因による故障やサービスの欠如による損害
など・・・他にも様々な規定が提示してあります。概ねのところで、判断するポイントを挙げておきましょう。
対象外を判断するポイント
対象外を判断するポイントとしては、
- Airbnbを介した宿泊サービスであるかどうか No→対象外
- Airbnbで確認できる期日、場所、期間であるかどうか No→対象外
- 所有する住宅内で起きたことがどうか No→対象外
- 転貸許可を得た賃貸物件にて起きたことがどうか No→対象外
- 一般常識として部屋の中で使うものかどうか No→対象外
- 同様のものを再購入することが可能かどうか No→対象外
- 目に見えるもの、写真にて損害が証明できるか No→対象外
などを目安に判断してみるとよいでしょう。
※対象となる資産の詳細は、「Airbnbのホスト保証規約」からご確認いただけます。
保証金の設定
また、Airbnbではホスト保証とは別で、ゲストに対して万が一に備えて保証金の預け入れを設定することができます。これは何事もなければ、チェックアウト後にゲストに返還される事を前提に、ゲストに予約時点で請求することが可能です。
保証金の設定は、それぞれホスト自身が任意で追加する課金システムです。
ホスト補償保険
さらにAirbnbでは、ゲストや近隣周囲の住民に対して賠償責任を負った場合に適用される「ホスト補償保険」も同時に提供しています。こちらの補償保険も自動的にAirbnbを利用するホストに適用されます。(宿泊客の国籍による)
- ゲストがケガをした際の治療費の請求
- 大家さんから部屋の損害賠償を請求された場合
- 宿泊施設の水漏れなどによってなど、近隣住民が修理費を請求した場合
などの損害賠償にかかる費用を上限100万ドル(日本円約1憶8千万円)にて補償するサービスです。ホスト補償保険でも適用できないケースが多様にありますので確認しておきましょう。
ホスト保証の確認と注意点
それでは最後にホスト保証の利用にあたって確認すべき点や注意点をいくつか解説しておきます。
- ゲストの話し合いをまずは推奨している→解決できなかったら申請
- 申請の期限がある→チェックアウト後14日以内or次のチェックイン
- 写真などの必要書類の提出が必須→提出できない場合は却下
- 緊急時には警察や消防へ通報する→Airbnbでは早急に対応できない
- 対象外となるケースもある→対象となるケースの確認
- 火災保険や損害保険の代用はできない→すべてが補償できるわけではない
必要書類
損害の状況によりますが、保証金の請求を行う場合には以下のような書類が必要となります。
- 損害の状況がわかる写真や動画
- 所有権、登記情報、購入価格などがわかる不動産情報
- 物品の経年状態がわかる領収書や明細書など
- 修理、交換費用、再購入にかかる費用明細・見積書
- 盗難や暴力行為など損害の種類によって警察への届出も必要
請求から支払いまでの流れ
ホスト保証金の請求の流れを大まかに見ておきましょう。
- 損害賠償についてゲストと相談する→解決しなかったら
- Airbnb問題解決センターに連絡する
- 請求に必要な書類を提出して請求リクエストを行う
- 予約状況・リスティングの確認や情報収集などの審査がある
- Airbnbが代行して請求を行う
- 原則として72時間待ってゲストからの返答が得られる
- 3日~1週間程度で入金処理が完了する
- ホストにリクエストした金額が振り込まれる
以上のような流れになります。
※民泊物件の損害リスク、保険や保証については下記の記事も参考にして下さい。
※民泊でありがちなトラブル、近隣住民とのトラブルに関する記事もご覧ください。
まとめ
民泊をすでに運営中のホストの中には、Airbnbにてホスト保証やホスト補償保険があるから十分だと思っている方もいるようです。確かに、Airbnbの保証やホスト補償保険は考えられる多くのトラブルに対処することは可能です。
しかし、Airbnbの保証(ホスト補償保険)だけではけっして十分だとはいえません。
民泊運営においては、
などと、広い視野で万が一に備えておくことが大切です。Airbnbの保証制度を活用しつつも並行して災害損害保険や賠償責任保険に加入する必要があります。
他にどんな補償が足りないのか、どんな保険への加入が必要なのかを検討していくためには、まずはAirbnbで保証できる内容を理解しておくことが第一段階となります。
ぜひ、民泊投資を成功させるためにも、今回の記事を参考に将来的なリスクに万全に備えていきましょう。