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最近、プラチナの価値がかなり下がってきています。 その大きな原因としてはディーゼル車の需要が低下してきたことや 南アフリカの経済状況が原因だと言われているようです。
数年来の安値にきているプラチナの価格を見るにつけ、この機会にプラチナへの投資をはじめるべきかどうか迷っている人は多いことでしょう。
プラチナの価値は本当に低下してしまったのでしょうか?それとも一時的な現象なのでしょうか。将来、値段が上がってしまってから購入を考えても、その時ではもう遅すぎるのです。
そうならないためにも、今回はプラチナの価値を徹底的に分析してみたいと思います。
現在のプラチナの価格は
金・プラチナの現在の取引価格というものは、一般的に先物取引の価格が大きく反映されています。先物取引とは、1カ月先以降の取引の値段を決めるもので、将来性のあるものほど、期待が集まり価格は高くなっていきます。
その先物取引の価格が現在の金・プラチナなどの商品の価値を決める基準にもなると言えるのですが、プラチナの先物価格の低下にはじまり、現在の取引価格の減少が加速してきているのです。
2018年7月4日の時点で、プラチナの価格は1gが2,558円の安値をつけ、とうとう3,000円を下回ってしまいました。貴金属に多少関心のある方であれば、通常、金・プラチナは双方とも1g、4,500円から5,500円の間を行き来していたことはご存知だろうと思います。
プラチナの値下げが加速
1gが3,000円を下回ってしまったのは、約9年半ぶりになるということです。ニューヨークのプラチナの取引金額は1トロイオンス810ドルとなり約10年ぶりの安値圏に入ってしまいました。
ニューヨークでの先物取引の価格は、世界中の貴金属取引の価格に多大な影響を与えていますので、参考までにニューヨーク取引のグラフも見ておいて下さい。
ここまで、急激にプラチナの価格が下がってしまったのであれば、通常なら大安売りの期間限定セールのごとく、一気に人が集まりそうなものですが、今回は様子見の姿勢が長引いているようなのです。
2018年、7月9日現在の価格を見てみましょう。最安値記録を更新してからは徐々に価格は3,000円を上回り、現在は3,300円くらいにかろうじて戻ったようですが、今後の展開がどうなるのか疑問に思ってしまうところであります。
ちなみに金の価格はといいますと、現在4,800円に位置しており、まずまず通常通りといったところでしょう。では、なぜプラチナだけがこんなに値段が下がってしまったのでしょうか?
ジョンソン・マッセイPLCの見解
ロンドンのジョンソン・マッセイPLCは世界でも貴金属取引で有数の企業であり、貴金属を中心とした各部品等を製造している企業でもあります。そのジョンソン・マッセイの見解によると、複数の理由が重なってしまったことにあるとのことです。
- 貴金属は自動車製造をメインに工業で使われてる金属であり、金属自体の価格が貿易戦争の影響で1月からすでに18%下降してきている。
- 貿易戦争の影響によって、金属類の需要が低下してきているが、なかでもプラチナのコスト削減が他の金属よりも重視された傾向にある。
- なぜなら、プラチナはディーゼル車の排気部品に使われていたけれど、最近のハイブリッドや電気自動車の重要の増加のためにその用途が低下してしまった。
- ドルの価格が上昇してきていることもあり、海外の投資家達がドルでプラチナなどの商品を積極的に購入できない傾向にある。
- プラチナの産出国である南アフリカでの国民の財政状況が悪化していて、資産を売却する方法としてプラチナが大量に流出してしまった。
以上の理由が、今回プラチナの価格が著しく低下してしまった原因であると言われていますが、もっとも大きな影響を与えたと思われるものは、ディーゼル車の需要の低下と南アフリカの財政状況ではないかと思われます。
そこで、この2点に重点をおいて詳しく調べてみたいと思います。
南アフリカの影響
2017年のプラチナの産出量は、前年の191トンから9トン増加の200トンでした。南アフリカは世界の約70%のプラチナを産出している国になります。南アフリカ国内での情勢がプラチナの価格に及ぼす影響について考えてみたいと思います。
南アフリカの通貨との関係
プラチナの価格低下の理由の1つとして、南アフリカの財政状況の悪化が挙げられますが、中でも多きな痛手となったのは、南アフリカの通貨、ランドの価格が下がりすぎてしまったことにあるといえます。
プラチナだけに限らず、貴金属などの金属類の価格は主にドルを基準に取引されるため、南アフリカランド(通貨)とドルの関係が重要になってきます。
南アフリカランドの下落
2017年の12月に汚職疑惑で国民からの信用を失ってしまったズマ大統領から、改革派のラマポーザ副大統領へとその地位の継承が完了すると、希望に満ち溢れた南アフリカランドの価格は手堅く上昇していきました。
翌2018年の2月下旬には、対ドルで約3年ぶりの高値をつけたほど高騰しました。
しかし、4月以降はドルの金利上昇や、貿易関連やディーゼル車への需要低下などが原因となりランド(南アフリカの通貨)の価格は下落基調となってしまいます。
同時に国内でのGDP(国内総生産量)が低下してしまい、ランド安を加速させてしまいました。さらには、労働組合のストライキなどが相次ぎ、南アフリカランドの価値を押し下げる結果となってしまったのです。
プラチナの需要が低下気味であることにプラス、貿易戦争の余波を受け、そして著しいドル高によってプラチナの価格は下がるだけ下がってしまったのだと言えるでしょう。
プラチナの用途
もう1つの悪要因とは、ディーゼル車の需要の低下によるものです。プラチナはこのディーゼル車の排気設備を製造するために欠かせない素材だったのです。
ディーゼルエンジンのしくみ上、小型で高速のものよりは大型で低速のものがより効果が高いということで、国内では主に鉄道車両、船舶、バス、トラックなどに使われているものになります。
自動車用のディーゼルエンジン
自動車向けのディーゼルエンジンは、ヨーロッパのほとんどの自動車メーカーによって使われていました。メルセデスベンツ、プジョー、フォルクスワーゲン、BMWなど多数のディーゼルエンジン車をこれまで発売してきました。
日本でも密かにディーゼル車の人気は高く、その理由としてはやはり燃費の良さになるのです。そのディーゼル車も、次世代車であるハイブリッドや電気自動車の徐々に高まる需要にその存在価値を失くしつつある状況にあるのです。
排気ガス規制
自動車の普及とともに深刻化する大気汚染を解決するため、1966年から始まり、近年では世界的な規模で討議されている問題でもあります。
クルマからの排出ガスには人体に有害である物質が含まれることから、法律により排出が許される量が制限されています。
各国それぞれ、その規制に若干の差はあるようですが、比較的ここ数年に渡って厳しくなっている傾向にあり、その測定にあたっては国際連合で決められた試験方法を適用しなければならないのです。
ヨーロッパでは近い将来にディーゼル車の完全廃止を目標とする国も少なくなく、各国の自動車メーカーも今後はハイブリッドと電気自動車へと移行していく計画を次々と発表しているのです。
日本では、トヨタ、日産がすでにディーゼル車を廃止していく意向を表明しています。
需要が低下していくディーゼル車
以上がディーゼル車の需要が低下してしまった簡単な流れになります。ディーゼル車の排気設備の素材として南アフリカから輸入されていたプラチナは、なかば今後の行き場所を失くしてしまったわけです。
グラフで見るプラチナ需要の低下
下の図は自動車部品(触媒用)としてのここ3年間のプラチナの需要の推移になります。現時点では将来的な需要の低下が危惧されているほどの大きな数字の減少は見られませんが、ヨーロッパでは歴然としています。
小型車に関しては、排気ガス規制が進んでいますが、大型車に関してはまだ過程の段階にあることと、中国などの開発途上国においての排気ガス規制がまだ緩い段階であることなどから数字の増減に差がみられるようです。
そして今後はこの減少が年々大きくなっていくことは明らかだと言えます。
その他のプラチナの用途
確かに、大幅にその価値が下がるとわかっている商品に大切な資金を費やすわけにはいきません。そこで、プラチナのその他の用途についても詳しく調べてみたいと思います
その他の需要項目はどのようになっているのでしょうか?
電子セクター
ハードディスクドライブ(HDD)でのプラチナ使用料は前年比で10%を上回る増加となりました。一般消費者のクラウド用、企業のデータ記憶装置としてHDDの利用が拡大してきています。
データ保存に対するニーズは今後さらに高まると予想されており、SSDメモリーカードだけでは、そのニーズを満たすことができなくなっています。
HDD→大量のデータを保存できるデバイス
SDD→小容量のデータを保存できるカード
燃料電池
燃料電池車(ハイブリットやEVなどの電池に充電するタイプの車)の市場は大幅に拡大してきており、プラチナの使用率は300%以上も増加してきているのです。
このような新しい燃料を使う次世代車の普及は、まだ、始まったばかりであるので、今後のプラチナの使用拡大が期待されているのです。
2017年の燃料電池車はカリフォルニア州と日本では前年の約2倍に増加しています。
ガラス製造セクター
液晶画面に使用するプラチナの販売量は一旦低下にありましたが、2017年では、6年ぶりの高水準となりました。
新しい動きとしては、情報通信用の光ファイバーの素材であるガラス繊維へのプラチナの需要が急成長してきています。
石油精製セクター
石油精製化学品の製造において、2017年にプラチナが増加傾向にあったのは、シーズや包装材、医療器具、ラベル、歯科用材、などのシリコン生産設備建設にあたっての需要が高まったことにあります。
とくに中国において、その設備建設が活発であったことが大きな要因だったようです。
プラチナの今後の需要
このように調べてみると、将来的には今以上はプラチナの需要は増加していくと見ることもできるのです。
とくに燃料電池へのプラチナの需要は、次世代自動車の普及とともに今後は工業用プラチナの大半を占める可能性が高いといえます。
その他の貴金属との比較
世の中には非常に多くの金属がありますが、中でも貴金属やレアメタルと呼ばれる金属は地球上で希少な金属として価値の高いものと位置づけられています。
貴金属とレアメタルの境界線には明確な定義はなく、混同されて取り扱われることもあります。
ベースメタル
鉄や銅、亜鉛、錫、アルミニウムなどの大量に入手できる金属であることから、安価に入手することができます。また、抗腐食性が低く、耐性が貴金属やレアメタルに比べて劣ってしまうのが特徴です。
貴金属
一般的に、金、銀、プラチナ、パラジウムなどの抗腐食性の高いものを意味します。同時に装飾品として使われる金属という意味もあり、貴金属は希少で入手が難しく高価なものになります。
レアメタル
希少な金属であることと、その性質が産業用や工業用として定義づけられている金属類をいいます。
抽出困難であることから、優先的に資源リサイクルの項目として、国内だけに限らず世界的な規模で重要な金属として位置付けられています。
貴金属同様に電子材料、機能性材料としての需要が高いものになります。
特殊な金属プラチナの今後の価値は
プラチナはレアメタルとしての価値も併せ持った、美しい貴金属として、昔から高価なものとして取り扱われてきました。
単体そのものでも、いつでも現金と交換することのできる貴金属としての価値は今後も変わることはないと言えるでしょう。
なぜなら、ディーゼルエンジンが出現する以前にも、すでにプラチナは高価な貴金属と見なされていたからです。
プラチナの歴史
最古のプラチナは古代エジプトにまでさかのぼり、紀元前1500年代前後にはプラチナがファラオの装身具などに使われていたといわれています。
現存する最古のプラチナ製品は、化粧箱になり現在ルーブル美術館に所蔵されています。
中世以降のヨーロッパではプラチナのことを銀の仲間だと判断され、「プラチナ・デル・ピント(ピント川の小粒の銀)」という名前で呼ばれていました。そこからプラチナという名前がで呼ばれるようになったのです。
プラチナはそれから徐々に貴金属としての地位を確立していきます。1780年代にはフランス国王ルイ16世のためにプラチナ製の数々宝飾品が作られ、NYのメトロポリタン美術館で見ることができます。
1800年代ではローマ法王に献上するプラチナの聖杯、スペイン宮殿を飾るプラチナのインテリアなどにもプラチナが使用されています。
その後、19世紀末から20世紀にかけて、プラチナの持つ抗腐食性と金とは違う白をベースにした色調から、ジュエリーとして頻繁に使われるようになりました。
ルイ・カルティエ
そして、現代でも有名なジュエリーブランド、ルイ・カルティエが誕生したのです。20世紀初頭に、世界で初めての「プラチナ・ジュエリー」が制作され、一般的に身に付けらるようになりました。
現在でも、多くのジュエリーにプラチナは使用してあり、特にダイアモンドとの色調の組み合わせが美しいため、ダイアモンドとプラチナは消費者からも好まれるようになったのです。
20世紀後半から現代にかけては、プラチナはブライダルリングの象徴として、金よりも選ばれるようになっていったのです。
今後の可能性
おそらく、ジュエリーとしての価値、電子素材としての価値、さらには貴金属としての価値は今後も変わらず評価されていく可能性は高いと言えるでしょう。
プラチナ投資でおすすめの証券会社
楽天証券
- 取扱商品:金・銀・プラチナ
- 取引種別:スポット取引・積立取引(定額買付/定量買付)
- 年会費:無料
- 保管料:無料
取引手数料
- 買付:約定代金の1.5%(税込1.65%)
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SBI証券
- 取扱商品:金・銀・プラチナ
- 取引種別:スポット取引・積立取引(定額買付/定量買付)
- 年会費:無料
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取引手数料
- 買付:約定代金の2.0%(税込2.20%)
- 売却:無料
まとめ
その金融商品が何であろうと、その時の経済情勢や、産業技術の移り変わりなどによって、価格が変動してしまうことを避けることはできません。
でも、価格が下がった原因や、今後の可能性、根本的なその商品の価値を追求することで、次の動きを考えることができます。
時に、1つの売りが次の売りを呼び、それがパニック売りにまで発展し、必要以上に価格が下がってしまうこともあります。
そこで、いずれ価格は上昇するかもしれないと、冷静に考える必要があります。しばらく様子をみることも必要ですが、貴金属販売で大手の田中貴金属店では、6月に入ってからプラチナの販売量が増加しているとのことです。
価格が下がりきった時に、どれだけの信念を持って購入に臨めるかで、今後の利益がかわってしまいます。それが投資の本質です。
プラチナが今後もこれまで同様に、貴金属としての価値を失わないのであれば、今以上にお買い得の時期はないのかもしれません。