海外旅行の医療費は国内の保険で請求できる!?公的医療保険の海外での活用方法を解説

海外旅行へ行く際に欠かせないのが、万が一の医療費に備える海外旅行保険への加入です。海外では日本の公的医療保険の利用ができませんので、高額な医療費に備えておくことが大切です。

しかし、日本の公的医療保険は海外の医療費には全く役に立たないわけではありません。公的医療保険には、海外療養費といって国内で海外での医療費が請求できる制度があります。医療費の全額を保証するものではないのですが、別途で加入する保険と併用して使うことが可能です。

日本の医療保険の海外療養費が活用できることを知っておけば、上手に無駄なく必要な補償のみに限定して海外旅行保険を選ぶことができます。

今回は海外旅行保険の1つとして、公的医療保険の活用方法をご紹介しましょう。

海外旅行保険

まず最初に海外旅行保険ではどのような補償が得られるのかを解説しておきましょう。

海外旅行保険の基本補償

海外旅行保険の基本補償は、「病気やケガの医療費」「盗難」「損害賠償」の3項目に関する補償です。

  • ケガ・病気の治療費用の補償
  • 死亡・後遺傷害の補償
  • 救援者費用(本人の病気・ケガ・死亡時に家族が現地へ行く費用)
  • 損害賠償責任補償(他人に損害を与えた時の費用)
  • 携行品損害補償(所有物が盗難や破損した時の損害費用)

などがあります。保険会社や保険プランによって多少内容は変わりますが、概ね上記の補償が組み合わせてあります。

その他特約やサービス

海外旅行保険の補償やサービスとして、他にも保険に加入しておくメリットがあります。

  • 航空機遅延費用(航空機の遅延に伴う諸費用)
  • 航空機手荷物遅延補償(手荷物の遅延に伴う諸費用)
  • 弁護士費用
  • テロ対策費用
  • 旅行キャンセル費用
  • 家族特約(家族の方も補償の対象となる)

などが特約として追加することができます。保険プランによってはこれらの特約が基本補償に含まれている場合もあります。

他にも、

  • 24時間365日、日本語で対応できる電話サポート
  • 提携病院の紹介や健康相談
  • 交通・ホテルなどの海外便利情報
  • 観光情報
  • キャッシュレス診療(医療費の自己負担が不要)

などと無料で利用できるサービスがあります。

加入方法

海外旅行保険への加入方法は大きく2つの方法があります。

  1. 保険会社にて加入
  2. クレジットカード付帯の保険を利用

いずれの場合でも、保険会社や保険プランによって補償の内容や保険金の金額は様々です。保険の詳細を確認したうえで要望に合った保険を選ぶことが大切です。

※年会費無料のクレジットカードに付帯している、海外旅行保険に関する記事がこちらからご覧いただけます。

実は国内の保険でもカバーできる?

そして、もう1つ海外旅行保険として考慮しておきたいのが冒頭でご紹介しました国内の公的医療保険の制度です。

もちろん公的医療保険を国外で使うことはできませんが、海外療養費として後で請求することは可能なのです。ただし、給付できる範囲に限界がありますので海外療養費だけでは十分だとはいえません。

そこで、海外療養費として活用できる範囲がわかっていれば、いざという時に便利に活用することができます。では海外療養費について詳しく解説していきましょう。

公的医療保険の海外療養費とは

海外療養費とは、海外の医療機関で医療費を支払った時に請求できる給付金です。健康保険証を持っている方であれば誰でも利用できる制度です。

一般的にはほとんどの方が国民健康保険か社会保険のいずれかに加入していますよね。国内では健康保険証にて2割~3割の自己負担にて医療を受けています。

海外療養費も全く同じように、医療費の2割~3割を除いた金額が払い戻される仕組みになっているのです。

海外療養費の支給割合

海外療養費の支給金額の割合は以下のようになります。

  • 0歳~小学校就学前→費用の8割
  • 小学生~69歳→費用の7割
  • 70歳~74歳→費用の7割~9割

海外療養費の支給対象

海外療養費として請求できる医療とは、原則として国内で健康保険が利用できる医療が対象となります。ですから、美容整形やインプラントなど国内で保険が適用できない内容は、同様に海外療養費の対象外となります。

支給対象となる医療費の例
  • 病気やケガで医療機関を利用した
  • 処方してもらった薬代
  • 手術や入院にかかった費用
  • コルセットなど医師が必要と判断した装具
  • 手術に必要な輸血の費用

など、一般的に健康保険の対象となる医療費が対象となります。

支給対象とならない医療費の例
  • 治療を目的に海外へ渡航した場合の医療費
  • 業務上・通勤途上での病気やケガ(労働者災害補償保険の対象)
  • 美容を目的に受けた医療(歯科矯正も含む)
  • 自由診療や個室、差額ベッドの費用
  • インプラント
  • 臓器移植、不妊治療、性転換手術

などの場合は、海外療養費を請求することができません。

支給額は日本での医療費が基準

海外の医療費は、国によって日本よりも安価であったり逆に高額であったりとばらつきがあるのですが、実際に払った具体的な金額が支給金の対象となるわけではありませんので注意して下さい。

海外療養費でいうところの医療費とは、例えば、風邪の治療や盲腸の手術、処方してもらった薬などが日本の場合はいくらなのかが基準となっています。

支給額の例

海外で受けた病気やケガの治療を日本で行った場合、医療費が80万円だとします。

80万円×30%(3割)=24万円が自己負担額です。

80万円-24万円=56万円→海外療養費として払い戻しがあります。

例えば、アメリカで支払った医療費が日本円で100万円だったとします。しかし、日本で同様の治療を行った場合には80万円と判断されることもあります。他国よりも日本の医療費が安くなる場合は自己負担額は大きくなってしまいます。

100万円-56万円=46万円

実質100万円の医療費に対して、約半分は自己負担という結果になることもあります。

日本の医療費よりも安かった場合

反面、日本の医療費よりも実際に支払った金額が安かった場合は、実際に支払った金額が対象となりますので、海外療養費の恩恵を100%受けることが可能です。

その場合は、支払った日の為替レートによって外貨から日本円に換算してから、支給額の計算が行われます。

歯科治療や出産にも利用できる

歯科治療の場合、一般の保険会社の海外旅行保険では補償できるケースはごく限られています。国内では歯科治療に対して健康保険証が使えるのと同様に、海外療養費でも歯科治療にかかった医療費の払い戻しが可能です。

出産は、海外旅行保険では補償することができません。しかし、海外療養費にて出産費用一時金の請求ができますので、渡航先で出産される方の多くが利用しています。

海外療養費の請求方法

では、実際に海外療養費を請求する方法を解説していきましょう。

請求手続きの流れ

  1. 海外の医療機関にて医療費の全額を支払う
  2. 治療を受けた医療機関から、申請に必要な書類を受け取る
  3. 日本語の翻訳文を添付して指定の窓口に提出する
  4. 保険機関から海外療養費の給付金を受け取る

各種保険の種類によって窓口が異なります

加入している保険の種類によって窓口が異なりますので注意して下さい。

  • 国民健康保険→自治体の窓口
  • 社会保険→企業の健康保険協会の窓口
  • 公務員→各地域の共済組合

手続きに必要な書類

海外療養費の申請に必要な書類を確認しておきましょう。

海外の医療機関で記載してもらう書類

渡航先で医療を受けた場合に、その医療機関から記載してもらう書類が必要です。

→書類は各健康保険の窓口にてもらうか、自治体や保険機関によってはオンラインでダウンロードすることが可能です。

  • 診療内容明細書(様式A)
  • 領収明細書(様式B)
  • 歯科診療内容証明書(歯科治療の場合)
  • 医師・助産師の出産証明(出産の場合)
  • 領収書の原本
※英語・外国語で記載してある書類にはすべて日本語の翻訳を添付しなければなりません。ネットで調べながら自分でも翻訳は可能ですし、翻訳できる知人・友人に頼んでもよいでしょう。ちなみに、翻訳の専門家に依頼する場合は一式で5,000円~1万円程度です。
診療内容証明書を書く際に必要な書類

医師が診療内容証明書を書く際に必要な書類に、「健康保険国際疫病分類表」があります。規定に従って、疫病の種類を医師からの認定を受ける必要があります。この分類表は提出する書類ではないのですが、証明書を書いてもらう時の参考資料となりますので合わせて準備しておくようにしましょう。

申請時に必要な書類

申請時に必要な書類は、上記に挙げた書類と合わせて下記のものが必要です。(国内で準備できるもの)

  • 海外療養費申請書
  • 渡航期間が確認できるパスポートなどのコピー
  • 健康保険証
  • 世帯主名義の銀行口座情報
  • 世帯主の認印

申請を代理人に依頼することもできる

一般的には本人が帰国してから請求を行うことが多いのですが、海外に滞在中であっても、親族や友人などの代理人に入らする方法もあります。

代理人が申請を行う場合、

  • 認め印がある委任状(手書きでもOK)
  • 銀行口座情報
  • 必要書類を代理人に送付
  • 依頼人の身分証明書

以上の書類が必要となります。

給付金を受け取る方法

海外療養費の請求を行ってから、申請内容の審査があり支給額が計算され、約1カ月程度で提出した銀行口座に給付金が振り込まれる仕組みになっています。

社会保険・共済保険の場合は、翌月の給与と合算して支払われるか、翌月の指定期日にて口座に振り込まれます。

給付金は日本円にて支給されます。

海外療養費の注意点

海外での医療費全額はカバーできないとしても、海外療養費にて給付金の請求ができるのは助かりますよね。公的医療保険に加入している方で条件さえクリアしているのであれば、ぜひ活用していきたいものです。

そこで、海外療養費をいざという時に問題なく活用するためには、いくつか注意点があります。

海外療養費を活用する際の注意点を見ておきましょう。

渡航前の準備が大切

海外療養費の請求を行うためには、必要な書類を全部揃えて提出しなければなりません。いざ病気やケガの際に、書類全部を用意するのは大変です。ほとんどの自治体や保険機関ではオンラインでダウンロードすることが可能ですが、その場ですぐにプリントアウトできない状況もあり得ます。前もって準備しておいた方が安心です。

また、自治体によっては多少の規定が異なるケースもあるかもしれません。渡航前には海外療養費に関する情報を調べておくようにしましょう。

もし、数か月の長期滞在になるようであれば、万が一のために代理人をあらかじめ決めておくなど準備しておけば、現地からも請求が可能ですし、慌てることもないですよね。

海外療養費が利用できない場合もある

海外療養費は基本的に住民票が国内にある方、1年未満の旅行である方が対象となります。従って、留学や転勤などの長期の滞在で転出届けを出している方や、海外の滞在期間が1年以上の方は対象外となってしまいます。

申請期限に注意

もう1つ、申請ができない理由として申請期限が超過してしまうケースが考えられます。申請期限は、実際に支払いを行った日から2年未満です。2年以上経過した医療費に関しては海外療養費を請求することができませんので注意して下さい。

ひとまずは全額を自己負担

海外療養費の給付金を受けるためには、ひとまずは自己負担で医療費全額を支払わなければなりません。渡航する国や、病気・ケガの種類によっては100万円~数百万円とかかる可能性もあります。

仮に数万円だったとしても、まずは自己負担で全額を払うのは容易ではないですよね。

ですから、海外療養費だけに依存するのはおすすめできません。

日本の医療費に換算した時の差額が大きくなることも

国によって医療費の相場は大きく異なります。世界で最も医療費が高い国はアメリカ、次いでドイツ、スイスとなっています。例えば盲腸の手術が日本では40万円~50万円が相場ですが、アメリカでは100万円~150万円と数倍高くなるのです。

100万円~150万円を自己負担で支払ったとしても、日本の医療費換算した時に大幅に安い医療費となってしまうこともあります。

あくまでも病気やケガが対象

海外療養費が利用できるからといっても、あくまでも病気やケガの医療費のみが対象です。一般の海外旅行保険のように、盗難や損害賠償責任の補償はできないので注意して下さい。

病気やケガに関して7割負担ならば問題ない、と判断される方もいるかもしれませんが、医療費の補償だけでは安心して海外で暮らすことはできません。盗難や損害賠償責任のリスクがあることを忘れないようにしましょう。

海外旅行保険と海外療養費用を上手に活用!

海外旅行保険に加入していて、保険金が支給されたとしても海外療養費用を請求することは可能です。海外で利用した医療費が、保険会社と公的医療保険にて賄えるのであれば心強いですよね。

海外旅行保険では、同じ病気やケガの補償であっても希望する保険金額やその他特約などが大きく異なります。海外療養費を請求する前提で、医療費の保険金額を低めに設定することもできます。とくに、海外療養費は歯科治療や出産に対しても給付金が支給されますので、上手に活用することをおすすめします。

クレジットカード付帯の海外旅行保険の場合、年会費無料のカードの場合は、補償内容があまり充実していない傾向にあります。クレジットカード付帯だけでは不安だという方でも、海外療養費を同時に活用できれば安心です。

必要な補償のみを選ぶ方法もある

また、保険会社によっては必要な補償のみを選んで加入することもできます。医療補償以外の盗難や賠償責任保険のみを追加で加入する方法も選べます。

海外旅行保険と海外療養費制度を併用する際の注意点

海外旅行保険と海外療養費制度を併用したい方は、病院で医療費を支払う方法を考慮しておく必要があります。海外旅行保険では、キャッシュレス診療といって、自己負担ゼロ円にて全額を保険会社が支払ってくれるシステムがあります。

もし、キャッシュレス診療にて治療を受けた場合は、自己負担で支払った金額が発生しないため海外療養費制度と活用することができません。実際に自分が払った金額が海外療養費制度の対象となりますので注意して下さい。

※海外旅行保険を選ぶなら、価格ドットコムの保険比較を参照にしてみて下さい。

※クレジットカードの付帯保険でも、ゴールドカードクラスになれば充実した補償やお得なサービスが満喫できます。ゴールドカードの海外旅行保険の情報はこちらからご覧ください。

まとめ

今回は、国内の公的医療保険でも海外旅行の医療費が請求できることを解説していきました。普段何気に使っている健康保険で、海外の医療費が全額でなくとも払い戻される制度、海外療養費の存在を知っておくだけでも、いざという時には大変便利です

ただ、病気やケガの医療費のみが対象であり、3割の自己負担は発生することや最初に全額自己負担が必要なことなど、完全な補償とは言い難い面があることを理解しておくことが大切です。

別途で海外旅行保険に加入した上で、

  • 歯科治療や出産の際に利用する
  • プラスアルファの給付金を確保するために利用する
  • 海外旅行保険の医療補償を少なくするために利用する

などに活用していく方法がおすすめです。

海外旅行の予定がある方は、渡航前に書類などを準備しておけばいざという時も慌てずに済みます。海外療養費はせっかくの便利な公的手当です。できるかぎり有効に使って、医療費や旅費を上手に節約していきましょう!

 

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