FXで知られている6つのアノマリーについて実際の為替データを元にその真実を検証してみます!

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FXには「アノマリー」という経験則やそうだろうと信じられているものがあります。

例えば〇月は円安になりやすいとか、また今回取り上げる「ジブリ映画」がテレビで放映されると為替レートが下がるなどといったものです。

もはや迷信とも取れるような存在でありそこに科学的な根拠があるわけではありません。

それでもFXではこのアノマリーが時折話題にのぼり、そのアノマリーに従って投資方針を決めたりするトレーダーが少なからず存在します。

またアノマリーを支える客観的な材料が乏しい中でいたずらに不安に駆られるケースもあり冷静さを欠いたトレードとなってしまう可能性がゼロではありません。

そこで本ページではFXで取り上げられる事があるいくつかのアノマリーについて、本当にそのアノマリーが一般的に信じられている通りの挙動を起こすものなのか、実際の為替データを使って検証していきます。

ゴトー日は円安?

 

「ゴトー日」とは、日づけの末尾が「5」「0」となっている日のことです。

主に貿易等の業務上の理由で外貨を購入している「実需筋」がこれらの日に日本円を売りドルなどを購入する習慣があることから、FXにおいては円安になりやすのではと言われています。

ゴトー日にとらわれる必要は無い

では本当にゴトー日に為替レートが上昇しているのかを米ドル/円の過去データから見ていくことにします。

まずは本ページが執筆された2019年の様子から見ていくことにします。

 

「2019年1~7月までのゴトー日における米ドル/円の騰落状況」

  • ゴトー日の日数・・・30日
  • 円安で終了した日・・・14日
  • 円高で終了した日・・・16日
  • 30pips以上上昇した日・・・5日
  • 30pips以上下落した日・・・5日
  • 50pips以上上昇した日・・・2日
  • 50pips以上下落した日・・・3日

 

「上記集計に使われた実際の為替レート」

日付 始値 終値 差引
1月10日 108.158 108.422 0.264
1月15日 108.149 108.658 0.509
1月25日 109.631 109.545 -0.086
1月30日 109.378 109.029 -0.349
2月5日 109.869 109.953 0.084
2月15日 110.464 110.454 -0.01
2月20日 110.611 110.843 0.232
2月25日 110.648 111.052 0.404
3月5日 111.731 111.875 0.144
3月15日 111.674 111.485 -0.189
3月20日 111.373 110.677 -0.696
3月25日 110.003 109.955 -0.048
4月5日 111.639 111.724 0.085
4月10日 111.126 111 -0.126
4月15日 111.977 112.028 0.051
4月25日 112.181 111.608 -0.573
4月30日 111.639 111.41 -0.229
5月10日 109.674 109.947 0.273
5月15日 109.599 109.588 -0.011
5月20日 110.071 110.05 -0.021
5月30日 109.582 109.612 0.03
6月5日 108.135 108.453 0.318
6月10日 108.46 108.436 -0.024
6月20日 108.094 107.288 -0.806
6月25日 107.287 107.17 -0.117
7月5日 107.805 108.466 0.661
7月10日 108.842 108.454 -0.388
7月15日 107.877 107.904 0.027
7月25日 108.171 108.621 0.45
7月30日 108.771 108.593 -0.178

 

まず、円安・円高で終了したそれぞれの日数はほぼ互角で、円安になりやすいというものではありません。

また、最も上昇した日は7/5の66pips、最も下降した日は6/20のマイナス80pips。これらを含め全体としては比較的大人しい相場状況ということになってきます。

円安に傾いているわけでも特別に大きな値動きが発生しやすいといった事でもなく、それほど気にする日ということでもなさそうですね。

ではそこで次に2018年の結果を見てみます。

 

「2018年1~12月までのゴトー日における米ドル/円の騰落状況」

  • ゴトー日の日数・・・51日
  • 円安で終了した日・・・31日
  • 円高で終了した日・・・20日
  • 30pips以上上昇した日・・・12日
  • 30pips以上下落した日・・・13日
  • 50pips以上上昇した日・・・7日
  • 50pips以上下落した日・・・8日
  • 100pips以上上昇した日・・・0日
  • 100pips以上下落した日・・・4日

 

2018年分は年間で集計したものとなっています。

まずは円安になりやすいかどうかですが、全日数51日に対し円安となった日は31日と見事にゴトー日のアノマリーが成立しています。

ただ集計をよくチェックしますと、30pips以上の大き目な上下動は円安・円高においてはほぼ互角の発生件数で、1円以上の値動きとなったのは下落した日のみ(4営業日)。

こういった結果から実際のトレードにおいては、2018年で考えた場合ゴトー日だからロングが勝ちやすいといった見方が難しくなってきます。

しかもゴトー日にロングポジションだけでトレードを行った場合、約マイナス97pipsという結果も判明しています。

2018年はゴトー日という日単位では円安率が61%となりますが、値幅まで考慮しますと買いポジションではうまくいきにくく、システムトレードの話で出てくるように勝率が高くても資産を増やすことができるものではないという事です。

ゴトー日におけるトレードのコツ

特別にゴトー日を意識することなく、テクニカル分析や経済状況の把握といったFXにおける基本作業をしっかり行うことが大切です。

検証においてはもう少し時間帯を絞ったり、ユーロやポンドなど他の通貨ペアも調べればまた違った結果が出てくるかもしれません。

ただ米ドルそのものはFXにおける最有力通貨であり、今回の検証結果がある程度参考になってくる事となります。

 

 

水星の逆行とは?

 

「水星の逆行」は、占星術における水星の移動の様子を表したもので、投資においてはこの水星の逆行が起こる期間に株や通貨が売られやすくなるというアノマリーがあります。

FXでは取引業者が提供している経済ニュースで時折このことが配信されます。

どうしてFXなのに占いの情報を提供するの?と思われるかもしれませんが、株やFX等でも占いに従って投資方針を決める人が意外といたりするからなんです。

Expert
一部の機関投資家やあの日銀でさえ、そういった投資家の行動まで考慮し相場状況を分析していたりするのです。

この水星の逆行ですが、発生期間というものがあり2018年においては以下の通りとなっています。

 

「2018年における水星の逆行期間」

  • 3月23日〜4月15日
  • 7月26日〜8月19日
  • 11月17日〜12日7日

 

一筋縄ではいかない

ではここで2018年の水星逆行時における相場結果を米ドル/円、ユーロ/円、ポンド/円を対象に見ていくことにします。

「水星の逆行期間における通貨ペアごとの相場状況」
*期間1~3はそれぞれ上記の期間に対応します。

米ドル/円 ユーロ/円 ポンド/円
期間1 216pips 309pips 423pips
期間2 6pips -274pips -458pips
期間3 -12pips -73pips -179pips

結論から言いますと、当たり・ハズレが非常に大きいという事になります。

期間2において特にユーロ/円、ポンド/円がマイナス数円とまさにアノマリー通りといった感じですが、春である期間1の場合売りポジションをメインでトレードしますと大きく資産を減らす結果となります。

ポンドにおいては期間1で1円以上上昇した日が16営業日中5営業日もあり、まるで水星の逆行とはほど遠い状況です!

水星の逆行におけるトレードのコツ

夏や秋にあたる期間2・3ではしっかりアノマリー通りの挙動でありつつも期間1のような状況も起こり得るといった不安定な性質は、まさに不確定要素をはらむFXの本質通りのアノマリーです。

このアノマリーだけで判断せず、チャート分析やその時の経済情勢を考慮して総合的に判断することが大切です。

また不確実なものに対しては確率や期待値といった側面から過去データを用いたバックテストを実施し大まかな収益を計算するなど、トレードごとに一喜一憂しない中・長期的な戦略で利益を上げる考え方が望ましいです。

 

 

ジャニュアリー・エフェクトって知ってる?

 

何だか聞きなれないアノマリーですが「ジャニュアリー・エフェクト」とは、主に株式相場で使われるもので、1月の相場状況がその年全体の相場状況になりやすいというものです。

例えばある年の1月が円高であればその年の為替レートは上昇しにくくなる事になります。

ここでもやはり実際の状況を見てみたいと思います。

ハッキリした点は見えにくいが気になるポイントがある

「2014~2018年までの米ドル/円の相場状況」

1月始値 1月終値 12月終値 1月の結果 年間の結果
2014年 105.236 102.046 119.719 -3.19円 14.48円
2015年 119.693 117.516 120.166 -2.17円 0.47円
2016年 120.163 121.151 116.986 0.98円 -3.17円
2017年 117.483 112.784 112.706 -4.69円 -4.77円
2018年 112.604 109.191 109.564 -3.41円 -3.03円

2016年を除いて1月は全て円高(下落)となっていますが、1月と年間との相場状況おいて明確な法則は見えてこないといった所です。

2014年においては1月が3円程度の下落だったにもかかわらず、年間状況が14円余りのプラスとなるなどジャニュアリー・エフェクトの法則が大きく崩れた形です。

ただ、全体的に具体的な数字はともかくマイナスとなっている結果が多いのが特徴です。

1月と年間の結果は全部で10件ありますが、そのうちマイナスとなっているのは7件。違う見方をしますと1月か年間の結果は7割の確率で円高数値となる可能性がある事になります。

また1月が円高だったのが4件で、そのうち年間もマイナスだったのが2件。

データ不足の感もありますが、ここでは5割の確率でジャニュアリー・エフェクトが円高の場合に限り有効となっています。

ジャニュアリー・エフェクトにおけるトレードのコツ

詳しい分析が難しいながらも、検証数字にマイナスが多く登場してくることや、少ないデータながら50%程度の的中率があることから、1月が下落で終わった年は年末まで注意した方がよさそうです。

繰り返しとなりますが、FXに絶対は無く実際の挙動にブレが生じる事が往々にしてあります。

その中では、マイナスで埋まっている項目が目立つことが気にかかりますので、2014年の結果の遠因であるアベノミクスといった大きな突発的事象の出現が無ければ、このアノマリーの信憑性は高まってくるものと結論づけられます。

 

 

テレビでジブリ映画が放映されたら売りがおすすめ

 

日本テレビで金曜夜に放送される「金曜ロードショー」において、スタジオジブリのアニメ映画が放映されると株や為替が下落するというアノマリーです。

一見全くのデタラメとも思えるアノマリーですが、ジブリアニメが放送される日には某掲示板が少々騒がしくなり本当に信じてしまうトレーダーがいたりもします。

それでは2018年における米ドル/円の状況を以下に掲載してみます。

データは各放映日ごとに21時から翌朝ニューヨーククローズまでの始値・終値をベースとしました。

「ジブリのアニメ映画が放映された時の米ドル/円騰落状況(2018年)」

放送日 始値 終値 差引(pips)
1月5日 113.23 113.085 -14.5
1月12日 111.131 111.044 -8.7
5月18日 110.939 111.044 10.5
8月10日 110.924 110.668 -25.6
8月17日 110.477 110.058 -41.9
8月24日 111.309 111.071 -23.8
10月26日 112.012 112.35 33.8
11月2日 112.885 113.182 29.7

米ドル/円は上がったり下がったりといった状況で個々の結果を見ますとこのアノマリーの信憑性は低いものとなってきます。

しかし、ここで挙げた全8回分の差引を合計してみますと次のようになります。

  • 上昇合計・・・プラス74pips
  • 下降合計・・・マイナス114.5pips
  • 総合計・・・マイナス40.5pips

 

トータルのレート差で言えば円高となり、アノマリーの内容に合致してきます。

ジブリ映画放送におけるトレードのコツ

毎回の結果は定かではないものの、常にショートポジションを建てれば資産が徐々に増えていくという結論になります。

ここまでいくつかアノマリーを紹介してきましたが、ジブリアニメのアノマリーは実際のトレードで使えそうな類のものです。

ちなみに2019年に入り若干この性質に変化が見られてきたのですが、各回の値動きから判断していくものではありません。

ただFXの取引手法には正味期限が付き物ですので、手法の活用においては常に注意を怠らないことも大切です。

 

Sell  in May

 

「Sell in May」(セル イン メイ)は直訳しますと「5月に売れ」という意味になり、このアノマリーはその言葉に従って毎年5月はレートが下がりやすくなるというものです。

このアノマリーも株式相場の格言から来ており、FXのアノマリーは株の格言を流用したものが多いといった特徴があります。

株と通貨は異なる金融商品ですが同じリスク資産ですので、FX取引が広まっていくに従って徐々に同じアノマリーが意識されていった所です。

「毎年5月の騰落状況(米ドル/円)」

始値 終値 差引
2014年 102.221 101.773 -0.45
2015年 119.423 124.15 4.73
2016年 106.313 110.692 4.38
2017年 111.391 110.772 -0.62
2018年 109.331 108.798 -0.53
2019年 111.41 108.286 -3.12

「毎年5月の騰落状況(ユーロ/円)」

始値 終値 差引
2014年 141.727 138.737 -2.99
2015年 133.927 136.419 2.49
2016年 121.834 123.192 1.36
2017年 121.436 124.531 3.10
2018年 132.011 127.182 -4.83
2019年 124.97 120.962 -4.01

「毎年5月の騰落状況(ポンド/円)」

始値 終値 差引
2014年 172.502 170.519 -1.98
2015年 183.242 189.91 6.67
2016年 155.128 160.279 5.15
2017年 144.133 142.777 -1.36
2018年 150.427 144.67 -5.76
2019年 145.22 136.797 -8.42

 

アノマリーが大きく的中している所も見えますが、2015・2016年のように3通貨ペアともどもそうはなっていない時があります。

米国株や米ドル、また各国の繋がりが深い世界経済の中で、FXトレードはそのような大きなうねりの影響を逃れられないものであり、やはりアノマリーに傾斜し過ぎないトレードが大切です。

Sell in Mayにおけるトレードのコツ

やはりチャート分析や経済ニュースのチェックを中心に相場状況を総合的に判断していくことが重要です。

この時、特に月初から不穏当な流れが見出せるようであればこのアノマリーのことを思い出し、ある程度ショートポジションへ比重を傾けるようにすれば勝ちやすくなってきます。

 

 

西暦末尾数字ごとの騰落状況

 

西暦における末尾の数字(0、1、2、3、4、5・・・)ごとにその年の相場状況に特徴があるのではないかと言われているものです。

これはアメリカの著明な投資家であるラリー・ウィリアムズが主張するもので、基本的にはアメリカの株式相場でのアノマリーとなっています。

その中において、末尾「5」の年が最も株価が上昇しやすく資産を大きく増やすことができるとしています。

この西暦末尾による年間の騰落状況を、かつて日経平均株価に当てはめて調査したものがあり、そこでは「5」と「9」の年が非常に成績がよく勝ちやすいと結論づけていました。

ではFXにおいてはどんな結果となるのかと言いますと、直近のデータしか所有していませんが以下のような状況となっています。

「米ドル/円の年間騰落状況」

始値 終値 差引
2014年 105.236 119.719 14.48
2015年 119.693 120.166 0.47
2016年 120.163 116.986 -3.18
2017年 117.483 112.706 -4.78
2018年 112.604 109.564 -3.04
2019年 109.648

2016年から毎年下落続きで2019年においても7月末時点で約マイナス88pipsとなっています。

この記事執筆時点ではあまり法則が当てはまらないように思われます。

ラリー・ウィリアムズ本人からすればもっと長期的な視点で主張を述べていると思われますが、FXや投資はつい短期的な利益に目を奪われがちになり、アノマリーに疑問を覚えるようになるかもしれません。

西暦末尾数字におけるトレードのコツ

著明な投資家の意見ですのでついつい信じてしまう所があります。

ただ上でもお話した通り、投資には短期・中期・長期といった時間の概念も重要な要素であり、全てではないにしてもラリー・ウィリアムズの投資手法の中で中・長期的な戦略に則ったものが少なくありません。

様々なFXの取引手法やアノマリーがある中で、意識されにくく扱い難い投資期間について今一度振り返ってみることが大切です。

またラリー・ウィリアムズのような人物の発言ですから、その発言内容を真に受けてしまうトレーダーも確実に存在し、それによって特に短期的な相場状況に影響が現れる可能性があります。

アノマリーはその真偽や統計的な性質だけでなく、それを信じる投資家の存在やどういった投資行動をとるのかといった、ちょっと高度な内容ですが相場における他のトレーダーの心理やメンタルまで汲み取って分析することも時には重要な事となってくるのです。

 

まとめ

 

FXにおけるアノマリーは、今回取り上げた実際の為替データや騰落状況を調べてみますと、一般的に知られている内容と重なる部分もあればあまりアテにならない所もあります。

ただ実際のデータを使って真偽を確認する行為には、余計な不安を取り除くことができる事や相場を正確に把握できるなどのメリットがあります。

従ってそこから考えられる活用方法としては、資金の適切な保護、安全な取引ルールの作成、思い込みを払拭した自由なトレードの実現等があります。

また当然の話ですが、その時々のテクニカル分析や世を騒がせているニュースなどにも目を向けて確固たるトレード体制を築いていくことが大切です。

 

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