不動産投資として民泊だけでは不安?民泊新法の規制リスクを抑える3つの方法

近年、加速する訪日外国人の増加にともない、外国人宿泊客を中心に民泊という新しい宿泊サービスが全国に普及し始めました。2020年には東京オリンピックを控えていることもあり、民泊の宿泊施設としての役割が期待されています。

もともと外国人の出入りも少なく、民泊の習慣がなかった日本においては、まだ民泊の普及拡大に向けての課題は多く、自治体や地域住民からの理解・協力が得づらい点が各メディアでも取り上げられいるようです。とくに、普及拡大が最も期待された関東地区では、民泊新法の規制により伸び悩んでいることが日経新聞でも報告されています。

民泊投資は通常の賃貸経営に比べると、国内では途上にある前例のない分野であるため特有のリスクが生じてしまいます。そんな中、本格的な不動産投資として民泊を始めるにあたって不安に思うオーナーもいるでしょう。そこで、今回は民泊投資の規制のリスクを抑える3つの方法をご紹介していきましょう

民泊だけでは不動産投資は不安?

本来は、最も宿泊ニーズが高いといわれる東京都内、関東地区において民泊の普及拡大が期待されていましたが、ホテルや旅館などの本格的な宿泊業との折り合い、地域住民の警戒心などから思ったように普及は進んでいないことが最近の日経新聞において報告されています。普及のペースに歯止めをかける存在として、民泊新法を主軸とする各自治体の取り締まりや規制強化などが要因だといわれているようです。

最初に、日本における民泊の現状から確認していきましょう。

日本での民泊の現状

地域によって、自治体や住民の民泊に対する反応は大きな差があり、大阪や北海道・沖縄などに比べると東京都内では「徐々に普及率は伸びてはいるが、オリンピックの受け皿となるにはほど遠い」規模であるのが現状です。

国の政策として、民泊新法が制定され旅館業法の許可を得ずとも民泊を行えることが法的に認められています。ただ、実際には民泊新法では営業日数が180日以内と規制が厳しく、手続きが煩雑であることで民泊をあきらめる企業や個人も少なくありません。

海外の主要国にて以前から親しまれていた民泊の存在が、訪日外国人の急増に一役かっている点は否定できず、反対意見がありつつも規制緩和に向かう動きは見られています。しかし、現時点で関東地区にて民泊規制を緩和しているのは、千葉市と東京都太田区のみとなっています。(大阪府ではすでに34の市町村が規制緩和に対応しています。)

規制緩和として、自治体は特区民泊の認定を受けることが可能です。特区民泊地区では、旅館業法の許可がなくとも、営業日数の制限を受けずに民泊経営ができます。

今後の東京オリンピック・パラリンピック、万国博覧会を契機とした国際化の進展にともない、徐々に規制緩和に向かう自治体も増えてくるのではないかとの見方もあるようです。

※民泊新法について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

※民泊新法が施行された時のエアビーアンドビーのキャンセル問題について、以下の記事からご覧になれます。

訪日外国人の数

出典:みずほ総合研究所 参考リンク

訪日外国人の数は、2011年以降は約4倍以上に増えています。政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」というテーマのもと、2020年には4,000万人、2030年には6,000万人に目標を定め、各種観光事業の推進に力を入れています。

全国の宿泊者数

出典:みずほ総合研究所  参考リンク

全国の延べ宿泊者数も、訪日外国人観光客によって年々増加に向かっています。特に、地方部における外国人宿泊者数の増加が目立つようです。一方グラフ上部の折れ線グラフにも見られるように、日本人宿泊者数の数にはあまり変動がみられず、今後は緩やかに減少していくだろうと予想されています。

民泊の利用者数

出典:Airstair  参考リンク

上図のグラフは、ホテルマーケティングを行うAirstairの調査です。民泊大手事業者エアビーアンドビーの日本での利用者数は2015年~2017年の3年間にて3倍以上に急増しています。

以上のように、民泊は課題が多いながらも一定の利益が期待できる投資方法でもあるのです。

民泊のリスク

確かに、今後の宿泊ニーズを考えた時に民泊は魅力のある投資方法の1つですが、先述のように国内ではまだまだ改善すべき課題も多く、リスクが高い点も否定できません。では、ここで民泊のリスクとは何なのか詳しく見ていきましょう。

  • ゲストとのトラブル→部屋や物を破損されたり、言葉のハンディから生じるトラブルなど
  • 近隣住民とのトラブル→騒音、共有スペース、マナー、外国人に関するトラブル
  • 宿泊ニーズのリスク→つねに一定の宿泊数が確保できるわけではない
  • 民泊新法の規制を受けるリスク→民泊新法では営業日数は年間で180日以内
  • 民泊の許可を得るのに煩雑な手続きが必要→手間や時間がかかる
  • 犯罪のリスク→民泊の部屋を犯罪に悪用されてしまうリスク

など・・・様々なリスクが民泊投資には伴うのです。

これらのリスクの中でも、民泊新法の規制を受けてしまうことが、大きな不安要素となっている企業や個人オーナーは多いようです

民泊新法にて180日間の営業しかできないのであれば、事業として成り立たない思うのは当然です。そこで、思うように規制緩和が進まない関東地区においては、民泊だけでは不安だということで新しい不動産投資の活用方法が注目されています。

不動産投資の活用方法

不動産投資とは一般的に収益物件を購入して、賃料を得て利益を出す投資方法です。近年では、民泊の普及や、建物のリノベーションが話題になっていることから、不動産投資にて収益を得る方法は、

  • 賃貸
  • 民泊
  • 店舗経営

と3つの視点から検討していくことができます。ここで、賃貸、民泊、店舗経営と収益を得る仕組みを改めて見ておきましょう。

賃貸

賃貸経営は不動産投資の最もメインとなる経営方法です。戸建住宅、マンション、アパート、事務所、商業施設などを賃貸して毎月の賃料を収益とする投資方法です。

一般的に賃貸期間が数年にわたることから、長期的に安定した収益を得ることが可能ですが、近年では住宅用の賃貸物件は人口減少によるニーズの低下が懸念されています。ただ、地域によってはまだまだニーズが見込める投資方法です。

民泊

そして、ここ2,3年で急成長しているのが民泊です。

民泊は基本的に一般の住宅にて宿泊サービスを提供し、1日単位の宿泊料を得ることで高い収益を目指す投資方法です。まだ、日本では始まったばかりのビジネスであり、国内の旅行者の数に左右されるため先行きが不安な点もありますが、通常の賃料よりは高い収益を期待することが可能です。

店舗経営

さらに、近年では不動産投資を補足する手段として、オーナー自らが収益物件にて店舗経営を行う方法があります。

シェアリングエコノミーに特化した、シェアオフィスやシェアスペース、コミュニティースペースなどでは、時間単位、1日単位、週単位などで賃料を得ることが可能です。また、飲食店、衣料・雑貨店、保険や旅行会社の代理店などの店舗経営にて、収益を得ることができます。

これらの不動産投資を組み合わせて、リスクを抑えた効率のよい民泊投資が実現するのです。民泊だけでは、不安な方におすすめの民泊投資方法を次の章で解説していきましょう。

民泊投資の3つの方法

リスクを抑えた民泊投資には以下の3つの方法があります。

  • 民泊と賃貸
  • 民泊と店舗経営
  • 本格的なホテル・旅館への展開

それぞれの民泊投資の活用方法を事例を用いながら詳しく解説していきましょう。

民泊と賃貸

1つは民泊と賃貸を並行して経営していく方法です。これは、複数の戸建て・マンション、一棟アパートにて可能な方法となり、民泊新法による180日以内の規制によって生じる民泊のデメリットを補うことが可能ですし、思ったように宿泊予約がとれなかった場合でも一定の家賃収入が得れるので安心です。

あらかじめ通常の賃貸用と民泊用を分けておくことで、最低でもどちらか一方からの収益が期待できるため、リスクを低減することができるでしょう。

【マンスリー・ウィークリー賃貸】

また、観光だけでなく出張などの宿泊ニーズが高い都市部では、複数の物件を保有していなくとも「マンスリー・ウィークリー」の短期賃貸と並行した民泊経営が話題になっています。

民泊と賃貸/事例①

出典:みずほ総合研究所 参考リンク

こちらの案件は、不動産コンサルティング事業を展開するベンチャー企業、株式会社プリズミックが展開した「民泊+マンスリー」の物件です。立地は東京都江戸川区平井にあり、けっして賃貸ニーズが高いとはいえない環境にありました。

もともと3LDK/家賃23万円と、広すぎる部屋で賃料も高かったため空室が続いている状態だったとのことです。総武線で駅から12分と交通事情が良好であったため観光客へとターゲットを移行。そこで、民泊への参入を決意し民泊新法による認可を取得しましたが、180日の規制があり、マンスリーを同時に募集することにしたとのことです。

家賃収入の場合で年間の収入は257万円のところ、民泊+マンスリーで年間80%の稼働が実現し427万円の収益につながったそうです。

民泊と賃貸/事例②

出典:みずほ総合研究所 参考リンク

こちらは池袋駅から徒歩25分で空室に悩み続けた板橋区のワンルームマンション。不動産事業を営むアルプス住宅株式会社は、多少交通の便が悪くとも観光客のニーズは高いことに注視して、賃貸から民泊へと市場を変更しました。観光客を相手に主軸をマンスリーにして、空いた期間を民泊で活用しています。

その結果、エアビーアンドビーでも高い評価を受け稼働率100%をクリアして、想定の年間の家賃収益の約3倍の収益が出ているとのことです。今後は、戸建てや木造アパートなど空室に悩むオーナー向きに民泊+マンスリーの提案を進めていく展望です。

民泊の最低単価は割引を考慮して一泊/9000円、月額で約20万円程度の収益となっています。

民泊と店舗

民泊に利用できる部屋とは別でその他のスペースが確保できる方は、宿泊料金だけに依存せずに済む方法として店舗経営を同時に行う方法があります。飲食店、雑貨店などの他の事業にて収入を得ながら、民泊を進めていくことが可能です。飲食店の営業には「飲食店営業許可」が必要ですが、宿泊客と地域住民の日常的なニーズに対応できるメリットがあります。

また、近年では、会議・サークル・集会・パーティなどを目的にした、時間単位でスペースを貸し出すシェアオフィス・コミュニティスペースなどが注目されています。民泊と同時に展開させている事業者も増えているようです。

 

民泊と飲食店/事例

出典:鎌倉古今 参考リンク

こちらの民泊事例は、由緒ある邸宅地に開業された鎌倉の民泊です。鎌倉は本来静かな町で観光による苦情が多く、民泊のみを本格的に行うには問題がありました。そこで、民泊新法の規定に沿って年間の180日は民泊営業、それ以外はレストランを営業しています。

築160年の古民家を和洋折衷のお洒落な建物にリノベーションしてあり、洗練されたインテリアにて別荘のような快適な空間が演出してあります。宿泊料金は1名33,000~48,000円と高級ホテルなみの価格です。

イタリア料理をベースに、フレンチと和食も融合させた自然派レストランです。ランチ料金が5,000円~8,500円、ディナーは8,000円~12,000円。

民泊とレンタルスペース/事例

出典:スペースマーケット 参考リンク

民泊新法の規制によって、営業できない残りの185日をどうするかということで着目されたサービスがレンタルスペースです。レンタルスペース業者のスペースマーケットと、民泊・ホテル業者ファミネクトは業務提携して民泊+レンタルスペースを展開させています。

片付けや掃除をみんなで分担することが可能なレンタルスペースが、ホームパーティの延長として、とくに女性の方々から人気が出ているとのことです。

レンタルスペースの1時間あたりの単価は2,000円~5,000円程度。平均して1人1000円程度での利用が多く、月次収益が80万円を超える物件もあるようです。

本格的なホテル・旅館への展開

民泊のような中途半端な宿泊サービスでは、規制は受けるうえ、近隣住民からの苦情も受けやすいことを理由に、本格的なホテル・旅館へと展開している民泊事業も増えています。ホテル・旅館などを営業するためには、旅館業の許可が必要です。

旅館業法の許可にも種類があり、

  • 旅館・ホテル営業→一般の旅館やホテル
  • 簡易宿所営業→旅館やホテル以外の宿泊サービス(こちらの許可であれば民泊の営業日の制限は受けません)

の2種類があります。

一軒家や、マンション・アパートを活用して、従来の宿泊施設とは全く異なる新しいタイプのホテルや旅館が出現し始めています。

民泊からコンドミニアムホテル/事例

出典:IKIDANE 参考リンク

株式会社IKIDANEは、不動産投資業と旅館業の専門家が集まって設立した民泊事業者です。空き家、一棟マンション・アパートなどの一般の住宅をホテル、ゲストハウスタイプ型の民泊へとリノベーション展開しており、民泊代行業、民泊管理業も同時に行っています。

Iotを活用したセルフチェックイン・チェックアウトシステム、無料スマートフォン、室内の設備をリモート操作できるスマートスピーカーなどを、IKIDANEブランドとして提供しています。

旅館業法の許可の取得から、宿泊施設の設計開発、広告・宣伝、運営管理までトータル的にプロの専門家に任せることで建物が生まれ変わります。

民泊から一軒家ホテル/事例

出典:シマダグループ 参考リンク

賃貸住宅開発のシマダハウスは、当初は民泊新法による民泊事業を予定していましたが、規制が厳しく効率が悪すぎるとして、賃貸と宿泊が可能なスタイリッシュで都会的な本格的なレジデンシャルホテルを展開しています。

上記の写真は、神楽坂の石畳の住宅街にある一軒家の民泊タイプのホテルで「神楽坂レトロなホテル」としてオープンしました。

従来のマンションやアパート内にBARやラウンジを併設したり、コンシェルジュを完備したりとこれまでにはない新しいタイプのホテルを創出しています。

以上が、規制のリスクを抑えるためにできる民泊投資の3つの方法となります。ぜひ、民泊だけでは規制のリスクが不安だと思われる方は参考にして頂ければ幸いです。

最後に民泊の認可・許可に関する記事をご紹介しておきます。

※民泊に必要な許可の種類をこちらで解説しています。参考にしてみて下さい。

※民泊新法と旅館業法の違いはこちらからご覧ください。

まとめ

民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行されてから1年以上が経ちました。

民泊新法が施行される以前から民泊を行っていた事業者の中には、自治体からの認可を取るのに手間取り、損失額を抱え苦戦を強いられたケースも少なくないようです。高まる宿泊ニーズに応じて、規制の緩和が期待されていますが、地域によっては、新法の営業上限に加えて自治体の規制が上乗せされるなど厳しい状況にあるといえます。

規制緩和が行われている特区民泊以外では、不動産投資として本格的に民泊を展開していくためには、今回ご紹介したような対策を考えることが欠かせません。

  1. 民泊と賃貸
  2. 民泊と店舗
  3. 本格的なホテル・旅館業への展開

以上の3つの方法が、規制によるリスクを抑える民泊投資の方法となります。

不動産投資として民泊を成功させていくのであれば、ひとまずは民泊新法にて事業をつなげながら、いずれは旅館業法の許可を取ることが理想的です。さらに、収益を安定させるために、賃貸との併用や店舗経営などを同時に考慮していく方法があります。

自宅の空いたスペースなどを利用するのであれば、民泊新法でも十分に収益は期待できるのでしょうが、物件から購入するとなれば新法の認定だけでは元はとれないのが現状です。いかにニーズが高く収益が期待できるとしても、民泊はまだ普及の途上にあり試行錯誤しており、先々で規定がどう変わっていくのか見えないというリスクがあります。

各自治体・地域住民からの理解・協力がないままの進展はのぞめず、ここに今後の民泊事業の課題があるといえます。

それぞれの状況に応じて、民泊投資の方法を検討するとともに、まだ警戒心が強い自治体や近隣住民に対してどのように歩み寄っていくかが成功のポイントとなるでしょう。

 

 

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