大手電機が億単位で増強する「パワー半導体」とは?市場拡大する電気自動車(EV)狙い!?

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電機大手は、これから普及拡大していくとみられる電気自動車(EV)むけの半導体の増産投資に相次いで踏み切っています。東芝は300憶円を投機し、電気自動車(EV)の省エネ化につながる半導体の生産量を5倍に増やす方針です。

三菱電機、富士電機もこの半導体の生産増強に余念がなく、その他多くの大手電機も積極的な投資計画を立てているとのことです。この電気自動車(EV)に使われる、半導体は「パワー半導体」と呼ばれているもので、幅広い分野で使われているものですが、一体どういうものなのでしょうか?

株式投資にあたっては、材料収集は利益を左右する大切な要素であります。今回はこの「パワー半導体」がどういうものなのか、そして、電気自動車(EV)とどのような関係があるのかを解明していきたいと思います。

パワー半導体とは何なのか

パワー半導体とは家電、太陽光発電、電車、照明などの電力をコントロールするもので、それぞれの電流を用途に応じて調整する働きをするものです。

パワーモジュールとも呼ばれていて、将来の電気自動車(EV)に向けたパワー半導体の研究開発が今、世界中で注目されているのです。

情報通信機器の半導体

半導体を代表するものに、PCや情報通信機器に使われるCPUやメモリと呼ばれる半導体があります。インテルやサムソン電子などが製造しているもので、PCやスマホなどの情報処理をいかに効率よく行うかは、この半導体のレベルによると言われています。

半導体は、人間でいえば「頭脳」と同じ役割を果たしています。あまりお利口さんではない半導体の組み込まれたPCは、動作も遅くなり、作業をするのに時間がかかってしまいます。

パワー半導体

パワー半導体がCPUやメモリと大きく異なる部分は、「頭脳」としての役割だけでなく「電流」を大きくしたり小さくしたりする「筋肉」の役割を果たすところにあります。

パワー半導体の4つの働き

    1. 電流を直流から交流に変換する
    2. 電流を交流から直流に変換する
    3. 交流の電気の周期を変更する
    4. 直流の電気の電圧を変更する
Woman
直流電気って何なの?
Expert

電気の直流とは、小学校の時の理科実験でするように、電池と豆電球をつないだ時に流れる電流です。?電池に豆電球をつなぐと、電流はそのままダイレクトに導線を伝わり、一定の電圧で流れます。

常に一方通行で流れていくので、プラスとマイナスを間違えると電気は流れずに止まってしまいます。懐中電灯とかポータブルCDプレーヤーなどに使われる電流です

Woman
そういえば、プラスマイナスの表記がしてあるよね。じゃあ、交流電気はどういうものなの?

 

Expert

電気の流れる向きや、電圧がさまざまに変化していく電流で、いろんな種類の電気が混ざりあっているものです。例えば、家庭で使う電気は洗濯機やドライヤーなど使う電気の量や電圧が違うものでも同時に使うことができますよね。

使う家電のプラグは上下がありません。どちらを上にして差し込んでも電気をつなぐことができます。それが交流電気といわれるものです。

 

パワー半導体の役割

このように使う電気の量や電圧などをコントロールして、それぞれの用途に応じて電気を振り分けてくれるのがパワー半導体になります。

わかりやすい例が太陽光発電の電気です。太陽光発電の電気がどのように回収されて、売買されていくのかをご説明したいと思います。

太陽光発電の電気

太陽光発電は、主に建物の屋根の上にのせて太陽の光を集めて電気をつくっています。太陽の光はパネルの中でシリコンという伝導性の素材にダイレクトに伝わり、直流電気としてパネルの中で蓄積されていきます。

でも、パネルにたまった直流電流を家庭内でそのまま使うことはできません。家庭用の電気は交流電気だからです。そこで、直流電気を交流電気に切り替える必要が出てきます。

そこで活躍するのが、パワー半導体です。パワー半導体によって、直流から交流に変換することで、太陽の光からつくった電気を家庭用の電気として使うことが可能となります。

2つのパワー半導体

21世紀を迎え、次世代という新時代に向けていろいろな課題がある中でも、電子機器関連においては「省エネ」と「小型化」はとくに注目されているトピックだといえます。

いかに省エネができるか、いかに小型で軽量化されているかで、さまざまな製品開発が進んでいます。日本はとくにそういった分野では世界をリードしている存在でもあります。

その次世代の課題である「省エネ化」「小型化」を実現するためにはこの「パワー半導体」は必要不可欠なものとなるのです。

近年では新しい素材を適用したパワー半導体の開発が進む中、パワー半導体の働きは大きく2つの種類に分けることができます。

MOSFET

家の中ではスイッチを付けたり、消したりすると電気がついたり、消えたりします。MOSEFTというのはそのスイッチが切り替わるごとに、素早く反応して、より確実な動きにする能力のことをいいます。

エアコンを強、中、弱と切り替える場合にも、その都度流れる電力や電圧を切り替える必要があります。MOSEFTの機能がなければスイッチやボタン1つで電気の流れを切り替えることが出来なくなってしまいます。

高性能のMOSFETは、電流を切り替える際に抵抗力を高めて、障害となる周波を絶つ機能に優れるため、スイッチングによる無駄な電力の消耗を防ぐことができるのです。

IGBT

冷蔵庫、テレビ、PC、工場内の各電気設備などその電気機器の種類によって、必要な電流や電圧にはさまざまな種類があります。冷蔵庫に使う電流だけではテレビの電流に使うことができません。

そのようにさまざまな種類の電気を同じ場所に共存させるために必要なのがIGBTとなります。IGBTの機能があるから、家庭内でもさまざまなタイプの電流を同時に使うことができるのです。

IGBT効果が高くなると、ごく小さな容量の中にも多大な電力を蓄えることが可能となり、1つの小さな電源から多様な用途の電気設備の利用を実現してくれることになります。

 

電力を半滅するパワー半導体とは

このようなパワー半導体の特質を活かして、さらに高性能のパワー半導体の開発研究が進められています。

いかに電力を最小限に抑えるか、いかに違うタイプの電流を共存させ用途別に振り分けるかで、その電気製品の価値は異なってしまいます。

安い電化製品を購入したとしても、電力の消費量が高ければあまり意味がありません。逆に、多少は値段の高い電化製品でも消費電力を少量に抑えることができれば、結局すぐに元はとれるということです。

電気自動車の研究開発は、何十年も前からすでに自動車メーカーや電機メーカ―によってなされていましたが、長い間自動車を動かすための電力がかかりすぎるために、その実現は見送られていた状態でした。

しかし、IT技術の発達とともに半導体技術も進展を深めて、実現可能な量の電力で自動車を動かすことのできるエネルギーの開発に成功し、ごく最近ようやく市場への実現を果たしたのでした。

その電気自動車の実現に大きく役立ったのが、このパワー半導体の存在だったのです。そこで、最新のパワー半導体にはどのようなものがあるのかをご紹介したいと思います。

 

SiCパワー半導体

シリコン(Si)と炭素(C)で構成される半導体で炭化ケイ素と呼ばれる半導体です。従来の3分の1に小型化したモジュールでも、従来のシリコン主体の半導体に比べ、約10倍の絶縁耐力があると言われています。

絶縁とは電気とその他の物質を隔離する壁のようなもので、私達が電流のながれているケーブルや電化製品を触っても感電しないのは電気を絶縁できる物質がつかってあるからなのです。

この絶縁する壁がこわされてしまうことを絶縁破壊といい、絶縁破壊が起こると無限の電気が大量に放出されるために非常に危険な状態になるのです。

カミナリは空気中に含まれる電気が絶縁破壊を起こすことによって生じるとのことです。

すなわち、絶縁耐性が高く優れていればそれだけ、電流の用途の幅がひろくなり、大量の電力を流しても安全性が高くなるということです。

GaNパワー半導体

GaN(窒化ガリウム)パワー半導体もSiCパワー半導体と同様に現在注目されている新しい可能性にみちた半導体の1つです。

現時点での主流となる半導体はシリコンバレーが生み出したシリコンになります。そこへ新しいSiCパワー半導体の開発が始められ、そしてそのSiCの能力を高く上回るのがGaNになるのです。

省エネ効果も半導体の小型化も十分可能な成分なのですが、SiCよりは具体的な採用はそこまで進んでいません。家電のACアダプターなどへの適用が徐々に始まっており、今後の展開が高く期待されている半導体となります。

酸化ガリウム

そして、とめどなく可能性を追求する半導体業界では、SiC(炭化ケイ素)<GaN(窒化ガリウム)と進行し、さらに高効率だといわれる酸化ガリウム(III)へと研究が進んでいるとのことです。

おそらく、また数年後にはさらに性能の高い素材の半導体の開発がなされるのかもしれません。一般の私達はただ、ただ、そのテクノロジー技術の進展に驚き追従していくだけであります。

次世代パワー半導体

大きな特性

  1. スイッチングのスピードが速い
  2. 電流を再起動する際の損失が発生しない
  3. 出力する容量が大きく、充電・放電にかかる時間が短縮できる

ダイオード機能→電気を一方通行だけの直流電流に切り替える機能です。

トランジスタ機能→音や風量などを増幅させる機能です。

SiCGaNを使ったパワー半導体は、次世代の半導体として今後の電子機器や電気自動車の将来を大きく変えていくだろうと期待されています。

抵抗力の高いパワー半導体はより大きな電力の取り扱いを可能とし、そうしながらも無駄な電力の消費を約50%抑えることが可能だといわれています。

ということは、従来の半導体に比べて約半分の電力で物を動かすことができるということになります。経費が削減できるだけでなく、より快適な電力の利用を実現させることができるのです。

そういうわけで、国内だけにかぎらず、数多くの大手企業がこのパワー半導体の開発に巨額な資金を投機しているのです。中でも、もっとも注目されているのが、新エネルギーの蓄電池の開発と、電気自動車の燃料電池の開発に向けたパワー半導体です。

そこで、株式投資の今後の材料として、パワー半導体の開発を積極的に行っている企業をいくつかご紹介したいと思います。

パナソニック(6752)
  • GaNパワー半導体においては国内では先駆者
  • 通信基地局やサーバー向け電源の開発
  • PC、スマホなどの充電器への適用
  • GaNパワー半導体に関し国際特許を取得
  • アメリカの自動車メーカー、テスラと提携
  • 国内ではサンケン電機と共同で開発を進める
ローム(6963)
  • SiCパワー半導体をメインに様々な商品開発を行う
  • 高速スイッチグ動作時において35%~60%の電力の削減を実証
  • 産業向けインバーター、コンバーターへの適用
  • 電気自動車(EV)ステーションへの適用
  • 世界最小、最小限に電力消費をおさえたパワー半導体の開発
  • 車載用の安全運転支援用に小型化・省電力化のICモジュールの製造
富士電機(6504)
  • 2018年度のパワー半導体の設備投資に332憶円の計画
  • 鉄道用、自動車用のパワー半導体の開発
  • 風力発電、太陽光発電用のパワー半導体の開発
  • 主にIGBT、MOSFETの基本的な半導体が多い
  • 工業用の高圧インバーターに強い
  • 工作機械の自動化、ロボット用の半導体へと拡大
三菱電機(6503)
  • 東京大学との研究によりSiCの抵抗力の高さを解明
  • 家電に適用できる小容量、中容量の半導体に力を入れる
  • GaNにもすでに取り組んでいて車載用の半導体の開発が進む
  • 用途に合わせた様々なサイズを提供する
  • 2003年に世界で初の50アンペア用を製造
  • 高速情報通信から無線機器、衛星通信など幅広い
東芝(6502)
  • 車載用の半導体が充実している
  • MOSFET,Sicが主体となって幅広く開発
  • 電流が流れる能力を2倍にできるバッテリーシステム
  • 抵抗力を60%アップできることを実証
  • 車載用のイメージセンサーなど通信技術を活かす
  • 車の各機能に応じることができる小型半導体にも力をいれる
その他の企業
  • テクノアルファ(3069)
  • 昭和電工(4004)
  • 古川電気工業(5801)
  • 日立(6501)
  • ディスコ(6146)

など、大手電機の多くがパワー半導体の開発に力を入れていて、国内だけに限らず、アメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国でも数年前から研究開発が進んでいるのです。

今後のパワー半導体

次世代の課題の中でも、省エネ、自然環境は、地球規模で解決すべく緊急の問題でもあります。このパワー半導体の存在が、今、私達の抱えている深刻な環境問題をどれだけ解決へと導いてくれることでしょうか。

新エネルギーのパワー半導体

太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電などと原子力発電に依存しない新しいエネルギーの普及には、このパワー半導体なしでは実現することはできなかったでしょう。

どのような方法で熱や光を集めたとしても、電流を変換することのできるパワー半導体があれば、それを電池の中にためておくことができるのです。

電気自動車のパワー半導体

電池の中にためた電気は、簡単に持ち運びすることも可能なので、どこでその電力を得ようと、今後はあまり関係なくなってくると言えるのです。いつの日かコンビニで車用の電池が販売される日がくるかもしれません。

そのような電池の開発が、ようやく長年にかけて自動者業界や電気業界が夢みていた電気自動車の実現を可能にしたといっても、けっして過言ではありません。

すでに、太陽光発電でつくった電気を自宅の電池の中にためて、自分で車の充電をする人も増えてきています。

さらに、パワー半導体の開発が進み、小型の電池での燃料供給が可能となれば手軽に誰でも充電できて、普及拡大も進むことでしょう。

普及が進めば、今よりも電気自動車の価格は安くなっていき、電気自動車の数を世界中で増やしていくことになります。

問題点

ただ、電気自動車の今後の普及にあたっての問題点が2つあるのです。1つは、私達、消費者がどのくらいのペースでその進展についていけるかということです。

自動者業界や電機業界が、一般の消費者の先の先の先を考え、研究開発を行うのは当然のことです。近年では電気自動車とさらに自動運転車の開発も進んできています。

自動車は消費者にとっては、交通手段の1つであり、要は目的地に運んでくれるのだったら、その中身が何であっても構わないと思う人も多いのではないでしょうか?

あまりにも早いペースで次々と、新しい商品を見せられても当惑してしまうのではないかということです。

そしてもう1つの問題点は、毎年、次々と生産され続けるその車の量が実際の需要に見合っているのかということです。

処分しきれない廃車の山と、まだまだ走ることのできるガソリン車の山をどうするのでしょうか?

この2つが、今後電気自動車が普及拡大していくにあたっての問題点だと思います。

まとめ

おそらく、これまでのガソリン車が電気で動くようになったということは、馬車で移動していたものが自動車にとってかわったのと同様に、歴史的にも非常に画期的なことなのだと思います。

その背景には、パワー半導体を活用した電池の存在があるわけですが、その電池にためた電気が今後はガソリンの代わりになっていくのです。

もし、電気自動車で世界が埋め尽くされてしまったら、さぞかし空気はきれいになるだろうと待ち遠しい気持ちになるものです。

そのためにも、電気自動車の普及にあたっての問題を、どう解決していくのかを見せてくれる企業に投資してみるのも、1つの方法かもしれないですね。

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