年金代わりとしても使える高配当株の買い方とは

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老後資金のために高配当株のへの投資も検討しましょう。景気の変動を受けにくく、業績が安定している銘柄を購入すれば、年金の補足としても利用できます。今回は、高配当銘柄の定義と選び方について解説します。

高配当株とは

近年、企業は配当金を増やす傾向にあります。2019年3月期決算も、上場企業は3期ぶりの減益となりましたが、配当総額は過去最高を更新する見込みです。米国企業などのように株主重視の考えが広がっているからです。

このように配当金が増加するなかで、日本の低金利は続いています。日銀のマイナス金利政策の影響もあり、国債10年債利回りもマイナスになることもあります。

銀行の定期預金でも0.02%程度で利息がほとんどつきません。そのような中、株式の配当に注目が集まっているのです。上場企業の配当利回りは2%近くあります。配当利回りとは、購入した株価に対して、1年間にどれだけの配当を受け取れるかを示す数値です。計算式は以下の通りです。

  • 配当利回り(%)=1株あたりの年間配当金 ÷ 1株購入金額 × 100

配当金額が同じでも、購入株価が高ければ配当利回りは下がり、購入株価が低ければ配当利回りは上がります。一般的に高配当株とされるには、「配当利回り3%以上」の銘柄です。

東京証券取引所には、高配当株といわれる配当利回り3%以上の株も500銘柄以上あります。業績が安定している企業なら毎年安定的に配当金を受け取ることができます。

企業が高配当をおこなう理由は、投資家に株を安定的に保有してもらいたいからです。配当目当ての投資家なら、短期間で頻繁に売買することはありません。仮に売却されてもすぐに買い手が見つかるため、株価が大きく下落しないというメリットがあります。

高配当を続けるためには、安定して利益をだし続ける必要があります。ですから、東証1部の大型株が多い傾向にあります。短期的に大きな値上がり益は期待しづらいものの、安定的な配当によるインカムゲインが狙えるのです。

年金にプラスする高配当株

老後資金に高配当株を組み入れるというのは有効です。その最大のメリットは、資産がどんどん減っていくという懸念が少なくなることです。高配当株を保有しておけば、毎年決まった額の配当を受け取れます。

年金だけでは足りない生活費に充てることができるのです。業績が安定して毎年配当をだし続けている企業は株価が大きく下落するリスクも相対的に低くなります。

人生100年時代を迎える中で、老後資金をどれだけ用意すればいいのかというのは予想しづらい状況です。その点、配当という収入源を確保しておけば資産寿命を伸ばし、「長生きリスク」に備えることができます。

高配当株も株式には違いないので、元本保証ではありませんし、価格変動リスクもあります。ただ、配当狙いの投資なので、日々の株価の値動きに一喜一憂する必要はありません。

また、業績についてもさほど気にすることはありません。値上がり益を狙うキャピタルゲイン投資なら、アナリスト予想に対して売上や利益が上回ったかどうかが問題になりますが、配当狙いの場合は、大幅に業績を下方修正したり、減配したりしない限りは気にする必要はありません。

配当利回りだけで選ばない

ただし、年金として高配当株を考えるのであれば、単に利回りが高いというだけで選んではいけません。業績が悪化すると配当が減る減配や、配当がなくなる無配になるリスクもあるからです。そのような状況になると株価も大きく下落する可能性があります。

株価が下がりにくく、安定的な高配当が見込める銘柄を選ぶ必要があります。老後のために高配当銘柄を購入する場合は、配当の安定性がもっとも大切です。そのためには、業績が安定していることや、景気変動の影響を受けにくい銘柄を選ぶ必要があります。安定的な配当を期待できる銘柄を選ぶポイントを見ていきましょう。

1.タコ足配当の銘柄を避ける

業績が悪化し、利益以上の配当をだしている銘柄には注意が必要です。配当の原資は、企業の利益です。利益を上回る額を配当するためには、これまでの利益を蓄えた剰余金を取り崩す必要があります。

そのような場合、長期的に配当を継続することはできません。配当額の利益が上回る状態が続いているような銘柄は避けるようにしましょう。

2.過去の配当を確認する

配当利回りが高くても、一時的な可能性があります。記念配当などで増額している可能性もあるからです。最低でも過去5年分の配当を確認し、継続して同じ程度の配当金をだしているかどうかを確認しましょう。

3.増益傾向の銘柄

配当の原資は利益です。高配当でも業績が右肩下がりの銘柄は避けるようにしましょう。とくに本業と本業以外の利益の合計である経常利益が伸びている企業は、今後も有望です。

4.増配しているかどうか

増益基調だけでなく、利益が増えたときにきちんと株主への還元を増やしているのかにも注目です。増配実績のある銘柄は、業績がしっかりして利益の拡大が続く限り、今後も増配する可能性が高いからです。

5.PERを確認する

PER(株価収益率)とは、株価が割高か割安かを判断するための指標です。株価が1株あたりの当期純利益の何倍になっているかを示す指標です。東証1部の予想PERは13.68倍。13.68倍を大きく超える水準(20倍以上など)は株価の割高感が強いので避けるのが懸命です。

高配当株のスクリーニング

高配当株を探すには、会社四季報を確認するのが一番です。過去の配当額や予想配当利回りが記載されているので参考になります。また、過去の業績や今後の予想もチェックできます。

ただ、日本株は4000銘柄以上あるので、一つひとつ確認するのは大変です。そこで、ネット証券のスクリーニングを利用することをオススメします。

スクリーニングとは、条件を入力して検索できる機能です。希望の配当利回り、例えば3%以上など配当利回りを入力して検索すれば、銘柄の一覧が出てきます。しかし、それだと何百銘柄と多くの銘柄が抽出される恐れがあるので、 PER(株価収益率)や、投資金額などを他の条件を加えて選別するようにしましょう。

高配当株の選び方について解説してきましたが、株式投資の基本は企業の将来性に投資することです。配当利回りの高さだけではなく、売上や利益など企業の収益性や財務の健全性を必ず確認するようにしましょう。

配当貴族指数

配当狙いで株式を購入する場合、配当の高さも魅力ですが、連続して増加している企業も注目されます。長期にわたって安定的な配当が望めるからです。例えば、米国には過去25年間以上毎年連続増配を続けている企業で構成される「S&P500配当貴族指数」があります。

一般的な高配当銘柄というわけではありませんが、安定的な配当に着目した指数です。言い換えれば、配当金が増える減配のリスクが低いと考えられる銘柄で構成された指数です。

長期の配当貴族指数のパフォーマンスは、代表的な米国の株式指数である S & P 500市数を上回っています。

同じように、日本の銘柄を対象とした日本版の配当貴族指数「S&P/JPX配当貴族指数」があります。 これは米国ほどではありませんが、過去10年間以上連続して増配している企業が算出されています。

具体的には、東証株価指数(TOPIX)を構成する銘柄の中で、時価総額500億円以上、流動性の目安として1日3億円以上の売買代金などの基準を満たす銘柄の中で、10年以上配当水準を維持、もしくは増配した銘柄で構成されているのです。構成銘柄の上位は以下の通りです。

 

1.奥村組(1833)

2.JT(2914)

3.ソニーフィナンシャルホールディングス(8729)

4.中国電力(9504)

5.東京海上ホールディングス(8766)

 

S&P/JPX配当貴族指数を対象にしたETFもあります。

  • 1494 S&P/JPX配当貴族指数

TOPIXの構成銘柄のうち、10年以上毎年増配しているか、安定した配当を継続している40~50銘柄が選ばれています。

高配当株ETF

個別株も株主還元がテーマになっていますが、ETFも配当利回りの高い銘柄で構成された指数に連動するものがあります。つまり、分配金に着目した ETF です。

上場企業の株式の配当金と 、ETF の分配金の基準日には異なる傾向があります。上場企業の配当金は3月と9月が基準日になっている銘柄が多いのに対し、 ETFは1月と7月が多くなっています。

1月と7月以外が基準日になっている ETF もあるので、複数のETFを購入することによって毎月分配金を受け取ることも可能です。

120銘柄以上の ETF 分配金を支払っていますが、 このうち約6割の銘柄が2%未満の分配金利回りです。しかし、中には4%を超えるような銘柄もあります。例えば REIT 指数に連動する ETF や外国債券指数に連動する指数などです。

REIT指数の一つである東証 REIT 指数は、東京証券取引所に上場する全ての J-REIT (不動産投資信託)で構成される指数で、東証 REIT 指数に連動する ETFの分配金は、各J-REITからの分配金となります。

外国債券の ETF の中でも利回りが高いのは、新興国の国債で構成される指数に連動する ETF です。REITと外国債券の分配金利回りは3%を超え、分配金のあるすべてのETF の平均約2%を大きく超えています。

個別株の中でも、配当利回りの高い高配当銘柄に着目した「高配当株ETF」シリーズがあります。

スマートベータ戦略

伝統的なインデックス運用から脱却し、より高い収益を目指す戦略としてスマートベータがあります。スマートベータとは、一般的に企業の売上高や配当、自己資本利益率(ROE)、株価変動率など時価総額などと異なる一定の基準で選定した銘柄で構成される指数のことです 。

スマートベータは、株価指数などインデックスに連動する投資成果を目指すパッシブ運用と、運用のプロであるファンドマネージャーが、銘柄を選んでベンチマーク(運用指数)を上回る成果を目指すアクティブ運用の中間に位置するものといえます。

このスマートベータ型戦略の一つである「高配当戦略」を採用した高配当 ETF は、配当利回りが高い企業を対象とした指数に連動する ETF です。

世界的な低金利が長期化する中、株式市場に対する配当への期待は高まっています。長期にわたって連続して増配を続けている企業は、株主への利益還元を重視した傾向を行う傾向があり、経済や社会の構造が変化しても持続的な成長が期待できます。

配当金をメインとする投資家は、株価が下落しても株式を保有し続ける傾向があり、高配当企業は相場の下落局面に強いと言われています。それでは、具体的に高配当株 ETF の銘柄を見ていきましょう。

1489 日経平均高配当株50指数

日経平均構成銘柄のうち、配当利回りの高い50銘柄で構成される「日経平均高配当株50指数」に連動することを目指すETF。日経平均株価の構成銘柄は225銘柄。日経平均株価は大型株で構成されているので、配当が3%を超えるような高配当銘柄も多くあります。

その中でも、特に配当が高い上位50銘柄を対象としている指数です。日経平均株価を対象としていることで多くの投資家にとって認知されやすく、わかりやすいという特徴があります。

日経平均高配当株50指数は、配当利回りウェイト方式を採用しています。これは配当利回りが高い銘柄の組み入れ比率が高くなるということです。より配当利回りの高い銘柄の影響を大きく受けます。

1577 野村日本株高配当70

野村日本株高配当70は、国内上場株のうち、今期予想配当利回りの高い70銘柄が選ばれています。ただ、配当の継続性に配慮し、過去3年間に経常利益がマイナスになった銘柄や、予想配当がゼロになった銘柄、浮動株ベース時価総額や平均売買代金が小さい銘柄を除外しています。

1478 iシェアーズ MSCIジャパン高配当利回りETF

配当利回りの高さに加え、配当の継続性や企業の財務体質にも着目して銘柄を剪定しています。およそ40~100銘柄を組み入れています。対象となるMSCIジャパン高配当利回りインデックスは、日本国内の取引所に上場している大型株や中型株を対象とした MSCI JAPAN 指数から J-REIT( 不動産投資信託)を除外したものです.

トヨタ自動車や、NTTドコモ、KDDIなどが組入銘柄上位です。

株主還元とは

株主還元とは、税金などを支払った後に残った利益である純利益や、過去の利益の蓄積の一部を株主に返すことです。現金を支払う配当と、企業が株式を買い戻す自社株買いの二つの方法があります。

日本は景気が回復していて、過去のいざなみ景気を超えたと言われています。しかし、企業は従業員の給料を増やすより、株主還元に力を入れています。日本経済新聞によると、上場企業の配当と自社株を合わせた株主還元の額は、5年間で約2倍の15兆円に達しました。そのうち配当額は、10.7兆円。自社株買いは4.6兆円。合わせて15.3兆円と予想純利益の半分程度になります。

株主還元が広がる理由として、景気拡大により企業内に蓄積された内部留保(資金)が増えていることも考えられます。株主総会では、株主から内部留保を配当に回すような要求が強くなっています。このような要求を企業側も無視できなくなってきているのです。

米国は、配当貴族指数のように25年以上連続増配している企業も多くあります。もちろん、高い配当利回りは魅力ですが、安定して配当を増やしているという企業も検討するべきです。

資金をどう使うかというのは、企業ごとに変わってきます。成長段階にある新興企業などは、株主還元として配当などを行うよりも、設備投資などに重点的に資金を回す方が合理的です。

一方、成熟段階に入って大きな成長が望めなくなった大企業は、株主還元を進めたほうが市場での評価を高めやすいと言われています。

今後も株主還元策として、配当は重視されるものと考えられます。

まとめ

今回は、高配当株についての説明と、連続増配している配当貴族指数などについて解説しました。高配当は確かに魅力ですが、利回りだけで購入してはいけません。きちんと業績が伴っていないと、配当が減る減配や、配当が出なくなる無敗になる可能性もあるからです。

また、安定して増配している企業も魅力があります。アメリカでは25年以上連続増配している企業配当貴族と呼びます。日本でも10年以上安定して配当をだしている企業を対象としたS&P/JPX配当貴族指数があります。

このような中から銘柄を選ぶのも良いですが、高配当株を対象にした ETFもあります。ETFなら、幅広い銘柄を購入したのと同じ効果があるので、リスクを軽減させることができます。

初心者の方は、高配当株を対象にした ETF から始めてみてはいかがでしょうか。

 

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