法人保険とはなにか!?起業するまえに基本を学ぼう

起業の際、会社の保険を検討しようと調べると、法人保険という言葉が出てきたと思いますがどのような商品なのか疑問なのではないでしょうか。その名の通り法人保険とは契約者を法人にして加入する保険のことです。

法人で保険に加入することによって保障だけではなく法人税対策、退職金の準備、福利厚生など商品や活用法によってさまざまな効果があります。今回は法人保険とはどういうものなのか、そして加入する目的をお伝えします。法人保険を検討するときは必ず知っておかなければいけない基礎知識なので押さえておきましょう。

法人保険とは?

法人保険の詳しい説明に入る前に、法人保険とは何か?について定義などを一度確認したいと思います。

なぜわざわざ定義を確認するかというと、法人保険と一口に言っても、法人保険には生命保険や損害保険も含まれるため、混乱しやすいためです。

法人保険の前提については既にご存知の方、すぐにメリットが知りたいという方は、ここは読み飛ばしていただいて結構です。

法人保険とは一言でいうと、法人のための保険。個人向けの保険と同様に、生命保険損害保険があります。

インターネットなどで検索すると法人保険という言葉がたくさん出てきたと思いますが、具体的な商品として法人保険というものは存在しません。つまり、保険を法人が契約者となり、保険料を支払っていくものは全て法人保険と呼ばれます。

法人保険に加入するとメリットがある、という話を耳にされたことがある方も多いかと思います。ここでいう法人保険とはほとんどの場合、法人向け生命保険を指します。今回は、この法人生命保険に的を絞ってお話します。では、早速ですが法人保険の基本を一緒に確認していきましょう。

法人保険に入る5つの目的とメリット

会社で法人保険に加入する主な目的は以下の5つになります。

  1. 経営者の保障
  2. 法人税の対策のため
  3. 退職金の準備
  4. 福利厚生のため
  5. 事業承継対策

それでは法人保険でできる5つのことを順番に解説していきます。

1.経営者の保障

これが法人保険の最も基本的な目的です。経営者は、自分に万が一のことが起きたときに会社は大丈夫だろうか?と不安になることもあるでしょう。保険に入ることによって、そういった万が一の時のリスクに備えることができます。

例えば、経営者に万が一があると社内が混乱し、銀行や取引先などからの信用が落ち、融資が止められてしまうなど、経営が危機に立たされることもあります。また、役員や従業員への給料や賞与が十分に支払われない可能性もあります。

そんな時に、例えば死亡保険金を受け取ることができるとすれば、そのお金を使って、後継の経営者を用意し軌道に乗せるまでの資金を確保でき、十分に経営の立て直しをはかることができます。

2.法人税対策

会社が成長し売り上げを増やして利益が出るとそれに比例して法人税が掛かります。現行法では何も対策をしないと約40%近くの税金が掛かることになります。そこで法人税を確実に減らせるのが法人保険です。それは会社が保険料を支払っていき、その全部または一部を損金にすることができるからです。その分所得が減るので課税金額も減るというわけです。

簡単に法人税の仕組みをお伝えすると法人税は法人の利益に課せられるわけではなく。正確には所得に課せられます。そして所得とは、利益から損金を引いた額のことを指します。

つまり、損金を作ればその分所得は減ります。その損金を作れるのが法人保険です。法人保険の保険料は全部または一部が損金として計上できるので所得を減らすことができます。例えば、益金が2,000万円あったとして、保険料を年払で1,000万円支払いその保険料が全額損金になった場合、所得が1,000万円になるので大幅に課税額を減らすことができますね。

ただし、損金にできる割合は商品によって異なるので加入前にしっかりと確認しましょう。

3.退職金の準備

法人保険の中には解約返戻金が貯まっていく商品もあり、いずれ解約をしてそのお金を退職金とすることができます。退職金を準備する方法はたくさんありますが、法人保険であれば退職金を準備しながら契約内容に応じた保障を受けることができ、保険料の一部を損金にすることが出来るので退職金を貯めるのに法人保険を使うのはかなり魅力的です。

4.会社の福利厚生

会社が軌道に乗り、安定してきた時に考えるのが会社の福利厚生ではないでしょうか。生命保険会社も福利厚生を目的とする商品も販売しています。福利厚生で活用する場合は基本的に社員全員加入となります。会社が何割か保険料を負担しながら、従業員の保障、そして退職金を貯めていくことができる商品もありますので、会社の売り上げが安定してきたら、ぜひ検討することをおすすめします。いい会社は必ずと言っていいほど福利厚生が充実しています。

5.事業継承の準備

事業承継対策の方法はたくさんありますが、その1つに生命保険の活用があります。

生命保険は主に万が一があったときの死亡保障として活用しますがお金が貯まる商品もあるので活用方法は多数あります。承継させたい資産に比べて、その資産の承継に伴う相続税額が大きくなる場合、相続税が支払えない場合があります。

相続税の納税資金をキャッシュで確保できていれば、その自社株は法定相続人に相続されますが、自社株の評価が思いのほか大きくなっていたため、相続財産全体が膨らみ、納税資金をキャッシュで用意できないことが考えられます。

相続税を支払うために、キャッシュで準備できなかった場合、持っている証券や不動産などを売却するか、自社株を売却して現金化して納税をする必要が発生します。売却しても問題ない有価証券や不動産だけの売却だけならいいのですが、自宅や自社株を第三者に売却し現金化することになり、オーナー社長が作り上げた会社を手放すことにつながってしまいます。

もし会社を身内に継がせたい、と思っていたとしても自社株を売却してしまっては他の人の会社になってしまいます。

生命保険に加入をしておくことによって、まとまった現金が手に入るので納税額を準備することができます。

法人保険のデメリット

次に、法人保険で節税するときに重要なのがこのデメリットです。単にメリットだけを見て加入を検討することのないようにしてください。これらのデメリットを把握しておかなければ、後になって後悔する可能性があります。

以下が法人保険のデメリットです。

  1. 会社のキャッシュフローが悪くなる
  2. 解約返戻金を受け取る時に結局税金の支払いがある
  3. 保険の解約のタイミングによっては損をする事になる

会社のキャッシュフローが悪くなる

法人保険に加入するともちろん保険料を支払わなければなりません。年払保険料が2,000万円の場合、単純に年間2,000万円がキャッシュアウトしてしまいます。 また、保険料は一回払えば終わりではなく、毎月もしくは毎年支払う必要があります。つまり、その分、会社の現金が減りキャッシュフローが悪くなります

会社を成長させるために、キャッシュを新規事業の投資や人員の拡充に充てたいときは、キャッシュフローの悪化は経営にとって致命的になってしまいます。つまり、まだ会社が成長しきっておらず一刻も早く会社を軌道に乗せるために多くのキャッシュが必要になりそうな場合は、法人保険による節税は向いていないでしょう。

そうでない場合も、法人保険に加入する前に、キャッシュフローのシミュレーションはしておきたいところです。

解約返戻金を受け取る時に結局税金の支払いがある

法人保険を解約した時に受け取る解約返戻金は受け取った時点で雑収入になります。従って、解約した時に、今まで損金として計上していた金額が、そのまま益金となり、法人税が課されることになります。

つまり、法人保険とは、単に法人税を繰り延べるだけにすぎないということです。

例えば、年間保険料2,000万円で、1/2損金の法人保険に加入した場合、毎年1,000万円が損金になります。そしてこの保険を10年間掛けていくと総額保険料が2億円になります。

そうすると10年間で1億円損金になり、1億円が資産計上になります。そこで10年目に解約をして、返戻率が100%で2億円を解約返戻金を受け取ると元々損金として計上していた1億円が雑収入として法人税の対象となってしまいます。

その時に1億円以上の赤字があれば問題ないのですが黒字で受取り、決算を向えてしまうと、10年間節税した分の1億円が一気に課税されます。そうならないためにも、やはり、いつ解約してそのお金をどう使うのかシミュレーションをしてから契約しないといけません。

保険の解約のタイミングによっては損をする事になる

法人保険は解約したときに解約返戻金を受け取ることができます。しかし、返戻率は、解約するタイミングで大きく違います。商品によって、返戻率のピークは違いますが、特に注意したいのが早期解約をすると30%〜80%程度しか戻ってきません

ただし、注意しないといけないのがピークを過ぎると徐々に返戻率が下がっていくということです。つまり、ピークの前に解約しても、ピークを過ぎて解約してもロスが出てしまいます。

このように解約返戻金をどれだけ受け取れるかは、タイミングによって大きく違います。

もちろんタイミングよくピークで解約できればいいのですが、会社は何が起きるかわからないので、契約したときは保険料を支払っていけると思っても急に資金繰りが悪化して解約に追い込まれることもあります。

保険によって、ピークが早く来るものや遅く来るもの、ピーク期間が長いものや短いものがありますので、その中から、自分の戦略に合った保険を選択する必要があります。

法人保険はどんな種類があるのか

法人保険の種類としては、てい増定期保険、長期平準定期保険、養老保険などが活用されています。また、場合によっては法人専用のがん保険が活用される場合もありますが、ご加入の年齢によって選ばれる保険種類・保険会社が異なってきます。

社員の退職金準備では、一般的に養老保険を選ぶ傾向があります。社員の万が一に備えた死亡保障の準備と定年時の退職金の二つを同時に準備可能だからです。積立効果の高い生命保険ですが、条件が整えば、1/2を損金処理にすることが可能です。

このように、法人契約で生命保険に加入する場合に目的によって選ぶ生命保険商品も、生命保険の設計方法も異なってきます。ですので、生命保険の加入目的を明確にすることがとても重要です。また、同じ保険種類でも各保険会社が特徴となる特約や設計、取扱い可能な年齢帯が変わりますので、ご加入前に多くの保険会社・多くの設計ができる専門的な保険代理店から加入することがベストの保険商品に出合える方法の一つです。

法人保険の中には、税法上優遇処置が取られている生命保険があります。生命保険を解約した場合の解約返戻金と、会社の決算書に計上すべき保険料積立金を比べた場合、金額に差が出てくる生命保険です。この差額を利用し、決算対策を行いながら会社の積立金を増やします。

決算時に予定以上の利益を出すことができた場合などに、生命保険に加入し保険料を支払うことで、今期の課税対象額を減らすことで生まれる納税の繰り延べ効果を活用します。この場合、保険契約の内容や設計方法によっては税務署から認めてもらえない場合もありますので、生命保険の税務取扱いをよく理解している法人保険のプロや顧問税理士の先生とよく相談しながら加入することが重要です。

逓増定期保険(てい増定期保険)

逓増定期保険とは、一般の個人では契約できず、法人と契約するために開発された生命保険商品で企業の成長に合わせて、死亡保障金額が増加していくタイプの定期保険の一種です。万が一が起こった時に企業の存続に影響がある社長や取締役などの経営陣を対象とされています。

例外として経営陣ではなくても営業本部長や工場長など、企業の存続に影響が出る従業員の場合も、保険会社の許可を得て加入することが可能です。

長期平準定期保険

長期平準定期保険とは、中小企業の経営者のために開発された死亡保険です。企業経営は長期間にわたり成長と繁栄を目指します。その間に起こり得る可能性のある様々なリスクをヘッジすることを目的とした保険商品になります。

例えば、社長や役員など、会社経営における重要人物の死亡による損害、売り上げの減少、悪天候など様々なリスクが考えられますが、長期平準定期保険は大きな死亡保障とともに、積立性の高い生命保険であり、万が一の場合にはその解約返戻金が資金繰りの役にたつ場面も想定できます。また、何もリスクに出会わなかった場合には、その解約返戻金は契約者の退職金原資として活用いただくことが可能です。

養老保険

養老保険は、生死混合保険と呼ばれる生命保険にカテゴリーされる生命保険です。あらかじめ契約期間を定め、契約期間中の死亡保障と、満期時に満期保険金を受け取る貯蓄機能の二つの特徴を併せ持った生命保険です。保険期間中に亡くなられた場合の死亡保険金と、生存されて受取る満期保険金は、ほぼ同金額となりますので非常に貯蓄性の高い特徴を持っています。

法人保険を選ぶ時の注意点

財務体制の強化も考えて生命保険に加入する場合、事業計画に沿った法人保険を選ぶことがとても重要です。経営者の中には所得を減らして課税額も減らすために、利益のほとんどを生命保険につぎ込もうという社長もおりますが、この考え方はあまりおすすめできません。

あくまでも生命保険を活用した計画は複数年、生命保険料を支払わなければならないことを忘れてはいけません。ここ数年でも不景気やリーマンショックで事業計画通りに経営ができていない会社も多いはずです。ですので事業計画に基づいて、無理の無い範囲で必要保障を満たすことが重要です。

企業にとって一番大事なことは、会社を成長させ続けることです。取引先の倒産や世界的な不況、自然災害など万が一の想定外の危機に陥った場合に臨機応変な対応ができるように、想定外の事態を想定しながら法人保険に加入すべきです。

また、保険料の払い込み時期や保険金の減額、払済保険への変更、契約者貸付制度の有無と掛け率、さらに銀行からの担保価値としての評価や質権設定が可能かどうか。なども加入前に抑えていおきたい機能ですね。通常、法人保険を真剣に考えて設計、販売している保険会社の法人保険商品は、通常質権設定が可能ですので将来の万が一に備え、検討しておくことが重要です。

法人保険の保険の設計はかなりの自由度があるため、同じ保険商品でも保険会社によって大きな差が出る場合があります。そのため、必ず複数の保険会社商品を比較検討してみましょう。

 

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