その保険、本当に必要?リスクマネジメントで考える保険選びの損得

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生命保険には様々な種類がありますが、皆さんは「余計な」保険に加入していませんか?

余計な保険とは、費用対効果が乏しく、将来起こりうるリスクに比べて割高な商品を指します。つまり、保険料を払いすぎており、なおかつ将来のリスクも起こりにくいため、保険加入によって損をしている状態です。

こんなとき役に立つのがリスクマネジメントです。保険商品ありがとうございました。複数のサービス会社の値段を比較し、「どれが安いか」という観点で選ばれることが多いですが、実はその前に行っておかなければならないことがあります。

今回はリスクマネジメントの観点から、正しい保険の選び方を学んでいきましょう。リスクを管理する4つの手法を知ることで、これからは余計な保険に加入することなく、ムダな固定費を積み重ねる必要もありません。それでは以下より詳しくお伝えしていきます。

保険と関係の深いリスクマネジメントとは?

リスクマネジメントとは、将来的に起こりうる物事や危険を予測し、あらかじめそれに対処する行動や考え方のことです。このリスクマネジメントは、生命保険などの分野と密接な関わりがあります。

たとえば、この先、大きな事故や病気で入院したり、多額の手術費が発生するかもしれないというリスクを想定したとしましょう。すると、いつそうした大きなトラブルが起こっても良いように、今のうちに医療保険に入っておくという選択肢がとれます。

また、車の運転をする人は必ず自動車保険に加入しますよね。これは、どんなに運転が上手な人でも車による事故を完全にゼロにすることはできないからです。将来起こるかもしれない自動車事故に備え、自動車保険に入って万全の準備をしておきましょうということを意味します。

こうした行動はすべてリスクマネジメントに基づきます。

しかし、保険は毎月掛け金を支払う必要がありますよね。果たしてその「コスト」が、将来の「リスク」にとって適正な値段なのか、それを把握しておかないと自分が損をすることになるのです。そのため、生命保険などを選ぶ際は、このリスクマネジメントを理解し、お得になる保険を選択する必要があるでしょう。

リスクマネジメントとは、もともと企業の経営戦略における専門的な言葉でしたが、今では人々のライフスタイルにまで浸透しています。先に紹介した保険選びはもちろんのこと、ライフプランの構築や家計管理などにもリスクマネジメントの概念が登場するのです。

老後準備のためにリスクマネジメントは必須

リスクマネジメントが必要な分野は保険ばかりではありません。リスクマネジメントが重要視されるのは、特に老後準備などお金に関わる場面が多いです。

では、老後準備におけるリスクマネジメントとは、一体どういうことなのでしょうか。

老後準備とは、年齢が若いうちに老後に備えた貯蓄や保険などを選んでおくことです。たとえば、65歳になると定年を迎えますが、仕事を退職することで収入がなくなることも珍しくありません。定年後に受け取れる年金も、少子高齢化が進む日本では将来性が期待できないため、元気なうちに多くの収入を得て、老後の豊かな生活を送れるようにしっかりと準備しておく必要があります。

その老後準備に必要となるのがライフプランの作成です。

仮に現在30歳の方だとすれば、定年まであと35年あります。この35年の間に結婚をする方もいれば、子供が生まれたり、マイホームを購入する方もいらっしゃるでしょう。すると当然ですが大きな出費が発生します。ライフプランの作成では、そうした大きなイベントごとに必要な資金を決め、余裕をもって準備していけるよう目標を設定します。

ただ、ライフプランを作ったとしても人生がその通りに動くとは限りませんよね。定年までの35年間で大きな事故やトラブルに巻き込まれ、入院費や手術費用が必要になるケースも出てきます。

そこで、ライフプランを構築するときには、同時にリスクマネジメントの観点も忘れていけません。もし大きな事故が発生した場合は、おおよそどれくらいの費用がかかり、生活全体にどのような影響が出るのかということまで考えておかなければならないのです。

では、リスクマネジメントはどのように行っていけば良いのでしょうか。次の項目から、リスク管理を徹底する方法や手順を詳しくお伝えしていきます。

リスク管理を徹底する方法と手順

リスクマネジメントは、別名リスク管理とも呼ばれます。将来起こりえる事故やトラブルに備え、もし不測の事態が起こったときにも冷静に対処できるよう、今のうちから対策を考えていくことです。

そのリスク管理を徹底するためには、主に次のような手順でマネジメントを進めていきます。

  • リスク管理の手順(1):リスクの確認
  • リスク管理の手順(2):リスクの測定
  • リスク管理の手順(3):リスクの処理方法の選択と実施

リスクマネジメントは単に将来のリスクを想定し、何となくのイメージで対処しても効果が上がりません。まず上記手順に従って正確なリスクをつかみ、そこからマネジメントを行っていきましょう。詳しくは以下で解説しています。

リスク管理の手順(1):まずはリスクの確認から

リスクマネジメントで最初に行うことは、まずリスクを確認することから始めます。リスクとは「危険性」と訳されることも多いですが、本来は「将来の可能性」という意味で使います。その中でも特に事故やトラブルといった危険なものに視点を絞り、マネジメントを行っていきます。

リスク確認で大切なことは、最初に「将来起こりうる可能性」について優先度をつけていくことです。

ご自身にとって将来起こりそうな出来事で、なおかつそれが発生することでどのような影響を与えるのかをイメージしてください。

たとえば、自動車との大きな事故が起きると、その後、高額な入院費用や数週間~数か月の時間ロスといったマイナス面の影響が考えられますよね。一方で、自転車と軽くぶつかった程度では、かすり傷程度で済むことも多いです。

このように、色々な事故やトラブルを想定し、それらに優先順位をつけましょう。

また、こうした事故は保険と密接な関わりがありますが、老後準備のリスクマネジメントでは、高齢になることによる収入の減少も大きなリスクの一つでしょう。また、年をとって病院にかかる頻度が増える(医療費の増加)や、介護施設への通院(介護費用の発生)など、支出増大のリスクについても忘れてはいけません。

以下では今後起こりうるリスクに関して、一般的なものを紹介していますので、ご参考ください。

収入減少リスクの事例

収入減少リスクとは、旦那様など一家の稼ぎ手が死亡や入院によって、一時的に得られる収入が減ることです。また、次のようなことが起こっても収入減少につながりやすいといえるでしょう。

  • 一家の稼ぎ手だった方の死亡
  • リストラなどによる就業不能リスク
  • 事業の失敗による収入減少リスク

支出増大リスクの把握

支出増大は、先ほどの収入減少と同時に起こりうることが多いです。以下をご覧ください。

  • 火災などの災害リスク
  • 自動車事故の加害者となるなどの損害賠償義務を負うリスク
  • 長生きしすぎたことによる支出増大
  • 病気やケガなど医療費増大リスク
  • 介護費用の発生

特に、医療費や介護費用の発生など、高齢者になると誰しも起こりがちなものもあります。こうした想定しやすいものに関しては対策も講じやすいというメリットがあります。

リスク管理の手順(2):リスクの測定

リスクマネジメントの手順では、次にリスク測定を行っていきます。リスク測定とは、先ほど抽出したリスクに対して、主に次ような検証を行っていくことです。

  • リスク発生頻度:想定した出来事がどれくらいの確率で発生するか
  • リスク発生時の損害額:発生するとどれくらいの損失が出るか

リスクの種類によっては測定不可能なものもありますが、火災や地震、病気、事故など保険の種類は多く、そして保険が存在しているものはリスクの発生頻度や損害額も計算しやすいです。

リスク管理の手順(3):リスク処理方法の選択と実施

リスクマネジメント最後の手順では、想定と検証が終わったリスクに対して処理を行っていきます。ただ、リスクの発生頻度、およびリスク発生時の損害額によっては、どのようなリスクマネジメント手法を用いるか、その種類が異なることが多いです。

どの手法を選択すべきかについては、次をご覧ください。

  • 発生確率が低く損害額が小さい:リスクの保有
  • 発生確率が高く損害額が小さい:リスクの低減
  • 発生確率が低く損害額が大きい:リスクの移転
  • 発生確率が高く損害額が大きい:リスクの回避

それぞれリスクの発生確率と損害額の範囲によって、それぞれ「保有」や「低減」といった手段が異なりますよね。こうしたリスクマネジメントの手法を、専門的に「リスクコントロール」と呼びます。

それぞれのリスクコントロール方法については、以下で詳しくお伝えしていますのでご参考ください。

リスクの回避

リスクの回避とは、想定する出来事の原因を取り除き、完全にリスクをゼロにしてしまうことです。

発生確率が高く、なおかつ損害額が大きいので、万が一事故などが起こると保険などが適用されても損をしてしまう可能性が高くなります。そこで、完全にリスク自体を取り除くことを「回避」といいます。

たとえば、自動車事故を引き起こすリスクを想定したとしましょう。この自動車事故は、車を運転している限り起こる可能性はゼロにできません。そこで、「車に乗らない(運転しない)」という選択肢をとれば、リスクの回避につながり、完全に事故の可能性をゼロにできます

また、駐車場代や保険料、ガソリン代など固定費の削減につながるといったメリットも見逃せません。車に乗らないという選択肢をとるには、今までの生活をガラッと変える必要があります。しかし、最近ではカーシェアリングを提供するところも増えました。地方にお住いの方にとって車は大切な移動手段だと思いますが、リスクコントロールの一つの方法としてご参考ください。

リスクの低減

先ほどの車の運転をしないというように、どうしても車がないと不便という場合は、リスクをゼロにするのではなく可能な限り小さく抑えるという方法がとれます。これをリスクの低減といいます。

自動車事故でリスクの低減をしようとすれば、できるだけ安全運転に努めるということが考えられるでしょう。無理なスピードで運転するのを避け、なるべく狭くて危ない道を通らないようにするなど、それだけでもリスクコントロールにつながるのです。

また、運転回数や運転する距離を減らすといった対処法もあります。

リスクの移転

リスクの移転とは、事故やトラブルによって発生する支出の増大などの可能性を他者に移転することです。これは保険が一般的でしょう。

たとえば、自動車を運転しており大きな事故を起こした場合、相手が歩行者だと多額の損害賠償が必要となります。こうしたリスクによる支出増大を避けるため、私たちは自動車保険に加入しています。保険に加入していれば、こうした損害賠償の一部を保険会社が肩代わりしてくれますので、リスクを移転していることになるのです。

一方で、保険などに加入すれば当然ですが、月々の費用を支払っていく必要があります。仮に、ずっと無事故でも保険料は帰ってきません(掛け捨ての場合)ので、上記4つのリスクコントロールで最適な方法を選ぶ必要があるでしょう。

リスクの保有

リスクの保有とは、想定するリスクはあるものの、あえて移転や回避をせずにその危険性を持ち続けることをいいます。

たとえば、机の上に置いてあるジュースが他の人に飲まれてしまうというリスクを想定したとしましょう。ただ、自動車事故などに比べて、たとえ他人にジュースが飲まれたとしても、生命に危険が及んだり、特別大きな支出増大につながるわけではありません。

そのため、ジュースを盗み飲みされた場合の保険に入るわけでも(リスクの移転)、他の人に誓約書を書いてもらう(リスクの軽減)ような面倒なことはしないですよね。かといって盗み飲みのリスクを恐れて、ジュースを購入しない(リスクの回避)こともありません。

つまり、移転や軽減、回避も行わない状態でいることをリスクの保有といいます。

保険を選ぶ際はリスクマネジメントの観点から|損をしないよう注意

保険を選ぶ場合、今回お伝えしたリスクマネジメントの観点から考えるようにしましょう。何度もお伝えしていますが、保険に加入すると月々の費用がかかりますし、たとえ想定するリスクが起こらなくとも掛け捨てだと費用は帰ってきません。そのため、4つのリスクコントロールから、特定のリスクを回避させるのか、それとも保有するのかといったことを判断してください。

保険を選ぶという行動は、先ほどのリスクコントロールで「リスクの移転」に当たると紹介しました。もし、これから保険を選ぶ場合は、残り3つのリスクコントロール手法(回避、低減、保有)をシミュレーションしてみて、どうしても保険に加入しなければならないという場合のみご活用ください。

保険の中でも民間保険商品は最後の手段

保険を検討するといえば、民間保険会社が一般向けに販売する保険に加入するかどうかを検討することを指すことが多いです。

しかし、一般の民間保険商品を検討する前に、社会保険や団体保険のことを学んで、これらを最大限利用することを考えないといけません。

社会保険はそもそも強制加入であって、保険料もまるで税金のように徴収されているわけですから、最大限利用しないと大損です。

まとめ

保険を検討する場合、多くの人は民間保険会社のサービスから選ぶことが多いのではないでしょうか。ネットの記事などでもよく、民間会社の保険サービス比較といったものを見かけますよね。しかし、保険を選ぶ場合、まず最初に決めるべきは、「どの保険会社が安いか」ということではなく、「どのリスクコントロールが最適か」ということです。

そのため、手順としてはリスクマネジメントで想定する可能性を見つける・検証することから始め、次にリスクコントロールから4つの選択肢を選びます。最後に、リスクコントロールの「移転」を選択する場合のみ、こうした保険を活用するようにしましょう。つまり、保険を選ぶという手段は最後の選択肢ということです。

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