税金の未払いは危険!住民税を支払わないとどうなるのかと対処法を解説

住民税は、前年度の分を支払うことになります。

会社員の場合は給与から天引きになるため、あまり意識する機会はないかもしれません。しかし、前年度は収入があったけれど現在は職に就いていない方ですと、届いた住民税の納付書を見てその金額の大きさに驚いた方もいるのではないでしょうか。

そして、1年分を4回に分けて支払うため、1回あたりの納付金額が高額になり支払いが困難な方もいるかと思います。しかし、住民税を払わないことで後から大変なことになる場合も。

今回の記事では、住民税を支払わないとどうなるのかをはじめ、支払えないときの対処法について解説します。現在、住民税が支払えなくて困っている方も、これから納付書が届いて支払えないことが分っている方も放置することのないように解決策をみつけるようにしてください。

住民税を支払いたくても支払えないは通用しない

住民税は1年遅れにて請求がやってきます。冒頭で説明したように、現役会社員の方の場合は住民税が給与天引きになっているため「支払えなくて困る」などの状況に陥ることはほぼないでしょう。

それに対して、個人事業主や現在は収入がない方は自分自身で支払う必要があるため、場合によっては支払いができない場合もあるかと思います。しかし、住民税は前年の収入に課税されるため、納税通知書が届けば必ず支払う義務があるのです。

もちろん、今は収入がないから住民税が支払えないなどの言い訳が通ることはありません。支払いをしなければ、滞納者としての処分が下されることになってしまいます。

住民税とは?

先に住民税の支払いは必ず行うことを伝えましたが、そもそも住民税とは何なのかについても解説しておきましょう。

まず、住民税とは市町村民税と道府県民税を合わせたものの総称です。その地域に住む方が納めるべき税金となり、支払うべき内訳は前年度の所得に応じて課せられる所得割と、所得関係なく均等に課せられる均等割となります。

すべての人が納付することが基本ですが、以下の場合は免除対象です。

・生活保護の受給者
・一定の条件の方で基準以下の所得の方

ただし、実際に免除対象となるのは厳しい条件を通過した場合のみになります。

納付金額は市町村や収入体系などで異なるものの、一般的な給与所得者ですと年収400万円の方で15~16万程度が課せられる住民税の目安です。

納付方法は口座振替をはじめ、金融機関や市役所などへ納付書を持参しての現金で支払うようになります。

住民税を支払わないとどうなるか?

住民税を支払わないことで、どうなるのかの流れを解説していきます。

延滞金が課せられることになる

納付期限までに住民税を支払わなかった場合、期限日から20日以内に督促状が郵送されてきます。

住民税をつい支払い忘れた方は、この督促状が届く前に支払ってしまえばお咎めもありません。しかし、督促状が届き、さらに指定の納付期限を過ぎた翌日から延滞金が発生します。

なお、延滞金の割合は年度により多少変わる傾向があり、参考ばかりに過去の実績を以下でまとめておきます。

納期限の翌日から1ヶ月を経過する日までの延滞金金利
平成22年度~25年度まで:年4.3%
平成26年度:年2.9%
平成27年度:年2.8%
平成28年度:年2.8%
平成29年度:年2.7%
平成30年度:年2.6%納期限の翌日から1ヶ月を経過した日以降の延滞金金利
平成22年度~25年度まで:年14.6%
平成26年度:年9.2%
平成27年度:年9.1%
平成28年度:年9.1%
平成29年度:年9.1%
平成30年度:年8.9%

さらに督促状が送られてきた際に督促手数料が1回あたり100円程度課せられる場合があるので注意してください。

財産調査

督促状を発行して10日経過後、それでも滞納が続いた場合は法律上で差押えが可能です。しかし、実際はすぐに差押えに移ることはありません。

催告書の送付、電話や職員の訪問などによる催告が何度が行われるようになります。そして、催告を受けているにもかかわらず滞納を続けたままでいれば財産調査が始まります。

財産調査ではお金になりそうなものを持っているかどうかを調べられて、住民税分相当のお金があると分かれば財産が差し押さえられてしまいます。

なお、具体的に差押えの対象となるのは以下をご覧ください。

・預貯金
・給与
・自宅等の不動産
・自家用車
・生命保険
・自営業者の場合は売掛金などの債権

ただし、最低限の生活や仕事に必要なものについては差し押さえの対象にはなりません。

社会的信用が失われる可能性も

財産調査が行われる際に、勤務先や口座を持つ金融機関などに調査票が送付されます。滞納者本人の給料の金額や口座の情報を回答してくださいという、役所からの通知です。

そして、社会的立場として大きな信用問題にかかわる可能性も出てきますし、場合によってはその職場にいられなくなることもあるでしょう。

また、自宅に電話や訪問の督促も行われることから、その様子や会話の内容で近所の方などに滞納者であることを知られてしまうことがあるかもしれません。

差押え

差押えには裁判所の手続きなどが必要になりますが、住民税については例外で即差押えが可能です。

差押えの具体的例を確認しておきましょう。

銀行口座からの住民税強制徴収
・銀行口座に振り込まれたお金に対する払戻請求権(引き出す権利)を差押え
・差押え時点の預金が引き出せなくなる
・お金が入金になったと同時に住民税の滞納分が引かれる
・通帳を確認すると入金があったはずなのに「残高0円」の事態が起こる給与の差押え
・給与の4分の3が差押え禁止となり、最低限の生活に必要なお金は守られる
・会社を辞めることで給与の差押えは解除(失効)

こちらの例で見ると銀行口座が差押えとなる方が深刻な問題になるでしょう。

銀行口座は凍結されてしまいますし、給与だけでなくそれ以降に振り込まれたお金も滞納金額分に達するまですべて差押えられます。

家賃の支払いがあろうが公共料金の支払いがあろうが、そんなことは住民税の滞納には関係ありません。

住民税を時効で無効にすることはできない

住民税は原則、納付期限から5年間で時効になります。そして、時効が成立すれば自治体は住民税を徴収する権利を失うため住民税の支払い義務も同時に消滅するのです。

このことを知れば「5年間支払いをせずに乗り越えれば良いのでは?」と淡い期待を抱いてしまうかもしれません。しかし、この時効を成立させるのはとても困難なことになります。

その理由は「時効を停止して時効の完成を阻止する”時効の中断”という制度が用意されているためです。そして、この時効の中断が行われることで、それまでの時効期間がリセットされてしまい再度5年間を数えなおすことになります。

時効の中断を行うには、督促状の発行、催告、差押えなどを行うのみなので、役所が滞納の見落としをしなければ時効期間はリセットされてしまうでしょう。

住民税の滞納者にとって時効を期待しても意味を持たないのは残念なことですが、本来は支払うべきお金です。逃げることを考えずに、どうしたら支払えるのかを考えるようにしてください。

住所変更をしても住民税は追いかけてくる

住所変更さえしてしまえば住民税の督促はなくなると考えるかもしれませんが、そんなことはありません。新しい住所にちゃんと後から督促状が届くようになっています。

住民税の徴収から逃れたいのであれば住所不定の浮浪者になるくらいしか方法はありませんが、決して現実的ではありません。

住民税が支払えないときの対処法

住民税が支払えないとなったら、早い段階で役所の窓口に相談してください。

まずは納付期限が過ぎる前に相談することが重要となり、対応は役所によって異なるものの多くの場合は事情が認められることで分割や減免などの対応をしてもらうことが可能です。

仕事で役所の開所時間に相談に行けない方は、電話でも良いので分割納付ができるかどうかを問い合わせてみてください。また、休日相談を行っている場合もあるので、そのような機会を利用してみるのも良いかもしれません。

住民税が支払えない人の救済措置

住民税の支払いが経済的に困難な方は救済措置の用意があり、要件や期間などがあらかじめ細かく決まっています。

徴収の猶予

徴収の猶予とは、納税者が災害や病気などを理由に税金が支払えないと認められれば、1年間の範囲内で納税を分割納付にしてもらえる制度です。

具体的には、以下の要件に該当する方が猶予を認めてもらえる可能性があるでしょう。

1.納税者が震災、風水害、火災その他の災害を受けたり、盗難にあったりしたとき
2.納税者本人やその家族が病気にかかったり負傷したりしたとき
3.納税者が事業を廃止または休止したとき
4.納税者が事業で著しい損失を受けたとき
5.上記1から4までに類する事実があったとき
6.本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと

そして、徴収猶予が認められた場合の取扱いは以下のとおりです。

・新たな督促及び滞納処分(交付要求を除く)の執行を受けない
・すでに差押えを受けている財産がある場合、申請することで差押えが解除される場合がある
・徴収猶予が認められた期間中の延滞金の全部又は一部が免除

ただし、この制度は「住民税を毎月、分割で支払って良い」と認めてくれるものです。住民税の支払いが完全にストップすることはないので注意してください。

もし、毎月の分割が厳しい場合には、隔月での支払いや、最長2年間にわたっての分割が認められるケースもあります。徴収の猶予は、支払いがなくなることはないものの、少額ずつ支払っていけるので経済状況が圧迫された方には有難い制度と言えるでしょう。

さらに、この猶予期間中の延滞金についても全額または一部が免除になるため、延滞金を節約する意味でもできるだけ早く申請を行うことをおすすめします。

換価の猶予

換価の猶予とは、1年間の範囲内で差押えたとなった財産の売却を待ってもらったり、差押えを解除してもらえたりする制度です。

この猶予を認めてもらうには、以下の要件に該当する必要があります。

1.差押えた財産を換価すると、事業の継続または生活の維持ができなくなるとき
2.財産をすぐに換価しないほうが、滞納金や税金を徴収しやすいとき
3.納税者に「必ず納税します」という誠実な意思が認められるとき
4.換価の猶予を受けようとしている税金以外に滞納がないとき
5.その他、納税する地方団体の条例で認められるとき

これらの要件からわかるように、換価の猶予とは商売道具などの生きるために必要なものを差押えられた場合に「これがないと住民税も支払えない」という意思を申請することです。

その代わり、住民税は絶対に支払うという意思が必要になり、そのために以下のようなチェック項目があります。

・これまでに納税をきちんとしてきたか
・過去に猶予を受けている場合、分割納付をきちんと行っているか
・経費を節約しているか
・借入れがあれば返済額の減額のための努力は見られるか など

換価の猶予を受けたい方は、まずこれらのことが守られているかどうかをチェックしてください。

さらに、換価の猶予は納期限から6ヶ月以内に申請しないとなりませんから、できるだけ早く行動するようにしましょう。

住民税の減免

住民税の減免とは特別な理由があることが認められれば、住民税の減額や免除が受けられる制度です。

納税する地方団体によって要件は異なるものの、災害の被災者や生活扶助を受けている人、失業した人などが適用対象となるのが一般的になります。

生活が苦しいことを理由に住民税の減免をしたい方は、税務所などに相談してみると良いでしょう。

その他の対処方法

猶予や減免を検討する前に、できることがないのかを検討することも大事です。

具体的にどんな対処方法があるのかについて以下でまとめていきます。

家族・親族・知人に相談

住民税を期日までに支払わないことで延滞金が発生し、放置すればさらに支払いは困難になるでしょう。そして、そのままにすることで家族に迷惑がかかる場合もあります。

そうなる前に家族や親しい親族、または知人などに相談してみても良いのではないでしょうか。一時的に納税金額を援助してもらえそうであれば、返済の約束をしっかりと交わしたうえで借入れを行うようにしてください。

ただし、返済をしなければ家族や親族であっても関係が修復できなくなる場合もあるので、責任のある行動は絶対になります。

キャッシング・カードローンの利用も検討

住民税の支払いについて、役所に相談しても解決が難しい場合はキャッシング・カードローンの利用を検討してみるのも良いかもしれません。

無計画な借入れは危険ですが、中には30日間無利息キャンペーンが行われていたり、比較的安い金利で利用できたりするローンもあります。

これらを上手に利用すれば住民税の支払いの問題が何とかなる可能性は十分にあるでしょう。どうしても支払いに困った場合は利用を検討してみてください。

副業を始めて収入を得る

毎月得られる給与だけでなく、さらに副業を始めることで金銭面以外に精神面の安定にもつながりやすいでしょう。

借金の返済に追われていると、お金の心配だけでなく何かに追われている感覚から気持ちの余裕はどんどんなくなってしまうものです。

そこで、副業で収入の幅が増えれば、住民税の支払いも焦ることなくできるのではないでしょうか。

放置は絶対にしない

住民税の支払いがたとえ困難だったとしても、そのまま放置するのは最も危険な対処方法になります。期日を経過すれば督促状が必ず届きますし、延滞金の発生に財産の差押えなどが起こり、取り返しのつかないことになってしまうでしょう。

何かしらの対処方法を見つけて支払える努力をするようにしてください。

借金がある場合は債務整理

住民税を支払えない理由が借金なのだとしたら、債務整理を検討するのも方法の一つです。

借金があって支払いができないことには、役所の方も対応できかねないことがあります。そして、すでにそうなっている場合は借金の返済をこれ以上継続するのも厳しい状況になっているはずです。

もしも今年は運良く住民税の支払いが何とかなったとしても、来年も同様に住民税の支払い義務は発生します。結局、毎年悩まされることになって、いつまでも借金返済に追われて過ごすだけになるでしょう。

債務整理には自己破産、任意整理、特定調停、個人再生などがあります。

しかし、覚えておきたいのは債務整理を行ったとしても、税金は対象になりません。その他にも国民年金保険料や健康保険料、下水道料金など公的料金の滞納は債務整理の対象にすることはできないのです。

たとえば、自己破産=借金がゼロになるのでは?考える方も多いかもしれませんが、税金は借金ではないので免責されません。あくまでも借りたお金のみが対象になります。

まとめ

住民税の支払いが困難なことを理由に未払いになってしまった場合にどうなるのかを知り、そのうえで利用を検討したい救済措置について解説しました。

住民税を支払わないことで、給与や大切な財産を売却される可能性が出てきます。また、督促状などが届けば中身を見るのも嫌になって、そのままズルズルと未払いのままになりがちかもしれません。

しかし、救済措置を利用するためにもできるだけ早く行動に移すことをおすすめします。

「とことん放置してしまえ」「住民税を支払わないくらいで死ぬことはない」などの考えは後悔につながる場合もあるので、絶対にしないようにしましょう。

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