積立型の投資信託に人気が集まる理由|メリット・デメリットから検証

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資産運用の1つである「投資信託」の購入方法には、「一括購入」と「積立購入」の2種類が存在します。投資信託をはじめたばかりの方は、どちらの購入方法で投資を続けていくべきか、頭を悩ませることもあるでしょう。

「投資信託」をはじめたばかりの方や、はじめようと考えている方におすすめしたいのが、「積立購入」での資産運用です。

今回は「投資信託」の「積立購入」にスポットを当てて、「積立購入」の特徴やメリット・デメリット、「積立購入」の具体的な開始手順を解説していきます。

積立型の投資信託が注目を集めるワケ

株式投資やFXなどと比較して、「投資信託」は多くのリターンが望めない反面、リスクを抑えられる投資方法です。特に毎月一定額を購入していく、「積立購入」の「投資信託」は手間をかけずに資産運用が行え、株式投資やFXと比較して、投資をはじめるにあたり多くの資産を必要としません。

「積立購入」の「投資信託」は、毎日の仕事や家事、育児が忙しく、資産運用に費やせる時間がまとまって取れないという方に適した資産運用と言えるでしょう。高いリスクを負わずに少ない手間で資産運用できる点が、積立型の「投資信託」が注目を集めるワケです。

積立投信の特徴

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それでは「積立型の投資信託(以下、積立投信)」の特徴を解説していきます。「積立投信」の主な特徴は以下の3つです。

  • 特徴①:頻繁な売り買いをする必要がない。手間をかけずに資産運用ができる
  • 特徴②:投資信託は株式や債券、REIT(リート:不動産投資信託)などの金融商品が合わさったコース料理
  • 特徴③:分散投資によるリスク軽減が期待できる

それではそれぞれの特徴について、詳しく解説してきましょう。

特徴①:頻繁な売り買いをする必要がない。手間をかけずに資産運用ができる

投資と耳にすると、価格の変動を常にチェックし、頻繁に売り買いをする姿がイメージされますが、「積立投信」に限ってはそのようなことはありません。基本的には毎月購入するファンド(金融商品)と購入する金額を設定したあとは、特にしなければならないことはありません。むしろ頻繁に売り買いをすると売買時に発生する手数料がかさみ、運用成績が悪くなってしまいます。

仕事や家事、育児が忙しく、資産運用に時間を費やせないという方におすすめしたい投資方法です。

特徴②:投資信託は株式や債券、REIT(リート:不動産投資信託)などの金融商品が合わさったコース料理

「投資信託」は株式や債券、REITなどの金融商品を組み合わせたものです。どうして「投資信託」を購入するだけで、株式や債券に投資ができるかというと、投資家から集めた資金を「投資信託」のファンドマネージャーが投資家のかわりに、株式や債券の売り買いをしているためです。

「投資信託」の大まかな流れは次の図の通りです。

投資信託の仕組み

【出典:一般社団法人 投資信託協会、そもそも投資信託とは?

「投資信託」を料理に例えると「コース料理」が適当でしょう。一方、株式投資は一品ずつ自分でメニューを選ぶ「アラカルト」に例えることができます。

特徴③:分散投資によるリスク軽減が期待できる

「卵を1つのかごに盛るな」という投資の世界ではあまりにも有名な格言にあるように、投資を行うときには分散して行うのが鉄則です。卵を1つのかごに集中して乗せた結果、かごを落としてしまうと、すべての卵が割れてしまいます。

投資でも同じように分散せずに集中して投資してしまうと、投資先での資産運用が失敗した場合、リカバリーができなくなる可能性があるのです。その点「投資信託」は、ファンドマネージャーが選んだ様々な種類の金融商品が組み込まれているため、リスク軽減が期待できます。

「投資信託」のファンドによっては、株式の比率が高いものや債券の利率が高いもの、国内の株式・債権のみを組み入れたものなど、金融商品の種類や地域別に異なる特色がありますので、自分の投資スタイルと相談し、どのファンドに投資を行うかと決めるようにしましょう。

積立投信のメリット

投資信託,積立4

「積立投信」に限らす、金融商品にはメリット・デメリットが必ず存在します。効果的な資産運用を行うためにも、「積立投信」のメリット・デメリットを事前に確認しておきましょう。まずは「積立投信」のメリットから解説していきます。

「積立投信」には3つのメリットが存在します。具体的には次で紹介するメリットです。

  • メリット①:少額からでも資産運用がスタート可能
  • メリット②:ドルコスト平均法により、リスク軽減を行える
  • メリット③:複利効果による恩恵が得やすい

それではそれぞれのメリットについて、解説していきます。

メリット①:少額からでも資産運用がスタート可能

「積立投信」はファンドによっては、最低100円からでも購入することができます。缶コーヒー1本程度を買うのに必要なお金で、資産運用がはじめられるのです。「積立投信」と同じ資産運用の1つである株式投資では、このような少額からでは資産運用をはじめることはできません。

株式投資では購入できる最低株数(単元株数と言います)が銘柄ごとに決められています。例えばA株式会社の株価が1,000円で、単元株数が100株とします。A株式会社の株を取得するには、最低で次の金額が必要なります。

  • 1,000円×100株=100,000円(10万円)

上の計算式でもおわかりいただけたように、株式投資にはある程度のお金が必要になるのです。反面、少額からでも資産運用ができる「積立投信」は、限られた収入の中で資産運用したいという方に適しています

メリット②:ドルコスト平均法により、リスク軽減を行える

「ドルコスト平均法」とは一括で購入するのではなく金融商品を一定期間、定額で購入し続ける購入方法の一種です。株式やFXのように短期間に高いリターンを期待する投資には向きませんが、長期保有が原則である「投資信託」に適した金融商品の購入法と言えるでしょう。そして毎月一定額を購入する「積立投信」は、「ドルコスト平均法」そのものなのです。

なぜ「ドルコスト平均法」による「投資信託」の購入がリスク軽減につながるかというと、毎月一定額の購入となるため、基準価格が上げ相場では購入できる口数が少なくなり、逆に下げ相場では購入できる口数が多くなります。投資しているファンドの基準価格が下がったからといって、悲観することはありません。なぜかというと基準価格が下がった分、多くの口数を購入できるためです。

次に簡単なモデルケースを設定して、「ドルコスト平均法」と毎月同じ口数を購入する「定量購入法」とでの評価額の違いを確認します。

ドルコスト平均法

※1 毎月1万円ずつ購入
※2 毎月100口ずつ購入

上表でもおわかりいただけるように、「ドルコスト平均法」の方が少ない資金で多くの「投資信託」を購入できます。

「ドルコスト平均法」での金融商品を購入する際に1つ注意しなければならないことがあり、「ドルコスト平均法」は、金融商品を購入する際の万能的な手法ではないという点です。「ドルコスト平均法」では一定期間、分割して金融商品を購入するため、その都度手数料が発生しますし、「ドルコスト平均法」の性質上、投資を続けるのにある程度の期間が必要になります。

「投資信託」での資産運用には、「ドルコスト平均法」が適しているということを胸にとどめておきましょう。

メリット③:複利効果による恩恵が得やすい

「積立投信」では長期間、投資を続けていくことになります。そして長期間の「投資」では複利による恩恵を得ることができます。「複利」とは発生した利子を元本へ戻し、投資を続けることです。利子を元本へ戻さず、その都度受け取る場合は「単利」と呼びます。10万円を元本にし、3%の利子を「複利」と「単利」で運用した場合、次のようになります。

複利計算

運用年数が5年にもかかわらず、「複利」と「単利」では利子に差が生じていることが確認できます。上表のように「複利」による恩恵により、雪だるま式に利子が増えていきますので活用しない手はありません。可能であれば、「投資信託」で発生した分配金は再投資することをおすすめします。

積立投信のデメリット

投資信託,積立5

続いて「積立投信」のデメリットについての解説です。「積立投信」のデメリットは、次の3つが挙げられます。

  • デメリット①:短期間で運用成績を上げるのが難しい
  • デメリット②:元本割れの危険性がある
  • デメリット③:売却益や分配益が課税対象になる

各デメリットについて、確認していきましょう。

デメリット①:短期間で運用成績を上げるのが難しい

投資信託は定期的に売り買いを行うと手数料が発生し、運用成績を下げる可能性があります。またメリット③で解説した「複利」による恩恵を得るためにも、長期間の運用が必要になります。株式やFXとは異なり、「投資信託」での資産運用では、短期間での好成績を達成するのが難しいでしょう。

デメリット②:元本割れの危険性がある

「投資信託」に関わらず、投資による資産運用には「元本割れ」の危険性があります。100万円の資金を元手に「投資信託」をはじめたとして、評価額が100万円未満になる可能性があります。

私たちが日頃から利用している銀行の「普通預金」や「定期預金」では一預金者につき1,000万円までの「元本保証」がされています。「元本保証」に関して、「投資信託」は「普通預金」や「定期預金」とは大きく性質が異なる点に注意が必要です。

デメリット③:売却益や分配益が課税対象になる

「投資信託」を売却したときの価格が、取得時の単価より上回っていたときに発生する「売却益」は課税対象となります。原則的に発生した「売却益」に対して、一定額の税金を支払わなければなりません。また「投資信託」の運用で発生した、利益の一部を投資家へ還元する「分配益」も課税対象となっています。

「売却益」や「分配益」にかかる税率は20.315%です。

「売却益」や「分配益」が発生した場合には投資家が納税する必要があり、「確定申告」を行わなければなりません。もし「確定申告」を行うのが手間であれば、「特定口座」を利用するとよいでしょう。

「特定口座」には「源泉徴収あり」または「源泉徴収なし」の2種類が存在し、「源泉徴収あり」にした場合に限り、「投資信託」を販売している会社が「売却益」や「分配益」から税金を計算し、税金の徴収を行ってくれます。

ただし「売却益」や「分配益」が課税対象となるデメリットに関しては、個人投資家向けの税制優遇措置である「つみたてNISA」を活用すれば、一定期間に発生した「売却益」や「分配益」に税金がかからなくなります。非課税になる期間や投資枠に制限があるものの、長期間、少額で「積立投信」を行う方には有用なものですので、活用するとよいでしょう。

積み立てを開始する手順・方法

投資信託,積立6

「積立投信」の特徴やメリット・デメリットが確認できたところで、具体的に「投資信託」の積み立てを開始する手順を解説していきます。「積立投信」をはじめるにはいくつかの手順が必要になりますので、1つずつ着実にこなしていきましょう。

1、投資信託の運用方針を定める

「投信信託」を毎月積み立てで購入するあたり、ひと月にどの程度の金額を投資にまわせるか、また投資を継続するため際に、1年間でどの程度までの損失に耐えられるか(以下、リスク許容度)を決めましょう。特に投資を続けるために、「リスク許容度」は熟慮し決める必要があります。

2008年に発生した「リーマンショック」などのような大暴落が発生したときに、投資を続けるために必要な資産が底をついてしまい、投資が継続不可能になってしまっては元も子もありません。最悪の事態に備えるという意味合いで、「リスク許容度」は投資を始めるうえで重要な要素です。なお「リスク許容度」は個人個人で異なり、具体的に〇〇万円といった金額の方もいれば、〇〇%という百分率で設定している方もいます。

2、積み立てを行うファンド(金融商品)と金額を決める

「投資信託」の運用方針が決まったら、積み立てを行うファンドと金額を決めましょう。積み立てを行うファンドに関しては、以下のサイトから情報を得ることができます。

  1. モーニングスター
  2. 投信まとなび

購入するファンドを決める際には、運用方針で定めた「リスク許容度」に見合うものを選ぶようにするのがポイントです。積み立てを行う金額に関しては、「投資信託」の運用にまわせる金額から算出するとよいでしょう。

3、インターネットでの積み立てがおすすめ

積み立てを行うファンドと金額を決めたら、「投資信託」の売買を行うのに必要な口座を開設する必要があります。おすすめなのがインターネットでの口座開設です。銀行や証券会社の窓口で口座を開設するには平日の15時までに申し込みをしなければなりませんし、銀行や証券会社の窓口では購入予定のないファンドを勧められます。

銀行や証券会社の窓口で勧められるファンドが、自分で定めた運用方針と合致することは稀です。銀行や証券会社で「投資信託」の販売を行っているのは、「投資信託」を売買するプロであり、「投資信託」を運用するプロではないということを胸にとどめておきましょう。

もしインターネットでの口座開設を行うのであれば、次のネット証券会社がおすすめです。いずれのネット証券会社も取り扱っているファンドが多いことがおすすめする理由です。

  1. SBI証券
  2. 楽天証券

4、口座開設の手続きを行う

インターネットでの口座開設を行うのであれば、口座開設の申し込みフォームから必要事項を入力します。口座開設には運転免許証などの身分証明書の他に、マイナンバー入力が必要になります。マイナンバーが確認できる「通知カード」や「マイナンバーカード」を用意しておきましょう。

後日、口座開設の手続きを行ったネット証券会社から、入力した項目が記載された申し込みが郵送先に届きます。入力した項目に不備がないかを確認し、必要箇所に捺印したのちに返送することになります。

口座を開設するネット証券会社によりますが、1~2週間ほどでネット証券会社から口座開設のお知らせが届きます。その後は開設した口座に入金を行い、積み立てによる「投資信託」の運用を開始することができます。

積立投信の簡単シミュレーション

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「積立投信」について理解を深めることができたものの、実際にどの程度の金額が積み立てられるか気になるところです。「投資信託」の運用結果をシミュレートしたいのであれば、インターネットで「投資信託 シミュレーション」等のキーワードで検索を行うとよいでしょう。当該キーワードで検索を行えば、毎月の積立額や積立年数などの必要項目を入力することにより、「投資信託」の運用結果をシミュレートしてくれるサイトを見つけられます。

例えば、以下の条件で「投資信託」を運用したとし、運用結果をシミュレートしてみましょう。

  • (1)毎月の積立金額:1万円
  • (2)積立期間:10年
  • (3)リターン:年利10%

上記のような条件の場合、次のような結果になります。

  • 【最終積立額】204万8450円(元本:120万円)

もちろん実際の運用結果がシミュレーション通りにはいきませんが、「投資信託」を運用する上でのイメージをつかむ助けになってくれるでしょう。

積立投信のまとめ

「積立投信」の特徴やメリット・デメリット、積み立てを行う手順について解説してきました。「積立投信」について理解を深めることができたとともに、「投資信託」を積み立てて行うために必要な方法を確認できたのではないでしょうか。

「積立投信」は長い時間をかけて、資産を増やしていく資産運用です。基準価格に一喜一憂することなく、自分で定めた運用方針に沿って、「積立投信」を行いたいところです。

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