円安が進むと原油の価格、ガソリン代が上昇?円高円安と原油価格の関係をわかりやすく解説。

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投資を行う方法は、株式投資、FX、金プラチナ、不動産、商品取引など様々な方法がありますが、これらの金融商品は互いに影響を与え合って価格を左右していきます。

とくに、これらの様々な金融商品の中でも最も市場に与える影響力が大きいといわれるのが原油の価格です。なぜなら、原油から精製されるガソリンや灯油などの燃料は私達の暮らしに欠かせないものである上に、供給できる国が限られているからです。

そんな中、ともすると原油の供給不足や価格の高騰は、世界中の経済に大きな不安を与え、時にはそれを引き金に経済恐慌に陥ることもあります。

一般的には、原油の価格は円高円安の動きと深く関係しているのですが、実際に例えば円安が進むとどうなるでしょうか?

今回は、円高円安が原油の価格に与える影響、そして原油の価格が世界経済に与える影響を解説していきます。ぜひ、商品先物、原油、ガソリンへの投資を行う上で参考にしてみて下さい。

円高円安と米ドル

原油やガソリンが、もし、ある日足りなくなってしまうと世界はどうなるでしょうか。

特に原油から精製される、ガソリン、重油、軽油などの燃料は世界中で毎日繰り返されている食料の運送に使われています。

燃料が不足することで、あらゆる運送業の業務が停滞すれば、ただ単にビジネスが停滞するだけでなく一般消費者の生活自体を不安に陥れてしまいます。

要は簡単に飲食料品が入手できなくなってしまうわけです。

ですから、原油の総生産量やが現在の価格が、世界市場を大きく左右してしまいます。

原油は米ドルが基盤

原油は基本的に米ドルで取引きされており、アメリカの主要取引所での価格がその他の国の原油相場の指標となります。

そう聞くと、一見、米ドルの価格が下がれば原油の取引量が増幅し、原油価格も高まりそうな気がしてしいまいます。

しかし一概にもそうとは言えず、近年ではむしろアメリカ経済が力をつけ、米ドルが強い位置にある方が円滑に原油取引が活性化する傾向にあるのです。

ただ、供給不足などで極端に原油価格が高騰してしまうと、経済は大きな不安からネガティブなパニック状態に陥ってしまいます。

つまり、米ドルの安定性や将来性、その他の通貨との良好なバランス、世界経済への期待が高まることで、原油価格も上昇する傾向にあるのです。

米ドルは世界経済のシンボル

そこで、円高円安と米ドルの関係を改めて確認していきましょう。

原則として、円高になると、国内の主要株の株価が下がり始めます。円高とは同時にドル安を意味していますが、ドル安になることで、まず世界経済はどのように動くでしょうか。

アメリカ株とドル安

輸出業が経済を支えている日本とは異なり、アメリカは輸出・輸入ともに需要が高い国で、基本的にはドル高が進むと株高になる傾向にあります。

円安ドル高の状態が日本、アメリカ双方にとって、良好な経済状態にあることを意味しています。

ドル高であることは、日本だけに限らず、あらゆる国にとって経済が安定して良好な状態にあることを表しているのです。

ドル安が進むと・・・

何かのきっかけで、アメリカに対する不安が高まり、ドルの需要が低下するとドルの価格が下がり始めます。

すなわち、円高ドル安の状態になると、アメリカの株式、ダウジョーンズ、ナスダックの株価も総じて下がってしまう傾向にあります。

なぜなら、最強であるべき米ドルが低下することは、リードすべき存在であるアメリカの主要企業に対する不安材料となってしまうからです。

アメリカ経済への不安が高まると・・・

アメリカ経済への不安が高まると、世界中の様々な金融商品が売られはじめます。つまり、景気が悪くなっていくのです。

これまで余計に購入(仕入れ)していたものを経費節約する動きが強まっていきます。そのような動きが連鎖反応を起こし、経済が停滞してしまうのです。

そこで、参考までに、ドル/円の動きと日経平均株価、ダウジョーンズの平均株価を簡単に比較しておきましょう。

ドル/円の価格の推移

※130日間のドル/円

出典:野村アセットマネジメント 参考リンク

では次に、ドルの動きとダウジョーンズの平均株価の動きを見ておきましょう。

※130日間のダウジョーンズ平均株価

上記2つのグラフのように、ダウジョーンズの株価とドルの価格は似たような動きを見せる傾向にあります。

もちろん、株価と為替が動く要因は、政治、地理的要因、その他金融市場など様々な要素がからみ合っていますので、一概に株価と為替のみを結びつけることはできませんが、1つの目安とすることはできます。

※130日間の日経平均株価

引き続き、今度は日経平均株価の動きも見ておきましょう。

ドル/円の動き、ダウジョーンズの動き、そして日経平均株価の動きには深い関連性があることが確認できます。

以上のことからも、円安に向かうとダウジョーンズ平均株価や日経株価の総じて上昇する傾向にある、ということができます。

※投資をするなら抑えておきたい円高円安の基礎知識についてこちらでご覧いただけます。

原油の価格

それでは、原油の価格と円高円安の関係を導きだしていくために、まずは原油価格とはどのように決められているのかを解説していきます。

需要と供給

原油の価格を決める一番大きな要素は世界規模での需要と供給です。その時の市場の需要と供給のバランスによって変動していきます。

  • 供給量に対して、需要が高くなれば原油の価格は上昇
  • 供給量に対して、需要が低くなれば原油の価格は低下
  • 経済が活性化してくると原油の需要が高まる
  • 経済が停滞してくると原油の需要は低下する
※近年では、自然エネルギーを活用した燃料が普及し始めていることから、一旦、原油の需要と供給のバランスが崩れ、原油の価格は3分の1以下まで暴落した期間がありました。

現在はOPECとNon-OPECによって減産調整がされています。さらに、トランプ大統領のイラン制裁などから、時おり原油価格は高騰することもあります。

原油価格の指標

次に原油価格の指標となっているのが、原油の主要市場における取引価格です。

世界の原油市場は、大きく3つの地域に分かれています。

  1. 北米
  2. ヨーロッパ
  3. アジア

それぞれの地域にて、主要となる取引所や原油の種類をご説明していきましょう。

北米

  • NYMEX(ニューヨークマーカンタイル取引所)
  • CME(シカゴマーカーンタイル取引所)

カナダを含む北米では上記2つのマーケットで取引される価格が、世界的な原油の取引額を最も左右しているといわれています。

原油の種類

  • WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)
  • ブレント(イギリス産)
  • ドバイ(UAE)
  • アラビアン・ライト(サウジアラビア)
  • アラビアン・ヘビー(サウジアラビア)
  • シェールオイル(USA)

などの原油が主に取引されています。

ヨーロッパ

ヨーロッパーの主要取引所はイギリスの、

ICE Futures (旧・ロンドン国際石油取引所)

になります。ここでは、主にイギリス産のブレントオイルが取引されていますが、中東ブランドやWTIなども同時に上場しています。

アジア

アジアの主要取引所はシンガポールにある、

SMX(シンガポール・マーカンタイル取引所)

です。ここでの価格が、日本をはじめアジア各地での原油の取引価格の指標となっています。SMXは、北米、ヨーロッパの原油価格の影響を強く受けています。

国内の原油取引価格

アメリカの商品先物取引所をはじめとする3つの原油主要取引所の価格は、そのまま国内の原油取引価格に反映されています。

国内の商品先物取引所は、

TOCOM(東京商品取引所)

になります。

円高円安と原油の価格

ここまでは、円高円安と世界経済の関係、そして原油価格の指標について解説してきました。

では、ここから円高円安と原油価格がどのように関係しているのかを検証していきたいと思います。

円安ドル高が、世界経済が良好であることのサインであることを述べてきました。では、同時に原油の価格も円安が進むことで上昇が期待できるのでしょうか

最近の原油価格と為替

では、最近の原油価格が急落してしまった場面から、どのように為替レートと関係してきているのかを見ていきましょう。

直近で原油価格が激しく急落し始めたのは、2018年10月初旬のことです。それから12月末までの約2カ月にかけて原油価格は下がりきってしまいます。

当時、米中の終わらない貿易戦争、サウジアラビアにおける米ジャーナリスト殺人事件、そしてアメリカとイランの対立が米ドル、米株の価格をかなり深刻に下げてしまっていました。

それぞれ、通貨、原油の2つの視点でチャートを比較していきたいと思います。

円ドルと原油価格の推移

※2018年以降のWTIの価格

※2018年以降の円/ドルの為替チャート

両者の価格チャートを比較してみると、2018年前半には相反する動きも見せていますが、それ以降は、ほぼドルの上昇に応じて原油価格も上昇しているのを見ることができます。

本来、原油価格は安い方が国内では好ましいのだが・・・

国内では、私達の生活に必要不可欠な原油のほとんどを原油主要生産国である中東から輸入しています。

原油の取引は、米ドルで行われるため、本来なら米ドルの価格が下がり円高の方が好ましいと言えるのですが、円高になると輸入を主要とする企業は売上高が為替差益によって大きく減少するため、仕入れる原油量も減少する傾向にあるのです。

円安に向かい、景気が良くなってくると、原油の輸入量も増え、それに支払うためのドルの需要も高くなり、ドル高を促進させるわけです。

原油の価格とガソリン代

日常生活においては、原油の価格と言われても何だか自分には無関係のもののように聞こえてしまいます。

国内で消費される原油とは主に車の燃料に使われるガソリンです。ガソリン代と原油価格は密接にかかわっているので、ガソリン代の動きを見ていくことで、原油の価格がどのように私達の生活に結びついているのかがわかりやすくなります。

原油価格が上がると?

では、実際に原油価格が高くなると、ガソリン代はどれくらい値上がりするのでしょうか。

原油先物取引を代表する証券会社フジトミの分析を参考にしたいと思います。フジトミの分析では、原油価格から3、4週間前後遅れてガソリン価格は推移しているとのことです。

出典:フジトミ 参考リンク

というこは、原油の価格がわかれば、将来のガソリン価格がある程度読めるということになります。

ガソリン代が原油価格を即時に反映しない理由としては、一般消費者が購入するガソリン代の約半分以上が税金であることが要因になっているとの見解です。

ガソリン代の半分以上を税金が占めているために、原油価格がダイレクトにガソリン代に反映されづらく、実際の価格の上昇までに時間を要しているのです。

ガソリン代と消費者物価指数

では仮に、円安ドル高が進み、経済は好転し、ダウジョーンズの株価は上昇、日経平均株価も上昇しているとします。

当然、このような時には国内の景気もよくなり、それに比例して原油の需要高まり、原油価格も上昇したとします。

先述したように、原油価格が上昇すれば、ガソリン代がやや遅れて上昇することをご説明いたしました。

しかし、原油価格が上昇し続けると、物価消費者指数は高くなり、そうなることで最終的には経済に悪影響を与えてしまう恐れがあるのです。

消費者物価指数

消費者物価指数とは、全国の世帯(消費者)が購入するモノやサービス等の価格の変動を測定する数値になります。

消費者物価指数を算出することで、過去のデータと比較して、物価の上昇率や低下率を数字に表すことが可能となります。

物価とは

物価は、一般消費者のお金の回りがよくなると上昇し、逆にモノを買う人が少なることで低下する傾向にあります。

物価の変動率を表す消費者物価指数は、現在の経済を図る測定計の役割も果たしており、非常に重要な指標の1つでもあるのです。

ガソリンは必要不可欠なもの

これは、冒頭でも軽く触れましたが、ガソリン代の上昇が続くと、ガソリンは私達の生活に欠かせない輸入品であることから、一般消費者にとって不安要素となってしまうのです。

例えば、生活に必要な電気や水、飲食料品などは国内でも何とか供給していくことは可能です。でも原油は中東から輸入しなければ入手することができません。

つまり、好景気、良好な市場がもたらす、円安・原油価格の高騰は、消費者物価指数を高めつつも、それは、やがて消費者意欲を低下させ、不景気やデフレーションのきっかけを作りかねないのです。

ですから、原油価格の上昇や高騰が続いた時は、「円高・株安」「ドル安・米株安」「世界経済の停滞や鈍化」のサインと見ることもできるのです。

であるからして、世界のあらゆる金融市場は互いに影響を与えながら上がったり下がったりを繰り返し、1つのサイクルで動いていくのです。

※マーケットの変動要因に関する記事が以下からご覧いただけます。

円高円安と今後の原油価格

円高円安の動きと原油価格の動きは非常に密接に関わっていることを述べましたが、これまでは全く相反する動きを見せることも度々ありました。

しかし、今後はますます、円高円安と原油価格は相関性が高くなっていくといえます。

アメリカと原油

それは原油に対するアメリカの主導権です。

アメリカは確かに原油取引において主要の市場となるのですが、これまでは、あくまでも原油主要生産国から一歩遅れた場所に位置していました。

つまり、世界の原油市場を支配していたのは、とどのつまりは中東だったのです。

世界経済をいかにリードするアメリカといえども、原油の主導権はあくまでも中東が持っていました。

シェールオイルの開発

しかし、2018年に入ってから徐々にアメリカは原油における主導権を握りつつあります。その要因の1つとなっているのが、アメリカ国内で生産されるシェールオイルの開発です。

シェールオイルの生産量は、中東の原油生産量に追いつきつつあるのです。原油関連のアナリストの中には、今後はアメリカ原油が世界首位になると、予想する人もいます。

さらに、アメリカは原油価格のバランスをとるためにOPEC、Non-OPECの減産調整を要請する立場にもあります。こう言っては語弊があるのですが、アメリカは自国にとって有利な状況を作りやすくなります。

今回のように、イラン原油の輸入制限などが進めば、必然的にアメリカのシェールオイルの需要は増幅し、アメリカ原油の価格は上昇しやすくなります。

そうなれば、これまで以上に円高円安と原油価格は似たような動きを見せる確率が高くなっていくでしょう。

原油の需要は永遠ではない

しかし、20年、30年後と考えた時には、新しいエネルギーの時代がやってくることも考慮しておく必要があります。

それは、現在でもすでに国内では開発が進んでいる自然エネルギーと電池による燃料供給です。この新しいエネルギーが、いわゆる次世代と呼ばれる新時代を支配していくことが以前から予想されています。

それが何年後になるのか、どこの国が主要生産国となるのか、現時点では明確にはできませんが、通貨の動きや原油価格にも大きな変化を与えることは間違えありません。

※原油先物取引の投資方法、メリットデメリットに関する記事がこちらでご覧いただけます。

まとめ

今回は、円高円安と原油価格の関係、さらに原油価格が世界経済に与える影響などを解説していきました。

様々な金融商品がある中でも、原油価格はとくに、為替レートやその他金融市場の動きと深く関わっていることがわかりました。

原油価格が上昇に向かうことは、米ドルの上昇や米ドル株の上昇、そして世界経済が良好な状態であることを意味しています。

しかし、上昇や高騰が続くことによって、それが消費意欲を低下させる引き金にもなりかねないこと、経済への不安が高まるきっかけになることも、ご説明いたしました。

円高円安や株価の動きを読むにあたって、アナリストの中には原油価格を基盤に分析を行う人もいます。もちろん、最後にご説明したように、今後は原油にとってかわる新しいエネルギーの存在も軽視することはできません。

しかしながら、まだまだ原油が世界経済に与える影響力は非常に多大です。ぜひ、今回の記事が、原油投資を成功させるためにお役に立てれば幸いです。

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