介護保険制度の生みの親、介護保険法!過去の改正ポイントを重点に介護保険法の歴史を振り返ろう!

歳をとると、誰でも必ず経験する介護問題

高齢化社会にますます拍車がかかっている日本人にとっては、介護と聞くとお金がかかる、肉体的にも精神的にも辛いなどマイナスイメージを持ってしまいがちです。

しかし、そんな介護問題を緩和するために日本には、「介護保険制度」という制度が存在しています。

40歳になれば全員、介護保険に加入し保険料を支払い、いざ介護が必要になった時には、様々なサービスを受ける事ができる制度が介護保険制度です。

そして、この介護保険制度は、「介護保険法」という法律が施行された事により、誕生した制度になるのです。

今回は、介護保険制度の生みの親、「介護保険法」の過去の改正ポイントをおさらいしながら、介護保険法の歴史を振り返っていこうと思います。

1.介護保険法とは

まず介護保険法の歴史を振り返る前に、介護保険法とは一体何なのか、どういった法律なのかについてお話していきます。

高齢化社会の日本のために作られたのが、介護保険法である

現在の日本では、少子化問題の影響を受け、高齢化社会が日々進んでいます。

高齢化社会とは、簡単にいうと子どもが少なくなり、65歳以上の高齢の方の人口が増えていく現象を指します。

人間歳をとると、どこか体に異常が出てきてしまい、車いす生活や認知症など誰かの介護がないと生活できなくなってしまう恐れがあります。

こういった介護を必要とする人口が、今後将来的にますます増えていく事を懸念して作られて法律が、「介護保険法」になります。

介護を必要とする人たちのために、施設を設けたり、介護の利用サービス料の負担を軽減したりと、介護保険法では、様々な介護についての取決めが記載されています。

介護保険法は、1997年に制定され、2000年に施行されています。

そして2000年に施行されてから、2005年・2012年・2018年と計3回の改正が行われています。

介護保険法は、より良い介護生活が送れるよう、日々進化し続けています。

40歳になったら、介護保険への加入が義務付けられている

介護保険法では、介護保険についての定めが記載されています。

介護保険とは、満40歳以上の人は必ず加入しなければならない保険で、将来自分たちが介護が必要になった時に、介護サービスを受けるために保険料を支払い、その支払われた保険料をプールさせようというものです。

介護保険の財源は、国民が支払う保険料と国(税金)が1:1の割合で成り立っています。

介護保険は、年齢によって区分が異なり、

  • 65歳以上→第1号被保険者
  • 40歳~64歳→第2号被保険者

の2区分に分かれます。

介護が必要になり、介護保険を利用したくても保険料の支払いをしていない39歳以下の人は、介護保険を利用する事ができないので注意しましょう。

保険料は、会社勤めの人は、給料から天引き、年金で生活している人は、年金から天引き、または納付通知書によって支払う形になります。

いざ、介護が必要になった時に、要介護認定を受ける事により、1~2割負担で介護サービスを受けられる、介護する方もされる方も負担を少しでも減らして、高齢者の方も安心して生活できるように、そして介護者(親族等)の負担を減らすという目的で介護保険が存在しています。

2.介護保険法~2005年改正ポイント~

介護保険法が施行されて初めて改正されたのが、2005年(平成17年)になります。2000年に介護保険法が施行されてから5年、2005年では一体どんな点が改正されたのでしょうか?

1.介護サービスを利用できる人を拡大

2000年に施行された介護保険法の介護サービスを利用できるのは、「要介護1~5」、または「要支援」と要介護認定を受けた人でした。

要介護の1~5の区分は、数字が大きくなればなるほど、介護を必要とする度合いが高く、要介護5になると、意思疎通も難しく1人で日常生活を送るのは、極めて困難な状態を指します。

一方、要支援は、1人で日常生活を送る事はほぼ可能で、一部分で介護を必要とする状態です。要介護区分に該当しないように、介護サービスを受けるという目的もあります。

2005年に改正された介護保険法では、給付を「介護給付」と新たに「予防給付」という枠を作り、介護給付を「要介護1~5」、予防給付を1つだった「要支援」区分を、「要支援1」「要支援2」2区分に広げ、全部で7区分とし、介護サービスを利用できる人を拡大させました。

2.介護施設での食事代・居住費等を全額自己負担へ

従来の介護保険法での介護施設での食事代・居住費等の費用は、本人負担1割など優遇されていました。

一方、介護施設に入りたくても入る事ができず、在宅介護となった人は、食事代・居住費等は全額自己負担と、介護施設利用者と在宅介護の人との間で不公平感が出てしまっていました。

この不公平感を失くすために2005の改正で、介護施設利用者の食事代・居住費等も全額自己負担にする事によって、介護施設利用者と在宅介護の人が平等の扱いとなりました。

3.「地域密着型サービス」が誕生!

次の改正ポイントは、「地域密着型サービス」の創設です。

介護サービスを受けるにために、隣町の介護施設に行ったり、遠方の老人ホームに入所したりと、何十年と住み続けた住み慣れた街を離れなければなりませんでした。

やはり住み慣れない環境でストレスが溜まったり、誰にも悩みを打ち明けられず鬱になってしまうまど、1人で日常生活を送るために頑張っている人たちにとって悪循環になってしまいます。

こういった状況を改善するために、「地域密着型サービス」が誕生しました。

地域密着型サービスは、住み慣れた街を離れずに、介護サービスを受ける事ができるのが特徴です。

各市町村が、その地域の実情を把握し、ベストな方法で介護サービスを提供するのも特徴の1つとなっています。

地域密着型サービスが創設された事により、介護が身近なものになり、より良い介護サービスを提供したり、受けたりする事ができます。

3.介護保険法~2012年改正ポイント~

介護保険法が施行されて2回目の改正が行われたのが2012年でした。

介護保険法が施行されて介護保険のサービスの利用者が当初よりも3倍増と、介護を必要とする人がこれからもますます増えていく事が予想できます。

ここからは、2012年の改正ポイントをまとめていきたいと思います。

1.何か起きても安心!24時間対応「定期巡回・随時対応サービス」が誕生

これまでの介護サービスは、日中にホームヘルパーの方が介護を必要とする人の自宅に足を運んで、1日1回、数時間買い物や掃除など身の回りの事をしてくれるものでした。

しかし、介護を必要とする人の中には、歩く事も困難でベッドで寝たきりの人や1人でトイレに行ったり、お風呂に入る事ができない人がいらっしゃいます。

このような人にとって、ホームヘルパーの方が帰った後に、ご飯を食べたり、トイレやお風呂に入ることができませんよね?

「定期巡回・随時対応サービス」は、1日1回だけでなく、1日に数回ホームヘルパーの方に自宅に来てもらう事により、朝昼夜と細かなサービスを受ける事ができるものとなっています。

介護サービスを受けている方のご家族の方も、1日に数回ホームヘルパーの方が自宅を訪れて身の回りの事をしてもらえるという事で、安心感をもち、負担も軽減されます。

2.複数のサービスを統合!「複合型サービス」の創設

これまでの介護保険の介護サービスは、小規模多機能型居宅介護と訪問介護が別々になっていたため、利用者は、小規模多機能型居宅介護を利用したい時は小規模多機能型居宅介護、訪問介護を利用したい時は訪問介護と、かなり手間がかかってしまいました。

この小規模多機能型居宅介護と訪問介護を統合(複合型事業所)する事により、1度に色んなサービスを受ける事ができるようになりました。

4.介護保険法~2018年改正ポイント~

直近で、介護保険法が改正されたのが、今から1年前の2018年でした。2018年、介護保険法はどのように改正されたのでしょうか?皆さんで一緒に見て行きましょう。

1.利用者の人にとっては痛手!自己負担額が最大3割まで引き上げ

介護保険の介護サービスは、40歳から加入が義務付けられている介護保険の支払われた保険料を財源として介護のサービス利用料を負担してくれています。

しかし、高齢化社会がすすむ日本にとっては、やはり財源となる保険料の支払いをする人口が減少していき、財源を確保するのが困難になっていきます。

一方、介護サービスを利用する人はどんどん増えていく、すなわち国は、介護のサービス利用料をより負担しなければならなくなり、財源が枯渇しかねません。

そこで、2018年の介護保険法の改正では、介護のサービス利用料の自己負担額を、それまで最大2割だったものを最大3割まで引き上げる形となりました。

介護のサービス利用料の負担割合は、収入(年金や年金以外の所得)によって異なります。

2018年以前

  • 収入合計 280万円以上→自己負担額 2割
  • 収入合計 280万円未満→自己負担額 1割

2018年以降

  • 収入合計 340万円以上→自己負担額 3割
  • 収入合計 280万円以上→自己負担額 2割
  • 収入合計 280万円未満→自己負担額 1割

2018年の改正で収入合計340以上で自己負担額が3割という区分が追加されています。

これは、収入が多い人=高所得者の人には多く保険料を支払ってもらおうという狙いがあります。

現在、自己負担額の最大は3割となっていますが、将来的にはこれからも介護サービスの利用者は増えていくのが予想されるので、自己負担額が4割、5割と引き上げられる可能性もゼロではないので、介護保険法が改正される際には、注意が必要です。

2.介護保険料の支払額が収入によって変わる

次の改正ポイントは、介護保険料の支払額が収入によって変わるという点です。

この改正で影響が出てくるのは、40歳~64歳の第2号保険者の方たちです。

以前は、収入に関係なく、医療保険に加入している人数で保険料の支払額が決定されていました。

しかしこれでは、より多くの収入を得ている方たちが加入している医療保険の人数が、収入の少ない方たちが加入しえいる医療保険の人数よりも少なければ、保険料の支払いは、より多くの収入を得ている方たちの方が少なくなるという事になります。

収入の少ない人たちからより多くの保険料を徴収するのは生活がより一層苦しくなるし、多く収入を得ているのに保険料の支払いのが少ないという事で、国民からも不満の声が上がってきます。

こういった不公平感を失くすために、2018年の改正で介護保険料の支払額を、収入に応じて変わる形に変更になりました。

すなわち、収入が多ければ多いほど、保険料の支払額が多くなるという事になります。

この方法は、所得税と同じになりますね?高所得者の方から多くの税金を納めてもらい、低所得者の負担を軽減させる狙いがあります。

ご自身の年収では一体どれぐらいの介護保険料を支払わなければならないのか1度確認しておきましょう。

3.介護サービスの福祉用具のレンタル価格の見直し

介護保険の介護サービスの中に、福祉用具のレンタルがあります。

この福祉用具のレンタルは、レンタル事業者を介して利用できるのですが、福祉用具のレンタル価格は、各レンタル業者が独自で決定できるため、同じ福祉用具でもレンタル業者によって、レンタル価格が異なっていました。

福祉用具のレンタル価格が平均どれぐらいか分からない人にとっては、高額なレンタル価格を設定されていても、契約をしてしまい、被害を被る可能性があります。

2018年で改正で、福祉用具のレンタル価格について、取り決めが行われました。

福祉用具ごとに、レンタル価格の平均を算出し、平均価格を公表しなければならない

福祉用具ごとに、レンタル価格の平均を算出し、国が平均価格を利用者に公表する事により、利用者は平均価格を知る事ができ、高額なレンタル価格を提示しているレンタル業者を見抜く事ができ、被害を受けなくて済みます。

福祉用具ごとのレンタル価格の上限額を設ける

次の取り決めは、福祉用具ごとのレンタル価格の上限額の設定です。

この取り決めの狙いは、レンタル業者の不正な価格設定を防ぐものです。

上限を設定しなければ、利益確保のために高額なレンタル価格を設定してくる可能性もありますね?

上限額を設定する事により、利用者もどれぐらい費用が発生するのかを把握しやすく、利用者とレンタル業者の間でのトラブルを未然に防ぐ事が可能になりました。

福祉用具を利用者に説明する際、福祉用具の機能・価格が異なる商品を利用者に提供する

最後の取り決めは、利用者が福祉用具をレンタルしにレンタル業者を訪れた際、ある1つの商品だけを薦めるのではなく、他の商品もいくつか提供し、商品ごとの機能や価格を利用制限に説明する事により、利用者に選択権を与えるというものです。

ある1商品だけを利用者に紹介しても、もしかしたらその人には合わない可能性があります。

いくつかの商品を提供する事により、利用者にとって最適なものを提供する事ができ、そしてなんと言っても利用者とレンタル業者の間で、コミュニケーションが取れるので、利用者も安心できます。

4.「介護医療院」という新たな介護保険施設を創設

次の改正ポイントは、介護保険施設「介護医療院」の創設です。

今までの介護保険施設は、

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設

の3つがありました。

そこに、介護医療院が加わったのです。

介護医療院の創設の狙いは、利用者が長期的に療養する事ができ、尚且つ日常の介護を受ける事ができる医療と介護を一体化させ、より一層利用しやすくするためです。

介護医療院の開設は、医療法人・地方公共団体などの非営利法人が可能となっています。

利用者は、介護医療院で医療と介護を両方受ける事ができるので、負担が軽減します。

5.「共生サービス」の創設!

2018年の改正で、介護保険に「共生サービス」が創設されました。

この共生サービスは同時に障害福祉制度にも創設され、介護と障害福祉を1つの事業所でまとめる事で、お互いのサービスを受けやすくしたものです。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか?

2000年に施行された介護保険法は、これまでに3回改正されました。

改正ごとに、介護サービスの利用者に負担がかからないように、そして利用者とご家族ともに安心して介護生活を送れるようになっていってます。

現在で65歳以上の割合は、5人に1人と言われていて、この割合は将来ますます多くなっていくでしょう。

そういった中で、今後も介護保険法は数年ごとに改正が行われ、より良い介護サービスが受けられるように改善されていくと思われます。

決して「介護」というワードにマイナスイメージを持たず、日本国民全員でお互いを助け合い、安心した介護生活を送れるようになるといいですね。

 

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