3つの企業年金とは?厚生年金基金・確定給付年金・企業型確定拠出年金、それぞれの違いとメリットデメリットを解説

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代表的な企業年金の種類には、確定拠出年金や、確定給付年金や、厚生年金基金などがあります。それぞれの企業年金の仕組みについては大変難しく、加入している人であったとしても理解ができていない人が多いと思います。

今回は、企業年金の中でも確定拠出年金や、確定給付年金や、厚生年金基金の仕組み特徴について理解ができるように詳しく解説すると共に、それぞれの違いについても比較していきます。

企業年金とは?

 

企業年金の目的

企業年金の目的は、私企業が勤務している従業員の退職後の生活をより豊かにするために広まっていったものです。また、企業側が退職金を一括で支払うことが大変なので、分割で支払う退職年金という考え方も普及していきました。

退職金を年金にすることで、企業は退職金を一括で支払わなくても済むことになりました。そのため、その分の利息に相当する金額を上乗せすることで、社員側にもメリットが生まれたのです。

企業年金の歴史

企業年金の始まりは、昭和24年に大手百貨店が自社に退職年金の制度を取り入れたことです。この動きは他の企業にも広まっていき、世間的にも注目されるようになっていきました。

その後、企業側や社員側の要望を受けて、国が制度として制定していったのです。国が制定した制度としましては、昭和37年に税制適格退職年金、昭和41年に厚生年金基金が生まれました。

このため、企業年金は、高度成長期やバブル期の日本を支えてどんどんと発展していったのです。

新しい企業年金への動き

 

バブル崩壊

企業年金の仕組みとして、企業が資産運用を行い、将来従業員へ支払う年金資金を賄います。しかし、バブルの崩壊とともに運用損失がかさんでいって、その分の補填を企業が行うことにより業績が悪化するような問題も起こりました。

また、バブル後の資産運用の悪化のため、企業の年金原資の積み立て不足が大きな問題となっていったのです。

新しい企業年金

このように企業年金の積立不足の問題により、従業員側まで影響がでないような新しい仕組みの企業年金を創設することが急務になりました。特に、適格退職年金については、従業員の受給権の保護が保たれるような安定していて且つ信頼がある制度に変更していくことも急務になりました。

このような経緯があり、平成13年に確定給付企業年金法および確定拠出年金法が制定されました。この新しい企業年金の制定により、従来抱えていた企業年金の問題が改善されたのです。

予定していた運用益を得ることができず予定額を給付できないことがないように、毎年給付に必要な金額が積み立てられているかを確認するようになりました。

厚生年金基金のメリットデメリット

 

厚生年金とは?

日本の公的年金制度の中で、20歳以上60歳未満の全員が加入対象者である国民年金が1階部分といわれています。一方、1階部分の国民年金に上乗せした2階部分に当たる年金が、厚生年金です。

厚生年金は厚生年金に加入している事業所などに勤務する会社員や公務員は全員加入義務があり、保険料は勤務先と加入者が折半して支払います。このように、1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金が、日本の公的年金制度になります。

厚生年金基金とは

厚生年金基金は、2階部分の厚生年金に上乗せした3階部分の企業年金です。国民年金や厚生年金と違って、私的年金になります。

厚生年金基金には、厚生年金の加入事業所や事業者が加入していれば加入することになります。厚生年金基金の保険料は、厚生年金と同様に事業所や事業者と折半になります。

厚生年金基金は私的年金のため、管理や運用は基金が独自に行います。そのため、運用損で積み立て不足などが発生した場合は国や公的機関などが補填をしてくれることはなく、独自で補填していかなければなりません。

厚生年金基金の設立形式

厚生年金基金には、以下3種類の設立形式があります。

単独型

一つの企業だけで設立された厚生年金基金のことをいいます。1,000人以上の加入者いなけれは設立できないため、設立基金は主に大企業になります。

連合型

単独型とは異なり、一つの企業だけでは設立できません。グループ企業など、資本関係などがあるような密接な企業の集団によって設立されます。設立の要件は、グループ企業全体の加入者で1,000人以上です。

総合型

総合型は、同じ系列の業界団体や同じ地域に属している団体などが集まり基金を設立します。この方式での設立であれば、中小企業など1社で設立するのが難しい場合でも何社か集まることにより設立が可能です。

厚生年金基金のメリット

厚生年金基金に加入するメリットは以下の通りになります。

年金給付が充実

厚生年金の上乗せの年金のため、従業員にとって老後の年金給付が充実したものになります。

受給要件が甘い

厚生年金基金は加入期間が1ヵ月あれば、金額は少ないですが受給できます。一方、厚生年金は老齢基礎年金の受給資格期間を満たす必要があります。

福利厚生の充実

厚生年金基金の加入により福利厚生が充実するため、事業者にとっても従業員にとってもメリットがあります。

確定給付型の年金である

厚生年金基金の掛金の運用はすべて基金が行って考える必要がない確定給付型の年金のため、運用の知識がなくても良いのです。

税金の優遇措置がある

事業者側が支払った厚生年金基金の掛金は、損益参入することができます。また、運用収益は非課税です。

厚生年金基金のデメリット

厚生年金基金のデメリットは以下になります。

資産運用で損をだす可能性がある

厚生年金基金の掛金の運用はすべて基金が行うため、資産運用に失敗すると積み立て不足になる可能性があります。積み立て不足の補填は基金や事業者側が行う必要があるため、事業者の業績に影響する可能性があるのです。

事業者の業績が悪化すると、従業員側にも影響する場合があります。

厚生年金基金の見直し

厚生年金基金の経営悪化により、他の企業年金制度への変更する事業者がどんどんと増えています。その結果、厚生年金基金の数はどんどんと減少していっています。

今厚生年金基金に加入している事業者でも、将来的に他の企業年金制度への変更も考えられます。他の企業年金制度への変更は、将来的の年金給付に変化が生じるデメリットがあるのです。

確定給付年金のメリットデメリット

 

確定給付年金とは?

確定給付企業年金とは、確定給付企業年金法(2002年4月施行)に基づく企業年金制度のことをいいます。給付額があらかじめ約束されていて、事業主側が拠出や運用や管理や給付までのすべての責任を負う企業年金制度です。

前項で解説をした厚生年金基金も確定給付企業年金に含まれますが、新設することは認められていません。確定給付年金は、現在の日本で最も多くの人が加入している企業年金制度です。

確定給付年金のタイプ

確定給付年金のタイプは以下2種類になります。

  • 規約型
  • 基金型

ここでは一つ一つの概要について詳しく見ていきます。

規約型

規約型とは事業主側が生命保険会社や信託銀行などの信託会社と契約をし、その規約に基づいて拠出や運用を行っていく企業年金です。事業主側は契約した規約通りに定期的に掛金を拠出していき、生命保険会社や信託会社側が年金資産の管理や運用や年金給付を行っていく制度です。

掛金の管理や運用は生命保険会社や信託会社が行うため、事業主側は運用知識がなくても行うことができますが一定の事務負担は負います。

基金型

基金型とは、企業年金を行う事業主が企業年金基金を設立して運営していく方法です。設立された基金が、管理や運用や給付を行っていく企業年金制度になります。

規約型と異なる特徴としては、母体になる事業主とは別の法人を置くことです。別の法人を置くことにより、会社とは独立した立場で運営することができます。

確定給付年金のメリット

確定給付年金に加入するメリットは以下になります。

公的年金に上乗せして年金がもらえる

確定給付年金の掛金は、基本的にはすべて事業主側が支払います。そのため、従業員は、掛金の負担無しで国民年金や厚生年金などの公的年金に上乗せして受けとることができます。

給付額が約束されているので計画が立てやすい

確定給付年金は給付額が約束されている企業年金のため、老後の生活設計が立てやすくなります。

資産運用をする必要がない

確定給付年金の資産運用は、規約型の場合は生命保険会社や信託会社、基金型の場合は基金が行います。そのため、加入者は、資産運用をする必要がありません。

一時金として受け取れる場合がある

確定給付年金は、基本的には年金として公的年金に上乗せして受け取りますが、一時金として受け取れる場合もあります。

福利厚生の充実

事業主側にとっても、確定給付年金への加入はメリットがあります。福利厚生が充実することで、企業の魅力を高めることができます。

魅力が高まれば、働きたい人が増えるため企業の発展につながります。

税制面が優遇される

確定給付年金の事業主が支払う掛金は、全額損金参入の対象になります。そのため、内部に留保するよりも税制面でお得です。

また、確定給付年金の運用収益は非課税になりますので、こちらも税制面でお得になります。

確定給付年金のデメリット

一方、確定給付年金のデメリットは以下になります。

給付額の引き下げの可能性

確定給付年金は基本的に給付金額が約束された企業年金ですが、積み立て不足などで給付額が引き下げられる可能性もないとはいえません。

退職の理由によって給付額が変動

確定給付年金は、退職理由によって給付型を変更させることができる企業年金です。そのため、自己都合退職の場合は、給付金額が低くなる可能性があります。

事業主の掛金の負担

確定給付年金は、基本的には事業主が掛金を負担します。そのため、確定給付年金に加入する場合は、それなりの費用の負担が発生します。

追加の掛金を負担する可能性

確定給付年金は給付額が約束された年金のため、基本的には積み立て不足の場合でも約束した金額の給付を行う必要があります。そのため、事業主は、追加で掛金を負担する可能性があるのです。

企業型確定拠出年金のメリットデメリット

 

確定拠出年金とは?

確定拠出年金とは、確定拠出年金法(2001年施行)に基づく企業年金制度のことをいいます。決まった掛金を拠出して、給付は掛金と運用収益を足した金額になります。

確定給付年金と異なり、給付額は決まっていません。給付額は運用収益によって決定されるため、収益が良ければ給付額が大きくなり悪ければ小さくなります。

確定拠出年金のには、個人型確定拠出年金企業型確定拠出年金の2種類があります。

個人型確定拠出年金

個人型確定拠出年金はiDeCo(イデコ)と呼ばれ、個人が自分で掛金の金額を決定し自分で払っていくものです。そして、加入者自らが拠出した掛金を資産運用していきます。

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象になりますので、確定申告や年末調整で税金が還付されるのが大きな特徴です。

企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金は企業型DCと呼ばれ、企業が従業員(加入者)の年金口座に掛金を積み立てて、加入者が自ら年金資産の運用を行っていく企業年金です。加入者が自ら運用し積み立ててきた年金資産は、定年退職を迎える60歳以降に一時金(退職金)または年金として受け取ります。

企業型確定拠出年金は、基本的には60歳前に積み立てた年金資産を引き出すことはできません。

企業型確定拠出年金の掛金の上限額

企業型確定拠出年金の掛金は会社での役職などによって決めていくのが一般的ですが、制度上上限額が決まっています。企業型確定拠出年金の掛金の上限額は以下になります。

 

他の企業年金の有無 上限額
有り 月額2万7500円
無し 月額5万5000円

 

マッチング拠出

企業型確定拠出年金の掛金は一般的には企業が拠出してくれますが、もっと多くの金額を運用したいと考える加入者もいるでしょう。そのような時に、企業が拠出する掛金に従業員が掛金を上乗せできる仕組みがあります。

そのような仕組みのことを、マッチング拠出といいます。ただし、マッチング拠出は企業が採用していなければできませんので、担当部署に確認が必要です。

マッチング拠出を採用している企業でも、好きなだけ掛金を上乗せできるわけではありません。マッチング拠出ができる掛金の上限については以下になります。

  • 従業員が支払う掛金の金額が、企業が支払う掛金の金額を超えないこと
  • 企業が志原あ掛金と、従業員が支払う掛金の合計額が、掛金の上限額を超えないこと

企業型確定拠出年金のメリット

企業型確定拠出年金に加入するメリットは以下になります。

運用益が非課税

企業型確定拠出年金は自分で積立金を運用する必要がありますが、運用で得た利益はすべて非課税です。一般的な金融商品の運用収益には約20%の税金がかかりますのでお得です。

年金資産を受け取る時の税制控除

企業型確定拠出年金の年金資産は、60歳以降に一時金か年金のどちらかで受け取ることができます。一時金の場合は退職所得控除、年金の場合は公的年金等控除の税制控除が受けられ、税金を軽減することができるのです。

マッチング拠出の場合の税制控除

マッチング拠出を利用する場合の従業員が上乗せした掛金は、全額所得控除の対象です。そのため、所得税住民税が軽減されます。

自分にあった運用商品を選ぶことがてきる

企業型確定拠出年金の運用は、加入者が運用商品を選択するため自分にあったものを選ぶことができます。例えば、リスクがあっても年金額を増やしたい人は、ハイリスクハイリターンの商品で運用できます。

また、堅実に運用したい人は、ローリスクローリターンの商品を選ぶことができます。

ポータビリティ制度があること

転職や退職をした場合でも、確定拠出年金の年金口座は従業員の資産として持ち運びができます。このことをポータビリティ制度といいます。注意点としては退職時に専業主婦や専業主夫になる場合は、iDeCoに移換する必要があることです。

事業主は運用のリスクを負わない

企業型確定拠出年金の年金資産の運用は加入者個人で行われるため、事業主は運用による積み立て不足などのリスクを負わなくて良いのです。

企業型確定拠出年金のデメリット

企業型確定拠出年金のデメリットは以下になります。

60歳になるまで受け取ることができない

企業型確定拠出年金は、基本的に60歳になるまで一時金や年金を受け取ることができないことがデメリットの一つです。

運用成績によって支給額が決まること

企業型確定拠出年金は、加入者個人が運用商品を決めなければなりません。運用成績が悪かった場合は、給付額が少なくなりますので老後にも影響を与えます。

また、将来どのくらいの金額が給付されるのかわからないところもデメリットです。

事業主が掛金を拠出すること

企業型確定拠出年金は、基本的に事業主が掛金を支払います。そのため、拠出費用がかかります。

3つの企業年金の比較と相違点

 

ここでは、今まで解説してきた3つの企業年金を比較します。ただし、厚生年金基金は確定給付年金に含みます。

 

確定給付企業年金 確定拠出年金
特徴 将来の給付額が確定 拠出額が確定している
運用 企業が運用 加入者が運用
年金資産 個人別の残高の把握はできない 個人別に年金口座いより残高を把握できる
離転職時の取扱 確定拠出年金に資産(脱退一時金相当額)を移換できる 年金資産の持ち運び(ポータビリティー)ができる

 

まとめ

 

  • 昭和20年代に発足した企業年金は、昭和37年に税制適格退職年金、昭和41年に厚生年金基金が国の制度として発展していきました。
  • その後企業年金は、バブル崩壊により年金資産の積み立て不足が発生してその分の補填を企業が行うことになります。
  • 積み立て不足の問題を解消するために、平成13年に確定給付企業年金法および確定拠出年金法が制定されたのです。
  • 確定給付年金とは、給付額があらかじめ約束されていて、事業主側が拠出や運用や管理や給付までのすべての責任を負う企業年金制度です。
  • 確定拠出年金とは、企業側が決まった掛金を拠出して従業員側が個人で運用していく企業年金制度です。
  • 確定拠出年金の給付額は、掛金と運用収益を足した金額になり運用収益によって変動します。

 

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