不動産投資の節税方法|アパート経営で賢く税金を抑える4つのコツ

SHARE

不動産投資において節税を意識することは重要です。不動産投資で家賃収入などが入ると、給与など他の所得と合算して所得税が課税されます。一方で、アパート経営などで赤字を計上したり、減価償却費をうまく活用するっことで、全体の所得額を下げ大きな節税へと繋がります。

今回はアパート経営で賢く税金を抑えるコツを、4つのポイントに分けてお伝えしていきます。不動産投資において少しでもコストを抑えたいという方は、ぜひ以下をご確認ください。できるだけコストを下げることで、今までより投資利回りを高めていくことも可能です。

不動産投資の税金は3つに分かれる|アパート経営で節税も可能!

不動産投資では、主に建物と、それを設置するための土地が必要です。株式投資やFX、投資信託と異なり、保有する資産が増えるため、建物や土地に課せられる税金も3つに分かれます。

  • 所得税・住民税(建物による家賃収入への課税)
  • 固定資産税・都市計画税(土地所有者に対する課税)
  • 相続税(土地や建物を子供などに相続する際の課税)

不動産投資を行ううえで上記3つの税金は大きな負担となります。しかし、こうした税金もアパート経営を行うことで、より有利な節税が可能です。

ここからは各税金ごとの簡単な節税方法について紹介していきます。すべての情報に目を通しておくことで、アパート経営がなぜ不動産投資の節税に繋がるかがお分かりになられるはずです。

所得税・住民税の節税方法

不動産投資で家賃収入などが入ると、必ず発生する税金が「所得税」および「住民税」です。住民税に関しては、所得金額に対して一律10%という決まりがありますが、所得税は所得区分によって課税される割合が異なります。

所得区分は「所得税法」で定められており、以下の通り10種類に分かれます。

  1. 利子所得:公社債や預貯金などの利子所得
  2. 配当所得:株式の配当や出資に対する配当などの所得
  3. 不動産所得:家賃、権利金などの不動産を貸し付けたことによる所得
  4. 事業所得:農業や漁業などの事業によって得られた所得
  5. 給与所得:勤務先から支給された給料、賞与などの所得
  6. 退職所得:会社などを退職することで得られた所得
  7. 山林所得:山林を売却して得られた所得
  8. 譲渡所得:不動産、機械、その他設備などの資産を売却して得られた所得
  9. 一時所得:一時的(臨時的)に得られた所得
  10. 雑所得:上記の1-9に分類できない所得(公的年金や副業で得た所得など)

なお、不動産投資で得た家賃収入は3番目の「不動産所得」です。また家賃収入に含まれる要素としては以下をご確認ください。

【家賃収入に含まれるもの】

  • 家賃
  • 礼金
  • 更新料
  • 管理費
  • 駐車場
  • 携帯電話などのアンテナ基地設置料金
  • 自販機の設置による収入

不動産所得に関する所得税は、所得金額が多いほど支払う税金も増える「累進税率」が適用されています。また、不動産所得は「総合課税」と呼ばれ、給与や株の配当金、預金などの利子、事業所得などと合算した所得から税率が算出されます。

所得税率は以下をご確認ください。

課税対象の所得金額(給与など合算) 所得税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万~330万円以下 10% 97,500円
330万~695万円以下 20% 427,500円
695万~900万円以下 23% 636,000円
900万~1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万~4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円~ 45% 4,796,000円

(※2019年4月時点)

つまり、給与などを合わせた家賃収入の所得が4,000万円を超えると、住民税と合わせて55%の税金が課されるということです(1月1日~12月31日までの所得)。

ただし、不動産所得は損益通算ができるというメリットがあります。損益通算とは、たとえば不動産所得で赤字になった場合、給与など他の所得からマイナス分を差し引くことが可能になる仕組みです。すると全体の所得が減り、課される所得税率も減るので節税が可能となります。

特に不動産投資では、実際に黒字で運用が進んでいても、帳簿上は赤字を計上することもあります。不動産投資で発生した諸費用や減価償却費によって、数字上の見た目だけ損失が膨らむことがあるからです。そのため、その帳簿上の赤字を他の所得へ転嫁させ、納める税金を少なくすることができます。

固定資産税・都市計画税の節税方法

固定資産税は、すでに土地を所有している人にかかる税金として聞いたことがない人は少ないのではないでしょうか。一方の都市計画税とは、当年の1月1日時点で市街化区域内に土地や建物を保有している人に対し、必ず納めなければならない税金のことです。市街化区域とは、すでに市街地を形成しているエリア、もしくは今後10年以内に優先して市街化される地域を指します。

ただ、こうした固定資産税や都市計画税は少しの工夫で節税が可能です。たとえば、駐車場として利用している土地、もしくは特に目的もなく保有している土地に関しては、その地にアパートを建設することで税金の軽減措置が受けられます。

更地にアパートを建てて不動産投資として活用すると、次のような軽減措置が適用されるのです。

【固定資産税の軽減措置】

  • 住戸1戸につき200㎡以下の部分(小規模住宅用地):課税標準の1/6
  • 住戸1戸につき200㎡超の部分(一般住宅用地):課税標準の1/2

【都市計画税の軽減措置】

  • 住戸1戸につき200㎡以下の部分(小規模住宅用地):課税標準の1/3
  • 住戸1戸につき200㎡超の部分(一般住宅用地):課税標準の2/3

また、2020年3月31日までに建築された賃貸住宅(アパート、マンション)は、期間限定ではありますが、固定資産税が半分になるという大型軽減措置が適用されます。条件については以下をご確認ください。

【一般住宅の固定資産軽減措置】

  • 条件:床面積の1/2以上が居住用で、一戸あたりの床面積が40㎡以上280㎡以下
  • 期間:3年間(3階建以上の耐火・準耐火建築物:5年間)

【長期優良住宅の固定資産軽減措置】

  • 条件:床面積の1/2以上が居住用で、一戸あたりの床面積が40㎡以上280㎡以下
  • 期間:5年間(3階建以上の耐火・準耐火建築物:7年間)

それぞれの適用期間なら固定資産税がもともとの2分の1で済みます。

相続税の節税方法

子供へ資産を相続する場合、現金で行うより土地や建物として残す方が節税効果が高いです。特にアパート経営の場合は、節税効果が高まり、より多くの資産価値を子供に残すことができます。

現金で相続をする場合は、その全額が相続税の課税対象となります。しかし、不動産投資でアパートや土地を保有しており、その資産を相続する場合は、評価額が課税対象となり税率が低くなるのです。それぞれの評価額は以下をご覧ください。

土地の評価額:取得金額の40%

建物の評価額:取得金額の約80%

建物がアパートの場合は「貸家建付地」となり、上記のように評価額で相続税が加算されます。評価額が下がるほど税率が低くなるため、トータルで納める税金が安くて済むのです。

アパート経営で経費を活用して節税する4つの方法

不動産投資の節税方法について、土地とアパートを有効活用した節税方法をお伝えしてきました。少しだけ工夫して、所得税や固定資産税を抑えることがコツでしたね。

また、アパート経営においては「経費」をうまく生かして節税することも可能です。アパート経営の経費には、減価償却費のほか、管理費や損害保険料などがありますが、特に減価償却費を利用した節税方法は有効と言えます。次の項目で詳しくお伝えしていますので、ご確認ください。

減価償却費を生かして節税する方法

減価償却費とは、金額の高い製品などを購入した際、一括ではなく分割して費用を計上することです。たとえば、不動産投資で購入した建物は1年だけ利用してすぐに捨てるものではありません。そのため、あらかじめ耐用年数を決めておき、資産価値の低下に伴って購入費用を分割して計上していくようにします。

不動産の耐用年数は木造や鉄骨など、その構造によって異なります。ただ、購入した費用を毎年経費として計上していけるので、それだけ各年度の所得が下がり、節税効果を期待できるということです。

新築アパートの場合、建物を取得したときの価格から耐用年数で割って毎年の減価償却費を算出します。もしくは以下のような計算式で、各年度の減価償却費を決定することもあります。

【RC物件】

  • 建物価額×0.022(耐用年数47年)

【重量鉄骨】

  • 建物価額×0.030(耐用年数34年)

【木造】

  • 建物価額×0.046(耐用年数22年)

上記は新築アパートの場合です。

中古アパートの場合は新築アパートの計算法とは異なります。「簡便法」という計算法で中古アパートの減価償却費を決めることが多いです。簡便法の計算式は以下をご覧ください。

  • 耐用年数を超えた建物:法定耐用年数×20%
  • 耐用年数を一部経過した建物:(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

また、減価償却を行うものは建物だけにとどまりません。他にもアパートに付随する設備にも、耐用年数に応じた減価償却費が適用されます。

経費として計上できるものは収入から差し引くことができる

所得税は不動産所得に対して課されますが、所得とは収入から経費を差し引いた金額のことです。つまり、経費として計上できるものを収入から差し引くことで、所得金額を低く抑えることができ、所得税の節税が可能となります。

ただし、経費として計上したものに関しては、その領収書などは「帳簿書類」とされ、7年間の保管が義務付けられています。アパート経営においては様々な経費が発生しますが、たとえば管理費や損害保険料など、支払いを証明する書類などは必ず手元に残しておくようにしましょう。

また、ローンにかかる金利や、確定申告時に依頼した税理士の外注費なども経費計上可能です。経費として認められる項目には限りがありますが、できるだけ経費計上した方が納める税金がお得になります。

青色申告で最大65万円の控除

不動産投資でアパート経営を行うと、部屋数10を超えた時点で「事業者(事業的規模)」として扱われます。そして、事業者となると確定申告時に「白色」と「青色」の二種類が選べます。白色申告はもっとも簡単な確定申告方法で、収支管理表も家計簿程度の簡単なもので構いません。しかし、特別な控除などを受けることも不可能です。

一方の青色申告は、正確な帳簿(損益計算書や貸借対照表)を作る必要がある反面、最大65万円もの控除が受けられます。控除は所得金額からマイナスとなるため、それだけ納める税金の額も減るということです。

また、青色申告には、家族を専従者として給与を支払い、それを経費として扱えます。すると、さらに所得からマイナスされる金額が増え、節税に繋がるのです。ほかにも、損失を向こう3年で繰り越せるなど、青色申告には節税メリットがたくさんあります。

節税より収入をあげることに集中すべき

節税というものは、収支でいうところの「節約」に似ています。家計でも支出の金額を減らすことで、手元に残るお金が増えるメリットがありますよね。しかし、節約にも限度があると同じく、節税にも限界があります。いくら「出ていくお金」を減らしたとしても、「入るお金」が増えなければ、それだけ家計も投資利回りも良くなりません。

アパートを経営することで不動産投資では節税に繋がります。しかし、節税によって所得税や住民税が安くなるということは、逆にいえば、それだけ投資の運用効果が悪い(利益が低い)ということです。

確かに不動産投資において節税は非常に重要ですが、かといってそればかりに心血を注がないよう注意しましょう。家計の収入を底上げすることが最重要なように、不動産投資でも利益率を高める方が、税金額を減らすことよりも大切です。

アパート経営の節税シミュレーション

アパート経営における節税効果をお伝えしてきましたが、実際に不動産投資でどれくらい税金額を減らせるものなのでしょうか。ここでは、本業の給与所得がある上体で、副業的にアパート経営を行った場合の節税シミュレーションを行っています。

条件は以下の通りです。

【シミュレーション条件】

  • 給与年収:600万円
  • アパート経営の運用効果(1年):50万円の赤字

先ほど不動産所得は赤字を他の所得に転嫁できるとお伝えしました。上記のようにアパート経営で50万円の赤字を出した場合、別の所得である給与から差し引くことができます。それでは、節税効果を具体的に計算してみましょう。

【アパート経営を行わない場合の所得税額】

  • 給与所得:600万円
  • 給与所得控除:600万円×20%+54万円=174万円
  • 基礎控除:38万円
  • 社会保険料控除:64万円(概算)
  • 課税所得税額:324万円(所得税率10%)
  • 所得税額:(324万×10%―97,500円)×1.021=231,256円

【アパート経営で年間赤字50万円の節税効果】
給与所得:600万円
給与所得控除:600万円×20%+54万円=174万円
基礎控除:38万円
社会保険料控除:64万円(概算)
不動産所得:マイナス50万円
課税所得税額:274万円(所得税率10%)
所得税額:(274万×10%―97,500円)×1.021=180,206円

不動産投資をせず、本業の給与所得だけの場合、所得税は約23万円です。一方、アパート経営で赤字を計上した場合は、所得税は約18万円と5万円分の節税効果があることが分かります。おおよその節税効果は、不動産所得で損失を出した金額×所得税率(今回は10%)で簡単に求められます。

このように、損失分が他の所得へと移せる不動産投資は、たとえ赤字を計上した場合でも節税として活用できるのです。ただ、先ほどもお伝えした通り、節税にも限界がありますし、赤字を出したままアパート経営を行っていては本末転倒といえます。節税はほどほどに、不動産投資の利益率を高めることに集中することをおすすめします。

不動産投資の節税まとめ

不動産投資のアパート経営では、損失を出した分も他の所得へとまるまる移転できるというメリットがありました。これを「損益通算」と呼びます。シミュレーションによって損益通算の効果は、「不動産投資の損失分×所得税率」でおおよその節税効果を見込めることが分かりました。

また、減価償却費も節税に有利な経費ですが、できるだけ耐用年数が長いほど有利です。長期的な観点でいえば、償却年数が長くなるほど節税効果が高いため、RC物件や重量鉄骨構造のマンションを選ぶと良いでしょう。

一方で節税ばかりに気をとられ、せっかくの不動産投資が赤字続きではどうしようもありません。税金というコストを抑えると同時に、投資の運用利回りを高めることも忘れないようにしましょう。

コメントを残す