相続登記とはどのようなものか驚きのケースとともに紹介

相続の手続きについて調べていると「相続登記」というものが出てきます。

この相続登記なのですが、端的に先に言ってしまうと、相続が発生したからといってやらなければならないという義務はないものの、やらなかった結果非常に面倒な結果が起きるものです。

義務ではないため何世代も放置された結果どのようなことになるか、実際の実例も踏まえてお伝えしますので、是非手続きがまだの方は参考になさってください。

このページでは、相続放棄についてお伝えします。

相続登記の概要

相続登記というのは、不動産の相続をした際に、所有権者の名義を書き換えることをいいます。

相続とは

すこしくどいかもしれませんが、後の説明に必要なので確認しておいてください。

相続とは、亡くなった人の財産を受け継ぐ行為をいいます。

用語として次の2つを把握してください。

  • 被相続人=亡くなった人
  • 相続人=相続をする人

不動産をはじめとした所有権は人に紐づいています。

人が亡くなった場合にその所有権がだれのものになるかについては、法律で相続人になる人を定めた上で、被相続人の財産を継がせるという事を規定しています。

登記は何故必要か

「この所有物は私のものです」と主張することを、法律では「対抗する」という言い方をします。たとえば、不法占拠者に対して土地を返還して立ちのいてくださいと主張するにあたって、所有権を根拠に不法占拠者に主張することを、「所有権者が不法占拠者に対抗する」という言い方をします。

民法178条をご覧ください。

 

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

このように、法律の世界では、登記をしなければ所有権者として主張することはできないとされています。

そのため、土地所有権者であるAさんがBさんに譲渡した後に登記をせずに放置しているところ、AさんがCさんにも売却した上でCさんが登記を済ませてしまった場合には、Bさんは自分がAさんから所有権を取得したことを、Cさんに主張できない、という事になってしまいます。

このように登記は不動産取引においては重要なもので、売買による場合には上記なような行為をされないためにも、登記をするのが一般的です。

相続登記は登記されないことも多い

相続に関しては、死亡届の提出から(7日)、相続税の申告(10ヶ月)と、期限の定めがあるものが多いのですが、相続登記に関しては期限がありません。

Expert
登記はしなければデメリットを受けるのは本人なので、所有権が移転しても必ず登記をしなければならないというものではないというのが建前です。

移転についてもそのほとんどのケースは、親から子へというのが多い結果、実は相続登記がされないことがかなりあります。

当然、土地があって誰かがそこを不法占拠して建物をたてようとしているような場合に、これを追い出すためには相続登記をしていないとならないのですが、そのような事態が発生するようなことは稀です。

Expert
実際に相続税の納付や、空き地を売却するなどの行動を起こすようなことがない限り、登記もせずに放置されていることはよくあります。

長年にわたってこのような状態を放置していると、大変なことが発生します。

 

 

相続登記をしなかったらこうなった

実際に相続登記をしておらず、長年にわたって放置をしていた結果起こった実例をご覧ください。

 

【事 例】

Aさんは地主の一家に生まれ育った人で、祖父の長男の長男として事実上この一家の土地について差配をしていました。

Aさんの代になって、民泊物件を探しているBさんがAさんが保有している土地に、民泊用の建物をたてたいと考え、Aさんはこれを了承しました。

売却を依頼した不動産会社が司法書士に連絡したのですが、遺産分割協議などはしておらず、不動産の登記もそのままになっていました。

 

このような事例において、Bさんは購入の決済にあたってAさんから不動産移転登記をすることと引き換えに金銭を支払うのが不動産取引のルールです。

そのためAさんとしては、現在の権利関係にあわせた状態に一度不動産登記を改めた上で、Bさんに移転登記をするということになります。

移転登記をするにあたっては不動産登記簿を取得するのが普通なのですが、この不動産登記簿の土地の所有者はAさんの祖父のままです。

 

Expert
私が経験した事例にちかいものなのですが、この段階でAさんは60代でAさんの祖父は明治生まれという事態で、非常に面倒な手続きが始まりました。

このような場合、何が必要になるかというと、この慶応生まれのAさん祖父の相続についての相続登記をした上で、Aさんの父の相続登記が必要だったのです。

 

相続登記には後述しますが、遺産分割協議書が必要になり、現在Aさんの祖父から数えて相続人となっている方全員の同意が必要になります。

Expert
このときは都合30名近くいらっしゃったかと記憶しております。とくに遺言等も残されていなかったので、権利を主張してくる方(いわゆるハンコ代)、売却代金の一部を直接振り込むよう要求してくる方、先祖代々の土地なので反対される方などいらっしゃって、登記が終わるまでに2年程度の歳月がかかっていまう事態になりました。

こまめに相続登記をして、権利を行使する人に資産をあつめておけばこのような事態にはならなかったといえますので、相続登記はやはり重要といえます。

相続登記の仕方

それでは、実際に相続登記をする方法を知りましょう。

登記をするための基礎知識

不動産に関する登記を取り扱うのは法務省管轄の法務局で行うことになります。

登記は不動産登記申請書と添付書類を提出して行うことになります。

登記に関しては窓口と電子申請をする方法がありますが、頻繁に申請するものではなければ窓口に書類で提出するのが一般的です。

不動産登記申請書の作成方法

まず不動産登記申請書の作成方法を知りましょう。

不動産登記申請書はどのような方式でもよいのですが、法務局のホームページに、不動産登記申請書の作成方法についての案内があり、そのページにWordや一太郎といったワープロソフトのテンプレートを置いてくれてあるので、そちらを利用するようにしましょう。

 

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html(法務省・法務局の不動産登記申請書のホームページに飛びます)

書類のタイトルになる場所には「不動産登記申請書」とします。

登記の目的は「所有権移転」とのみ記載します。

原因は「平成◯◯年○○月◯◯日 相続」と記載します。日付は相続が開始した日=被相続人の死亡日です。

相続人の欄には氏名と住所の記載をします。電話番号は連絡用に代表者のみ記載しておくとよいでしょう。郵便番号の記載は不要です。

添付情報には「登記原因証明情報 住所証明情報」という記載をします。登記原因が発生したことを証明する書面と、相続人の住所を証明する情報(住民票)を提出するという内容になります。

「平成◯◯年○○月◯◯日申請 ◯◯法務局 御中」という風に申請をする日の日付と、提出する法務局の宛先を記載します。どこの法務局に提出するかについては、法務局の管轄をしらべる法務局の下記ホームページをご参照ください

 

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html (法務局のホームページに飛びます)

たとえば都内に不動産がある方については東京法務局となり、実際に足をはこぶ出張所の記載は不要です。

課税価格には登録免許税の課税の対象となる金額を記載することになり、固定資産税評価証明書に記載された金額の下3ケタを切捨てる形で計算します。固定資産評価証明書に記載されているのが5,000,123円ならば、5,000,000円が課税価格になります。

登録免許税額については、相続の場合は課税価格に0.4%を掛けた金額の下2ケタを切捨てた金額になります(なお売買の場合は2.0%)。

不動産の表示については、登記簿(不動産登記事項証明書)の内容を記載します。

添付書類

それでは添付書類について見てみましょう。

相続登記申請書によりますと、「登記原因証明情報」と「住所証明情報」にわけて検討しましょう。

住所証明情報

まずは、住所を証明する情報としては、住民票を取得します。

住民票は住民票登録をしている市区町村の役場の市民課で取得することになり、取得には市区町村によって費用がかかります(200円~300円程度)

登記原因証明情報

次に、登記原因証明情報の取得します。

今回の相続登記で証明しなければならないのは、相続の発生です。その証明のために次のような書面を取得します。

被相続人が筆頭の住民票

被相続人が筆頭になっている住民票を取得します。

 

Woman
亡くなった人なのに住民票を取ってどうするのですか?
Expert
亡くなっていることが記載された住民票が発行されますので、そちらで被相続人が亡くなっており、相続が開始していることを証明するために使います。

ある人は亡くなったとしても、戸籍や住民票から抹消されるわけではなく、亡くなっているという記載に変更されることになります。

 

被相続人が筆頭になっている住民票を取得することで、相続開始の要件である被相続人の死亡を証明することになります。

被相続人の戸籍に関する書類

被相続人の戸籍に関する書類を取得します。

Woman
被相続人の住民票で亡くなったことは確定できるんじゃないですか?

 

 

Expert
戸籍に関しては相続人と被相続人の関係について調べることになるので別だと思ってください。

次に、被相続人と相続人の関係にある事を証明するために、まずは被相続人の戸籍の取得をします。

 

被相続人の戸籍を死亡から出生までさかのぼることで、他に相続人がいないかを特定することが趣旨になります。

Expert
家族には黙っていたけれども、前の戸籍をさかのぼると過去に子供を認知した形跡があるような場合には、その事が戸籍に記載されています。基本的には出生から死亡まで、高齢の方で取得が難しいような場合でも少なくとも10歳くらいまでは可能な限りさかのぼって取得をして、他に相続人が居ないかどうかを確認することになります。

戸籍には次のような種類があります。

 

 

戸籍事項全部証明書:戸籍といわれたときには基本的にこちらを取得します。戸籍事項一部証明書という書類も別にありますが、相続登記の添付書類としては戸籍事項全部証明書を利用します。こちらは戸籍がある市区町村の市民課などで取得します。

戸籍謄本:法律が変わる前は戸籍謄本(こせきとうほん)という呼び方をしていたため、実務上「戸籍謄本を取る」という言い方をしますが、取得するのは戸籍事項全部証明書で大丈夫です。

除籍謄本:戸籍の全員が死亡・別戸籍に移動などした場合には、戸籍謄本ではなく、除籍謄本という言い方をします。過去の戸籍をさかのぼるにあたって、必要になります。

改正原戸籍謄本:戸籍法に関する関係法令の改正によって戸籍が作り直された際に、作り直す前の戸籍の取得が必要になります。この作り直す前の戸籍のことを改正原戸籍とよんでいます。昭和32年の改正と平成6年の改正があり、この期間をまたいでいる戸籍については、元の改正原戸籍も取得する必要があります。

 

たとえば、昭和20年大阪市で生まれて平成29年に東京都港区で亡くなった方という想定をすると

  • 平成29年東京都にある戸籍を取得
  • 平成6年の改正原戸籍を取得(大阪市から移転してきた記載を発見)
  • 大阪市にある除籍謄本を取得(同じ大阪市の別の住所から移転してきた旨の記載あり)
  • 大阪市の元の除籍謄本を取得
  • 昭和32年の改正原戸籍を取得

おそらくここまでいくと出生から亡くなるまでの穴を埋めることができます。

戸籍取得に関するQ&A

Woman
Q:戸籍のある地が遠方なのですが、郵送で取得できますか?

 

 

 

Expert
A:はい、ホームページで戸籍取得に関する申し込み書とをダウンロードして、返信用封筒をつくって、郵便局で購入できる「定額小為替」を購入して送付すると、1週間以内には返送をしてくれます。
Man
Q:過去の戸籍を追っかけているのですが、達筆すぎて読めなくて困っています。
Expert
A:実はこれよくあります。古い戸籍ですと住所の記載が手書きで、すごく達筆で書かれていることがあり、とても読めないようなものがあります。私が法律事務所の事務員をしていたときには、申込書の戸籍を空欄にしておいて、達筆の戸籍をコピーして取得したい戸籍をマーカーで色をつけて、付箋で「読めなくて記載できないのですが、こちらの除籍謄本をお送りください」と書いて送付しました。確認のため市民課から電話がかかってくるような事はありましたが、問題なく取得することができていました。
Woman
Q:戸籍が空襲で焼失しているらしいのですが。
Expert
A:空襲で焼失して戸籍がない旨の証明書を出してもらうことができますので、そちらを提出の上上申書を作成して代用します。

相続人の戸籍謄本

相続人に関する戸籍謄本を取得します。

被相続人と相続人の関係にあることを証明するための戸籍に関する書類を収集することになります。

遺産分割協議書

不動産にはどの程度の持分があるのかの記載をする必要があります。

法定相続分の登記をする場合にはそのままで良いのですが、法定相続分以外の登記をする場合には、その協議に至った遺産分割協議書の作成をすることになり、作成した遺産分割協議書を提出する必要があります。

作成に関する司法書士という専門家

以上の面倒な書類作成・資料収集については、国家資格を持っている専門家に依頼をすることができます。

法務局に提出する書面の作成になりますので司法書士が担当する業務になります(弁護士も取り扱うことができます)。

法務局に提出する登記申請書の作成はもちろん、添付資料の収集を請求する権限をもっており、遺産分割協議をするような場合には作成についてのコンサルティングを受けることが可能です。

書類の作成がわからないような場合や、添付書類の収集が困難であるような場合には、相談・依頼をすることも検討しましょう。

まとめ

このページでは、相続登記とはどのようなものか、相続登記の必要性、相続登記の方法について、具体的な書面の作り方などをお伝えしてまいりました。

相続税の申告などのように期間があるものではないことから放置されることも多いのですが、いざ売却などとなった場合に多くの困難が発生しますので、早め早めに対処をするようにしましょう。

 

 

 

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