消費増税延期の思惑「リーマン・ペーパー2」とは?消費税の基本、仕組みをわかりやすく解説!

いよいよ10月から消費税10%が始まります。消費税が初めて課税されることになってから約30年がたち、徐々に消費税の負担額は増え続けています。最初はたったの3%の課税率でした。

3%の消費税ですら当時は(40代以上の人は覚えているでしょう・・・)私達消費者に強い抵抗感を与えたものです。

そして、今や消費税は2ケタ台に突入し、国が抱える深刻な問題を考慮すれば増税は避けられないのかな、と納得する以外にないのが現状。しかし、実はここ最近ごく秘かに今回の増税は延期されるのではないか、という声が聞かれ始めています。

消費税増税をめぐって市場に与える不安要素を危惧する声が強まってきているのです。その不安要素の判断の基準となる資料のことを「リーマン・ペーパー2」と呼び、注目されつつあるのです。

そこで、今回は増税延期を正当化する「リーマン・ペーパー2」とは何なのか、そして消費税とはそもそも何のための税金なのかについて解説していきます。この機会に皆さんも一緒に改めて消費税について考えてみませんか?

消費税増税の延期の可能性がある?

2019年10月から消費税は10%へと増税されます。あくまでも少数派ではあるのですが、もしかすると消費増税が延期される可能性もあるとの声が秘かに聞かれ始めています。

実は消費税10%への増税が最初に予定されたのは2014年11月で、その時は延期となり次にに予定されたのが2016年の6月のことです。この時も結局は延期することが決まり、ようやく本年度10月に改めて開始されることになりました。

2度の延期表明を経て、今度こそは実現の確率が高いと誰もが心の準備をしているところであります。

2019年に入ってから、ささやかながらも延期の可能性をほのめかす声が聞かれる理由として「リーマン・ペーパー2」の存在が注目されています。さて、この「リーマン・ペーパー2」とは一体何なのでしょうか。

「リーマン・ペーパー2」とは

国会にて本年度の予算案が成立した際に、10月に予定されている消費増税の最終判断が行われると言われています。以前から、2度に渡って先送りとなってきた増税に対して、安部首相は、

「今回の増税は、よほどリーマンショックのような事態にならない限り延期の可能性は全く考えられない。」と発言していました。

ところが、米中の貿易摩擦が思った以上に長引き、さらに国内で消費税増税への懸念から日経平均株価は一時2万円以下となる場面もありました。円安が進む割には国内の市場の動きは非常に乏しく、その背景にはやはり消費税10%への懸念があるのではないかとの声が強調されるようになってきたのです。

この、国内の経済の不安要素を証明する資料として持ち上げられているのが「リーマン・ペーパー2」と呼ばれるものです。

「リーマンペーパー2」と呼ぶからには「リーマンペーパー」の初版があるはずです。そこで、「リーマンペーパー」の初版をリサーチしてみました。

初版「リーマンペーパー」

最初に「リーマンペーパー」と呼ばれる資料が出現したのは、2016年5月のG7サミットにおいてでした。当時、円高ドル安が進み、原油の価格は3分の1以下に落ち込み、世界経済はある種の危機に直面していました。

その時に安部首相が用意した資料が初版の「リーマンペーパー」です。それは4枚のグラフやデータを表記したもので、いかに当時の状態がリーマンショックに似ているかを表したものだったといいます。

そこで、国内で今消費税を増税するにはリスクが大きすぎるとの判断に至ったのでした。そして、今回2019年10月の増税を控え、再び世界経済の負の局面を強調する「リーマンペーパー2」が登場したのです。

リーマンペーパーを構成する4つの項目

リーマンペーパーは主に4つの項目で構成されています。

  1. コモディティの価格の下落(原油、金属、食料品、繊維品などの商品の価格)
  2. 新興国の経済指標の悪化(新興国の経済が伸びていることが市場の健全性を表す)
  3. 新興国への資金流入(同じく新興国の資金の流入が市場の発展性を表す)
  4. IMF国際通貨基金による成長率の予測(為替資金繰りの円滑化を目的とする国際金融機構)

以上の内容から、世界経済における不安の度合いが図れるとされています。

消費増税の不安要素

それでは、かつての「リーマンペーパー」そして今回の「リーマンペーパー2」によって提示されている不安要素とはどのような内容になるのかを詳しく解説していきます。

コモディティ価格の下落

リーマンペーパーでは、エネルギー・食料・素材などの商品の価格は世界経済の動向を映し出す鏡だと言われています。

2014年から2016年にかけて、この価格は55%下落したことが示され、この低下率はリーマンショック前後と変わらないことが強調されました。

そして、直近では2018年5月から12月までに約16%下落している事実が指摘されています。徐々に下落してきているため価格の幅は目立ちませんが、実際にはコモディティの価格はリーマンショック直後よりも低下しているのです。

以下のグラフは東洋経済に掲載されたコモディティ価格の推移になります。

出典:東洋経済

新興国の経済指標が悪化

2つ目の不安材料となるのが、新興国の経済指標が悪化していることです。

新興国の経済指標として挙げられている主要なデータは以下の3つ、

  • 投資伸び率
  • 輸入伸び率
  • GDP伸び率

になります。ここでは、コモディティの価格ほど低下が進んでいるわけではないのですが、一旦数字が沈み切ってしまったあとの回復力の弱さが指摘されています。

※新興国の投資伸び率

出典:東洋経済

※新興国の輸入伸び率

出典:東洋経済

※新興国のGDP伸び率

出典:東洋経済

これら3つのグラフを見てわかるように、新興国の経済指標は、リーマンショック後に落ち込んだものの、1,2年後には一気に力を取り戻しているのがわかります。

しかし、その後の動きに大きな不安が見られているのです。

新興国への資金流入がマイナス

そしてもう1つの不安要素というのが、新興国への資金流入の試算値です。

リーマンペーパーでは、新興国への資金流入が2015年から2016年にかけて、リーマンショック後にはじめてマイナスへ転じたことが懸念材料となりました。

以下のグラフは、新興国への資金流入と新興国ファンドへの資金流入の比率を表したものです。

出典:東洋経済

2018年の半ばから一気に資金が流出した後で、現状では新興国への資金フローについては回復に向かっているとの見解です。ただ、資金流出の低下率の幅が懸念材料となっています。

IMFの経済見通し

そして最後にIMFの経済見通しについて見ていきましょう。

IMFによる今後の経済の見通しが下方修正されたことが、今回の不安要素で大きな一因となっています。

出典:東洋経済

「リーマンペーパー2」の材料ともなった、この経済見通しによると、予測値の下方修正の数がリーマンショック時における動向と非常によく似ていると分析されています。

2015年4月においても、このIMF経済見通しが連続して下方修正されたことが大きな不安材料となりました。

そして、今回も下方修正の幅が軽視できない材料となっているのです。

リーマンペーパー2の結論は?

「リーマンペーパー2」の結論として、現在の経済環境は悪化している指標もあれば改善している指標もあり、一概にかつて増税が延期された時ほど状況が悪化しているとは断言できないとのことです。

ただ、経済環境が回復に向かい、良好となる兆しを見せているとも言えないのが事実だとされています。

従って、「もしかすると」の範囲ではありますが、2019年10月の消費税10%が再び延期となる可能性は秘めているといえるのです。

今回、リーマンペーパーや消費増税延期に関する情報を得るにあたって、以下のサイトを参考にしました。

みずほ証券エコノミストの末廣徹氏の記事(東洋経済)です。非常にわかりやすく解説してありますので、皆さんも参考にしてみて下さい。

 

そもそも消費税とは

というように、今回ささやかながらも予想されている「消費税増税の延期の可能性」と「リーマンペーパー2」について解説いたしました。

ただ、いずれにしても私達一般の消費者にとっては、国が決めたことであれば従う以外に方法はありません。いくら、国の財政や、世界経済、市場がどうのと言われてもピンとこないのが現実です。

言われたままに、真意は不明ながらも納得する態度が求められてしまいます。

しかし、消費税といえば普段の私達の生活に大きく関わってきます。たった100円程度のお菓子を買うにしても、毎日の食料品を買うにしても必ず支払い続ける税金です。

さらに、気になるのは所得税、市県民税、国民健康保険料、国民年金などと国の財源となるべき様々な税金をそれなりにすでに支払っていることです。

何のための税金か理解しておきたい

仕事をしてお金を得るということは、誰にとっても簡単なことではありません。毎月継続して一定額の収入を得るために、すべての人は様々な思いを犠牲にして働いています。

そんな風に苦労して得たお金です。この機会に消費税がどのような税金になるのかを、十分に理解しておきたいものです。大切なお金のことだからこそ、納得した上で消費税の増税分も支払っていきたいと思うのは、人として当然のことです。

そこで、消費税とはどのような税金なのか、なぜその他の税金とは別で納める必要があるのかを考えていきたいと思います。

消費税の始まり

実は消費税とは、冒頭でも軽く触れましたが、この世に誕生してからまだ30年足らずの新しい税金のシステムなのです。では、消費税がいつどのような経緯で始まったのかを解説しておきます。

税率3%でスタート

日本の消費税は、1989年竹下内閣によって導入された新しい税制で、最初は税率3%でスタートしました。当時は議員の立候補の謳い文句として頻繁に「消費税削減や廃止」などが主張されたものでした。

その後1997年に橋本内閣によって3%から5%に引き上げられました。この辺りから、このままいけば消費税が10%を超える日もくるだろうと懸念されるようになりました。

そして17年後の2014年安部内閣によって8%へと引き上げられたのが最後の増税になります。

消費税は何の税金?

消費税はその文字通り、消費に対してかかる税金のことをいいます。

物やサービスを消費(購入)した時に発生する税金です。この消費という行為は、スーパーやオンライン通販で買い物をしたり、レストランで食事をしたりなどと、日常生活において数えきれない程の場面で行われています。

間接税の1種

消費税を負担するのはお金を払う消費者になりますが、実際に国に税金として納めるのはお店などの事業者になります。

このように税金を払う人と納める人が異なる税金のことを間接税といいます。消費税は間接税の1種であります。

間接税には他にも、

酒税、たばこ税、印紙税、ガソリン税などがあります。

※私達が払う税金の種類は他にもたくさんあります。多すぎる税金の種類に関する記事が以下からご覧いただけます。

消費税のしくみ

消費税には2種類の消費税があり、私達は2か所に税金を納めていることになるのです。

  • 国に納める消費税→6.3%
  • 地方自治体に納める消費税→1.7%

合計で現在8%の消費税を払っていることになります。

なぜ消費税が導入されたのか

消費税が導入された理由は大まかに4つあります。

  1. 高齢化社会への財源確保
  2. 所得税と消費税でバランスを取る
  3. 時代に対応していくため
  4. 脱税者や外国人にも課税できる

それぞれどのような理由なのかを詳しく述べていきましょう。

高齢化社会への財源確保

今の日本は深刻な少子高齢化時代を迎えています。このまま少子高齢化が進めば、もしかすると消費税20%なんてこともあり得るかもしれません。

高齢化が進めば、医療費や年金などの社会保障費が増大していきます。と同時に税金や保険料を支払う若い世代が減り続ければ、国の財源赤字が進み、日本経済は破綻してしまいます。

しかし、だからといって1人あたりの所得税や県民税、保険料などを極端に上げていくことはできません。

そこで、消費税を導入することによって、本来、主要な納税義務者となる企業や一般の社会人以外からも税金を回収することが行われるようになったのです。

子供から高齢者、無職の者、主婦など買い物をする人が誰であろうと無差別に消費税は課税されます。そうすることによって、不足する国の財源を賄うことができます。

所得税と消費税でバランスをとる

所得税は基本的に収入の多い人ほど税額が高くなる仕組みとなっています。一見すると、これは公平な仕組みのようにも思えますが、稼いでいる側から言わせると、税金を払うために努力したわけではない!ということになります。

なぜ人より頑張って稼いだ者だけが多額の税金を負担しなければならないのかと、不満の原因ともなってしまいます。

しかし、消費税の場合は所得に関係なく、購入した物の金額に応じて公平にすべて人にかかる税金です。そこで、この消費税がそのような不満を緩和する役割を果たしているのです。

時代に対応していくため

もともと消費税と似たような税制が以前は実施されていました。

物品税と呼ばれるもので、ぜいたく品と判断される高額なものなどに付けられていた税金です。ところが一般消費者の生活水準が向上していき、この物品税の存在が時代に合わなくなってきました。

そこで、あたらしい間接税として消費税が導入されることになったのです。

脱税者や外国人にも課税できる

少子高齢化によって、国の財源が非常に厳しい深刻な状況にあることを先で述べました。国としては1人も漏らさずに国民全員から正規な税額を回収することが非常に重大となってきます。

しかし、当然ながら中には税額をごまかす人も出てきます。すべての納税者の詳細を調べ、脱税を突き詰めることは、人件費的にも時間的にも不可能です。

また、外国人滞在者の中には、旅行者と住民の中間的な立場の人も多くなります。それらの外国人の中には働いてお金を稼ぐ人もいますが、課税できていないケースも多々あります。

そこで、消費税を課税することによって、脱税者や外国人からも公平に一定額の税金を回収することができるのです。

消費税と軽減税率

何となく消費税が、これからの時代に必要な税金の1つであることが理解できました。

しかし、消費税の歴史を軽く振り返ってみる限り、3%から8%へとすでに増税が繰り返されています。このことが、日本経済を揺るがす不安材料となっています。

もし、10%の増税が実現されるならば、次に15%、その次に20%の増税が実施されたとしても不思議ではないからです。

確かに、軽減税率や、政府が行うポイント還元によって、消費税に対する将来的な不安は一時的に緩和されるかもしれません。しかし、多くの消費者の心底には、10%を許してしまえば15%への道を作ってしまう、という不安が渦巻いているといえます。

軽減税率やポイント還元はメリットか?

また、同時に軽減税率やポイント還元に対する否定的な意見もあります。

せっかく理由があって増税をしても、軽減税率やポイント還元を実施するのであれば、そもそも消費税を増税しない方がむしろ面倒もなくていいのではないか、という声も聞かれています。

複数税率やポイント還元の対象などが非常に複雑

経営者としての立場から考えるとすれば、複数税率やポイント還元の仕組みが非常に複雑であるため、今後の税率の区分や計算が非常に厄介になることが懸念されています。

もちろん、軽減税率対策補助金などでPOSレジなどを使い、厄介な手間が多少は削減できるかもしれません。あるいはポイント還元によって、売上向上につながるかもしれません。

確かにそうですが、筆者はここ数か月ずっと軽減税率系の記事を書き続けながら、もっとシンプルで明快な方法はないものかと、ふと疑問に思ってしまいました。

※軽減税率の対象がどこまでなのかを解説した記事もご覧ください。

※小売り・飲食関係の方はキャッシュレスに関する記事も参考にしてみて下さい。

まとめ

今回解説しましたように、何故ひそかに消費税増税延期の声が聞かれているのかが、何となく理解していただけたのではないでしょうか。消費税のしくみも改めて明確にできたように思います。

1人1人の将来に対する何気ない不安は、それが大きな数となれば、かなりの影響力を持ってしまいます。とくに日本のように世界市場に強い影響を与える国であれば、すぐさま世界市場へと反映されます。

金融市場は非常に繊細で敏感な生き物です。ちょっとした不安要素にも、大きく震えがちです。

さらに、米中の終わりなき関税合戦、そしてイギリスの激しい対立をはらんだBrexit、EUのあてもなき経済力の弱体化などとくれば、今後の金融市場の先行きを心配する人はますます増えるばかりです。

そうなれば「リーマン・ペーパ―2」がここぞとばかりに効力を発揮することになります。

あくまでも、「もしかしたら」というレベルにはなりますが、その他の経済事情が悪化すれば消費税増税の見送りも無きにしもあらず、といえるでしょう。

 

 

 

 

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