クラウドファンディングのやり方・始め方|支援者を募る方法

これから会社を立ち上げたいという方や、起業して間もないという方にとって、資金調達ほど困難なものはありませんよね。銀行はなかなか融資には応じてくれませんし、上場していないと投資家から多くの資金を集めることもできません。しかし、最近ではクラウドファンディングを活用して資金調達をするケースも増えてきました。

日本では「キャンプファイヤー(CAMPFIRE)」や、「FUNDINNO(ファンディーノ)」などのクラウドファンディングサイトが誕生し、なかには1つのプロジェクト案件だけで数千万円ものお金を集めることに成功した事例もあります。

では、どうやってクラウドファンディングを始めれば良いのでしょうか。今回は、始めての方でも分かる、クラウドファンディングのやり方・始め方をお伝えしていきます。

クラウドファンディングを始める手順(出資を募る方法)

クラウドファンディングとは、インターネットを介して、世界中から広く出資を募る方法です。クラウドファンディングサービスでは、商品やサービスの開発資金を集めたい事業者と、出資を行うことで何かしらのリターンを得たい出資者(支援者)をマッチングします。事業者は「プロジェクト」と呼ばれるアイデアを発信し、出資者はプロジェクトの一覧から、共感できるものを探します。

従来の資金集めは、銀行から融資を受けたり、会社を上場して投資家から出資を募る方法が一般的でした。しかし、クラウドファンディングサービスを利用すれば、中小企業や個人事業主はもちろん、アーティストや芸術家、クリエイターなど、誰でも資金調達が可能になるのです。

ただし、プロジェクトのアイデアを発信したからといって、必ずしも希望するお金が集まるわけではありません。出資者にとって魅力的なリターン(出資の見返りとなるもの)を用意したり、出資者が共感するような魅力的なプロジェクトを構築していく必要があります。

今回は、クラウドファンディングで出資者を募る方法をお伝えしていきますが、出資者が集まりやすい魅力的なプロジェクトを作ることにも焦点を当てていきます。

まず、プロジェクトを作る手順ですが、以下のように7つのポイントに分かれています。

  1. 目標・ゴールの設定
  2. 各クラウドファンディングを比較検討
  3. プロジェクトの登録
  4. プロジェクト審査
  5. 資金集めスタート
  6. 支援者への活動報告
  7. プロジェクト終了・返礼

特に一番目の「目標・ゴールの設定」は最も大切な要素です。クラウドファンディングでどれくらい資金を集められるかは、この目標やゴール次第といっても過言ではありません。プロジェクトの内容をしっかりと煮詰めて考える必要があるでしょう。

では、それぞれの手順について、以下で詳しくお伝えしていきます。

1.目標・ゴールの設定

何かビジネスを行うときは、必ず最初に事業構想を立てますよね。いわゆる目標やゴールのことです。クラウドファンディングも同じで、プロジェクトの内容や目標金額など、「何のために資金調達を行うのか」ということを明確にしなければなりません。

たとえば、上記のプロジェクト「BONX」は2015年に公開されて、わずか5日間で780万円の支援金を集めました。サポーターは480人を超え、当時は異例のスピード出世と言われたものです。

「BONX」は、Bluetoothイヤフォンと、専用のスマホアプリから開発されたグループ通話システムを提供します。最大10人と同時に会話できる機能や、携帯電波式の音声通話システムなど、出資者にとってもコンセプトが分かりやすく、なおかつセンスの良いデザインによって多くの話題を集めました。

こうしたクラウドファンディングを「購入型」と呼び、出資者は見返りにプロジェクト発案者が開発する新製品やサービスを受け取れます。つまり、出資者が欲しいと思う商品やサービスほど、多くの支援金が集まるということです。

「BONX」の例を見るように、すでにスーパーやコンビニ、家電量販店などで売っているような物では、なかなか支援者が集まりにくいでしょう。出資者とはいわゆる、あなたの会社のユーザーです。ユーザーにとって魅力的なものを提供し、それをうまく発信できるよう、目標やゴールを明確にしましょう。

2.各クラウドファンディングを比較検討

プロジェクトの内容や方向性が決まれば、次はクラウドファンディングサービスを選んでいきます。クラウドファンディングサービスは国内・海外を合わせて100種類以上が存在します。「購入型」や「株式投資型」、「寄付型」などを幅広く提供する総合型のクラウドファンディングもあれば、専門分野に特化したニッチなサイトもあります。

たとえば、日本でも人気の高いクラウドファンディングサイトとして、以下の5点が挙げられます。

サービス名 概要
CAMPFIRE 日本最大規模の クラウドファンディングサイト
COUNTDOWN 世界にチャレンジする人を応援する クラウドファンディングサイト
Kibidango 成功率80%を誇る クラウドファンディングサイト
Makuake サイバーエージェントが運営
READYFOR 日本初の クラウドファンディングサイト

各サービスの公式サイトには、トップページに現在掲載中のプロジェクトや、人気の高いプロジェクトなどが紹介されています。そうしたプロジェクト情報を参考にしながら、ご自身の考えているアイデアともっとも合いそうなところを選ぶと良いでしょう。

3.プロジェクトの登録

クラウドファンディングサイトに登録し、審査が終われば、今度はご自身のプロジェクトを登録することができます。もちろん、プロジェクトごとにも審査がありますので、記入漏れや入力ミスがないかしっかりと確認しておきましょう。

たとえば、日本最大級のクラウドファンディング「キャンプファイヤー(CAMPFIRE)」では、以下のように必須項目が決まっています。

  • タイトル
  • カテゴリー
  • 目標金額
  • プロジェクト概要
  • サムネイル画像
  • リターン
  • ご連絡先
  • CAMPFIREを知った媒体など
  • 規約に同意

項目数はそれほど多くはないですが、プロジェクトの発案は決して簡単にできるようなものではありません。たとえば、目標金額一つ決めるだけでも、商品やサービスの開発資金を正確に予算に組んだり、出資者に用意するリターンの運送費や保管代なども考える必要があります

ただし、一度プロジェクトを登録してしまえば、あとは支援者が現れるのを待つだけです。その経過を安心して見れるように、あらかじめじっくりと時間をかけてプロジェクトを考案しましょう。

4.プロジェクト審査

クラウドファンディングサイトでは、1つのプロジェクトごとに必ず審査を行います。クラウドファンディングは利用者(出資者)からすると、非常にリスクの高い投資です。そのため、運営者側が厳正な審査を行い、不正な事業者やプロジェクトの将来性などをチェックしています。

審査時間はサイトによって異なりますが、キャンプファイヤーだと翌営業日~翌々営業日までには返事が返ってくる場合が多いです。かなり早いですよね。

その返事の内容は、一発で審査にクリアすることもあれば、内容の修正や変更を求められる場合もあります。たとえば、スケジュールをもう少し伸ばした方が良いとか、トップ画像を変更可能か、などが聞かれます。

ちなみに、クラウドファンディングサイトの審査基準として、基本的には以下のような条件で判断を行っています。

  • 掲載不可な内容ではないかどうか
  • プロジェクトを掲載して、目標金額を達成した場合、内容通り実現されるかどうか
  • 独自の精査基準を満たしているかどうか

5.資金集めスタート

プロジェクトの審査が通過すると、運営側から「投稿用資料」が送られてくることが多いです。この中には、クラウドファンディングの基本ルールの確認や、投稿シート、画像添付フォルダなどが含まれています。この資料通り、タイトルや本文、リターン、目標金額などを記載していけば、その後プロジェクトが正式にアップされるということです。

ここまで終わると、ようやくプロジェクトが公開され、実際に資金集めをスタートできます。

6.支援者への活動報告

クラウドファンディングは、プロジェクトを公開したから、あとは放ったらかしというわけにはいきません。出資してくれた方に対して、しっかりと活動報告をしなければならないのです。活動報告をアップすると、そのプロジェクトページに逐一記録され、その後公開されます。

この活動報告は、すでに出資してくれた支援者のほかにも、いまプロジェクトの内容を見ているユーザーに対しても効果的です。たとえば、「あと○○円で目標金額に達成致します」や、「すでに○○人の方にご支援いただいております」という内容を加えると、出資を検討している方にとっても、背中を押してくれる言葉となるでしょう。

活動報告を行う頻度は事業者の自由ですが、「プロジェクトが今どのような状況か」ということを、マメに公開していくことが大切です。その誠実さがやがて拡散され、多くの支援者獲得に繋がることもあります。

7.プロジェクト終了・返礼

プロジェクトの期間が終了すると、そこで新たに出資することが中止されます。今までに集まった支援額を合計し、もともと設定していた調達目標額と見比べます。そして、目標額に届いていれば成功、逆に届かなければ失敗です。

ただ、プロジェクトには2つの形式があり、「All-or-Nothing」と「All-In」に分かれます。「All-or-Nothing」とは、目標金額に到達しなければ、今までの支援金を出資者に全額返す方法です。一方、「All-In」とは、目標金額に届かない場合でも、事業者は今までの出資金を受け取れる制度です。

クラウドファンディングサイトによって、どちらの方式が採用されているかが異なるため、事前に確認しておきましょう。

さて、プロジェクトの期間が閉じた場合、仮に成功したとしても、失敗したとしても、支援してくれた方に対してお礼をします。たとえば、お礼の文章をプロジェクトに掲載したり、直接メールや手紙を書くこともあります。このお礼は「リターン」とは別なので、注意してください。

お礼を書くかどうかは自由ですが、仮にプロジェクトが失敗した場合でも、お礼の手紙を書いたことで信頼が生まれ、次回のプロジェクト成功に繋がる可能性もあります。必ず、出資者に対してはお礼を言うようにしましょう。

プロジェクト構想時に行うこと

プロジェクトを新たに立ち上げる場合、まずは入念な準備から始め、目標金額やリターンなど細かい部分まで決めていきます。この段階でプロジェクトの詳細が凝縮されるため、この構想時にい行うことが非常に重要な要素となるのです。

ここからは、プロジェクト構想時に行う作業を順に紹介していきます。

プロジェクト発案の準備をする

準備とはいえ、この作業には約7~10日ほど必要です。

  • 1日目:プロジェクトに興味を持ってくれそうな人たちのメールアドレスを集める。
  • 2日目:Twitter、FacebookなどSNSのアカウントを取得する。プロジェクトに興味を持ちそうな人をフォロー。
  • 3日目:あらかじめ支援者リストを作成しておく。また、プロジェクト中に発信する情報のスケジュールを組む。
  • 4日目:プロジェクトが一目で分かるよう、100~200文字程度で内容を表したコピーを考える。
  • 5日目:プロジェクの作成を支援してくれる仲間を集める。
  • 6日目:熱心に応援してくれる人、高額な支援を期待できる人たちのリストを作成。
  • 7日目:プロジェクトページの下書き。タイトルや目標金額、募集期間、リターンなどを決める。

目標金額を設定する

目標金額を決める場合は、以下の3点に注意して進めていきます。

  • 最低限必要な経費を計算する
  • 客観的に見て共感や信用が得られる金額を考える
  • 期間中の支援総額を予想しておく

たとえば、プロジェクトが成功すると、出資者にリターンを渡す必要があります。それが商品などの場合だと、運送費や梱包代などは事業者が負担しなければなりません。そのため、プロジェクト終了後に資金が不足する、ということがないよう、これだけは絶対に必要な経費などを決めておきましょう。

リターンを決める

リターンとは、出資者に対する見返りのことです。たとえば、映画製作プロジェクトなどでは、支援者に対して公開記念チケットや、エンドロールのクレジット、キャラクターの限定アイテムなどを用意することが多いです。

リターンを考える上で重要な条件として、以下のようなことが考えられます。

  • 5〜10種類の範囲で選択肢を設定すると様々なターゲット層にアプローチしやすい
  • 3000円以上の範囲で価格を設定すると集まりやすくなる(安過ぎると価値が出にくい)
  • リターン毎に限定数(在庫数)を設定し、希少性を持たせる
  • 送料・消費税込みの金額もしっかりと設定しておく
  • 早期支援者にには限定アイテムを用意するなど

プロジェクト掲載中に行うこと

クラウドファンディングでは、基本的にはプロジェクトが公開された後は、期間が終わるまで待っておくだけで済みます(ときには活動報告が必要)。しかし、プロジェクトは公開直後と、期間終了間際にもっとも支援者が集まりやすいため、そのまま放置しておくのはもったいないです。

たとえば、プロジェクト公開に合わせてプレスリリースを行うなどの方法がとれます。新聞やWebメディアなどに依頼したり、最近ではプレスリリースを外注できるサービスもあります。

また、期間終了まで積極的にSNSなどで情報発信を行うなど、とにかく多くの人に注目されるような行動が大切です。

プロジェクト終了時に行うこと

先ほど、プロジェクト終了後にお礼の手紙を出すことを紹介しました。ほかにも、出資してくれた人に正確にリターンを配ったり、丁寧な対応や発信が必要です。しかし、こうしたリターンの配布やお礼以外にも、もっと大切なことがあります。

それが事業運営です。今までのプロジェクトは単なるスタート地点に過ぎず、プロジェクトが終了した今こそが本番と言えます。

たとえば、株式投資型クラウドファンディングでは、未上場の企業などの資金調達手段として利用されます。そして、出資者に対してはその企業の株式がリターンとして受け取れるという仕組みです。いわゆるベンチャー投資というものですが、当然、未上場なのでそのままでは株式を売って売却益を得ることはできません。

そのため、プロジェクトを発案した企業は、目的の資金を集めることができたら、次に行うべきは「上場」となります。IPOやM&Aなどによって上場し、その株式が取引できるようになって初めて、「株式売却益」という真のリターンが出資者にもたらされます。

このことを見ても、プロジェクトの終了後こそが本番、ということが分かりますよね。プロジェクトが成立したことに満足して、その先、経営難に陥って上場できなければ出資者のリターンは無いものとなってしまうのです。

そのため、プロジェクト終了後も気を抜かず、しっかりと出資者に約束したことを守る努力が必要となります。

クラウドファンディングのやり方まとめ

クラウドファンディングの始め方・やり方など、ご理解いただけたでしょうか。クラウドファンディングには審査や定期的な情報発信など、意外と手間がかかるだけに、事前にしっかりと準備をしておきたいものです。

しかし、プロジェクトについてじっくりと検討し、多くの支援者が集まり、それが形になれば、これほど嬉しいこともありません。もちろん、その時は支援者の方も一緒に喜んでくれます。プロジェクトを立ち上げるときは、そんな支援者の喜ぶ顔をイメージしながらアイデアを膨らませていきましょう。

クラウドファンディングを利用した資金調達については、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。

参考:【注目!】クラウドファンディングを利用した資金調達とは? 種類や主要なサービスの特徴などを紹介!|株式会社パラダイムシフト」

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