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消費税が10%への増税に対して適用となる軽減税率は、主に飲食料品が対象となります。飲食料品とひとことでいっても、飲食料品の種類は多岐に渡り、どこまでを飲食料品と呼ぶのか判断に悩む人も多いでしょう。
飲食料品といえば、普段私達が手にする飲料や食品類のことになるのでしょうが、それらのすべてが軽減税率の対象になるわけではありません。
そこで今回は、そもそも軽減税率の対象となる飲食料品とはどのようなものなのか、そして、対象となるのはどこからどこまでなのか、皆さまの疑問にお答えしていきます。
併せて、ありがちな質問などを参考に挙げておきますので、判断に迷う時の参考にして下さいね。
軽減税率の対象
軽減税率制度とは、特定のものに対して消費税8%が適用される制度のことをいいますが、対象となる商品は何なのかをまずは大まかに確認しておきましょう。
軽減税率8%の対象は、
- 外食以外の飲食料品
- 定期購読の新聞
の2種類があります。それぞれ対象となる規定をご説明いたします。
新聞
新聞に軽減税率が適用される規定は、
「週2回以上発行されるもので、一般社会的事実を掲載しているもの」
「定期購読契約に基づくもの」
であることです。
つまり、新聞販売店などによる定期購読が対象となり、キオスクやコンビニなどで購入する新聞等は除外されます。また、新聞が電子版の場合も軽減税率の対象となりません。
飲食料品
もう1つ対象となる品目は飲食料品ですが、軽減税率が適用となる飲食料品は以下のようになります。
「食品表示法に該当する飲食料品で、酒類を除いたもの」
「外食、ケータリング等で提供される飲食料品は含まれない」
となっており、飲食品を持って帰えるのか、それとも店内で飲食するのかによって適用される税率が異なることになります。わかりやすく表で見ておきたいと思います。
軽減税率8% | 消費税10% | ||
飲食料品 |
|
飲食料品ではない |
|
飲食料品の讓渡 |
|
飲食料品の讓渡ではない |
|
つまり単純に飲食料品を購入した際にのみ軽減税率が適用され、同じ飲食料品でも、それを購入して持ち帰れば軽減税率の8%、もし店内で飲食する場合は消費税10%が適用されることになります。
食品表示法
軽減税率でいう飲食料品とは、食品表示法で規定されてある品目全般を指しています。では、この食品表示法とは何なのでしょうか。
食品表示法とは、2015年4月1日施行となった食品に関する日本の法律のことをいいます。
この食品表示法で規定する食品とは、すべての飲食物のことを指しており、原則として人が口に入れるものに限られています。従って、工業用で使う塩や油、動物に与える食品などは食品表示法に該当しないことになります。
食品表示法に該当する飲食料品
食品表示法に該当する食品は、
- 加工食品
- 生鮮食品
- 添加物
- 一体資産
の4つに区分されています。それぞれの特徴をご説明しておきます。
加工食品
加工食品は、野菜や原材料となる食品を加工してまったく別の製品となる飲食料品にことをいいます。
竹輪やかまぼこ、ハム、パン、おにぎり、麺類、お弁当、総菜、野菜ジュース、鉄分牛乳、豆乳プリン、カレー粉など・・・実は身の回りにある飲食品のほとんどが加工食品なのです。
生鮮食品
農産物や畜産物、水産物などその食品の原型をとどめている食品のことを生鮮食品といいます。
ジャガイモ、キャベツ、玉ねぎ、にんじん、牛肉、鶏肉、鳥モモ肉、モツ、カシワ、サバ、サンマ、マグロ、サケなど・・・もちろんカットされてある場合もありますが、熱や調味料などを加えず生のまま(収穫したまま)の状態で売られている飲食料品のことをいいます。
飲料品であれば無加工の牛乳がも生鮮食品となります。
もちろん、八百屋さんや魚屋さんで買う食品も生鮮食品として食品表示法にあたり、軽減税率の対象となります。
八百屋さんや魚屋さんの場合はもともと農協や水産市場を通して仕入れたものをそのまま対面で売っています。
仕入れの段階で、食品表示が確認されてあれば、食品表示をつけなくとも販売することができるのです。
基本的にビニールや紙で包装する飲食品に対しては表示をつけることが義務となっています。
添加物
さらに、加工食品によく含まれている添加物も食品表示法に該当する飲食物です。
添加物とは食品の製造の過程、または加工や保存を目的に使用される人体に害のない成分のことをいいます。
着色料、香料、甘味料、参加防止剤、ビタミン、鉄分、ミネラル、アミノ酸、調味料、保存料、安定剤、増粘剤など多種多様な添加物の種類があります。
一体資産
もう1つ食品表示法の規定にある品目の中には、実際に飲食料品ではなくとも飲食料品の一部として分類されるものがあります。
もともと販売される加工食品などで分離することができない品目は、条件に沿うものであれば飲食料品の一体資産として軽減税率の対象にできるのです。
- キャラメルやチョコレートなどについているシールやカード、おもちゃなどの「おまけ」
- お弁当や食事とセット料金になっているアルコール飲料
- お茶のティーバックとティーカップの詰め合わせなど
※全体を占める食品の割合や、対象外の商品の金額などの規定が定められています。
対象かどうかを区別するポイント
食品表示法で規定されてある飲食料品がどのようなものか、大体のことがわかったところで、その食品が軽減税率の対象かどうかを区別するポイントをいくつかご紹介いたします。
酒類や医薬品ではない飲食料品
まず、その商品が医薬品や酒類ではないことが飲食料品を区別するポイントとなります。
酒類は、アルコール成分が1%以上のものはすべて消費税10%の適用となります。アルコール成分が1%未満であれば、ビール・酒などの名称がついていても飲料品として軽減税率の対象となります。
医薬品は確かに人の口に入れるものですが、食品表示法ではなく、医薬品医療機器等法・薬機法(旧 薬事法)に該当する医薬品に分類されます。一般的に販売される医薬品は「医薬品」または「医薬部外品」の名称がついているので確認しましょう。
微妙なもので、栄養ドリンクや美容ドリンクなどがあります。これらは医薬部外品と表示があるものは、すべて消費税10%、医薬部外品の表示がなければ軽減税率8%となります。
飲食する場所
次に、飲食料品を購入する場合に、それを飲食する場所がどこなのかで判断することができます。原則として、テーブルやイスなど飲食用の設備を利用して食品が提供される場合はすべて軽減税率の対象外となります。
レジ袋やエコバックに入れて持ち帰る飲食料品は軽減税率8%です。コンビニやスーパーなどでは店内で飲食する設備がある場合があります。店内に完備されてある設備を利用して飲食する場合は、消費税10%です。
ただ、立ったまま店内で購入した飲み物を飲んだすれば、これは除外され軽減税率の対象だと言えます。
レストランやカフェ、スポーツジムなどの売店、公共施設のなどの売店、ホテルや旅館内の飲食店など、テーブルやイスを利用する場所であっても、その食品を持ち帰った場合は軽減税率の対象となります。
※現在、この辺の境界線が微妙であることから、どのように対処すべきかが議論されている部分もあります。
食品表示法に従う
さらに、これは食品と呼べるかどうか悩んでしまうものも当然いくつか出てくるでしょう。その場合は食品表示法に記載があるかどうかを判断のポイントとすることができます。
例えば、スッポンや海ヘビは食品表示法ではその他の水産動物類に該当し、軽減税率の対象とすることができる反面、食用であるハチノコやイナゴなどの昆虫類はそもそも記載がないため法的には飲食料品に分類できません。
また、生きた魚介類は食用であれば水槽の中にあっても軽減税率の対象ですが、牛豚、鳥などの生きた家畜の場合には食用であっても軽減税率の対象とすることができません。
人の食用として販売されるもの
最後に、その食品が飲食料品に分類できるのかどうかを判断する一番わかりやすい方法は、それが人の食用として販売されるものかどうかを確認してみることです。
ペットの犬にあげる食品でも、スーパーで購入したビーフジャーキーは人の食用として販売されるものなので、飲食料品です。しかし、ペットショップで購入した犬用のビーフジャーキーは飲食料品には該当せず、軽減税率の対象にはなりません。
また、水槽の中のヒラメは人の食用として軽減税率の対象ですが、観賞用の金魚は食べる習慣がないため、人の食用とはならず消費税10%がつきます。
その他、詳しくはご地域の保健所が公開している食品表示法の規定を確認してみましょう。
※食品表示法の概要(東京都の例)
あらかじめ、政府が公開している軽減税率情報を確認しておくと安心ですよね。不明な点があれば問い合わせることも可能です。
※政府広報オンライン 軽減税率制度
※国税庁 軽減税率電話相談
微妙な酒類・医薬品の例
それでは、判断に微妙なものが多くなる酒類や医薬品について解説しておきたいと思います。
酒類の区別
人によってはお酒も必要不可欠な食事の一部だと認識する場合もあるでしょうが、全面的にアルコール飲料は軽減税率の対象外となります。一般的には、お酒やたばこは嗜好品として分類されているからです。
アルコール成分が1%未満
先述したようにアルコール成分が1%未満のお酒の場合は飲料品として扱われ、軽減税率8%が適用されることになります。
最近では軽減税率にあやかってかどうかは不明ですが、飲料大手などノンアルコールのビールが増えています。
- ノンアルコールビール
- ノンアルコール酎ハイ
- ノンアルコール スパークリングワイン
- その他のお酒でアルコール成分1%未満のもの
- 甘酒でアルコール成分1%未満のもの
など・・・
食品の原料に使うお酒
ワインや日本酒などは、飲料としてではなく料理や加工食品の原料として使う場合がありますね。その場合でも、基本的にアルコール成分が1%以上であればすべて軽減税率の対象外となります。
みりんや料理酒はもともと料理用として販売されていますが、これらもアルコール成分が1%以上であればお酒、1%未満であれば飲食料品と判断することができます。
お酒入りのお菓子
意外な軽減税率の対象となるものに、お酒入りのお菓子があります。
ウイスキーボンボンなどは実はアルコール成分が2,3%の商品もあるのですが、これは菓子類に分類され軽減税率8%が適用となるのです。その他ラム酒入りのクッキーやマーマレード、洋菓子等はいかにアルコール成分が高いとしても軽減税率が適用されます。
ただし、原料のお酒自体には消費税10%がかかります。
医薬品の区別
医薬品の中にも、健康食品と呼ぶものや健康飲料などが含まれており、判断が微妙なものが多くなります。
栄養ドリンク
栄養ドリンクは大まかに、「医薬品」「医薬部外品」「清涼飲料水(飲料)」の3種類があります。「医薬品」と「違約部外品」は飲食料品ではないので消費税10%です。「清涼飲料水(飲料)」の表示があるものは、軽減税率の対象とすることができます。
医薬品・医薬部外品の例
ユンケル、リポビタンD、チオビタドリンク、アリナミン、リゲイン、ルル内服液、グロモント、など・・・
軽減税率の対象例
レッドブル、モンスター、バーン、タフマンV、イミダペプチド、アミノバリュー、メガシャキ、など・・・
健康食品・美容サプリ
健康食品や美容サプリは医薬品としてのイメージが強いのですが、これらはあくまでも食品に分類されているのです。
健康食品や美容サプリのほとんどは健康を補助する食品となり、「保険機能食品」「特別用途食品」「一般の健康補助食品」と大まかに3種類があります。
これらは、「医薬品」「医薬部外品」の表示がない限り、すべて軽減税率の対象となります。
軽減税率よくある質問
これまでご説明したように、それぞれの品目や飲食の場所などによって、概ねのところで対象かどうかを区別していくことができます。でも、状況によっては判断が難しいのが現状です。
そこで、比較的質問されがちな疑問を国税庁の公表データや、軽減税率関連サイトの情報を参考にご紹介しておきたいと思います。
飲食料品の讓渡とは何?
軽減税率の規定として、よく出てくる言葉に「飲食料品の讓渡」というフレーズがあります。これは一体どういう意味なのでしょうか。
ここでいう飲食料品の讓渡とは、飲料や食品などの提供方法や販売方法のことをいいます。あくまでも販売者側の立場にたった時に使われる用語です。
飲食料品の讓渡はレジカウンターで行われるのか、宅配なのか、店内での飲食用設備を介して行われるのかによって、税率が変わってくることになります。
飲食料品とは具体的に?
軽減税率の対象となる飲食料品とは、今回ご説明したように食品表示法の規定にあるお酒以外の飲食料品全般を指していますが、具体的にどんなものがあるか、いざ思い浮かばない場合もあるでしょう。
具体的な飲食料品の項目をご紹介致します。
- 米や穀物
- 果実や野菜などの農産物
- 食肉や生乳
- 食用鳥卵などの畜産物
- 卵類も含む魚類や貝類、改装などの水産物
- 飲食料品に使用する添加物
- 飲食料品に付随する一体資産
など、基本的に一部を除き、人の口に入れる飲食料品であることが規定されています。
果物や野菜の苗木や種は?
果物や野菜の苗木は食することができますので、食品なのかなと思ってしまいます。ところが、これらは軽減税率の対象外となります。
食品とは人の口に供されるものをいい、果物の苗木や種は栽培用や園芸用として販売されているので、この場合は消費税10%がつきます。
でもそれらの苗木や種を加工食品として販売する場合には、軽減税率の対象となります。代表的なものに、ほうれん草があります。これは土の中にあれば苗木ですが、掘り起こしてザルに盛れば食品に変わります。
種類でも、落花生、グリンピース、カボチャのタネ、松の実のタネ、など園芸用として売れば対象外ですが、食品として売れば軽減税率の対象となります。
水は飲食料品になる?
人の飲料として、ペットボトルなどで販売されている水は飲食料品となり軽減税率の対象となります。
一方、水道水は生活用水に分類されているため、飲料として使った場合でも対象外となり税率10%が適用されます。ただ、これも讓渡方法によって異なり、水道水をペットボトルに入れて飲料として販売した場合には飲食料品と見なされ軽減税率の対象となるのです。
ウォーターサーバーの利用料は?
販売されている水が飲食料品として分類されるのであれば、当然ウォーターサーバーの利用も軽減税率の対象なのかなと思ってしまいますよね。ウォータ―サーバーは設備のレンタル料金と水の宅配料金が一緒になっている場合もあります。この場合はどなるのでしょうか。
ウォーターサーバーの利用に関しては、完全に分離することが必要になります。
ウォーターサーバーのレンタル料金は→資産の貸し付けとなり消費税10%です。
ウォーターサーバーで使う宅配水→飲食料品となり軽減税率8%です。
自動販売機や通販の飲食料品は?
自動販売機やオンライン通販などで販売されている、お菓子やジュース、パン、インスタント食品などは、単純に飲食料品を販売しているものであることから、軽減税率の対象となります。
オンラインでもカタログギフトの場合は飲食料品であっても基本的には対象外となります。
カタログギフトではプレゼントを受け取る人が自由にリストから商品を選べるシステムになっています。この場合は、サービスを讓渡していることになり、飲食料品の対象にはなりません。
というように、いくつか疑問になりやすい点をご紹介致しましたが、もちろん、数えきれない程の様々なケースがあり得ます。
以下のサイトは国税庁が公開している軽減税対策Q&Aです。参考にしてみて下さい。
また、経営者の方で軽減税率対策補助金について詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
軽減税率が適用されて、特定の飲食料品は従来通り8%の税率となるのは嬉しいことですが、その対象を区別するのが若干ややこしいのが難点となっています。
対象となるのが飲食料品であるだけに、具体的な例を挙げていけばキリがないともいえ、すべてを理解するのは不可能でもあります。
今後の対策としては、疑問が上がる度にその都度1つずつ解決していくことが、上手に対応していくポイントになるでしょう。特に増税直後には、多少の混乱がすでに予想されており、間違えて計算してしまったとしても、大事には至らないといえます。
しかし、せっかく節税できるのであれば上手に活用していきたいものです。ぜひ、この機会に基本的なポイントだけでも抑えておくことをおすすめします。