民間の介護保険は本当に必要なのか?必要な人とそうじゃない人

民間の介護保険とは?

「公的な介護保険があるのに、民間の介護保険は必要?」

介護に関わる費用や老人ホーム等の支援を行ってくれるのが、公的な介護保険です。ただ、近年は高齢者が増加しており、老人ホームに加入する際のハードルが上がったり、将来的に受けられる保障が縮小する可能性も指摘されています。

そのため、公的な介護保険のみではカバーしきれない部分も出てきています。例えば、親の介護によって仕事を辞めてしまい親・子の両方が経済的な負担を強いられ、困難な状況になってしまう世帯も少なくありません。

そこで、注目したいのは「民間の介護保険」という選択肢です。民間の介護保険によって、公的なものではカバーしきれない部分をカバーしていこうという保険であり、注目度が高まっている保険だと言えるでしょう。

ただ、要介護(介護を必要とするような状態)になるのか?については疑問が残りますし、公的なものもあるのでわざわざ民間の保険に加入しなくても良いという考え方があるのも事実だと言えるでしょう。

なのでこの記事では、民間の介護保険の概要・特徴・必要性等について徹底的に解説していきたいと思います。まず、初めに公的な介護保険や民間の介護保険の概要について押さえていきましょう。

介護保険とは

介護保険とは、そもそもどんな保険なのでしょうか?この点についてしっかりと理解していないと、民間の介護保険うんぬんの前に「介護」というものについての理解やリスクを押さえる事が出来ないと思います。

介護保険について簡単にまとめると「要介護・要支援状態になった時に、必要になる費用」を保障してくれる保険の事です。

介護のリスク

若くて健康な間はあまり意識の出来ない事ですが、誰にでも介護が必要な状態になるリスクがあります。介護を必要とするような人が少ない社会なら、現在でも公的な介護保険のハードルの引き上げ等は行われておらず、保険料の引き上げ等も行われていないはずです。

しかし、公的な介護保険の様々な支援のハードルが上がっている点や介護保険の保険料が上がると言われているという事は、それだけ「介護を必要としている人」が存在しているという事です。

では、実際に介護にはどのようなリスクが考えられるのでしょうか?要介護状態になった時に考えられるリスクは「経済的な側面」と「誰が介護をするのか?」という2点に分かれると思います。

まず、初めに挙げられる経済的な側面というのは、単純に介護に掛かる費用の事です。介護に掛かる大きな費用・経済的な負担は以下のようなものが挙げられます。

  • バリアフリー対応等の家のリフォーム費用
  • 車椅子等の介護に関する物品の購入
  • 老人ホームやデイサービスの費用
  • 働いている人なら収入が無くなるリスク

もちろん、貯蓄や年金等がしっかりと期待出来るなら負担できないようなものではありませんが、貯蓄等を計画的に行えていない世帯だと経済的に困窮する可能性が高いと言えるでしょう。

また、もう1つ挙げられるリスクは「誰が介護をするのか?」という点です。というのも、現在高齢者が高齢者を介護するというような形が問題として注目される程「介護をする人」が不足しています。

要介護にはいくつかランク(1~5ランクまである)が存在しており、公的な介護保険に加入していても要介護3以上でないと特別養護老人ホームに入る事が出来ません。

そのような点を踏まえると、現実問題で介護を行うのは「ご家族」という事になってくると思います。ただ、現在は共働き世帯も少なくなく、介護を行ってくる人が見つからないという問題が発生する事も少なくありません。

そのため、介護には経済的なリスクと誰が介護をするのか?という2つのリスクが存在します。

公的な介護保険

上記したようなリスクに対応するために、始まったのが公的介護保険制度です。日本国民で40歳以上であれば必ず加入する必要があり、自動的に健康保険と同じように保険料を支払う事になっています。

公的な介護保険は市町村が運営しており、介護が必要になった際に申請する事で市町村が調査を行い、その結果市町村が支援が必要だと判断すると、支援を受ける事が出来るという保障を受ける事が可能です。

公的な介護保険は、50%加入者の保険料によって運営されており、残りの50%は税金によって保障が受けられる事になっています。

公的な介護保険では、訪問介護やデイサービス、老人ホーム等の施設・サービスを受けられるようになる事はもちろんですが、介護に必要な道具のレンタル(車椅子等)、介護用具の購入費用を負担、リフォームに伴う費用の負担等の保障が受けられます。

また、ケアプラン等の作成も行ってくれるので、もしも介護が必要になった場合にまず必要になる保険だと言えるでしょう。

民間の介護保険

介護保険には大きく分けて「公的な介護保険」と「民間の介護保険」が存在しますが、公的な介護保険と民間の介護保険の一番大きな違いは義務か?否か?という点だと思います。

民間の介護保険も保障を行う方法は公的な介護保険と異なりますが、介護に必要になる費用やリスクをカバーするという点では似通っています。

しかし、公的な介護保険の場合は健康保険のように加入に関しては義務であり、強制的に加入させられる事になっています。一方で、民間の介護保険に関しては私的な保険であり、必ず加入しないといけないという訳ではありません。

そのため、他の生命保険や医療保険と同じように保険料を支払い、保険事故が発生した際に契約内容に沿った保障を受けるというシンプルな保険になっています。

後に、民間の介護保険の必要性について触れますが、「必ず加入しないといけないものでは無い」という点だけは押さえておきましょう。

民間の介護保険の特徴

先程、公的な介護保険の概要や民間の介護保険の特徴についてご紹介させて頂きました。これからこの記事の本題でもある民間の介護保険についてご紹介していきたいと思います。

民間の介護保険の特徴をチェックしながら、民間の介護保険についてしっかりと理解を深めていきましょう。

民間の介護保険の特徴についてまとめると「好きな保険・保障を選択しやすい」というポイントにあると言えます。公的な介護保険は加入に関して強制である分、どんな人にも必要性の高い保障を提供してくれます。

ただ、それは裏を返すと「万人には受けるが、一人ひとりの保障を組み立てる事は出来ない」という事に繋がっってきます。一方で、民間の介護保険であれば、好きな商品を自ら選択して加入する事が可能になるので、自分にあった保険・保障を見つけやすくなります。

民間の介護保険の保障タイプ

一例として民間の介護保険の保障タイプについて触れていきたいと思います。民間の介護保険では主に「一時金タイプ」と「年金タイプ」が存在しています。

この2つの保障タイプによって、同じ民間の介護保険ではあるのですが、その特徴は大きく異なり人によっての必要性も異なってきます。両者の特徴について簡単にまとめたいと思います。

一時金タイプ

保険会社の定める要介護状態になった場合に一時金(大きなお金)が入ります。この点が最も大きな特徴であり、どんな保険にも存在するタイプではありますが、何かあった時に大きなお金が入るというのは、大きなメリットになると言えるでしょう。

介護というのは、公的な介護保険が保障しているような部分にも細かな雑費が掛かってきます。というのも、公共の交通機関が利用しにくい場合はタクシー等を利用する必要があり、交通費が大きな負担になるという事も少なくありません。

このように、交通費等の雑費が大きく掛かってくるケースがあるのです。また、いくら公的な介護保険が保障してくれると行っても、要介護の状態によっては高額な介護用具が必要になるケースも少なくありません。

そのような購入の際は、一時金を利用して負担を軽減する事になってきます。

年金プラン

年金プランの介護保険について簡単にまとめると「要介護状態になった場合に、一定金額が一定期間給付される」というものになっています。このタイプは一時金のような大きな金額を一回に受け取る事が出来ません。

ただ、一定額が安定的に給付されるので、無駄遣いをしてしまう可能性が少なくなり、一定額が安定的に入ってくるというのは安心感にも繋がります。

保険期間を設定出来る

保険期間とは、簡単にまとめると「保険に加入している期間」の事です。払込期間を含めた保険に関わっている期間の事であり、民間の介護保険であればこの保険期間を選択出来るようになります。

介護保険の保険期間は、一定期間のみを保険期間とする「定期タイプ」と一生涯の保障が可能になる「終身タイプ」が存在しています。長期間の加入を考えた時に終身タイプがお得になり、短期間の場合は定期タイプがお得になります。

人によっては「介護のリスクはいつ発生するか分からないから終身タイプの方が良い」と感じるかもしれませんが、一概には言えません。

というのも、公的な介護保険には特定の疾病を除いて、基本的に保障を受けられるのは「65歳以上」という条件があります。そのため、一部のニーズとしては「65歳までの期間で要介護となった場合に、備えたい」という方も存在しています。

そのため、民間の介護保険であれば様々なニーズに沿った保険期間を設定する事が可能であり、公的な介護保険にはない大きなメリットになると言えるでしょう。

死亡保障もある

保険会社や商品によって異なってくるので、一概には言えない部分ではあるのですが、基本的には「死亡保障」が付いてくる事が多いです。死亡保障というのは、死亡した場合にまとまった保険金を受け取れる保障の事です。

この保障の必要性については人によって異なります。というのも、生命保険に加入している場合や十分な貯蓄がある場合は必要ないケースも少なくないからです。

ただ、公的な介護保険にはない保障ではあるので、人によっては嬉しい保障である事には変わりありませんし、保険料が余分に高くならない限り無いよりはあった方が良いと言えるでしょう。

民間の介護保険の必要性

先程、介護保険の特徴についてご紹介させて頂きました。先程、ご紹介した介護保険の特徴を押さえながら、介護保険の必要性について解説していきたいと思います。

本当に必要なのか?

これまで民間の介護保険の特徴についてご紹介し、近年公的な介護保険の保障を受けるハードルが上がってきている事をご紹介させて頂きました。

しかし、公的な介護保険はかなり広範囲を保障しており、仮に介護が必要な状態になったとしてもしっかりと生活していけるだけの保障は用意されていると言えます。(貯蓄や資産がある前提)

そのため、公的な介護保険だけでは十分ではないというケースは、元々の貯蓄や資産が乏しいというケースが多いです。(もちろん、例外も存在します)

公的な介護保険だけでは十分ではなく、民間の介護保険が必要になるケースは以下の2つになってきます。

  • 介護サービス以外の費用が大きく掛かる
  • 65歳未満の保障が不十分になりがち

介護サービス以外の費用が大きく掛かる

介護が必要な状態である要介護になる原因は様々です。最も代表的なものであれば認知症が挙げられます。ただ、介護が必要になるケースはそれだけではありません。

例えば、健康的な生活を送っておらず、体の様々な部分で問題が発生してしまい自身で「食事・排泄・着替え」等が出来なくなり、生活が難しくなってくるというケースもあります。

このようなケースでは、様々な疾病を併発しているという事も少なくありません。そうなってくると、生活費が必要になってくるのはもちろんですが、医療費が大きく掛かってくるケースもあります。

この医療費によって貯蓄や年金を支出しており、介護費用にお金を回す余裕がないという方も少なからず存在しており、そのようなリスクが考えられる方は民間の介護保険を検討した方が良いでしょう。(健康的な生活を送りづらい人・持病がある人)

65歳未満の保障が不十分になりがち

また、65歳未満の保障が不十分になりがちというのも、民間の介護保険が必要になるケースとして挙げられると思います。既に上記していますが、65歳未満の場合は特定の疾病によって要介護状態にならないと保障を受ける事が出来ません。

そのため、65歳未満で介護状態になった場合は、公的な介護保険から保障は期待出来ないと考えた方が良いでしょう。このようなリスクは誰にでも存在していますが、特に「介護してくれる家族・身内」がいない方は、大きなリスクになります。

65歳までの期間なら、家族に介護を行ってもらえるという方ならこのリスクはそれほど重要視するべきではありませんが、身の回りの方から十分な支援を期待出来ない場合は必要性が高くなってきます。

必要な人とそうじゃない人

最後に、民間の介護保険の必要な人について具体例を挙げながら、ご紹介していきたいと思います。

必要な人

民間の介護保険が必要な人は、以下のような特徴に該当する方だと言えます。

  • 貯蓄・資産・年金が十分ではない
  • 身の回りに要介護状態となった場合に、支援を期待出来る人がいない
  • もしくは、身の回りの人に迷惑を掛けたくない方

貯蓄や資産、年金が十分ではない場合は、そもそも介護に限らず老後仕事が出来なくなった場合に、経済的に困窮になってしまう可能性があり、要介護状態になってしまったら尚更そのリスクは高まると言えます。

また、周りに支援を期待出来る人が居ないという方は、65歳までの公的な介護保険の保障が期待出来ないまでの期間を民間の介護保険でカバーしていく必要性があると言えます。

必要じゃない人

民間の介護保険が必要じゃない人は以下のよう特徴が挙げられます。

  • 貯蓄・資産・年金が十分であり、何かあった時にキャッシュ(現金)に出来る人
  • 身の回りに支援を期待出来る人がいて、要介護状態になっても心配ない人

日本人の典型的な資産として、持ち家(不動産)が挙げられます。ただ、不動産は流動性が低く、現金が必要になった時にすぐにキャッシュに出来ないリスクがあると言えるでしょう。

そのため、資産があったとしても要介護状態になったときにも、すぐに現金を用意できるというのが重要な要素になってきます。

また、身の回りに介護に際して支援を期待出来るという方は、公的な介護保険も存在しているのでわざわざ民間の介護保険に加入する必要性はないと言えます。

まとめ

民間の介護保険とは?

  • 要介護状態となった場合には、様々な経済的な負担が考えられる
  • 公的な介護保険は広範囲で保障する事が可能ではあるが、近年保障を受けるまでのハードルが高くなっている
  • 民間の介護保険は、公的な介護保険で補えない部分を保障する

民間の介護保険の特徴

  • 保障タイプを選択できる
  • 保険期間を定期タイプ・終身タイプで選ぶ事が出来る
  • 死亡保障が付いてくるものもある

民間の介護保険の必要性

  • 介護費用以外にも費用が掛かってくる事がある
  • 65歳未満では保障が不十分になる

必要な人とそうじゃない人

  • 必要な人は貯蓄や資産がなく、身の回りに支援を期待出来る人がいない人
  • 必要じゃない人は、現金をしっかりと用意出来て、周りに支援を期待出来る人がいる場合

この記事では、主に民間の介護保険について概要・特徴・必要性と様々な視点からご紹介させて頂きました。

民間の介護保険の必要性は人それぞれではありますが、そもそもとして老後の貯蓄や介護のリスクというものはしっかりと意識しておきたい事柄だと思います。

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