外国人労働者の受け入れ拡大のメリット・デメリットは?関連銘柄も紹介

現在の日本では様々な分野で人手不足が叫ばれており、これを解消するために現場での外国人の受け入れが急務とされています。そこで外国人労働者の受け入れを拡大する「出入国管理法改正案」が2018年11月に閣議決定され、建設や農業、宿泊など人手不足が深刻な業種に限って外国人労働者の受け入れが拡大する方針となりました。

この記事では外国人労働者の増加に伴うメリット・デメリットを解説するとともに、関連する人材派遣銘柄についても紹介していきます。

外国人労働者の拡大につながる改正入管法とは

2018年、外国人労働者の受け入れについて、政府は事実上の政策転換に踏み切りました。安倍晋三首相は2018年6月の経済財政諮問会議で外国人労働者の受け入れ拡大を表明。

人手不足が深刻な建設や農業、介護などの分野を対象に2019年4月から就労を目的とした新たな在留資格を創設しました。これまで原則認めていなかった単純労働者に門戸を開き、2025年までに50万人超の受け入れを目指すとしています 。

安倍政権は、外国労働者とともに女性や高齢者の活躍を促す働き方改革を進めています。民間企業でも育児などで退職した女性の服を後押しする動きが顕在化しています。また高齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保のために定年廃止、定年延長、再雇用の三つの選択肢を企業に求めています。これを受けて定年を引き上げたり高齢者の職域拡大に努めたりした企業に対して助成金の支給もありますが、今のところ再雇用を選択する企業が大半です。

外国人労働者の雇用問題では、現行の制度では大学教授や医師・エンジニアなど高度な専門性を持つ人材を除くと、外国人労働者を積極的に受け入れてはきませんでした。しかし、実際には就労が主目的でない技能実習生や、留学生アルバイトが事実上の単純労働者として、建設や飲食サービスで働き、労働不足を補ってきました。

厚生労働省の発表では、2017年10月末時点での外国人労働者は約128万人に上り、5年でほぼ倍増。日本経済新聞が国勢調査と労働力調査などから外国人労働者の割合(外国人依存度)を調べたところ、外国人依存度の全国平均は51人に1人。1位は19人に1人の東京で、2に愛知、3位は群馬と大都市や工業立地県の依存度が高いという結果になりました 。

農業が主力の北海道は、外国人は17,756人。都道府県別で見た依存度は低いものの、依存度の伸びが目立ちます。北海道の伸び率は2.9倍で全国平均の2.2倍を上回り、沖縄(3.8倍)や福岡(3.2倍)、鹿児島(3.0倍)に続きます。訪日客の増加により地域の経済が好転したことが背景と見られています。

現在、外国人労働者の一番依存度が高いのは「54人に1人」の製造業です。また、今後外国人が増える見通しなのが宿泊・飲食サービス業です。訪日客の増加によるホテルの開業ラッシュなどで、現在の111人に1人から高まりそうと見られています。

課題は人材争奪戦の対処です。2019年4月に迫った改正出入国管理法の施行にともない、外国人採用を検討する企業は多いものの、地方企業には東京や大阪などを三大都市圏に外国人が集中するとの懸念が強くあります。

改正入国管理法では、特定機能1号の対象業種で働く外国人は、一定の技能と日本語能力を条件に在留期間の上限は5年になります。外国人に長く働いてもらうためには、企業の受け入れ体制の整備が欠かせません。

特定技能1号は、 一定の知識や経験を条件とします。そしてより熟練した技能を条件とする特定機能2号という在留資格が新設されます。特定技能1号は、最長で通算5年、特定技能2号は条件を満たせば事実上永住可能で、家族も対応できます。今後は外国人労働者の生活環境の整備や在留管理の強化などが課題になりなります。

新制度によって、政府は2020年までに50万人の受け入れを目指すとしています。日本経済新聞の報道では、建設では2025年までに78万~93万人程度の労働者が不足する見通しで、合計30万人を目標にするといっています。農業では新資格で2万6000人~8万3000人程度を受け入れるとしています。すでに介護分野では外国人人材の受け入れ拡大を始めていて、ここでも外国人労働者が増える見込みです。

問題は、就労希望する外国人をどう選別して受け入れていくのかということです。今後、「特定機能評価試験」で就労に必要な日本語と技能の水準を決めることになりますが、どの程度の難易度の問題にするかによって、外国人の質は大きく異なります。

現在の段階では、会話がなんとか成立する日本語能力試験の「 N 4」レベルを基準とする方針ですが、人手不足が深刻な建設と農業では、N4まで求めないという声も聞かれます。また、試験の実施も各業界団体に任せるため、人材確保を優先したい業界は、日本語や技能が不十分でも労働者として雇う可能性があります。

今後は5年10年と長期にわたって外国人労働者が増えることが予想されます。人手不足の穴を埋める労働力としてだけ扱っていると、日本のコミュニティに馴染めず外国人街を形成することになります。期限が来れば国に帰るということは、5年あるいは10年と日本で生活するうちに定住していく可能性は高くなります。全員を追い返すというのは現実的にもほぼ不可能です。

また今後は日本人による人手不足というのは深刻化するので、当初は帰国が前提だった外国人も長期で働いていれば、戦力として不可欠なものになります 。

なし崩し的な移民が増えればかつて欧州諸国で大きな社会問題になった移民問題の失敗を日本でも繰り返すことになってしまいますたに労働者として受けるのではなく一緒に生活する生活者として受け入れることで、日本のコミュニティに馴染み、権利だけでなく義務を果たしてもらう必要があります。そのために大事なことは日本語能力と日本社会に溶け込む能力を身につけさせることです。就労時点では低くても、その後も日本語教育を義務づけるなど外国人に対する教育が不可欠です。

ドイツでは居住を続けようという外国人には600時間ドイツ語研修の他、社会のルールや法律についてのオリエンテーションも義務付けています。言葉も大事ですが、コミュニティの一員として溶け込んでもらうことに重点を置いているのです。

外国人労働者が増えるメリット

企業にとって外国人労働者を雇うメリットというのは、労働力確保以外にどのようなものがあるのかを見ていきましょう。

社内の活性化

日本人は社会のルールや会社の独特のルールに従うことをよしとします。しかし、外国人労働者は日本人にはない価値観や異なる文化、仕事への姿勢を持っています。また、ハングリー精神に溢れ、技能の習得や業務にひたむきに取り組む姿勢が社内を活性化してくれます。マンネリ化や停滞した職場の雰囲気を吹き飛ばしてくれることがあるというメリットがあります。

企業のグローバル化

今後の日本では少子高齢化が進んでいき、国内の市場も縮小していきます。大企業だけでなく、中小企業にとっても国内にだけに目を向けていては生き残れない時代になってきます。その中で会社の可能性を拡大してくれるのが外国人労働者です。外国人労働者の採用が市場調査にもなり、グローバル化の足がかりとなります。

例えば、外国語による広報、外国人顧客への対応など外国人採用のメリットは様々あります。そして、日本人にはない新しいアイデアや発想を与えてくれたり、外国人労働者がもたらす多様性が日本人の労働者にとっても新しい刺激となったりするのです。外国人労働者を採用することは海外進出の足がかりにもなります。

意欲の高い若者の採用

外国人労働者は若者がたくさんいます。そして日本で仕事を求める理由の多くが「稼ぎの多さ」です。ですから、外国人労働者は仕事に対する意欲が高くなります。仕事に対する知識や技術を身につけ、給料をあげようというハングリーで勤勉な人材が多いのです。

外国人労働者が増えるデメリット

一方、デメリットもあります。詳しく見ていきましょう。

文化や言葉の違い

生まれ育った国や文化が違えば、もちろん常識が異なります。日本で働いている場合は「空気を読む」など雰囲気で仕事ができますが、外国人労働者にはそのようなものは通用しません。日本独特の文化も指導した上で、外国人労働者の文化や国に対する理解も必要となります。

また、外国人労働者の日本語のレベルも様々です。日常会話に支障がないほど流暢に話せる人もいれば、カタコトの人、あるいは全く話せない人もいます。いずれにしてもネイティブではないので、言語の違いからくるデメリットというのはあります。

コミュニケーションがあまり必要のない業種だとしても、社内の情報共有など外国人労働者が理解できる言語での伝達が必要になるなどのコストが発生します。コミュニケーションがうまく取れないと外国人労働者が孤立してしまい、本来のスキルが引き出せない可能性もあります。

働き方に対する違い

仕事に対する意識が高いのが外国人労働者の特徴ですが、それが長時間労働につながることにはなりません。日本ではその日やその週に終わらせなければいけない仕事があれば残業するのが当たり前です。

しかし、外国人には時間にルーズな面があったり、仕事よりもプライベートを大切にしたりする人も少なくありません。労働時間が終わればさっさと帰る人、自分の仕事が終えたらそれ以外のことをする必要がないと考える人もいます。

日本では長時間働くのがいいとされていますが、そのようなことは国際社会では通用しません。多くの場合、外国人労働者は仕事に対する意識が高いので、きちんと時間内に終わらせれば評価をし、余計な仕事をさせないことが必要です。また、日本の労働観を理解してもらう努力も必要になります。

日本語学校の危機

2019年春からの外国人の受け入れ拡大を迎え、日本語学校が岐路に立っています。留学生として来日する外国人の数はここ数年増加を続けていて、日本語学校も増えていましたが、今後日本に留学を希望する学生数の減少が予想されているからです。

現在留学生は週に28時間の労働が認められていることから、東南アジアや南アジアからの留学生が多く来ていました。しかし、今後は一定の技能があると判断されれば、外食や宿泊、農業など14分野で就労が可能になります。

アジアの途上国の地方では働き口が限られ、収入も限定的です。学生たちにアルバイトを認める日本の制度は、こうした若い人たちを惹きつけてきましたが、新しい制度が導入されると留学生として日本語学校に入らないでも、就労目的で日本に滞在できる可能性が高まります。

こうした背景があり、アジアの国々から日本での就労を目指す人たちが留学生として来日する流れは減速すると見られているのです。留学生の確保だけでなく、日本語講師の教育の質の維持など、日本語学校は解決困難な課題を抱えています。

現在の技能実習制度は、もともと途上国への技術移転を目的に創立されましたが、実際は国内企業の人手不足解消の労働力として利用されています。

人材関連銘柄

外国人労働者の拡大に関連した銘柄としては製造業派遣や技術者派遣などの人材サービス関連銘柄がまず挙げられます。

UTグループ(2146)

製造業派遣請負の大手です。外国人実習生の受け入れには日本の企業が直接受けいれる「企業単独型」と日本の管理業団体が現地で送り出し機関として受け入れ団体の会員ある企業で実習を実施する「団体管理型」があります。UT グループでは参加の UT グローバルで実習・実施機関の業務を代行し、団体監理型受入実施を支援しています。特にベトナムやミャンマーに強みを持っています。

夢真ホールディングス(2362)

夢真ホールディングスは、人手不足が深刻な建設業界向けに建築現場の施工・管理士派遣を手がけているほか、女性と外国人の採用にも近年力を入れています。強みである未経験者を短期間で研修するノウハウを生かして、アセアン諸国を中心とした外国人技術者及び外国人実習生の採用に力を入れています。特に、フィリピンやベトナムの人材確保に力を入れており、日本語教育などを強化しています。

nmsホールディングス(2162)

nms ホールディングスは、中国やベトナムに拠点を設けて、外国人技術者の採用を図っています。特に中国では現地の大学と提携し、人材育成に力を入れているほか、ベトナムでは中途エンジニアを積極的に採用しています。

アルプス技研(4641)

アルプス技研は農業分野や介護分野で外国人労働者を派遣する子会社「アグリ&ケア」を設立しました。政府は国家戦略特区に指定している新潟県、京都府、愛知県で外国人の就農を認めましたが、同社は愛知県の農業支援外国人受入事業において、受け入れ企業の認定を獲得。すでに十数人のベトナム人を農家に派遣しています。

2415 ヒューマンホールディングス

2017年3月から IT 人材の採用を開始していて6月にはタイベトナムミャンマーで採用説明会を初めて開催しました今後も ASEAN や中国などアジアの人材を中心に採用し2020年3月には750人体制を目指しています。

6028 テクノプロ・ホールディングス

テクノプロ・ホールディングスは、国内最大級の技術系人材サービスグループで、高度外国人材の採用や就労促進に力を入れています。国内の偽樹種者1万7,200人のうち外国籍技術者数は809人(2018年9月時点)。前年同期に比べて41%増えています。また、外国船籍の新卒採用も積極的に進めています。

まとめ

今回は外国人労働者の受け入れ拡大によるメリット・デメリットと関連銘柄についてご紹介してきました。外国人労働者の拡大に繋がる改正入管法によって、2019年4月から就労を目的とした新たな在留資格が設けられました。これまでの単純労働者に門戸を開き、2025年には50万人超の受け入れを目指しています。

外国人労働者が増えるメリットとしては社内の活性化や企業のグローバル化、そして労働意欲の高い若者の採用などが挙げられます。これまでの日本人だけによる就労者だけではなく、外国人労働者を入れることによって、より仕事に対する新しい取り組みなどが見直される可能性が高まります。

ただし、当然デメリットもあります。例えば文化や言葉の違いです。日常生活に支障がないほど流暢に話せる人もいれば、片言の人もいます。新しい外国人労働者をただの労働者としてではなく、生活者として考えた場合は、日常生活に困らないぐらいの会話能力は必要ですし、日本の環境や法律を学ぶ必要もあります。

今後、日本国内においては人手不足が深刻化していきます。外国人労働者に対する需要というのは、ますます高まっていくでしょう。ヨーロッパで起きたような移民問題を起こさないためにも、きちんとした対策が求められます。

 

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