シェアリングエコノミーとは?メリット・デメリットと関連銘柄

シェアリングエコノミーという言葉が日本でも広がっています。使われていない物や場所、お金などの資産やサービスを、多くの人と共有したり交換したりして有効利用する経済行動のことです。この記事では、シェアリングエコノミーの概要や関連銘柄を解説していきます。

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーサービスとは、車を保有している人が車を使わない時間帯にシェアすることや、別荘を持つ人が使わない時期に民泊施設として貸し出すことです。その他にもブランド品のレンタルや家事や育児代行、クラウドファンディングなど多くのシェアリングエコノミーがあります。

日本政府の試算によると、2016年の国内シェアリングエコノミーの経済規模は約5千億円。シェアリングエコノミーは世界でも広がりを見せていて、イギリスの大手コンサルファームであるPwCによると、2013年に150億ドル規模であった市場が、2025年には3350億ドルに成長すると予想しています。

資産の有効活用ができ、初期費用も利用価格もリーズナブルというメリットがあることから普及が進む一方、環境がまだ整っていないためトラブルに発展する例も少なくありません。2015年12月にシェアリングエコノミー協会が設立され、健全なビジネス環境の利用者保護のためのガイドラインをもとに自主ルールを作成し、それに適合した認証制度を創設するなど、政府と共に取り組みを進めています。

シェアリングエコノミーのサービス

それでは、代表的なサービスを見てみましょう。

海外のシェアリングエコノミーサービス

Airbnb

Airbnbは、空き部屋や不動産などの賃貸をマッチングするオンラインプラットフォームです個人・法人を問わずに利用することができ、戸建住宅からアパート、個人が所有する島まで幅広い物件が登録されています。

ユーザー間の信頼性を高めるために過去の利用者によるレビュー評価制度、写真入り身分証明書などから本人確認を行う「 ID認証」、 Facebook などを外部のソーシャルメディアの認証情報を利用するか「 SNS Connect」 などの機能が導入されています。なお利用者による評価は双方向であり、ホストからゲストへの評価も行われています。

Airbnbは2008年に設立。2015年時点で190カ国以上、34000を超える都市で、百万人以上の宿が提供されています。

Uber(ウーバー)

ウーバーは、スマートフォンや GPS などの ICT を利用して、移動ニーズのある利用者とドライバーをマッチングさせるサービスです。

各地域のタクシー会社やハイヤー会社に加えて、個人のドライバーとも提携しており、利用者はスマートフォンから簡単に配車の依頼をすることができます。現在57カ国の地域でサービスが提供されています。

移動の目的や人数によってサービスが異なり、エコカー、タクシー、ハイヤー、ミニバン、最高級車などから選択することができます。また、都市によって利用できるサービス料金が異なり、例えば東京ではタクシー、ハイヤー、最高級車の3種類から選択することになります。

個人で開業しているドライバーも多く、自家用車によるライドシェアリングが行われています。ウーバーによると、個人のドライバーは1時間に20ドル以上の収入を得ることができ、年間平均収入はニューヨークで約9万ドル。サンフランシスコで7万4000ドルです。そのため、アメリカなどではドライバー登録をして収入を得る個人ドライバーが増えています。

ウーバーでもユーザーが安心かつ安全に利用できるために、過去の利用者による運転手の評価確認や、登録したクレジットカードからの運賃の電子決済などを提供しています 。

Prove Trust

シェアリングエコノミーサービスは個人と個人との信頼関係が鍵となります。このため各サービスでは Facebook などの既存ソーシャルメディアと連携したり、サービス独自に利用者間のレビュー評価制度を導入したりしています。

それらの信頼情報を一歩進め、オンライン上の様々な活動履歴からユーザーの信頼度を総合的にスコア化するサービスも提供され始めています。

その一つである「Prove Trust」では、ユーザーの信頼度を Facebook や Airbnb、 ビットコイン、結婚恋愛サイトの利用状況に基づき総合的にスコア化するサービスを提供しています。

その人物が実在するかどうかを評価する「リアルスコア」、ソーシャルネットワークなどでの活動活発さを評価する「ソーシャルスコア」、他のユーザーからの評判を評価する「フィードバックスコア」によって構成されています。

これらのスコアを集計して、最終的な信頼度が数値化されるのです。

国内のシェアリングエコノミーサービス

国内で話題のサービスも確認しておきましょう。

note(ノート)

note(ノート)は個人がテキストや写真・音楽などのコンテンツを販売することができるシェアリングエコノミーサービスです。ブログに似ているサービスですが、文章だけでなく自作のイラストや音楽などをファイル化してネット上で販売することができます。

これまで情報を販売するということは個人には少し敷居が高かったのですが、ノートを利用すればコンテンツ販売が初めての人でもスムーズに行うことができます。情報配信だけでなく、小説や漫画、イラストなど多種多様なコンテンツを販売できるのです。

TimeTicket(タイムチケット)

「私の30分、売り始めます」という分かりやすいコンセプトで、個人の時間を売るという発想です。例えば、パソコンの使い方や英会話のコーチ、ランチタイムの話し相手など用途は様々です。

akkippa(アキッパ)

駐車場の貸し借りが可能になるシェアリングエコノミーサービス。駐車場所有者が車で外出している間に、その駐車場を他の人に貸し出すサービス。首都圏やイベント会場近くでは駐車場の空きがない事態が多く、駐車場不足の緩和にもつながるサービスとして期待されています。

シェアリングエコノミーのメリット

シェアリングエコノミーとは、「個人が保有している使われてない資産やリソースを有効活用することで新しい価値をもの」と定義されています。つまり、インターネットを介して使われていない資産を活用することが基本です。

まず利用者側のメリットとしては、企業の仲介が減少し、中間マージンが抑えられることによって、これまでより低価格でサービスや物を手にすることができます。

企業側のメリットとしては特に注目が集まっているのがクラウドソーシングというシェアリングエコノミーサービスです。クラウドソーシングとは、一般に社外からスキルや資金を集めることを意味します。

例えば、新規のプロジェクトで自社にないスキルが必要になった時、また一時的に人手が必要な業務が発生したときに、外部のジャンルに卓越した人に業務を外注することで、より短期間で高いクオリティの成果が見込めるというものです。

シェアリングエコノミーの発祥は、2008年に民泊の仲介サービスを始めたアメリカのAirbnbといわれています。その後も車のウーバーやペットシッターなど次々と個人間での物の貸し借りを仲介するサービスが登場しています。

こうしたシェアリングエコノミーが普及している背景には、インターネットやスマートフォンなどテクノロジーの発展があります。インターネットが整備され、端末によってそれを手軽にできることになったことで、シェアリングエコノミーは急速な発展を遂げているのです。

シェアリングサービスを支える保険の動き

シェアリングエコノミー市場の急激な成長に伴い、事業者はユーザーが安心・安全なサービスを利用できるよう様々な対策を講じる必要が出てきました。その一つに「シェアリングサービス専用保険」があります。日本では2016年にシェアリングエコノミー協会が保険会社と提携し、シェアリング 専用の賠償保険の販売を始めました。

東京海上日動火災保険や損害保険ジャパン日本興亜は、シェアリングサービスの事業者を対象に保険を提供しています。保証内容や契約形態はそれぞれ異なり、事業のニーズに応じて各社の保険を選べるようになっています 。

こうした保険は、新規事業者の参入を促進することはもちろんのこと、シェアリングエコノミーに興味はあるものの、トラブルが心配というユーザー層の利用にも繋がると考えられます。保険がセーフティーネットとなることで、シェアリングエコノミーの普及がさらに促されるのです。

2017年1月に「シェアリングエコノミー促進室」が内閣府に設置されました。安倍内閣が推進する 一億総活躍社会をシェアリングエコノミーで実現できる可能性があるからです。個人の所得増加につながることで、副業や兼業がしやすくなることが考えられ、働き方改革にも寄与します。

シェアリングエコノミーのデメリット

しかし、もちろんデメリットもあります。

トラブルになるリスク

資産を貸し出すのは事業として運営している企業ではなく、一般の個人です。サービスのクオリティを保証するのが難しく、借りたものが思っていたのと違うということや、条件の認識に違いがあり、トラブルになるなどのケースが発生しています。

貸した側にとっても、貸したものが壊れていたり、ルールを守られずに利用されたりするなどのリスクが存在するため、簡単にはサービスを利用できないという声もあります。

そのようなトラブルを未然に防ぐために、本人の公的な身分証明書の登録や提出を求めることにより、お互いの安全や信頼を確保することができます。

また法整備が整っていないという点もデメリットです。新しい分野であるため法整備が追いついておらず、グレーゾーンでのサービス提供や違法なサービスを取り締まる法律がありません。こういった状況では既にある市場が機能しなくなるおそれもあります。政府が法整備を進めようとしていますが、業界全体に浸透するにはかなりの時間がかかると見られています。

既存事業社の損失

シェアリングエコノミーの大きなメリットは、借主が格安で様々なものを利用できるようになることです。これまでよりも格安で市場に参加することができるため、レンタカーやコインパークなど既存事業者にとって、シェアリングエコノミーは脅威となります。

またトラブルの不安を抱えるのは、サービス提供者や利用者だけではありません。それ以外の人達にも悪い影響を及ぼすケースがあります。例えば、民泊を提供しているAirbnbなどは、ゴミの廃棄など利用者がルールを守らず、近隣の住民に迷惑をかけています。家事代行や駐車場のシェアなども、普段見ない人が出入りするため、シェアリングエコノミーを知らない近隣住民とっては安心できる生活環境が脅かされてしまうのです。

シェアリングエコノミー関連銘柄

シェアリングエコノミーは様々なサービスがありますが、特に注目を集めているのが民泊関連とライドシェア関連銘柄です。まずはその二つについて詳しく見ていきましょう。

民泊とは

民泊が注目されるのは、訪日観光客の増加スピードが予想以上というのがあります。訪日観光客の増加に伴い、ホテル不足が深刻化してきました。ホテル不足を解消するために、正式な宿泊施設ではないアパートや一軒家、マンションに観光客を泊める民泊が注目されています。

新しい利用者の増加でトラブルも起きています。そんな民泊に対して2018年6月に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行されました。民泊新法により、届け出をすれば誰でも民泊が行えるようになります。ただし、民泊を紹介する仲介サイトや管理会社にも登録が義務付けられました。

民泊関連銘柄

8889 アパマンショップホールディングス

民泊事業を2015年12月より開始。新たなサービスは主に、契約期間が12ヶ月までの中期賃貸や30日以内未満の短期賃貸であり、従来の敷金礼金無料に加えて、退去費用無料、家具・家電設置など生活サービスの充実を図っています。

2120 ネクスト

掲載物件数ナンバーワンの不動産住宅情報サイト「HOMES」、暮らしとお金の情報サイト「MONEYMO」などを運営しています。不動産物件の内見時にスマートキーを活用する「スマート内覧」を2015年から開始しています。

ライドシェア解禁とは

ライドシェア解禁とは、これまで無許可でタクシーを運転するいわゆる「白タク行為」を解禁しようという動きです。政府は、訪日外国人向けや過疎地の移動手段ということでライドシェア解禁を目指しています。民泊同様に地域限定参入者の条件などを設けて将来的に全面的に解禁となる可能性が十分あります。

3669 モバイルクリエイト

タクシーの配車アプリ決済システムなどを取り扱っています。配車アプリには GPS も内蔵されており、依頼を受けた顧客へスムーズな配車が可能。ライドシェアのマッチングアプリとしても最適と見られています。

2432 ディー・エヌ・エー

個人間で車をシェアするカーシェアリングサービス「エニカ」を運営しています。カーシェアリングはライドシェアにも関連が深く、アプリ開発や SNS 事業運営を行っている同社であれば機能の拡張が期待でき、ライドシェア事業に参入してくる可能性が高いと見られています。

3775(名証) ガイアックス

子会社として新たに 「notteco」を設立。相乗りマッチング型長距離ライドシェアサービスを始めました。見知らぬ人同士が SNS を通じて知り合い、同じ目的地まで相乗りしていくというサービスです。ガソリン代などの費用も割り勘して分担する仕組みを作っています。

その他のシェアリングエコノミーサービス関連銘柄

その他のシェアリングエコノミーサービス関連銘柄も確認しておきましょう。

3633 GMOペポパ

国内最大級のハンドメイド EC サイト「ミンネ」を運営しています。個人の作品を売れる・買えるシェアリングエコノミーショッピングサイトとして人気が急上昇しています。個人制作ということなので、1点から出品したり入手したりすることが人気の理由です。

3900 クラウドワークス

国内最大級のクラウドソーシング会社です。企業間だけでなく、企業と個人、個人と個人の人材マッチング事業を行っています。シェアリングエコノミーは、個人の遊休資産を活用することが多いのですが、クラウドワークスのサービスは、技術やスキルを他社へ貸し出すサービスとなります。

まとめ

今回はシェアリングエコノミーについて詳しく解説しました。「モノを所有する時代からシェアする時代」へと変わりつつあり、インターネットやスマートフォンの普及が後押ししているサービスです。関連銘柄も広がりを見せ、今後もシェアリングエコノミー関連は注目されます。

ただし、まだ法整備などが追いついておらずトラブルなども発生しています。今後シェアリングサービスは、その対象や利用者も増えていくでしょうが、きちんとした法整備や保険などのセーフティーネットがきちんとされることが望まれます。

 

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