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介護保険ってこんな保険
「介護保険ってどんな保険・制度なの?」
「高齢化社会」・「高齢社会」・「超高齢社会」というような文言を見かけた事がある方も少なくないと思います。全て同じような意味を表している言葉ではありますが、微妙にニュアンスは異なっています。
というのも、高齢化社会とは「65歳以上の人が7%を超えている」という状況を指しており、高齢社会とは「65歳以上が14%超えている」社会を指しており、超高齢社会とは「65歳以上が21%を超えている」社会を指しています。
日本は1970年に高齢化社会になり、1995年に高齢社会、2010年に超高齢社会になりました。2025年には65歳以上の人工が30%を超えると言われています。
先進国の全般的にこのような傾向が見られますが、日本は特にその傾向が早く・強く出ていると言えるでしょう。そのような環境で必要性が高まっているのは「介護保険」です。
どんな人も必要になる可能性の高い介護保険ですが、その実態についてしっかりと理解出来ていないという方も少なくないでしょう。なので、この記事では介護保険とは?という根本の部分から、保険料・加入方法・民間の保険等についてご紹介していきます。
まず、初めに介護保険の概要について押さえていきましょう。
介護保険とは
まず、介護保険を押さえるためにも介護保険の大まかな部分についてご紹介していきたいと思います。介護保険を簡単にまとめると「介護が必要になった時の費用を予め備えておく公的な保険」だと言えるでしょう。
介護保険と呼ばれる事が多い事から、民間の保険会社が扱っている商品だと誤解されがちですが(民間の介護保険も存在しています)、殆どのケースで市町村が運営の主体である保険を指していると言えます。
もちろん、制度と言っても保険なので「保険料」を支払う必要があります。ただ、税金によって運営されている側面も存在しています。具体的には、保険料が50%・国や市町村からの税金50%で運営されています。
保障にはどんなものがあるのか
介護保険では、介護を必要とするケースで必要になりそうなサービス・費用を負担しており、主に以下のようなものが挙げられます。
- 全体的な支援
- 居宅向けのサービス
- 施設向けのサービス
- 介護用具等
- 介護に伴って必要なリフォーム費用
全体的な支援
まず、初めに挙げられる介護保険の保障は「全体的な支援」です。抽象的な保障ではありますが、主にケアプランを提案してもらったり(介護の内容やスケジュール)、家族の介護に関わる相談に対応したりというものです。
この支援がある事で、介護経験のない世帯でも具体的にどのように介護を行っていけばよいのか?という点がはっきりしやすいでしょう。
居宅向けのサービス
介護には大きく分けて2つの種類があります。それは「自宅で行うか?(居宅)」「外で行うのか?(施設)」という2つの選択肢です。介護保険では居宅向け・施設向けのどちらでも支援を受ける事が可能です。
居宅向けのサービスでは自宅に訪問し家事全般を行ったり、入浴・排泄等の支援、健康面のサービス(健康チェック等)、デイサービス、デイケア等が上げられます。
施設向けのサービス
施設向けのサービスでは特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設、老人健康保険施設等の施設に加入する事が可能になります。費用等は自己負担分等によって大きく異なりますが、家族の負担が大きく減る選択肢だと言えるでしょう。
上記したような施設は、老人福祉法で明記されており名称として広がった「老人ホーム」を指していますが、その施設の種類によって利用する事のできる人・用意されている設備・人材(医師や看護師、介護職員等)が異なります。
そのため、被保険者によってどの施設に加入できるか?は異なるので、注意しておきましょう。
介護用具等
介護保険に加入しておけば、必要になる介護用具をレンタルする事が可能です。具体的には「介護用のベッド」「車椅子」「ポータブルトイレ」等が挙げられます。
介護は様々な面でお金が必要になるので、経済的な負担を考えると嬉しいサービスだと言えるでしょう。
介護に伴って必要なリフォーム費用
要介護状態になると、自宅のリフォームが必要になるケースが少なくありません。車椅子が常に必要ならばバリアフリー対応が必要になりますし、歩行が困難な場合は自宅のあらゆる場所に手すりも必要になるでしょう。
このようなリフォームに伴う費用を支援してくれます。具体的には、工事費用を加入者は1~3割の費用を負担し、最大20万円まで支援を受ける事が可能になります。
保険料や加入の仕方は?
先程、介護保険の概要についてご紹介させて頂きました。介護保険について「大体こんなもの?」というような大枠は、把握できたと思います。
ただ、これだけではしっかりと理解出来たとは言えないので、もう少し保険料や加入者等について詳しくご紹介していきます。
基本的には義務である
誰が保険料を支払っているのか?という点について疑問を持った方もいるかもしれません。税金で運営されている側面もあるため、大きな目で見れば国民全員で負担していると言えます。
ただ、運営資金の半数を占める保険料は「40歳以上」の方全員に保険料を支払う義務があります。つまり、40歳以上の方は介護保険への加入が義務付けられているとも言えます。
基本的に、国民皆保険制度の「健康保険」と一緒に保険料を徴収されています。あまり税金・公的な保険料を意識していない方は知らない内に支払っている可能性が高いです。サラリーマンであれば強制的に払われていると言えるでしょう。
どんな人が保障を受けられるのか?
公的な介護保険は原則加入が義務付けられており、自動的に支払われるような仕組みになっています。では、実際に保障を受けられるのはどのような方なのでしょうか?サービス(保障)を受けられる対象者について押さえていきましょう。
健康保険であれば、加入している本人やその扶養者に保障を受ける権利があります。公的な年金なら受給開始年齢になれば、受給を受ける事が可能になります。
介護保険では体の状態がどうなのか?という点も重要ですが、主に「年齢」によって対象者の振り分けが異なります。振り分けでは「第1号被保険者」「第2号被保険者」という分け方になっています。
どちらの被保険者なのか?によって対象者になる条件が異なってきます。
第1号被保険者
第1号被保険者がサービスを受けるには「65歳以上の要介護状態」という条件をクリアしている必要があります。つまり、65歳以上であり要介護状態であれば、サービスを受けれるという事です。
具体的には、要介護状態という事を認定するのは「市町村」です。介護保険では、65歳以上になると市町村から「介護保険被保険者証」というものが送付されるので、その書類を利用し市町村に申請する事で、市町村が調査に来てくれます。
調査によって要介護状態と認定された場合は、第1号被保険者に該当し上記したような介護サービスを受ける事が可能になります。申請方法の詳細については各自治体に問い合わせるのが、最も早いです。
第2号被保険者
第2号被保険者が保障を受けられるケースは「40歳~64歳までの指定されている疾病と診断されており、要介護・要支援状態」である事が条件です。
介護保険の加入義務が発生するのは40歳からです。ただ、第1号被保険者と比べて65歳未満の方がサービスを受けるには厳しい条件があります。それが「指定されている疾病と診断されている必要がある」という点です。
第2号被保険者でサービスを受けるために、必要な条件である指定の疾病というのは以下のようなものが挙げられます。(一部をご紹介します)
- がん
(医師が回復を見込めないと診断した場合に限る) - 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 後縦靱帯骨化症
- 骨粗鬆症(骨折を伴う場合)
- 初老期の認知症
- パーキンソン病と関連する疾病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 糖尿病性神経障害等
- 脳血管疾患
ただ、このような疾病の場合でも「要介護」が認められる必要性があります。つまり、第2号被保険者の場合は上記のような疾病・介護を必要としていると認められないと支援を受ける事が困難になっています。
第1号被保険者と比較した時にハードルが高めにはなりますが、実際の所認定するのは調査を行う市町村なので、一度上記のような疾病を患い、支援を必要としている場合は各自治体に相談をしてみると良いでしょう。
要介護にもレベルがある
先程から、介護を必要とする状態である「要介護・要支援」という言葉が出てきていますが、この要介護についてもレベルが存在しています。そのレベルによって必要な支援等も異なってくるので、参考程度に押さえておきましょう。
まず、初めに押さえたいのは「要介護」「要支援」というのは、介護保険においては別の状態であるという事です。要支援の方が軽い状態を指しており、要介護の方が沢山の支援が必要な状態を表しています。
そのため、要支援・要介護別にレベルが存在しており、全部で7段階で分類されています。
要支援
- 要支援1 生活に若干の支障がある状態。食事や排泄等は可能ですが、歩行や立ち上がりに際して支援が必要な場合がある
- 要支援2 要支援1の状態が重くなった状態。食事や排泄等は可能ですが、普段の生活で必ず支援が必要になる状態
要介護
- 要介護1 普段の生活で介護が必要(家事や着替え等)。しかし、排泄や食事は問題なく出来ている
- 要介護2 普段の生活で必ず介護が必要になり、食事や排泄についても助けが必要になってくる
- 要介護3 通常の生活が困難であり、食事や排泄が自分一人では難しい。
- 要介護4 歩行や着替え、家事等のほぼ全てが困難。排泄・食事も必ず介護が必要になる
- 要介護5 身の回りの事が出来ない。重度の認知症や寝たきり状態である
もしも、介護保険のサービスを受ける対象者として支援が必要になる際には、このあたりを参考に具体的に「どのような支援が必要なのか?」という点を明らかしていきます。
保険料はどのように計算されるのか?
介護保険の保険料は、意識しない内に支払ってしまっている事が多いです。ただ、実際にどのくらい支払われているのか?という点について気になる方もいると思います。
なので、介護保険の保険料についても触れておきましょう。介護保険の保険料は「第1号被保険者」「第2号被保険者」によって大きく異なります。
第1号被保険者の場合の保険料
第1号被保険者の保険料は、基本的に「所得」によって異なります。所得税の税率や健康保険の自己負担分が所得によって異なるように、介護保険に関しても所得が低い方は保険料が少なくなる傾向にあります。
ただ、この所得を振り分ける段階は市町村に大きく異なります。また、市町村によって介護保険の予算等も異なってくるので、その点からも保険料は上下します。
目安程度ですが、全国平均では第1号被保険者の保険料は5,100円程度だと言われています。
第2号被保険者
第2号被保険者に関しても、保険料はこのくらいと決まっている訳ではありません。第2号被保険者の場合に関しても国が定めた負担額を元に、加入している健康保険の運営が保険料を計算しています。
この国が定めた負担額というのは、毎年全国の介護保険サービスの費用の見込みを参考にしながら、第2号被保険者が負担するべき保険料を計算したものです。
つまり、毎年納めるべき保険料は異なり、年々増加している傾向にあります。(要介護の被保険者が増える事により、負担するべき費用も増えてくる)
ただ、第2号被保険者に関しては国民健康保険とそれ以外の健康保険(各事業者や組合の保険)によって、負担額が異なってくることもあります。そのため、第1号被保険者・第2号被保険者のどちらでも納めるべき保険料は加入している健康保険・自治体・所得によって大きく異なってきます。
ただ、目安として第2号被保険者の保険料に関しても、全国平均として5,000円~5500円以内に収まるケースが多いです。
民間の介護保険も検討したい
この記事では、これまで公的な介護保険についてご紹介させて頂きました。公的な介護保険でも十分に保障出来るケースもありますが、実情として苦しい経済状況で介護生活を送られている世帯も存在しています。
なので、これからそのようなリスクに備える事の出来る民間の介護保険についてご紹介していきたいと思います。
民間の介護保険とは?
日本は超高齢社会であり、高齢者が増えるに伴って公的な介護保険が定めるような要介護・要支援状態の人がますます増えていくでしょう。
そうなってくると保険料の増加等の懸念等が考えられます。ただ、最も可能性が高いのは「予算の削減・条件のハードルが上がる」というポイントではないでしょうか。
近年でも、制度改正によって入居の待機者は増加しているのにも関わらず、特別養護老人ホームの入居条件が「要介護1から要介護3」に引き上げられました。
これから、この傾向はより一層強くなると言えるでしょう。そこで、検討したいのは「民間の介護保険」です。民間の介護保険というのは、民間の保険会社が販売している介護保険の事であり、加入に関しては任意の保険になります。
私的な保険になるので、公的な介護保険とプラスして介護保険の保険料を支払っていく必要性が出ていきますが、選択肢の1つとしては検討の余地があると思います。
公的な介護保険の弱点
先程、公的な介護保険の保障を受けるハードルがこれから上がっていく可能についてご紹介させて頂きましたが、公的な介護保険の弱点はこれだけではありません。
最も大きいのは「65歳未満の保障」という点でしょう。65歳未満で介護が必要になった時に、特定の疾病に該当しない場合は大きな負担が予想されると言えるでしょう。
商品によっても異なりますが、民間の保険会社が販売しているものであれば、65歳未満の要介護状態についても保障しているものも少なくありません。そのため、
- 十分な貯蓄・年金が期待できない
- 要介護状態になった際に、ご家族の支援が見込めない・頼りたくない
上記に該当するような方は、公的な介護保険のみではなく、民間の介護保険でしっかりと保障しておいた方が安全だと言えます。
まとめ
介護保険ってこんな保険
- 介護保険とは、要介護状態になった時に様々な支援をしてくれる保険
- 全体的な支援、居宅向けのサービス、施設向けのサービス、介護用具等、介護に伴って必要なリフォーム費用等の支援が受けられる
保険料や加入方法
- 日本国民で40歳以上であれば、原則加入する必要がある
- 加入者は第1号被保険者・第2号被保険者に分けられる
- 要介護にもレベルがある
- 保険料は市町村や所得等によって異なってくる
民間の介護保険も検討したい
- 公的な介護保険では物足りないと感じる人にはおすすめ
- 公的な介護保険にも弱点はある
この記事では主に公的な介護保険の概要・保険料・加入方法等についてご紹介させて頂きました。公的な介護保険は、介護の際に考えられる様々なリスクをカバーしている保険です。
ただ、あくまで万人に向けた保険であり、個々のニーズに対応しているとは言えません。そのため、私的に民間の介護保険に加入する・貯蓄を形成しておくという備えも重要になってくるでしょう。