上場インフラファンドとは?利回りの高さが魅力の金融商品を紹介

2015年4月、東京証券取引所にインフラファンド市場が誕生しました。 REIT( 不動産投資信託)との違いや投資対象としての魅力、活用方法について詳しく解説していきます。

上場インフラファンドとは

上場インフラファンドは、約10万円から始められ、安定して利回り5~6パーセントを確保できる金融商品です。太陽光や風力・電力といった発電所を始め、高速道路や空港・上下水道など社会性の高い施設を投資対象としています。

2015年4月、東京証券取引所に太陽光発電所などのインフラ資産を投資対象とするインフラファンド市場が設立され、2016年6月に、上場第1号となる「タカラレーベン・インフラ投資法人」が上場しました。

2019年1月現在、5銘柄が上場されており、全て太陽光発電所を主な対象とする商品です。今後様々なインフラ施設を投資対象とするファンドが上場し、市場が拡大していくことが期待されています。

インフラファンド誕生の背景には次の二つがあります

  1. 空港や発電所・道路などの整備運営に関して、民間資金の活用を図る必要があること

2.短期的な景気変動に影響を受けにくい安定的な資産である、インフラ資産に対する投資ニーズが高まっていたこと

基本的な仕組みは REIT (不動産投資信託)と似ているため、「インフラ版 REIT」 と呼ばれることもあります。投資証券や投資法人債の発行、金融機関からの借入などにより調達した資金でインフラ投資し、そこから生じる収益を投資家に分配します。

インフラファンドの仕組みを詳しく説明すると、投資法人が投資口を発行して得た資本金と借入によって太陽光の発電施設を保有します。そしてその発電施設を専門的なノウハウを持って運営する「オペレーター」と呼ばれる会社に賃貸し、オペレーターは売電していた収益から賃貸料を投資法人に支払います。投資法人の収益は、その賃貸料です。経費を差し引いた利益を投資口の保有者に支払いますが、 J リートと同様に利益の90%以上を分配すれば法人税が免除されます。

一般的な株式や J リート などのように、インフラファンドは証券会社を通じて購入することができます。しかし、時価総額が小さいために機関投資家が本格的に参入できる状況ではありません。このように、まだ市場でもほとんど注目されておらず、分配金利回りが高めに推移しているのが特徴です。

上場インフラファンドのメリット

それでは、上場インフラファンドのメリットを見ていきましょう。

安定的なインカムゲインを狙える

インフラファンドの最大の特徴は、安定的なインカムゲイン(配当収入)が期待できることです。太陽光発電所が安定収益を出す要因の一つに「固定価格買取制度」があります。太陽光発電所は、固定価格買取制度により、一度適用された売電価格が20年間保証されるということです。

ですから、景気などの影響を受けません。Jリートは市場原理が働き、賃料の下落や空室リスクなどがあります。上場インフラファンドの中には、分配金の10年見通しを公表しているところもあるほどです。しかし、これは裏を返せば景気が良くなっても、収益の伸びが期待できないということでもあります。

REITのように賃料をあげたり、不動産を売却したりすることができません。値上がり益を狙ったキャピタルゲイン投資には不向きです。あくまでもインカムゲインを中心とした投資対象として考える必要があります。

REITよりも高い利回り

REITと比べても高い利回りを期待できることがインフラファンドの大きなメリットです。2018年8月現在、リートの平均分配金利回りは約4%と株式の配当利回りの2倍ありますが、インフラファンドの分配金利回りは5~6%となっています。

市場が創設されてまだ期間が浅いということもあります。投資対象としての認知度が低く、市場規模は全銘柄合わせても500億円程度。個人が投資する分には問題ありませんが、流動性が乏しいため機関投資家はほとんど入ってきていません。

機関投資家が参入してきた場合、決算対策などで大規模な売買が発生しやすく、価格が大きく動くことがあります。現状のインフラファンド市場には、そうした懸念がないことも価格の安定性につながっています。また、短期売買の目的で参加している個人投資家も少ないので、長期での安定に寄与しています 。

株式市場が値上がりしている時は、キャピタルゲインに目が向きがちです。しかし、下落してきた時は、配当利回りなどが注目されるので、インカムゲイン投資の価値上がります。そういったときは、資金の逃避先として、インフラファンドを利用するのもいいでしょう。

上場インフラファンドのデメリット

続いて、デメリットについても見てきましょう。

金利に注意

リートと同様に、インフラファンドもインカムゲイン投資なので、金利変動に注意する必要があります。金利上昇局面では、資金調達コストが上がる他、債券の魅力度が高くなり、値下がり要因となるからです。

株式と比べて減配リスクが少なく値動きも安定していることから、NISAを使った投資にも向いています。NISAは少額投資非課税制度で、年間120万円(最大600万円)までの投資額に対する値上がり益が、5年間非課税になる制度です。

例えば、NISA口座で分配金利回り5%のインフラファンドを5年間保有すれば、単純計算で25%の利回りになります。価格が大きく変動しなければ利回り分が非課税になるので、NISA口座を利用する価値は大きいといえます。

インフラファンド投資に向いている人

安定した長期のインカムゲイン収入を期待できるので、特にリタイア世代の高齢者にぴったりの投資対象といえます。リタイア世代は資産を大きく増やすというよりは、分配金や配当などという継続的な収入、つまりインカムゲインを好む傾向にあります。物価上昇(インフレ)に負けないように運用する必要があるのです。

現在のインフラファンドは太陽光発電がメインなので、固定買取制度で電力の買い取り価格が一定です。ですから、インフラファンドはインフレに弱いのではないかという考え方もあります。

しかし、日銀によるインフレターゲットは2%インフラファンドの利回りは6%程度あるので、税引き後でも4~4.8%程度にはなりますこのような高い利回りがでている限りはインフレに弱いということはありません。また、物価が上昇してインフレ率が5%超の成長を遂げるなら別ですが、人口減の現在の日本社会においてそれほど高いインフレ率というのは現状では考えづらいところです。

REITと組み合わせる

そうはいってもインフレに対しての備えがもっと欲しいという方は、 Jリートや株式と組み合わせるのも一つの手段です。 REIT の場合は、金利上昇のマイナスもありますが、物件の上昇によるプラス要素もあります。ですから、ある程度インフルには強いと考えられます。さらに、インフレ対策としては、株式の方が適しています。物価が上がっていくと株価も上がっていくからです 。

それでは、REITとの資産配分はどのように行えばいいのでしょうか。

一つ目は、安定性の確保という点を重視します。例えば、住宅セクターの REIT をインフラファンドに変えるという方法がありますます。住宅センターは、景気による価格変動が小さい傾向がありますが、インフラファンドはそれ以上に安定性が高い投資対象です。利回りを高めつつリスクを抑えて、より保守的な運用を行う場合は、住宅セクターのREITの代表としてインフラファンドを検討する手もあります。

二つ目は利回りの追求です。例えば、物流やオフィスなど景気に敏感なREITとインフラファンドを組み合わせます。価格が景気変動に左右されやすいものの、資産を増やすという点では魅力的な投資対象であるオフィスリートとリスクを抑えて安定収入目指すインフラファンドを組み合わせることで、バランスの取れた資産配分が期待できます。これはインフレヘッジとしても有効です。

上場インフラファンドは5銘柄

現在、上場しているインフラファンドは5銘柄で、時価総額は595億円(2018年9月時点)となっています。投資対象は全て太陽光発電であるため、銘柄の中身に大きな違いはありません。強いて違いをあげれば、それぞれの決算期にあります。

決算時期がそれぞれ異なり、決算回数も年1回と第2回に分かれています。ですから、複数の銘柄を購入するとリスクの分散とともに、分配金を受け取れる機会を増やすことが可能です。それでは、個別銘柄の概要を見ていきましょう。

9281 タカラレーベン・インフラ投資法人

 

  • 上場日 2016年6月2日
  • 利回り 6.06%
  • 物件数 25件
  • 時価総額 161億円
  • 決算期 5月・11月

 

コンセプトは、再生可能エネルギー発電設備等への投資を行い、自然エネルギーの活用を通じた価値の創造です。地球にやさしい持続的な環境づくりとして、以下の三つを目指しています。

①雇用創出社会経済の発展

②地球温暖化対策

③エネルギー自給率の向上

スポンサーは東証一部上場でマンション分譲大手のタカラレーベンです。同社は、太陽光発電所の実績が豊富で、2013年にメガソーラー事業に参入しました。インフラファンド市場の第1号銘柄となります。

9282 いちごグリーンインフラ投資法人

  • 上場日 2016年12月1日
  • 利回り 5.31%
  • 物件数 15件
  • 時価総額 66億円
  • 決算期 6月

いちごグリーンインフラ投資法人は、今後の拡大が期待される「グリーンインフラ」という新たなアセットタイプに投資機会を提供し、長期にわたる安定性と成長性の両方を追求した運用を通じて、投資の最大化を目指します。

スポンサーは不動産アセットマネジメント業務やクリーンエネルギー事業を主力とする東証一部上場の「いちご(2337)」です。資産運用会社はいちご投資顧問となり、いちごグリーンインフラ投資法人の他にも2種類のJリートを運用しているので、豊富な運用経験を持っています。

十年の長期業績予想を出しており、現在は全銘柄中最安の6万円前後で購入することができます。

9283 日本再生可能エネルギーインフラ投資法人

 

  • 上場日 2017年3月29日
  • 利回り 6.29%
  • 物件数 25件
  • 時価総額 94億円
  • 決算期 1月・7月

化石燃料に比べて枯渇の心配がなく、どこにでも存在して、CO2をほとんど排出しないクリーンエネルギー等の再生可能エネルギーを利用した、再生可能エネルギー発電設備を主な投資対象として、安定的なキャッシュフローと収益を生み出す投資機会を提供することを目指します。

スポンサーは、再生可能エネルギー専用のリニューアブルジャパンです。同社は不動産大手の東急不動産と資本業務提携を行っており、共同出資のファンド創設などを進める予定です。

また、ESG投資の対応に積極的で、日本の上場インフラファンドの中で評価が高いファンドです。ESG 投資とは、環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資です。

9284 カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人

  •  上場日 2017年10月30日
  • 利回り 6.79%
  • 物件数 18件
  • 時価総額 231億円
  • 決算期 6月・12月

スポンサーは外資系のカナディアンソーラープロジェクトです太陽光発電の世界的大手で米国ナスダック上場のカナディアンソーラーのグループ企業にあたります。

太陽光パネルの製造、設備の運営、発電所の開発、メンテナンスまで一貫して行える垂直統合モデルが特徴です。現在の時価総額は5銘柄の中で最大、利回りも6.79%と一番高くなっています。

9285 東京インフラ・エネルギー投資法人

  • 上場日 2018年9月27日
  • 利回り 5.61%
  • 物件数 5件
  • 時価総額 41億円
  • 決算期 6月・12月

メインスポンサーは再生可能エネルギー発電設備の技術や設計・管理に関するノウハウを有するアドバンテックです。その他のスポンサーとして、リスク管理を行うあいおいニッセイ同和損害保険、再生可能エネルギー発電事業に関する知見を有する東京インフラホールディングス、技術面での支援行う NEC ネッツエスアイの3社が出資しています。昨年の上場で、インフラファンドの中では最も新しい銘柄です 。

上場インフラファンドの詳細は、ホームページで見ることができます。東京証券取引所に上場しているので、投資家への情報開示義務があり、運用状況の透明性は高くなっています。投資家にとって必要なデータは、決算説明資料や資産運用報告に記載されています。

また、各ホームページの IR コーナーで過去分も含めてダウンロードすることができます。各銘柄のホームページから決算説明会の動画や音声を利用できるようにもなっています。詳細を知るには、これらの IR 情報を利用するといいでしょう。このように情報の透明性が高いというのも、重要インフラファンドの大きなメリットとなっています。

インフラファンドの将来性

インフラファンドは開始からまだ間もなく、これからは太陽光発電に限らず、さまざまなインフラ施設に投資するファンドが登場してくると見られています。ですから、今後の成長性は十分期待できます。

これまでも私募形式で社会インフラに投資する仕組みありましたが、機関投資家向けに特化した不透明な市場でした。新たにファンドとして組成され、東京証券取引所に上場したことにより、個人投資家にも解放された透明性のある市場です。

太陽光発電についていえば、固定買取価格は年々下がっており、20年後も高利回りを維持できるのか気にする声もあります。しかし、年数が経過する分、減価償却で資産を圧縮することができます。買取価格は下がりますが、減価償却費は経費として計上できるため、実質利益率は大幅に下がらないと見られています。

地震リスクに注意

上場インフラファンドが保有する太陽光発電所の地震リスクは、「PML値」という数値をチェックします。PML値とは、475年に1度起こり得るような大地震によって、どの程度の被害を受けるのかということを数値化したものです。

その物件を開発する資金が200億円だとした場合、1%の PMLでは2億円の資金で補修できるという判断ができます。現在、インフラファンドが保有する太陽光発電所の PML値は1%未満のことが多いです。Jリートではおよそ3%程度であることを考えると重要インフラファンドは比較的地震リスクに強いといえます 。

まとめ

今回は、上場インフラファンドについて解説してきました。 Jリートよりも高い分配金利回りが望める上場インフラファンドは、インカムゲインを狙う投資家にとって魅力的な商品です。ただし、価格の大幅な上昇が見込めないこと、銘柄数がまだ少なく投資対象も太陽光発電しかないというのはデメリットです。しかし、今後は銘柄数も増えてくるでしょうし、市場規模が拡大すれば機関投資家の参加も望まれます。分散投資の一つとして魅力は高いのではないでしょうか。

 

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