東証1部への市場昇格と株価指数採用への条件について詳しく知ろう!

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現在、東京証券取引所に上場している企業数は3,654社。投資対象を絞り込む前に、所属市場で銘柄を選ぶのも一つの選択肢といえます。

東京証券取引所では、株主数や時価総額などを基準に市場を分けています。東証一部は大企業が中心で、その下に中堅企業が集まる東証第二部。そして、新興企業向けのジャスダックやマザーズがあります。

東証一部上場というのは、公開企業として厳しい要件を満たしているというステータスの証になるのです。それでは、それぞれの市場の上場基準はどのようになっているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

上場基準とは

上場基準とは、株式会社が発行する株式を、東京証券取引所に上場するために必要な発行株式数、株主数、時価総額などの上場審査の最低条件のことです。

株式会社が株式を発行し証券取引所に上場をするということは、広く一般の投資家から資金調達を行うということです。上場会社には、健全性や公平性、取引の安定性などが求められます。そのための最低条件が上場基準なのです。

株式の上場基準は、投資家保護が目的です。新規の企業が上場する際の「上場審査基準」と、すでに上場している企業の「廃止基準」の2種類があります。

また、その内容により、次の二つに分類することができます。

  • 形式要件

株主数、流通株式数、時価総額、事業継続年数など

  • 適格要件

企業の収益性、継続性、企業経営の健全性、投資者保護など

 

上場基準は市場によって異なり、新興市場よりも東証2部、東証2部よりも東証1部の方が厳しい審査基準となります。それでは、それぞれの市場の主な上場基準を見ていきましょう。

マザーズ市場

  • 株主数

200人以上

  • 流通株式

1.流通株式数    2,000単位以上

2.流通株式時価総額 5億円以上

3.流通株式数比率  上場株券等の25%

  • 時価総額

10億円以上

  • 事業継続年数

新規上場申請日から起算して、1年前以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしていること

ジャスダック市場

ジャスダック市場は「スタンダード」と、より基準が緩い「グロース」があります。

  • 株主数

200人以上

  • 流通株式

流通株式時価総額 5億円以上

  • 純資産の額

2億円以上

  • 利益の額または時価総額(スタンダードのみ)

どちらかに該当すること

1.最近1年間の利益の額が1億円以上であること

2.時価総額が50億円以上

東証2部

  • 株主数

800人以上

  • 流通株式

1.流通株式数    4,000単位以上

2.流通株式時価総額 10億円以上

3.流通株式数比率  上場株券等の30%

  • 時価総額

20億円以上

  • 事業継続年数

新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役を設置して、継続的に事業活動をしていること。

  • 純資産の額

連結純資産の額が10億円以上

  • 利益の額又は時価総額

どちらかに該当すること

1.直近2年間の利益の総額が5億円以上

2.時価総額が500億円以上

東証1部

  • 株主数

2,200人以上

  • 流通株式

1.流通株式数    20,000単位以上

2.流通株式数比率  上場株券等の35%

  • 時価総額

250億円以上

  • 事業継続年数

新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役を設置して、継続的に事業活動をしていること。

  • 純資産の額

連結純資産の額が10億円以上

  • 利益の額又は時価総額

どちらかに該当すること

1.直近2年間の利益の総額が5億円以上

2.時価総額が500億円以上

このように、それぞれ上場基準が決まっています。株主数や時価総額もジャスダックやマザーズなど新興市場よりも二部・一部の方が大きくなります。企業は成長して基準をクリアすれば、上位の市場に移れます。

東証1部指定の条件とは?

特に株式投資においての注目は、一部指定です。一部指定とは、東証2部や新興市場から東証1部に昇格することです。企業の知名度やブランドの向上はもちろん、機関投資家などの買い手が増えるとの期待が広がるからです。

東証1部指定の条件は以下のようになります。

  • 株主数

2,200人以上

  • 流通株式

1.流通株式数    20,000単位以上

2.流通株式時価総額 20億円以上

3.流通株式数比率  上場株券等の35%

  • 時価総額

40億円以上

  • 純資産の額

連結純資産の額が10億円以上

  • 利益の額又は時価総額

どちらかに該当すること

1.直近2年間の利益の総額が5億円以上

2.時価総額が500億円以上(直近1年間の売上高が100億円未満の場合を除く)

インデックスとは

東証一部に上場するとともに、株価指数 に採用されるかどうかというのも企業の「格」を決めます。東証一部の主要225銘柄で構成する「日経平均株価」や自己資本利益率 (ROE) の高さなどで400社を選んだ 「JPX 日経インデックス400」などが非常に影響力の大きい指数です。また、東京証券取引所1部に上場すると、TOPIX(東証株価指数)に自動的に採用されます。それぞれの指数の詳細を見てみましょう。

日経平均株価とは

日経平均株価とは、日本経済新聞社が発表する東京証券取引所第1部上場企業のうち、代表的な225銘柄の株価水準を示す指標です。算出方法は米国ダウジョーンズ社が開発した方式で、225社の単純株価平均に権利落ちによる値下がり分を修正します。長期的な株価の推移を追えるのが特徴です。

対象の225銘柄は、市場での流動性が低くなったものなどを定期的に見直し、別の銘柄と入れ替えます。日経平均株価を構成する225銘柄の入れ替えは定期的に毎年10月に行われ、「定期入れ替え」と呼ばれています。

日経平均株価は日本を代表する株価指数なので、選ばれる企業は東証一部上場企業の中でもより優秀で成長性のある企業だといえます。

ですから、日経平均株価に選ばれた企業はイメージアップになり買われる傾向にあり、逆に外された企業はイメージダウンにつながり、売られる傾向にあります。

そして、そういったイメージ以外にも「インデックスファンド」買いの効果が期待できます。株価指数に採用されれば、指数に値動きを合わせようとする投資信託や ETF(上場投資信託)などの買いが入り需給改善につながります。指数に採用された企業から探してもいいですし、これから日経平均株価に採用される銘柄を探し出すのも、株式投資の醍醐味と言えるでしょう。

ただし、指数に採用されるといいことばかりではありません。潜在的な売り圧力が高まる可能性があります。日経平均株価採用などがあった場合、海外の期間投資家などから買い付けが入りますし、インデックスファンドの買い付けも期待できます。

その時点では株価は上がりますが、世界経済が不安定になって外国人が売れば大きく下がることもあります。指数は先物の影響が大きくなります。日経平均先物などの売りによって、個別企業の業績に関係なく売られてしまう可能性があるのです。

それでは日経平均株価の業種を見てみましょう。日経平均株価では、全銘柄を36業種に分類し、さらに6つのセクターに分け、市場の流動性とセクターバランスを考慮して銘柄の入れ替えを行っています 。(2019年1月時点)

1.技術 42.12%

医薬品、自動車、機密機器、通信、電気機器

2.消費 26.44%

水産、食品、小売業、サービス

3.素材 15.58%

繊維、パルプ、鉱業、紙、化学、ゴム、鉄鋼、非鉄金属、商社、窯業

4資本財・その他 10.26%

機械、輸送用機器、造船、建設、その他製造、不動産

5.運輸・公共 3.17%

陸運、鉄道、海運、倉庫、電力、ガス

6.金融  2.44%

銀行、証券、保険その他金融

日経平均株価は電気機器や自動車などの外需関連の企業の比率が高い指数です。また、ファーストリテイリングやファナックなどの値がさ株(株価が高い株)の影響も強く受けます。個別銘柄の組み入れ上位は以下のようになっています。

順位 コード 社名 セクター 日経業種 ウェイト(%)
1 9983 ファーストリテイリング 消費 小売業 10.06
2 9984 ソフトバンクグループ 技術 通信 4.2
3 6954 ファナック 技術 電気機器 3.13
4 9433 KDDI 技術 通信 2.91
5 8035 東京エレクトロン 技術 電気機器 2.46
6 8028 ユニー・ファミリーマート 消費 小売業 2.31
7 6367 ダイキン 資本財・その他 機械 2.21
8 4543 テルモ 技術 精密機器 2.19
9 6971 京セラ 技術 電気機器 2.07
10 9735 セコム 消費 サービス 1.68

 

TOPIX(東証株価指数)とは

TOPIXは、東証1部に上場している全銘柄の時価総額を対象にした株価指数です。東証1部に上場している銘柄は約2,000銘柄あるので、225銘柄の日経平均株価よりもより実態を表している株価指数といえます。

1968年1月4日の時価総額を100ポイントとして、現在の時価総額を指数化しています。TOPIX は時価総額の大きい大型株の動きに左右されやすく、特に日本を代表するトヨタなどの株価の影響が大きい指数です。また、銀行や通信など内需株の比率が大きいのも特徴です。日経平均株価は値がさ株や外需株の影響が大きい指数でしたが、TOPIXは、時価総額が高い内需株がメインという特徴があります。

それでは、TOPIXの構成銘柄を見てみましょう。(2018年11月末)

順位 コード 社名 業種 ウェイト
1 7203 トヨタ自 輸送用機器 3.21%
2 8306 三菱UFJ 銀行業 1.82%
3 6758 ソニー 電気機器 1.69%
4 9984 ソフトバンクグループ 情報・通信業 1.65%
5 9432 NTT 情報・通信業 1.33%
6 6861 キーエンス 電気機器 1.28%
7 8316 三井住友 銀行業 1.23%
8 7267 ホンダ 輸送用機器 1.14%
9 8411 みずほ 銀行業 1.07%
10 9433 KDDI 情報・通信業 0.98%

 

日経平均株価は原則年一回の銘柄入れ替えだけですので、2~3銘柄程度が多いのですが、東証一部指定替えは毎月あり、2018年度は80銘柄近くが東証一部に指定替えとなりました。東証1部の銘柄数も2,000銘柄と約10倍あるのでそれだけの数が多くなります。ですからインデックス買いを期待する指定変更においてはTOPIXを狙った方が効率良くなります。

毎年これだけ多くの企業が東証一部に指定替えになる一方、東証2部に降格する企業はほとんどありまえん。

そこで東京証券取引所は2018年12月に東証1部市場のあり方を見直す提案をしました。一部での上場を維持できる時価総額の基準を引き上げるほか、他の市場から昇格する時の条件も厳しくします。東証1部で2100社超と先進国の中でも断トツで多い上位市場の銘柄数を絞り込み、優良企業の基準を国際水準に合わせるためです。

2019年1月現在の東証上場銘柄数は3,654社。そのうち東証1部上場銘柄数は2,129銘柄と約58%を占めています。これは、東証2部と東証マザーズ、東証ジャスダックなど他市場の企業の合計約1,500社よりも多くなっています。

東証は東証一部銘柄の企業数を絞り込むことを目的に、500~1,000億円の時価総額の基準を設けることを検討しています。現在は20億円以上が条件で、一部に上がれば上場を維持できる仕組みになっていました。

2018年12月の終値を元に計算すると、時価総額500億円以上なら約1,000社、1,000億以上だと600社まで減少します。一部銘柄を減らすとさらに上位の市場を作るなど複数の案が検討されています。

1部に上場すれば代表的な株価指数である東証株価指数 (TOPIX) の対象になります。これにはインデックスファンドの買いが期待できます。さらに日銀は約6兆円の上場投資信託 (ETF)を 購入しており、株価の押し上げ効果は大きくなっています。最近ではTOPIXを対象とした ETF の購入を増やしています。

一方で、このような買いで株価が底上げされていた銘柄は、東証1部市場から外されると大きく下落する可能性もあります。上場企業から強い反発が出る可能性があり、実際に導入されるまではかなりの時間がかかりそうです。

JPX日経400とは

このように、TOPIXは東証一部に上場していれば赤字が続いている企業であっても全て組み込まれてしまいます。また、日経平均株価も利益水準や資本効率などは考慮しません。そこで 「JPX 日経400」という新しい指数が誕生しました。

JPX 日経400は日本取引所( JPX) と日経新聞社が共同開発し、2014年1月6日より指数の算出を開始しています。対象となる銘柄は東証1部だけではなく東証2部、マザーズまたはジャスダックに上場する銘柄です。

ただ、上場3年未満の銘柄は選ばれないため、新興市場から選ばれることは少なく、ほとんどが東証一部銘柄からの採用となっています。例えば、2016年8月の銘柄構成を見ると、東証1部が395銘柄、東証2部とマザーズ市場が1銘柄ずつ、東証ジャスダックが3銘柄となっています。

資本の効率的活用や投資者を意識した経営、さらに海外投資家が企業の投資において特に重視すると言われるROE(株主資本利益率) や社外取締役の人数などのコーポレートガバナンスの観点から企業を選定します。そして、投資基準に求められる諸条件を満たした魅力の高い400社を選定し、時価総額加重で指数化したものです。

JPX 日経400の銘柄入れ替えは年に1度です。毎年8月5営業日に入れ替え銘柄を公表し、8月最終営業日に銘柄入れ替えを実施します。2014年31、2016年43、2016年34と平均で9%程度の入れ替えが行われています。指数としては比較的入れ替えが多いといえるでしょう。

JPX日経400は、TOPIXや日経平均ほどの知名度はまだありませんが、新指数としては十分成功しています。その要因としては、 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用指標として採用した事、日銀が JPX 日経400に連動する ETF 買い入れ対象としたことなどです。企業にとっても、赤字でも上場を維持できるTOPIXと違い、業績はもちろんのことROEを意識した経営をする必要があります。毎年10%程度の銘柄が入れ替えるので、企業にも緊張感があります。実際、企業の中には JPX 日経400の基準を満たすために自社株買いなどを行い、経営効率を上げている企業もあります。指数が企業の経営を改善したという点で見ても、この指数の意味があったと考えられます。

まとめ

今回は、東証一部、東証二部、東証ジャスダック、東証マザーズのそれぞれの上場基準と日経平均株価、 TOPIX、 日経 JPX 日経400などの指数の構成と採用条件を見てきました。

指数に採用されれば、指数に連動する ETF やインデックスファンドの買いが入り、需給改善につながります。最近では、日銀のETF買いなどによりこのような指数に採用されていることが株価の底上げにつながっています。

しかし、あまりにも上場維持基準が緩いために東証一部銘柄が増えすぎました。 JPX( 日本取引所)は東証1部銘柄数を減らすことを検討しています。今後どのようになるかが注目されます。

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