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全国の空き家件数は過去最高の数字となり、最近では空き家を活用した不動産投資が注目を集めつつあります。
空き家の多くは、所有者がその使途に解決策を見いだせずに結局放置状態になりがちです。今後は放置状態の空き家を減らしていく自治体の動きが強まる中、どうすればいいのかと悩む人も多いでしょう。
ひとことに空き家といってしまえば、何だか不要なものに思える人もいるでしょうが、実は土地と建物という立派な資産でもあるのです。
活用次第では非常に効果の高い不動産投資ともなり得るのです。
そこで、今回は不動産投資として考えていく、意外な空き家の活用法10選をご紹介します。
空き家をどうする?
全国の空き家の数は、平成25年の土地統計調査によると820万戸、全国の総住宅数の6063万戸の13.5%を占めており過去最高を記録しました。
少子高齢化や人口減少等により、現状のままでは2033年には空き家率は30.4%にまで上昇するとも言われています。
※総務省の土地統計調査
調査の結果、使途の決まっていない半ば放置状態の空き家が大半を占めることがわかりました。その所有者のほとんどが相続によりたまたま空き家を所有する結果になったと見られています。
そこで、平成27年2月に全国の自治体により実施が開始されたのが、「空き家等対策の特別措置法、空き家法」になります。
空き家法とは
「空き家法」は原則として、所有者に対し空き家の使途を明確にすることを促すことが目的とされています。2025年には空き家の数を半分以下の400万戸程度に抑えていく方針で全国的に推進されています。
「空き家法」の概要を大まかにご説明しておきましょう。
特定空き家
倒壊の危険のある空き家は「特定空き家」と認定され、建物への緊急な対処(解体・補修など)が義務づけられることになりました。自治体の指導・勧告を受けてもなお放置状態が続く場合には、最大で50万円の罰金が課金されることになります。
さらに、自治体がやむを得ず解体処分する際の代執行費用が徴収されることになり、今後は放置し続けることで多額の費用がかかる恐れがあるのです。
空き家再生推進事業
建物に問題のない空き家に対しては、売却を推進する施策が立てられています。「空き家再生推進事業」と「空き家対策総合支援事業」が設立され、空き家の利活用・除去等の取り組みに対して補助金が支給されることになります。
自治体により、空き家の観光や地域の公共施設としての活用が計画されています。
特例措置
税制を優遇する特例措置として、相続人が空き家を平成28年4月~平成31年12月31日までの間に讓渡・売却する際にはその所得から3,000万円が特別に控除されます。
現在では、以上の方針に基づき所有者に対して、
- 処分するか売却するか
- あるいは再利用していくのか
というように、空き家の使途を明確にすることが国の方針として強く要請されているのです。
空き家問題について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
では、ここで、空き家を使途不明なまま放置し続けた際のデメリットを考えていきましょう。
空き家の固定資産税
使途不明のまま、誰も住んでいない空き家を保持していく場合に忘れてはならないのが、固定資産税です。固定資産税は、その年の1月1日時点で土地や建物を所有する人が自治体に払う税金になります。
もちろん、空き家にもその固定資産税は発生しており、従来までは税金対策としてあえて不要な建物でも残している場合もありました。
仮に、その空き家が倒壊の恐れのある「特定空き家」に認定されたとします。そうすると、これまでは「住宅用地の特例」という税制優遇が適用されないことが決定されたのです。
土地の状態 | 固定資産税 |
空地(建物がない土地) | 課税標準額×1.4% |
小規模住宅用地(200㎡以下) | 課税標準額×6分の1×1.4% |
一般住宅用地(200㎡以上) | 課税業純額×3分の1×1.4% |
ということは、空き家を保持し続けることで、固定資産税を従来の3倍~6倍払う可能性があるというこになります。
※都市計画税に関しても、同様にこれまでの税制優遇が適用できなくなる可能性があります。
空き家の讓渡・売却における税金の控除については、以下の記事で詳しくご覧いただけます。
空き家に係る税金の節約方法
https://savee.co.jp/life/?p=11246
以上のように、空き家を放置状態で保持していくには、今後は増税のリスクを負うことになるわけです。
空き家放置の理由
空き家は生まれ育った実家である場合も多く、つい放置してしまう理由としては、思い入れが強すぎることが考えられます。
その家に住む予定がないにもかかわらず、思い出がつまった家を処分するのは感情的に容易なことではありません。そこで空き家の処分に身動きがとれなくなってしまいがちです。
しかし現状は、空き家が遠方にあることで適切な管理もなされないまま、年月だけが経って行き建物の価値はどんどん低下してしまいます。
資産の放置
空き家を放置することのデメリットは増税のリスクだけではありません。
土地、建物は多くの不動産投資家にとって収益を生むための貴重な資本であり、大切な資産です。ほとんどの投資家が高額な費用を払ってその資産を手にします。その資産をせっかく相続などで手にしているというのに、あてもなく放置し続けるのは、非常にもったいないことであります。
いくらかの土地、まだ使える建物があるだけで、どれだけの収益につなげることができるでしょうか。この機会に考えておく必要があります。
貴重な思い出のつまった家だからこそ、資産として有効に活用していくべきなのです。
今現在であれば、まだまだ丈夫に思えた建物も、数年間放置しておくことによって、土地は荒れ、建物の劣化も進んでしまいます。少しでも価値があるうちに、効率のいい活用方法を検討していくことをおすすめします。
その気になって空き家を活用しようと思えば、意外といくらでも方法はあるのです。
空き家の活用方法の基本5選
空き家の活用方法の基本は、
- 売却
- 賃貸
- 解体
- 民泊
- 経営
の5つになります。それぞれの基本活用方法をわかりやすくご説明していきます。
売却
空き家の活用方法の代表的なものには、売却する方法があります。空き家を現金化することで、目に見える資産として親族で分け合うこともできますし、その他必要な出費に利用することができます。
では、いざ売却を考えた時にはどのような手順で進めていけばいいのでしょうか。
そして、複数の不動産に売却査定を依頼します。複数の査定価格や売却条件を比較して、希望に合ったところに空き家を売却することができます。
※不動産売却査定
また、各不動産の売却査定の金額を参考に、自治体が主体となる空き家バンクに売値を登録しておくこともおすすめです。空き家バンクに登録しておけば、提携している不動産サイトを通じて全国から買い手を探すことができます。
※空き家バンクQ&A
賃貸
どうしても空き家の売却に気が進まない場合は、賃貸として貸し出すことも1つの方法です。その地域にて賃貸ニーズがあるかどうかリサーチをしてみてましょう。
賃貸物件として活用できる可能性があるようなら、空き家をリフォームして住居としての価値を向上させることもできます。最近では中古住宅のDIYにて、自分たちで費用をかけずにリフォームする方法も注目されています。
ただ、空き家が遠方にある人も多いでしょうから、リフォーム可能な賃貸として貸し出すこともできます。好きなようにアレンジできることが借主にとってメリットとなり、費用をかけずに好条件の賃貸物件の提供が実現できます。
※DIY可能物件を扱う不動産
ご地域の不動産にも、DIY可能物件として賃貸物件を扱っているところを探してみましょう。
解体
建物が古すぎる場合や、倒壊の危険性がある場合には思い切って解体する方法があります。ただ、解体した土地を保有しておけば、固定資産税が高くついてしまうのが難点です。
税金の負担を抑えるために解体した土地の活用方法は2つあります。
1つは「更地」として売却する方法です。建物解体の費用がかかりますが、「更地」の場合は建物付き土地よりも早く高く売れる可能性があります。
もう1つは「更地」の運用を土地運用会社に任せる方法です。
※土地活用の運用プランのご提案
民泊
また、地域によっては自治体が地方創生の一環として観光事業に力をいれている地域もあります。そのような地域では宿泊施設の需要が高まる傾向にあり、近年、古い住宅や古民家などを活用した民泊が話題になっています。
自分自身が民泊のオーナーとなって民泊を運営するか、民泊運用会社にすべて任せることも可能です。
あるいは、民泊許可物件として民泊を経営したい人に空き家を賃貸するのも1つの方法です。
※民泊に関する情報、自己運用・運用代行についての記事
※不動産投資として民泊は魅力があるのか
経営
空き家や土地を活用してビジネスを始めることもできます。自分がオーナーとなって、現地にて人材を確保して経営を任せていけば遠方に住んでいても問題ありません。
空き家をリフォームして・・・
アパート経営、飲食店、クリーニング店、雑貨店、各種保険の代理店、ギャラリーなど
空き家を解体後、土地を活用して・・・
駐車場、コインランドリー、トランクルーム、太陽光発電、自動販売機など
※土地のビジネス活用ベスト10
ビジネス経営に建物や土地を活用する際には、費用が最初にかかってしまうリスクがありますが、本人の経験や知識に応じては容易に始められるものもあるでしょう。
空き家の活用方法アイデア5選
空き家の活用方法を色々な視点から考えていけば、まだまだたくさんあります。
その他の空き家活用のアイデアとして、
- 維持する
- 補助金の活用
- コミュニティ施設
- シェアハウス
- 公共事業
以上5つの項目から活用方法をご紹介していきます。
維持する
空き家の所有者の中には、色々と調べて考えた結果、やはり空き家をこのまま維持していきたいと希望する人もいるでしょう。
頻繁に立ち寄るわけではないけれど、全く利用しないわけでもない場合は、賃貸などで人に貸してしまうわけにもいきません。いつそこに泊まるかわからないけれど、いざという時のために空き家を確保しておきたい場合もあります。
そんな時には、放置状態のままにしておくのではなく、定期的なメンテナンスを現地にて依頼することができます。定期的にメンテナンスを行っておけば、数年後にいざ売却を考えた際にもダメージが少なくてすみます。
なんと、空き家管理サービスはたったの100円からプランを組むことができるのです。
単純に不審者や不審物などがないかを確認する巡回サービスは一回につき100円。清掃込みの巡回で一回4,000円になります。あとは、追加オプションとして、建物の補修や設備の点検などをつけることができます。
※空き家管理サービス
定期的に巡回だけでもしておくことで、いざ自治体から注意を受けたとしても、「うちはきちんと管理している、放置していない」と強気に出ることができますよね。
補助金の活用
冒頭でもご説明したように、国の方針として空き家の数を減らしていくことを目的に、空き家の活用において、各自治体では補助金の支給を行っています。
各自治体によって、内容には若干の違いがあるので詳細を問い合わせてみましょう。
家賃低廉化支援
空き家を賃貸として活用した際に、低所得世帯、高齢者などを入居者として受け入れた場合に補助金が支給される制度です。オーナーは月に最大4万円の補助金を受け取ることができます。
改修工事支援制度
上記のような低所得者を入居者を受け入れる際に、空き家に改修工事が必要な場合は最大で100万円の補助金が支給されます。その際には「要配慮者用賃貸住宅」の登録が必要です。
空き家解体補助金制度
空き家の解体の際に、各自治体が定めた条件に合う場合には、解体にかかる費用の一部に補助金が支給されます。工事の対象や導入要件が自治体によって異なるので、確認する必要があります。
サテライトオフィスの支援金
空き家のオーナーが中小企業などの事業主であれば、空き家をサテライトオフィスとして活用する際に自治体から補助金が支給されます。サテライトオフィスとは、IT技術の進化にともない、電話やPCを利用することで事務所を地方の遠隔地に構えることをいいます。
※総務省ーお試しサテライトオフィス
コミュニティ施設
近年では、人口減少に相反して増えているのが世帯数です。核家族化、結婚をしない独身世帯や高齢者の一人暮らしなどの数が増えていることから、私達の暮らしはともすると孤立化、孤独化してまう傾向にあります。
そんな中、家族や血のつながりにこだわらない、新しい人と人とのつながりをつくる場が求められてきています。
一人暮らしを基盤におきつつも、他人とのコミュニケーションがとれるコミュニティ施設の需要が高まってきているのです。
例えば、
- 絵画教室
- 英会話教室
- 釣りや旅行のサークル
- ダンス練習場
- 着付け教室
などと、趣味に基づいた様々なイベント・講習・企画などにスペースをレンタルすることができます。時間や日数で貸し出して、スケジュールを組むことができます。
※空き家のコミュニティ活用の事例
コミュニティ施設として運用するためには、現地にて管理・マネージメントをする人が必要になります。管理会社に運営代行を相談してみてもいいでしょう。
シェアハウス
シェアハウスとは、 1つの建物内に数世帯がキッチンや浴室をシェアしながら共同生活をすることです。
それぞれ、独身者、カップル、母子などの複数世帯が一軒の家をシェアすることから、家賃設定が安くなることに借りて側のメリットがあります。
家賃は安くとも、オーナーはそれぞれの世帯から家賃収入を得ることができるので、普通に貸す場合よりも高い収益を期待することができます。
部屋数が多い空き家に向いている活用方法です
管理会社に運営・管理を任せることができます。
公共事業
最後に国が支援している、空き家再生に関わる公共事業についてご紹介しておきましょう。これらの公共事業に協力できる空き家には各自治体から補助金が支給されます。
各自治体で実施されている公共事業は異なりますが、それぞれの地域における都市計画や地方創生、観光事業の一環として建物を活用することが条件となります。
空きビル再生事業
- 既存の建物を都市機能導入施設として活用する建物
- 中心市街地活性化基本計画の認定を受けている地区が対象。
- 補助金の上限は費用の3分の1
街並み環境整備事業
- 地域の景観を守り、新たな魅力を加えることに活用する建物
- とくに老朽化した住宅多い地区が対象
- 外観の補修にかかる改修・整備費など
- 補助金の費用は上限2分の1
借上公共住宅制度
- 自治体が民間の建物を借り上げて、公営住宅として供給する場合
- 共用部分等の改修費用3分の2を支援
- 家賃の低廉化に伴う家賃の不足分を支援
- 国と自治体の両方から補助金が支給
など、他のも様々な支援制度が準備されています。
以下のサイトでは、各自治体が行っている空き家対策の取り組み事例がご覧になれます。各地域ではどのような企画が行われているのか参考にしてみて下さい。
※地方公共団体の空き家対策取り組み事例
まとめ
空き家の活用方法には、
売却、賃貸、解体、民泊、経営などと基本的な活用方法に加えて、
そのまま維持していく方法や自治体の補助金を活用する方法、シェアハウスやコミュニティハウスの活用方法などもあることをご説明いたしました。
よく調べてみると、思った以上に色々な活用の道があり、不動産投資として空き家が有効に利用できることがわかりました。いかがだったでしょうか。何かヒントになるアイデアはあったでしょうか。
何となく放置したまま年月が経ってしまっていた人は、ぜひ、この機会に具体的な活用方法を検討してみることをおすすめします。
どのような活用方法を選ぶにしても、まずはそれぞれの自治体にて、どのような空き家対策の企画があるのかを確認しておくことが、決断していく上でのポイントとなるでしょう。