プライベートエクイティー(PE)ファンドについて詳しく知ろう!

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「投資ファンド」と聞くとどんなイメージを持ちますか?「相場を荒らしているヤンチャ者」「企業の乗っ取り」「ハゲタカ」などあまり良くない印象かもしれません。しかし、投資ファンドは、マスコミを騒がしているような派手なことばかりを行っているのではありません。

もっと日常の生活やビジネスのいたるところで活躍しています。身近なところでいうと、国内の年金基金の一部では投資ファンドに資金を委託しています。私たちの年金の一部も投資ファンドで運用されているかもしれないのです。

今回は、投資ファンドの中でも、プライベートエクイティ(PE)についてご案内します。まずは、投資ファンドの定義から見ていきましょう。

投資ファンドとは

投資ファンドとは、投資家から集めたお金を、株式、債券、不良債権、不動産などに投資して、収益を狙うファンドです。主に次の5つがあります。

 

①公募型投資信託

②VC(ベンチャーキャピタル)ファンド

③バイアウトファンド

④再生ファンド

⑤不良債権(ディストレス)ファンド

 

②~⑤をプライベートエクイティー(PE)ファンドといいます。

プライベートエクイティ(PE)とは

ファンドの投資手法は「伝統的投資」「代替的投資(オルタナティブ投資)」に分類されます。

伝統的投資は株式や債券といった一般的な金融商品です。私たち個人でも売買できます。

一方、機関投資家や一部の富裕層が対象で、従来とは異なる投資手法がオルタナティブ投資に分類されます。オルタナティブ投資は以下の2つがあります。

 

①ヘッジファンド

②プライベートエクイティー(PE)

 

ヘッジファンドは、金融派生商品(デリバティブ)など複数の金融商品を駆使して、高い運用収益を得ようとするファンドです。投資対象は、株式よりは株価指数などの金融先物や商品先物が多く、買いのみではなく売りの活用、レバレッジ(少額の資金で大きな取引を行う)の活用など多くの手法を組み合わせて、上げ相場だけでなく、下げ相場でも損失を回避しながら利益を狙う(絶対的リターン)投資手法です。

プライベートエクイティ(PE)は企業価値を最大化することを目指すファンドです。企業ステージごとに分類されます。

VC(ベンチャーキャピタル)ファンド

VCファンドは、起業直後からIPO(新規公開)までの成長フレーズに対し投資を行います。

バイアウトファンド

バイアウトファンドは、企業の成長が鈍化した成熟企業や企業の一事業部門を買収して経営に参加し、企業価値を高めて株式公開や戦略的売却(提携先や他のファンドに売却)することによって収益を図るファンドです。

再生ファンド

企業の成長に陰りが見えたタイミングで関与するのが再生ファンドです。リストラクチャリング(部門の縮小)などを通じて企業の再生を目指します。

不良債権(ディストレス)ファンド

再生ファンドでも再生ができず、破綻してしまった企業の債券等を安く買い取るのがディストレスファンドです。昔、「ハゲタカ」と呼ばれたりもしました。ドラマ化などの影響でプライベートエクイティーはハゲタカファンドのイメージがありますが、ディストレスファンドはPE全体の一部でしかありません。

それでは、それぞれのファンドの仕組みを詳しく見ていきましょう。

 

公募型投資信託

通常の投資信託です。「伝統的投資」に分類されます。一般の投資家から資金を集め、株式や債券、不動産やコモディティ(商品)などで運用します。

出典:投資信託協会

投資信託のメリット

投資信託のメリットは主に次の3つがあります。

 

①少額から始めることができ、種類も豊富

②専門家が運用してくれる

③手軽に分散投資できる

 

それぞれ詳しく解説します。

少額から始められる

株式や債券などに個別投資する場合、数万円~数百万円のまとまった資金を用意する必要があります。しかし、ネット証券では投資信託をワンコインの100円から購入でき、気軽に投資を始めることができます。

また、投資対象も株式や債券はもちろんのこと、不動産(REIT)やコモディティ(商品)など幅広く、自分の投資したい金融商品が見つかる可能性が高くなります。2018年4月末時点での国内投資信託の本数は6,144本(投資信託協会調べ)。非常に数が多いのが分かります。

専門家が運用してくれる

株式や債券など、投資に関する専門知識を個人で習得するのは時間がかかります。投資信託は、経済・金融などの専門知識を身につけたファンドマネージャーと呼ばれる運用の専門家が、投資家に代わって運用してくれます。

手軽に分散投資できる

投資家から集めた資金を、株式や債券など様々な資産に分散投資しているので、リスクが軽減されます。分散投資とは、投資先を一つに限定しないで、複数の投資先に投資することをいいます。一つの資産に集中投資すると、その資産の値動きだけで運用成績が大きく左右されてしまいます。複数の資産にわけて投資を行う分散投資なら、そのようなリスクを軽減させる効果があるのです。

投資信託のデメリット

投資信託のデメリットについても見ていきましょう。

元本保証ではない

投資の専門家であるファンドマネージャーが運用し、分散投資でリスクが軽減されていても、株式や債券など価格が変動する商品に投資しているため、運用がうまくいかなければ元本割れをすることがあります。

コストがかかる

資産の運用を専門家に代わってしてもらえる分、手数料などのコストがかかります。投資信託のコストは以下の3つです。

①購入時手数料

購入時に証券会社や銀行などの販売会社に支払う費用です。申込金額の数%を支払います。投資信託の中には、この手数料がない「ノーロードファンド」もあります。

②信託報酬

運用にかかる費用です。運用報告書の作成や発送費、資産の保管などの費用を毎年払います。

③信託財産留保額

換金時にかかる費用です。

続いて、PEファンドを詳しく見ていきましょう。

VC(ベンチャーキャピタル)ファンド

米国では、マイクロソフトやグーグル、アップルなどの大手IT企業もベンチャーキャピタルファンドの融資を受けて公開しました。ベンチャーキャピタルファンドは、株式公開前のベンチャー企業に資金援助をするだけでなく、経営のノウハウを提供して、その企業が株式公開した時に株式を売却して利益を狙うファンドです。

ベンチャーキャピタルファンドの運用形態であるリミテッド・パートナーシップは、1970年代に米国で確立されました。ファンドの運営期間は通常10年間です。前半数年間で投資を実施し、後半数年で資金回収を行うことを目指しています。米国では会社設立から株式公開までの期間が数年なので、日本に比べて投資を回収する時間ははるかに短くなっています。

ベンチャーキャピタルの仕組み

ベンチャーキャピタル(VC)ファンドがベンチャー企業に投資する場合、資金調達の方法は主に二つあります。

 

①VC 自身の自己資本による投資(本体投資)

②投資家から資金を集めてファンドを組成して投資(ファンド投資)

 

ファンド形式での投資の代表的なものとして、米国によるリミテッド・パートナーシップによる投資事業組合があります。リミテッド・パートナーシップというのは、ファンドを組成するときファンドの総額の1%をゼネラルパートナー(運営者)が負担し、残りの99%を外部の投資家が出資することです 。

また投資ステージとして、次の4つに分類されます。

 

①シード・スタートアップ期(設立~5年未満)

②アーリーステージ(5~10年未満)

③成長期

⓸レイターステージ(10年以上)

 

現在の日本のベンチャーキャピタルファンドは設立5年未満の企業への投資が半数を超え、スタートアップ期、アーリーステージへの投資が中止になっています。

バイアウトファンド

バイアウトファンドは「企業買収投資」を意味し、主な手法は次の四つがあります。

 

①TOB(テイクオーバー・ビッド)

②MBO(マネジメント・バイアウト)

③MBI(マネジメント・バイイン)

④LBO(レバレッジド・バイアウト)

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

TOB

株式公開買付けのことです。企業の支配権の取得・強化を目的として、不特定多数の株主に対して、一定期間内に一定数量の株式を、一定の価格(時価よりも高い価格)で買い付けることを公表して行います。

MBO

企業内部の経営者や幹部・役員が、現在の事業を継続することを目的として、バイアウトファンドと共に株式を買い取ることによって経営権を取得する方法です。

MBI

MBOと似たような形式ですが、企業買収したバイアウトファンドが、その企業に外部から経営者を送り込んで立て直しを行います。

LBO

買収対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に、買収資金の大半を借り入れで調達して買収を行う手法です。

一般に使われるM&Aとは、Mergers & Acquisitions の略で、合併・買収を意味します。合併とは二つ以上の会社が一つの会社になることで、「吸収合併」と「新設合併」があります。買収には50%超の株式を取得して経営権を握る「株式買収」と、企業の事業部門や固定資産を取得する「資産買収」があります。

バイアウトファンドは、成長が鈍化した成熟企業や企業の一事業部門を買収して経営に参加し、企業価値を長期的に高めて株式公開や、提携先や他のファンドに売却することによって収益を図る事業です。

複数の投資家から資金を集めて、銀行などの融資を組み合わせながら買収資金を用意します。平均的な投資期間は3~5年程度です 。

再生ファンドとは

企業再生ファンドは、投資家から資金を集め、経営不振に陥った企業の立て直しを行うファンドです。事業再生を通じて多額の利益を獲得します。

企業再生ファンドは、プライベートエクイティ(PE)に含まれます。投資手法について詳しく見てみましょう。

再生ファンドは、バイアウトファンドの中でも企業の再生に特化するファンドです。これまでメインバンクが果たしてきた経営不振企業の立て直しを、再生ファンドが積極的に行うようになりました。

再生ファンドは、投資家から3~10年の契約で資金を集めて、再生可能な企業に出資して再生を支援します。経営陣を派遣して直接経営にタッチし、資本の効率を重視します。過剰債務の処理や経営指導、資産の売却によって迅速な企業再生を目指すのです。

企業や事業の資産価値を高めた後は、IPO(株式公開)、または他の企業や投資ファンドに株式や事業部分をM&Aによって売却することで投資金の回収を図ります。

不良債権( ディストレス)ファンド

ディストレス(distressed)とは、「困窮している、苦しんでいる」という意味です。本来の価値より著しく安い資産に着目した投資戦略をいい、破綻した企業や破たん懸念のある企業の株式や債券などに投資するものです。通常、こういった資産は本来的な価格に対して著しく低い状態となっているケースがあります。経営再建による価格回復や残余財産価値などに着目して、その価格のさやを取りに行く戦略がディストレスト投資です。

特殊な環境下により価格は暴落しているケースが多いので、正常な価格に戻る過程で大きなリターンが期待できる反面、予測が外れて価格が無価値になるなど大きな損失を被るリスクもあります。運用面では高い専門性が必要とされることから、ディストレス投資を専門とする会社がファンドを組成して運用するケースがほとんどです。

ファンドの命運を握る投資評価方法

まずは、投資案件を決定する方法を見ていきましょう。

デューデリジェンスとは

デューデリジェンスとは、案件の調査や審査を意味します。M & A(企業の買収・合併)などを行う検討段階で、事前に投資対象の企業の財政状況や法務のリスクマネジメント、キャッシュフロー状況などを精査する作業のことをいいます。担当業務により、財務デューデリジェンス、ビジネスデューデリジェンス、法務デューデリジェンスの三つに分類されます 。

財務デューデリジェンス

財務の専門家である公認会計士や監査法人グループが企業の詳細な財務調査を行います。買収スキームの立案や、買収契約書の作成、実態に合うように修正した貸借対照表や損益計算書の作成などを行います。

ビジネスデューデリジェンス

案件のシナジー効果の実現のために、統合計画を策定するために行います。ビジネスモデルや組織・収益構造を評価します。具体的には、企業の外部や内部環境の分析を行い自社の強みを明確化します。また、コア事業とノンコア事業を分けて経営者の資質も分析します。

法務デューデリジェンス

法律の専門家である弁護士による企業の契約書など、法律上の有効性を評価しリスクの抽出を行います。 法的手続きや法的保護の妥当性を調査します。具体的には、契約内容の法的助言・契約書の作成などです。

ファンドを組み合わせたファンドオブファンズ

ファンドオブファンズ(FOF)とは、個別に運用されている投資信託をパッケージ化して、ひとつの投資信託として運用することです。

投資ファンドに直接投資できなくても、ファンドオブファンズを通じて、ヘッジファンドやプライベートエクイティーなどに間接的に投資できる魅力があります。

一般にヘッジファンドやプライベートエクイティファンドは、機関投資家や一部の富裕層にのみ販売されるので、最低投資金額も100万ドル(1億円以上)が通常です。一方、ファンドオブファンズなら複数のファンドを一つにまとめて、比較的小口の金額(1万ドル~5万ドル)から購入できるので、投資家の注目も集まっています。

自己資金で運用するプリンシパル・インベストメント

外部からの資金集めたファンドでは、投資期間が通常5~10年と定められているため、短期的な利益の実現を求められます。それに対して自己資金で運用を行う「プリンシパル・インベストメント」では、投資家からのプレッシャーがなく比較的自由な投資活動を行うことができます。

主に企業の経営陣による買収(MBO) を行っています。投資先企業と緊密な関係を築いて企業価値の向上を目指す投資戦略を取ることができるのです。

投資のポイントとしては、キャッシュフローが安定していること、将来の成長や再生ポテンシャルを秘めていること、強固なマネジメント体制が存在し、事業・財務戦略の両面で付加価値創造が期待できることです。

まとめ

今回は、投資ファンドの中でもプライベートエクイティファンドについて詳しく見てきました。新規公開株でベンチャーキャピタルが話題になることがあります。しかしその他の企業再生ファンドやバイアウトファンドはあまり有名ではありません。

しかし、日本経済が停滞し株価が大きく下落すると、このようなファンドの存在感は高まります。最近では、クラウドファンディングなど小口から投資できる手法も広がってきています。様々な投資手法を知っていくとことは、今後の運用にも役に立つでしょう

 

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