目次
ソフトバンクグループってどんな会社?
「ソフトバンクが上場?なぜこのタイミングで?」
ソフトバンクグループからソフトバンクが上場します。ソフトバンクからソフトバンクが上場?と聞くと少し違和感を感じてしまいます。厳密に言うと「ソフトバンクグループ」という大きなグループから、犬がお父さんという印象的なコマーシャルでお馴染みの携帯事業を行っているソフトバンクが上場するのです。
ソフトバンクと聞くとどうしても「携帯事業」のイメージが強くなりがちです。ただ、現在既に上場しているソフトバンクグループは時価総額「約10兆円」となっています。これは、トヨタに次ぐ日本の企業の中では時価総額「第2位」となっており、かなり大きな規模を持っている事が分かります。
携帯事業を行っているソフトバンクと比較した時にも、上場した際の予想される時価総額は「7.2兆円」程度だと言われているので、ソフトバンクグループの方が大きな価値を持っており、他の事業で大きく展開している事が分かります。
この記事では、ソフトバンクの株は買いなのか?という点はもちろんですが、10兆円という大きな規模を持つソフトバンクグループとはどのような企業なのか?という点、ソフトバンクグループの注目の事業などについてご紹介していきます。
まず、初めに10兆円という大きな規模を持っているソフトバンクグループについて、しっかりと押さえていきましょう。
元々はソフトウェアの卸売業者
日本でスマートフォン、モバイル通信を行う事の出来るタブレット等を契約しようと思ったら「三大キャリア」のどれかで、契約を行うケースが一般的です。現在は「格安SIM」などの登場により、その選択肢は広まっていますが、依然として三大キャリアの影響力は大きなものがあります。
その中の1つとして今回上場する事になった「ソフトバンク」が存在しており、ソフトバンクグループ=ソフトバンクとイメージする方も少なくないでしょう。しかし、実際はソフトバンクグループが携帯事業に参入したのは「2006年」の事なのです。
一方、創業者の孫正義がソフトバンクを創業したのは「1981年」の事なので、ソフトバンクが携帯事業に参入するまでには大きな空間が空いているのです。なので、ソフトバンクグループを理解するためにも、ソフトバンクグループの歴史について見ていきましょう。
ソフトバンクグループの始まり
後に巨大化し、日本で2番目に大きな価値を持つ企業は「ソフトバンク株式会社」は「孫正義」によって、昭和57年に創業されました。ソフトバンク肝心の事業内容を簡潔にまとめると「パソコンソフトの卸売」でした。
ソフトの卸売と聞くと疑問に感じてしまうでしょう。ソフトというのはソフトウェアの略であり、ソフトウェアとはパソコンやスマートフォンで動くアプリ等を指しています。例えば、社会人の必須ソフトウェアと言えば、Office系のソフトであるエクセルやワードにあたります。
現在はソフトウェアをダウンロードしたり、ソフトウェアを購入する環境がインターネットを通じて容易に行う事が可能です。しかし、ソフトバンクが創業された「1980年代」はまだインターネットが広がっていませんでした。
つまり、パソコン上で動くエクセルやゲームなどのソフトウェアを使うには、自らソフトウェアを購入しパソコンに導入する必要があったのです。イメージとしては、ゲーム機のカセット(ゲームが出来るディスク)を購入する感覚です。
ソフトバンクはそのようなパソコンソフトを卸売していました。ただ、はじめはそれほど卸売は効率的に進んでいませんでした(大手が強すぎた)。そこで、ソフトバンクでは「パソコン雑誌」の出版を行います。
パソコン雑誌の出版を行う事で、そのパソコン雑誌の中で自社の扱っているソフトを紹介し、販売店が商品を並べやすくしたのです(雑誌で紹介された広告効果から売れやすくなった)。
結果的に、ソフトバンクはパソコンソフトの卸売業者の中で最大手に成長しました。
大きな躍進と携帯事業との関わり
ソフトバンクグループはその間にトップの孫正義が慢性肝炎を患う、データ事業で失敗するなど山あり谷ありの経営が行われますが、フォーバルと共同で開発したNCC-BOXという商品で大きな躍進を遂げます。
NCC-BOXというのは、当時(1985年)に行われた通信自由化(NTTが独占していた通信事業を他の事業者も参入可にした)を期に、発生した電話料金・番号のややこしさを解決した商品です。
自由化に伴い安価な電話料金で電話を行う事が可能になりましたが、そのような企業の電話を利用する際には「0077」「0088」と行ったような番号を付け加える必要があり、この条件も複雑で面倒なものだったのです。(様々な条件によって電話料金も変わった)
そのため、自由化に伴い参入した企業の電話番号を使うユーザーはそれほど存在していませんでした。しかし、この煩わしさを解消したのが「NCC-BOX」です。自動的に電話回線を切り替えてくれる機械であり、上記したような煩わしさが解消される機械でした。
こんな機械があれば、多少高くても電話料金の安さから得をする事が出来るので、当時はかなり魅力的な商品だったと言えるでしょう。しかし、孫正義率いるソフトバンクはこの機械を無料で全国に配布したのです。
では、ソフトバンクはどこから利益を出したのでしょうか?ソフトバンクはユーザーからはお金は取らず、新電電(自由化に伴い参入した業者の総称)から年間20億円ものロイヤリティを得る事を選択したのです。
これにより大きく躍進し、その後はYahoo!に多額の出資をしたり、そこからYahoo! Japanを設立し本格的にIT事業に乗り出します。
携帯事業に参入
そこから上場や、Yahoo! Japanの売却益などから大きな規模を持つようになったソフトバンクグループは既に大企業の仲間入りを果たしていました。
そこで今回上場する事になったソフトバンクの元となっているボーダフォン株式会社の買収を2006年に行います。元々は携帯事業者に新規参入する事を計画したようですが、ボーダフォン株式会社が既に持っていた顧客・設備等を目的に1兆7,500億円で買収を行いました。
その後、携帯事業でも大きな成功を収めている事は記載する必要はないでしょう。三大キャリアの中では20%程度のシェア率と最も低いものとなっていますが、ほぼ全ての方が携帯を持っており、日本国民の20%とも言えるので大きな規模を持っている事が分かります。
携帯事業者のソフトバンクはなぜ今上場するのか?
ソフトバンクグループの1つであった携帯事業者のソフトバンクはなぜこのタイミングで上場するのでしょうか?もちろん、様々な要因が存在すると言われています。
そのため、一概には言えませんがソフトバンクが上場する理由を「市場での価格」「資金獲得」という2点からご紹介していきます。
市場での価格に不満?
ソフトバンク創業者の孫正義は、ソフトバンクを創業した際に売上を豆腐屋のように「1丁(兆)2丁(兆)」と数える企業にしたいと発言した事は有名です。そして、現在ソフトバンクグループは「1兆円」という利益を生み出す企業になっています。
2017年にソフトバンクグループが発表した利益は「1兆4,000億円」としており、孫正義が過去に発言していた事が現実味を帯びてきているのです。その中で、携帯事業を行っているソフトバンクが生み出している利益は約7,000億円程度です。
つまり、ソフトバンクグループ全体が生み出している全体の利益の半分程度の利益であり、最も日本で認知度の高い携帯事業以外にも沢山の事業で利益を出しています。ソフトバンクグループの子会社は700以上であり、その全てを挙げる事は出来ませんが、代表的な事業を挙げると
- 通信事業(ソフトバンクなどの携帯事業者)
- ヤフー関連と広告事業(IT media、ポータルサイト、ブックオフ等)
- ファンド(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)
- 半導体事業(ARMなど)
等です。特にサウジアラビア、Appleなどから10兆円の資金調達を行ったファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、大きな利益・成長をソフトバンクに齎しており、既に約3,000億円の利益が発生しています。
ソフトバンクグループは携帯事業に留まらない多方面に事業を展開しており、ソフトバンクが頻繁に企業買収を行っている事も有名です。このように積極的な企業買収を行い多方面に事業を展開する企業では「コングロマリット・ディスカウント」という現象が発生します。
コングロマリット(複合企業)・ディスカウント(割引)とは、ソフトバンクグループのように様々な事業を行っている企業が、1つ1つの事業を行っている時の市場の評価と比べた時に、価格が減少している状態です。
例えば、ソフトバンクの代表的な事業である通信事業、ヤフー関連の事業、ファンド事業、半導体事業を単体の企業で、上場していたとします。
このような関連企業の時価総額の総額を仮に「12兆円」だと仮定します。ソフトバンクグループの時価総額「約10兆円」なので、ソフトバンクグループが市場から2兆円分低く評価されており、適切な評価を受けていないという状態です。
このコングロマリット・ディスカウントには様々なメリット・デメリットが存在します。ただ、株価が低下してしまうというのは大きなデメリットだと言えますし、携帯事業以外の存在感が強くなる中で、コングロマリットを清算しておきたいという思惑は少なからず存在していると言われています。
大きな資金調達を期待出来る
大きな資金調達が期待出来るというのも、上場させる大きな要因の1つでしょう。もちろんのことですが、親会社であるソフトバンクグループはソフトバンクの株式を大量に保有しています。
その株式を売り出す事で大きな資金調達を行う事になります。その額は2兆5,000億円とも言われておりこの額面は類似している企業であり、国内最大級の資金調達額であったNTT(2兆2,000億円)を超える金額となっています。
つまり、資金調達の面から考えた時に「日本最大のIPO」になる可能性が高く、大きな資金調達の調達が見込めます。ただ、なぜこのタイミングで資金調達を行う必要性があるのでしょうか?これもやはり、他の事業が大きく関係していると言えるでしょう。
国内の携帯事業は緩和状態であり、スマホ市場も成熟の兆しが見えてきました。つまり、国内の携帯事業にこれ以上の大きな利益を見込める事は出来ず、ソフトバンクグループとしては調達した資金を「ファンド」や「AI」「半導体」などの次世代の技術・ビジネスに繋げたいという見方が一般的です。
資金調達の理由・使いみちについては様々な見方が存在しており、断言する事は出来ません。ただ、1つ可能性が高いのは「ファンド」や「企業買収」と言った部分を、強化していくというのは孫正義が日頃から口にしている事です。
そのため、ソフトバンクで調達した資金を他の事業に回すという意図少なからず存在しているでしょう。
ソフトバンクの株は買い?
ソフトバンクが上場するという事で、日々から株式投資を行っている方が気になるのはやはり「ソフトバンクは買いか?」という点だと思います。なので、これからソフトバンクという企業について詳しくご紹介していきます。
肝心の携帯事業
スマホ市場を最も大きく開拓した企業はAppleであり、その製品はiPhoneだと言えるでしょう。では、日本でスマホを広げたのは?という点を考えた時に「ソフトバンク」の存在が大きいでしょう。
日本で最もはじめにスマホを取り扱ったのはソフトバンクであり、当時世界中でiPhoneの販売が好調であり、目立った割引やキャンペーンが行われていない中でソフトバンクは「実質0円」というキャンペーンを行い、日本のスマホ市場を広げました。
そんなスマホ市場は現在、成熟したという見方が広がっています。中国勢の安いスマホが広がっている等、一部の企業・市場では伸びが見られますが、全体的には出荷数の減少が見られ成長性は落ちてきていると言えるでしょう。
これは、日本も例外ではありません。短期間で見た時に若干の出荷台数の上昇は確認出来ますが、長期的な視点で見た時に成長率は落ちています。
また、通信事業では総務省が行った緊急提言の影響でNTTドコモが割引を発表、ソフトバンクも同じように携帯料金を値引きするなど、これまで他の産業と比較した時にキープしていた高い利益を簡単に上げられない可能性が発生しています。
そんな中で、三大キャリアの1つであるau(KDDI)の通信を利用し、楽天が参入するなど競争が激しくなっています。携帯事業を行っているソフトバンクのシェア率は三大キャリアの中で最も低く、油断を許さない状況だと言えるでしょう。
長期投資するなら買い
上記したような内容だと「買わない方が良い?」と感じてしまいます。ただ、それも一概には言えません。というのも、ソフトバンクは上場に際して配当利回り「5%」という高水準の利回りを設定しました。
また、上記した内容で「競争が激しくなる」「シェア率が低い」などデメリットを挙げましたが、EBITDAから見た時にマージン率「50%以上」であり、堅調な経営を行っていると言えるでしょう。
EBITDAとは?
EBITDAとは「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」の事です。国際基準の算出方法なので適切な日本語を見つける事が難しいですが、世界中でビジネスをしている国際的な企業が使う事の多い利益の算出方法です。
EBITDAは「税引前利益」を「支払利息・減価償却費」等を考慮した上で、計算される利益の事です。
簡潔にまとめると「国際的な企業になると各国によって税率が違うので、税引前の利益を計算しましょう」という利益の算出方法です。
そのため、高い配当利回り・堅調な経営を考えた時に「長期投資」を前提とする場合は、おすすめの銘柄だと言えます。ただ、PER・PBRの観点から見た時に決して安いとは言えない銘柄なので、短中期間での利益はあまり見込めません。
ただ、配当利回りはかなり高い水準なので、長期保有を前提とするなら十分選択肢の1つとして魅力的な投資先になり得ます。
まとめ
ソフトバンクグループってどんな会社?
- 元々はソフトウェアの卸業者
- 資金を調達し、携帯事業に参入
- 現在は様々な事業を行っているグループ企業
携帯事業のソフトバンクはなぜ上場する?
- コングロマリット・ディスカウントを解消するため
- 巨額の資金調達が期待出来る
ソフトバンクは買い?
- 携帯事業は油断を許さない
- 高い配当利回りは魅力的
この記事ではソフトバンクグループやソフトバンクの概要、ソフトバンクが上場する理由、ソフトバンクは買いか?という点について解説しました。株式投資家の方は、これから上場するソフトバンクはもちろんですが、子会社700以上と巨大化を続けるソフトバンクグループについてもしっかりと注目しておく必要性があるでしょう。